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べそかきアルルカンの詩的日常“手のひらの物語”

過ぎゆく日々の中で、ふと心に浮かんだよしなしごとを、
詩や小さな物語にかえて残したいと思います。

ときとして ふと胸をよぎるのは

2007年01月02日 18時47分17秒 | 慕情

ときとして
なんでもない些細なことが
ふと思い浮かんだりするもので
たとえばきみの
美しい曲線をえがいた耳のかたちは
とてもきれいな貝殻のようであったとか
たとえばきみの
細くしなやかな指さきのつややかな爪は
まるで桜の花びらのようであったとか
たとえばきみの
なめらかにまるみをおびたくるぶしの
えもいわれぬ愛くるしさであるとか
たとえばそんなふうな
とりとめのないことなどです
おかしいでしょ
永遠とも思える時をともに過ごしたはずなのに
日々の暮らしの中で
なにかの折にふっと胸をよぎるのは
そんな些細なことなのです
おかしいでしょ
おかしいですよね


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記憶の小片

2006年12月31日 20時05分53秒 | 慕情

あのころの日々を
ガラスの小壜にいれて
やわらかな沈黙の海にそっと浮かべてみると
冬の透明な陽だまりに
ふらふらと漂う季節はずれの蝶々のように
おぼろげにふうわりと
あなたの言葉の切れ端や
あなたの好きな花の名や
あの日あなたが着ていたワンピースの色や
あなたのあまい髪の香りや
しなやか眉の形や
ちょっとしたなにげない仕草や
あれやこれやが
なんの脈略もとりとめもなく
美しい音楽で綴られたモザイクのように
つぎからつぎへと
浮かんでは消えていったのです
だからぼくは
いまもかわらぬあなたへの愛を
深く静かなため息にのせて
たおやかな風にとき放ってみたのです


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ゆびきり

2006年12月26日 22時13分33秒 | 慕情

あれはいつのことだったでしょう

たしか西の空が
真っ赤に熟した柿の実色に染まった
秋の夕暮れどきのことでしたね

そよ吹く風が運んで来たほのかな香りに
季節が移りゆくのをふと感じたような気がします

かたわらにたたずむあなたの横顔をそっと盗み見ると
愁いをおびたその長い睫毛が
かすかに濡れていたのをおぼえています

ぼくたちはなにも語らず
ただじっとたたずんでいましたね
ながいながいあいだ

どのくらいそうしていたでしょう
うす闇が静かにあたりを満たし
しだいにものの輪郭がほどけていくようでした

と、目のまえに
そっとさしだされたあなたの小指
そのしなやかでかぼそい指先に
ぼくはためらいがちにふれたのです

ものごとは思いのほか単純にできているようですね
なのに言葉にしようとすると
とたんにむずかしくなってしまうのです

ふたりが小指をからめあわせたちょうどその時
暮れゆく夕空の片隅に
小さな一番星が瞬いたのをおぼえていますか


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