塩
パンをつくるには小麦粉、水の他に塩が必要です。製パンに於ける塩の役割については今までに様々なことが述べられてきましたが、ここでは今まで触れられなかった事柄について述べようと思います。
塩を使うと香りが良く、深い味のパンに仕上がります。通常1.8―2.0 %の塩が適量であるとされています。酵母菌の細胞壁は半透過性で酸素、栄養分をドウの中に吐き出します。それらの働きには水が不可欠です。自然塩は吸湿性があり、保水力があります。塩がドウの中にあると、イーストの内部に蓄えられた水は細胞壁を通して外に出ます。ある程度の水がドウの中にあるとイーストの発酵を促すのですが塩が多いとイーストの活性を減退させるのでドウの体積が減ることになります。
即ち塩の量、及びイースト、温度で発酵をコントロールすることが出来るのです。
塩は間接的にクラストの焼き上がりの色に繋がっています。
小麦粉のデンプンはアミラーゼにより麦芽糖となり、イーストはこれらの糖を発酵のために使います。塩は麦芽糖の消費スピードを遅らせるので、消費されなかった糖がドウの中に残ると、焼き上がりのクラストの色が濃くなります。
「キサントフィル」というカロテノイド系の黄色色素は無漂白の小麦粉(胚乳部)の中にあり、これによって小麦粉は良い香りがしてクリーム色をしています。塩はドウの酸化を遅らせるのでその結果ドウの中にカロテノイドと香りが残ることになります。ドウの中に塩を入れるのはミキシングを始めたときであってミキシングの最後に入れるとクラストの色は白く、香りのないものになります。(これについてはいろいろなご意見があると思います)
お話は変わりますが、これ程大切な塩ですが、かつては高い税金が掛けられていてパンの中に入れて使えるようになったのはごく最近です。
Свадебный-каравай
その名残が今も結婚式などで見られます。
きれいにデコレートしたパンの上に乗っているのは塩。