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べそかきアルルカンの詩的日常“手のひらの物語”

過ぎゆく日々の中で、ふと心に浮かんだよしなしごとを、
詩や小さな物語にかえて残したいと思います。

だから もうおやすみなさい

2006年12月29日 21時16分52秒 | 慰め種

水平線にお陽さまが沈んで
藍色の森陰から
黄色いお月さまが顔をだしました
星々が静かに地上のできごとを語りあい
銀河にガラスの舟が浮かぶとき
きょうの日記を書き終えて
きみは小さなあくびをひとつする

今宵は不知夜月(いざよいづき)の夜想曲
エキゾチックな幻は
砂に埋もれたドロップの空き缶
静寂の闇は
モリアオガエルのため息に揺れる

ねぇ、ごらんなさい
水平線のまるみが
少しずつふくらんでいくのがわかるでしょ
そしてほら 渚に打ち寄せる波の泡から
ちぃちぃちぃとつぎからつぎへ
愛らしい浜千鳥が生まれ出てくる

だからもう おやすみなさい
夜更かししないで
だからもう お眠りなさい
やさしい夢に身をゆだねて

無数の光の粒の連なりが
天空をめぐる美しい音楽となって
人魚がささやかな恋のゆくえを祈るとき
旅のほうき星が百万年の呪縛からとき放たれる
月見草は一夜かぎりの命を咲かせ
月下美人の微笑が香る

だからもう おやすみなさい
白鳥(しらとり)の羽のゆりかごの中で
だからもう お眠りなさい
夜のしじまにそっと抱かれて

涙をこらえてふるえるきみは
まるで幼い少女のよう
あのね、そんなにがんばらなくていいんだよ
あまり がまんしなくていいんだよ
つややかな黒髪が月の雫に濡れているじゃない
ながいまつ毛に星のささやきが宿っているよ

だからもう おやすみなさい
蜜の声をもつカナリヤの子守唄に耳をすませて
だからもう お眠りなさい
さくら貝のむかし語りに心をほどいて

ひとりぽっちは孤独だけれど
孤独な心がふたつ集えば
わかちあえることもあるんだよ きっと
ほら、そっとまぶたをとじてごらん
金の木馬が満天の星空を駆けめぐり
迷子の流れ星が夢の扉をひらいているよ
だからもう おやすみなさい
だからもう お眠りなさい

ともあれ きょうという日が幕をおろして
新しい明日がやってきたんだ
きのうはすでに過ぎ去って
きょうが明けていこうとしているんだよ
もうすぐ東の空に光が射して
そうして静かに夜が明けてゆく
だからもう おやすみなさい
だからもう お眠りなさい
やさしい夢の中で やすらかに




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ありふれたもの

2006年12月27日 23時25分15秒 | 慰め種
それは何もとくべつなものではありません
それはほら
いつも目の前にあるのです

たとえばそれは
雑木林の小鳥のさえずりの中に
たとえばそれは
野原を舞う蝶の羽の影に
たとえばそれは
そよ風にゆらめく花びらのはかなさに
たとえばそれは
木洩れ陽の微笑みとともに

それは何もとくべつなものではありません
それはほら
いつも手のとどくところにあるのです

たとえばそれは
せせらぎの中できらめく石ころのなめらかさに
たとえばそれは
風に舞い散る枯葉のうらに
たとえばそれは
美しい音楽の旋律の清らかさに
たとえばそれは
古い日記の白い余白に

それは何もとくべつなものではありません
それはほら
いつもすぐそこにあるのです

たとえばそれは
街角の小さな花屋の店さきに
たとえばそれは
温かいミルクの湯気のむこうに
たとえばそれは
色あせたアルバムのページのすき間に
たとえばそれは
なつかしい手紙の行間に

それは何もとくべつなものではないのです
なにげない顔してふだんどおりのそぶりで
それはいつもただそこにあるのです
ほら  あなたの気がかりなあのひとの瞳の奥にも
それはひっそりと眠っているのです

それは何もとくべつなものではありません
それはほら
いつも見なれたものなのです

たとえばそれは
ひなたぼっこをしているノラ猫のシッポの先に
たとえばそれは
窓辺の朝顔の蔓の螺旋に
たとえばそれは
黄色いオムレツのふんわりしたやさしさに
たとえばそれは
遠い異国から届いた絵葉書の片すみに

それはほら  それはほら  それはほら

あなたの目の前 すぐそこに
ちょっと手を伸ばせば
とどくところにあるのです




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ささやかだけれど叶いそうもないこと

2006年12月24日 13時00分03秒 | 慰め種

小さな部屋
やわらかな灯り

座り心地のよい椅子
読書するかたわらには
老いた犬が寝そべっている

窓辺の一輪挿し
ひかえめに揺れる
名も知らぬ野の花

つつましい食事と
あたたかい飲みもの

ゆるやかに流れゆく時
静かでおだやかな美しい生活

なにもないのに満ちたりた日々


                            

silent night , holiy night

2006年12月22日 22時22分30秒 | 慰め種

秘められたあなたの苦しみを
わけてください
ともに堪え忍びたいのです


枯れ果てたあなたの悲しみを
わたしにそそいでください
ともに涙を流したいのです


夜の闇の底から舞い散る綿雪のはかなさの
なんと美しいことでしょう
静寂をついて鳴りわたる鐘の音の
なんとおだやかなことでしょう
たとえ小さなろうそくの灯りでさえも
ときとして思いがけない温もりをもたらしてくれるものですね
とめどなく溢れだす苦悩にうち震えながらも微笑を浮かべて
それでも人生は美しいと言葉にできるそんな日が
ときにはあっても良いではありませんか


星々もそっと息をひそめる静かな夜
ささやかな安らぎと小さな幸せをすべて分かちあいたいと
だれもが願う特別な夜


あなたの抱える重荷を
わたしにも背負わせください
今宵は祝福された特別な夜なのですから