脚と角

関西を中心に国内外のサッカーシーンを観測する蹴球的徒然草。

喜怒哀楽の真髄は蹴球にこそ有り。

臍を噛むのは今夜のみ -VS アイン食品-

2011年05月07日 | 脚で語る奈良クラブ
 関西リーグはGWの中断を挟み、第4節を迎え、ここまで開幕3連勝の奈良クラブがアイン食品と対戦。拮抗した試合は終盤に4得点が乱れ飛ぶ劇的な展開に。アディショナルタイムに奈良は牧が得点を奪ったものの、その直後に同点弾を決められ2-2で痛み分けに終わった。

 

 ここまで先発メンバーが固定だった奈良は、ここにきて橋垣戸が先発に名を連ね、谷山、眞野との3バックを敢行。左右のサイドバックを務めていた吉田と黒田を一列前へ上げ、攻撃の厚みを持たせた。守備のリスクも同時に上がるが、これは非常にハマれば面白いなと思った。3連勝中の奈良にとってはアインは昨季の前期対戦時こそ引き分けたが、後期対戦時は2-0とリードしていた試合を2-4までひっくり返された。ここまで関西リーグでは1勝もできていない相手であり、関西を制するには彼らを乗り越えなければ話にならない。牧が負傷明けでベンチスタートとなったが、ほとんど陣容にダメージはなかった。
 対するアインはこれまで何度も書いてきたように、おそらくその陣容だけでもリーグ屈指の補強を敢行。既存戦力との融合がうまくいけば洲本以上の強敵だ。撃ち合いにも滅法強いイメージがある。そんなアインを攻略できるかどうかは今季の重要な指標になるだろう。

 
 
 
 空中戦に強い橋垣戸(上)と谷山(中)とコンタクトに強い眞野(下)。

 前半から相手に押し込まれる流れが続いた。しかし、橋垣戸を中心とした守備陣が機能し、決定機を作らせない。序盤からエンジンがロースタートなのはこの数試合いつものこと。かといって序盤から飛ばしてもG大阪とのTMでも前半フルスロットルで攻めて、後半一気に運動量が落ちたように得策ではない。今年一番の暑さではないかという厳しい日差しと気温のことを考えれば、理想のペース配分で前半を戦えた。スコアは0-0と先制点は前半のうちに欲しいと思ったものの、まずは手堅く無失点で乗り切ったことは大きかった。

 
 李がチャンスを作る。
 まさに今季はチームの司令塔としてフル回転。

 
 エース・檜山は決定機を決めきれず。消化不良。

 後半に入って、明らかにアインの運動量が落ちてきた。0-0で折り返していたこともあり、ここで前半に浪費しなかった運動量を一気に攻勢に繋げることができた。橋垣戸、三本菅のセンターラインでボールを奪い、李、辻村兄弟で一気にボールを前線に運ぶ。技術面も含めて、後半は相手を一歩しのぐ攻撃を展開できた。

 
 吉田は得意の攻め上がりが少し影を潜めたか。

 しかし、1点は遠かった。エリア内までボールは持ち込めるが、アインの守備ラインのブロックを崩せない。シュートは枠内を捉えてもほとんどがGKの捕捉範囲。サイドからのクロスもあまり効果を得られなかった。消耗戦は1点を争う展開になるかと予想された。

 83分に自陣エリア左手前付近から相手のFKを頭で合わされて被弾。ここに来ての先制点献上は痛かった。まるでここまでの押せ押せムードに一気に水を差されたといった感じだ。
 ところが、奈良に同点弾の機会はやってくる。87分、辻村隆の左CKを三本菅が頭でぴったり合わせてゴールへ叩き込む。会心の一撃にスタンドは沸いた。

 
 三本菅の同点の場面。
 実はこの直前にも強烈なヘディングシュートをお見舞いしていた。

 そして、後半も終了間際のアディショナルタイムに入ったかという時間、辻村剛のドリブルからのスルーパスを途中交代の牧がゴールに流し込み逆転。負傷から帰還した牧の今季2点目に、沸き立つチームとスタンド。ほぼ試合はこれで決まったかに見えた。
 ところがあと数十秒、ほんの1分強ほどの時間を奈良は乗り切れなかった。直後にカウンター攻撃からアイン・千代原にシュートを決められる。逃げ切り失敗。その得点の直後に試合終了の笛が響いた。

 
 牧が得点を決めて、この歓喜で試合は終われるかと思ったが…

 強い日差しの中で、1点差を争う試合。開幕からの4試合中最も内容は良かったのではないだろうか。終盤の執念の撃ち合いにはしびれるものがあった。なぜ、牧の得点後に逃げ切れなかったのかと考えると、まさにスルリと手の中からこぼれ落ちたという表現が相応しい。なんとも悔しい試合となったが、次節の三洋洲本戦に良いイメージで臨むためには良い試合になったのは間違いない。選手たちも手ごたえを掴んでいるはず。臍を噛むのは今晩だけにした方が良さそうだ。切り替えて前に進もう。

 
 次節は昨季の王者、三洋洲本と対戦。
 12日、アスパ五色サブグラウンドで12:00キックオフ。