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アートネタなど日々のあれこれ

生まれておいで 生きておいで

2024-10-03 00:05:39 | 美術
ひさしぶりに上野で展覧会のはしごをしてきました。と言っても、だいぶ前のことになってしまいましたが…。

最初に行ったのは、東京国立博物館「内藤礼 生まれておいで 生きておいで」です(展覧会は既に終了しています)。この展覧会、開催を知った時から楽しみにしていました…内藤さんの世界観と国立博物館がどういう出会いをするのかと。この展覧会は博物館の収蔵品や建築空間と内藤さんの出会いから始まりました。内藤さんは縄文時代の土製品に自身の創造と重なる人間のこころを見出したそうです…。展示は3か所に分かれていました。第1会場となっている平成館の細長い展示室では、ガラスケースの中に縄文時代の遺物がそっと並べられ、天井からは小さな球体のオブジェが吊り下げられています。私は太古から未来へとつらなる生命の連鎖をイメージしました…。第2会場は本館特別5室。カーペットと壁が取り払われ、むき出しの空間があらわれていました。思わず息を飲みましたね…長年通ってきた国立博物館は実はこうなっていたのかと。そして、アピチャッポン・ウィーラセタクンの映画のワンシーンに立ち会っているような不思議な感覚に陥りました。建物はその歴史を内包しているということを目の当たりにしたような…。第3会場は本館ラウンジ。小さなガラス瓶に水を満たした「母型」がそっと置かれています。壁にはきらきら光る金色の画鋲がいくつか。大きな窓からの光も差し込み、祝福された空間のよう。今まで見たことのないような感じの展覧会でしたが、内藤さんの祈りの縄文の人々の祈りが邂逅した場に立ち会っているような、そんな不思議な体験でした…。

次に行ったのは、同じく東京国立博物館の「空海と神護寺」です(展覧会は既に終了しています)。この展覧会は神護寺創建1200年と空海生誕1250年を記念して開催されました。本尊の「薬師如来像」が寺外で初公開されるというので行ってまいりました…さすがに威厳のあるお姿でしたね…。国宝の「五大菩薩像」は五体が揃う例としては日本最古なのだそうです。曼荼羅のように配置され、ライティングの妙も相まってより神秘的に。また、230年ぶりの修復を終えたという「高雄曼荼羅」も。精緻な美しさがよみがえったような…。神護寺三像の揃い踏みも。その他にも「灌頂暦名」「観楓図屏風」などの国宝や「大般若経」などの重文の多数…神護寺の威力を思い知らされた展覧会でした。

最後に行ったのは東京都美術館の「デ・キリコ展」。キリコの10年ぶりの大回顧展です(展覧会は既に終了しています)。前回の汐留ミュージアムでの展覧会も行きました…あれからもう10年も経ったのか…。今回の展覧会は初期から晩年までの作品が網羅されていましたが、初期の形而上絵画がけっこう出ていたのが嬉しかったです…イタリア広場、形而上的室内、マヌカン…見ているだけで心が異界に飛びます。室内風景と谷間の家具も不思議…さすが謎を愛した画家です。その後、伝統的な絵画へと回帰しますが、再び形而上絵画へ描くように…過去の作品と新たなモチーフを再構成した作品は新形而上絵画といわれました。光と影のコントラストが強烈な初期の形而上絵画と比べるとどこか明るい印象を与えます。今回は絵画の他にも彫刻や、キリコが手掛けた舞台衣装も展示されていました…何ともシュールな衣装でしたね…。そんなわけで、前衛と古典を行き来したキリコの世界を堪能…キリコ展の決定版とも言えそうな充実した内容でしたが、再びこの規模のキリコ展が開催されるのはまた10年後になるのでしょうか…。
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