あの青い空のように

限りなく澄んだ青空は、憧れそのものです。

舘野泉さんのピアノコンサート

2013-02-04 22:34:59 | インポート

昨日の午後に、栗原市のけやき会館で、舘野泉さんのピアノコンサートがあり、家族で出かけてきました。

妻は、以前テレビで放映された舘野さんのドキュメンタリー番組を見て、どんなピアニストの方なのかを知っていたようでしたが、私は舘野さんを見るのも、演奏を聴くのも初めてでした。

パンフレットのプロフィールには、次のように紹介されていました。

舘野さんは、1936年東京生まれ。3500回以上の演奏会を行い、世界中の聴衆から熱い支持を得る。2002年に脳出血により右半身が不随となるが、2004年、「左手のピアニスト」として復帰。2010年演奏生活50周年を迎える。NHK大河ドラマ「平清盛」テーマ曲ソリスト。現在、左手ピアノ音楽の集大成「舘野泉フェスティバル~左手の音楽祭」全16回の大プロジェクトに取り組む。ヘルシンキ在住。

コンサートの時間は、間に休憩(15分)をはさんで約2時間。左手だけの演奏とは思えないほど、迫力がありスケールの大きさを感じました。一つ一つの音が心に響いてくるような印象がありました。私にとって特に印象的だったのは、平野一郎作曲の「微笑ノ樹~円空に倣ヘル十一面~(2012) 舘野泉に捧ぐ」でした。12万体を数える仏像(鉈彫りとも称される荒削りの木像群)を彫った円空と重なるように、ピアニストの円空として 舘野さんが仏像を描いているような感じがしました。脳出血から左手のピアニストとして復帰するまでには、言葉にならない葛藤と苦労があったのではないかと思います。その時の思いと 左手だけで表現できる音楽の世界のすばらしさを追究する志とが 一体となった 演奏なのではないかと思いました。

作曲者の平野さんには、円空の姿やその手による彫像の慈しみ深い表情と 舘野さんが左手から創り出す音と姿が 心の中で自然に重なり合ったとのこと。そして、自らもピアノの中に知られず潜む『仏』を掘り起こそうとする 作曲の営みであったと 語っています。

山の仏から始まる曲は、鳥・水・獣・月 の仏の 前奏部、間に里の仏が入り、後半部は花・虫・火・鬼・河の仏で構成され、11面そろってはじめて一体の作品である とのことでした。演奏を聴きながら、それぞれのテーマに沿って山の立ち姿、鳥の風を切る動き、水の流れと波紋、獣の荒々しさ、月の荘厳さといった形でイメージしながら聴いていったのですが、途中でその区切りが分からなくなってしまいました。最後の河のところで、何とかイメージがたどりついたような印象がありましたが、難解な曲でした。

舘野さんが語るには、分からないのが当たり前で何度か聴いていくうちに分かってくるかもしれない、そういうふうに楽しんでもらいたいということでした……。何度か聴くうちに、作曲者がイメージし、舘野さんがピアノで描いた世界の向こうに、11体の仏像が見えてくるのかもしれません。受け止めきれない面がありましたが、心が揺さぶられるような ピアノの紡ぎ出す世界の魅力を 私なりに感じ取ることができました。

アンコールに応えて弾いてくださった曲も印象的でした。舘野さんの表情にも似た 温かく心を包む調べでした。カッチーニ作曲のアベマリアという曲でした。激しさや荒々しさといった迫力ある演奏も魅力的でしたが、それとは一味違う 流れるように 穏やかな ピアノの音色でした。

舘野泉コンサートに参加し、本物の音楽にふれ 本物の芸術家に会うことができたような気がしました。舘野さんが「左手のピアニスト」として今後とも元気にご活躍されますことを 心から願い、一ファンとして 応援していきたいと思っています。