脚と角

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ミラクルOSU、今季初白星 -関学大 VS 大産大-

2011年05月02日 | 脚で語る大学サッカー
 関西学生リーグは先月29日の前期第4節からわずか中1日で第5節が開催。神戸ユニバー記念競技場では2試合が行われ、第1試合では、ここまで2勝2敗の関学大と開幕から未勝利4連敗中の大産大が対戦。試合は1-4と予想外のスコアで大産大が勝利。派手に今季の初勝利を飾った。

 

 前節、姫獨大に3-2と僅差で勝利を収め、連勝を狙う関学大は、関関戦の際にはベンチスタートだった昨季の優秀選手・梶川(4年)が先発に前節から戻っていた。前線に三ノ宮(3年)を置き、司令塔・阿部(4年)がその後ろからドリブルを仕掛けて形を作る強力な攻撃陣。前節は梶川が1得点1アシスト、阿部も1得点で調子は上向きのようだ。

 

 一方の大産大は、前節、阪南大に0-3と敗戦。今季初勝利の先を越されてしまった。なかなか自分たちのペースに持ち込めず苦しい戦いが続く彼らにとって、今節の関学大、次節の関西大とまさに踏ん張りどころともいえる日程が続く。毎試合何度か好セーブを披露するGK神園(3年)の奮闘に前線も応えたいところ。

 

 試合は小雨がぱらつく中キックオフ。前半から相手陣内へ果敢に攻め込んだのは関学大だった。5分には早速、エース・阿部がシュート。ドリブルで相手守備陣を切り裂く彼を中心に関学大の攻撃のバリエーションが光る。8分には右サイドバック高松(4年)の豪快なサイドチェンジから関(2年)がダイレクトでパスを送ると、走り込んできた桑野(4年)が中央へクロスを送る。決定機にこそ繋がらなかったが、サイドチェンジを織り交ぜた関学大の縦に攻撃は早い時間帯での先制点が生まれることを予想させた。
 ところが意外なことに先制したのは劣勢の大産大。25分にMF江口(2年)がエリア手前でパスを送ると、これがFW鍔田(4年)に通り、鍔田はすかさずシュートを決める。押し込まれていた大産大は、ここまでまだシュートも2本ぐらいだったはず。この思いがけないリードをいかに守っていくか、試合を見守る者は誰もがそう思っただろう。それは実に杞憂だった。

 
 
 
 
 先制点は意外にも大産大。エース・鍔田が決めた。

 手元の記録だけでも10本は放たれた関学大のシュート攻勢を大産大は非常に集中して良く守った。19分には関学大が阿部、梶川、三ノ宮と素早く繋いだボールに最後は中村(4年)がシュートするが、これを大産大GK神園がナイスセーブ。直後にも関学大・高松のアーリークロスを中村は頭で落としたところに阿部が合わせたが、これを大産大はDF佐道(4年)がブロックしてゴールを許さなかった。32分にも関学大・中村にDF満生(2年)、神園が抜かれて大ピンチを招くが、これを満生が決死の戻りでシュートをブロック。34分にも神園がナイスセーブを見せるなど、決定力の欠如にも助けられ、前半だけで幾多もの関学大のチャンスを大産大は潰していったのである。

 
 関学大・中村が突破した場面。最後は満生がブロック。

 
 激しい守備でチームを引っ張る主将・佐道
 彼の存在は大産大には欠かせない。
 
 後半に入ると、関学大の運動量が落ち、大産大のボールポゼッションが高まる。スピードあるドリブルでリズムを作る塩川(2年)、捌き役の江口が次第に関学大からボールを奪い出す。後半の早い時間に追加点は生まれた。54分に江口のFKが関学大DFの裏にこぼれたところをすかさず川西(3年)が決めて2点目。加えて、大産大はその直後に江口がエリア左付近から強烈なシュートを決めて一気にリードを3点に広げてしまう。沸き上がるスタンドの応援者。しかし、前半あれだけ押し込まれただけに、果たしてまだこの3点のリードを守れるのかという不安は過った。

 
 
 川西が大産大の2得点目を決める。

 
 その直後には江口のシュートが決まり一気に3-0に。

 関学大は、61分に阿部が強烈なFKをお見舞いするも、これもGK神園がセーブ。64分に平山(3年)、浦島(4年)を途中投入して前半の勢いを取り戻そうとする。しかし、流れは完全に大産大。66分に江口が強烈なシュートがバーに嫌われ、もう1点は時間の問題というように感じさせる。71分には関学大陣内ペナルティエリア内でクリアしたボールを太田(3年)が拾うと、そのままドリブルで突進。右足を振り抜いて4点目となるシュートを叩き込んだ。前節、無得点のチームとは思えない生き生きとした攻撃を見せた。

 
 太田がボールを運ぶ。大産大は後半覚醒した。

 
 
 大産大ダメ押しの4点目、太田がシュートをズドンと1発。

 終了間際に関学大の三ノ宮に1点を返されるが、シュートの雨あられを受けながら失点はその1失点のみ。大産大は今季初勝利を関学大から4得点奪うという内容でアップセットを演じた。

 大産大は、まず非常に守備が集中していた。主将の佐道をはじめ、非常に球際で粘り強くボールホルダーにプレッシャーをかけた。それでも突破を許した場面はあったが、ここでも神園が好セーブを重ねることで関学大のシュートを凌ぎ切る。得点が奪えず、焦って前がかりになる関学大の前線と守備陣の間のスペースで江口や太田、塩川らがボールを拾う機会が増え、鍔田に集中するマークの隙間を突けたことも大きかった。
 対する関学大は2勝3敗と負け越し。あれだけシュートを打っておきながら1得点という内容はお粗末すぎた。前半こそ序盤から左右に揺さぶりをかけて相手を圧倒するサッカーを見せたが、後半はシュートを放ち続けた阿部が孤軍奮闘するのみ。「上がれ!上がれ!」と加茂総監督もスタンドで声を荒げる光景も見られ、前半の連動性が思った以上に影を潜めた後半だった。

 5試合目にして今季初勝利を掴んだ大産大。次節の相手は関西大だ。もちろん関西屈指の陣容を備えるチーム。この試合もまずは守備で凌ぎ切らないことには自分たちのチャンスはなかなか掴めないだろう。しかし、この試合4得点の攻撃陣に明らかに光明は差している。


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