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アートネタなど日々のあれこれ

フジコ・ヘミングの時間

2018-07-01 15:32:49 | 映画
TOHOシネマズ二子玉川で「フジコ・ヘミングの時間」を見てきました。

フジコ・ヘミングといえば、もうかなり前になりますが、生演奏を聴きにいきました。もうけっこうなお年のはず・・・ですが、今もお元気に活動されているのですね(以下、ネタバレ気味です)。

80代になっても、なお、世界中を飛び回って演奏活動を続けるフジコさん。そのコンサートやプライベートでの姿を、これまた世界中を飛び回って追ったドキュメンタリーです。フジコさんの演奏も話も堪能できました。フジコ節も今なお健在。このしゃべり、誰かに似ているなぁ・・・と思ったら、そうだ、樹木希林だ・・・(笑)。品と毒のある独特の話しぶりです。

音楽にまつわる話もたくさん聞けます。一番印象深かったのは、師匠のクロイツァー氏から、歌え、と言われていたということ。フジコさんのピアノって独特ですよね。緩急自在というか。ずっと不思議に思っていましたが、彼女にとってピアノは「弾く」ものじゃなくて「歌う」ものだったんだな、と。だから、ひたすらカンタービレなのかも。また、「私の演奏はアンティーク」とも。いわれてみれば、彼女のピアノはお菓子で言うとザッハトルテみたいなものかも、と思いました。そして、今でも一日4時間は練習するのだそうです。「画家は一日休んでも続きを描けばいいけど、ピアノは一日練習を休むと元に戻ってしまう」というようなことを言っていました。ピアニストって半ばアスリートのようなものですもんね・・・。ピアノを練習するシーンもありました。「気を入れていないアヴェ・マリア」と「気を入れたアヴェ・マリア」の弾き比べも何だか面白かった・・・。

演奏シーンもふんだんにありました。ラスト近くの「ラ・カンパネラ」ももちろん素晴らしかったけれど、最後の「月の光」で泣きそうになりました。私にとっても大好きな、大好きな曲だけれど、こんな月の光、聴いたことないわ・・・。意外なところでは「サマー・タイム」もかっこよかった。あくまでクラシックの弾き方なんだけれど、思いのほかブルージー。そういえば、レストランで弾いてたこともあるって言ってましたね・・・。

丁寧につくられたドキュメンタリーで、相当満足しております。弟、ウルフまで登場していたし・・・いい味出してます、この弟さん。数奇な人生をたどり、「私の出番は天国に行ってから」と思っていたフジコさん。晩年近くになってからのブレイクは、「神様が波に乗せてくれた」と。ブレイク時、彼女のピアノには賛否両論あった記憶がありますが、いまだに、これだけ多くの人を惹きつけているのは、彼女のピアノが、人はなんで歌うのか、ということを思い出させてくれるからかも、と思ってしまいます。聴いている私も当時よりはかなり年を食ってしまって(笑)、世界にはもの凄くテクニカルだったり、クレバーだったりするピアニストはたくさんいるけれど、ピアニストの価値は最後は心(魂)と指をどれだけ近づけられるか、というところなのかもと思うようになりました。そんなわけで、日曜の朝からいい時間を過ごさせてもらいました。ありがとう、フジコさん(そして、監督さん)・・・。
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