Annabel's Private Cooking Classあなべるお菓子教室 ~ ” こころ豊かな暮らし ”

あなべるお菓子教室はコロナで終了となりましたが、これからも体に良い食べ物を紹介していくつもりです。どうぞご期待ください。

ダマスクローズ~序章

2020年01月26日 | ダマスクローズをさがして — Ⅰ

バラの小さな赤い芽が、今年は暖かいせいか、去年の暮れ頃から顔をのぞかせています。 

   

今年も気を揉む季節になりました。

暮れにバラの根を半分切り込んで新しい土に変えたので特に薔薇の、新しい芽の出かたが気になります。古い枝も切り込みました。新しい枝が出でくるでしょうか。

バラの木も歳を取ってきたので冬になると葉を落とすようになりました。

それで余計に芽の発育が気になるのです。

 

ところで、かつて皆様に、「ダマスクローズの花には、緩下剤作用があり、それはアスコルビン酸(ビタミンC)のせいだ。」と断言していました。

どうやらそれは誤りだったようです。訂正すると共に謝らないといけません。

 

下剤には様々な薬剤が使われていますが、その内の一つに、腸管内の浸透圧を高めて腸内に水分を呼び込み、その結果便を軟らかくするという、いわゆる「浸透圧性下剤」があります。

 

浸透圧性下剤に含まれる糖類下剤の中にラツクロース(ガラクトースとフルクトースがβ-1,4-グリコシド結合した二糖)、ソルビトール等があります。これらの薬剤の緩下作用の機序についてはここでは省きますが、服用結果として結腸内に水分が溜まり腸内容物が膨張して結腸の蠕動運動が亢進し、排便促進作用が起きるのです。

 

前置きが長くなりました。本題に移ろうと思います。

実は、上で述べた最近よく目にする合成保存料の一つである「ソルビトール又はソルビット」を調べているうちに下のような事実に行き当たりました。専門家の間では周知の、良く知られた、今更ことさらに言うほどのことではないことなのでしょうが-----------。私には衝撃の内容でした。

 

『バラ科の植物は、光合成で作ったデンプンを、篩管を通してその貯蓄場所、即ち実や根、茎、花などに移す際に、デンプンを加水分解してグルコースに変え、更にそれをソルビトールに変えて流すのです。我々がよく耳にするバラ科であるリンゴの「蜜入り」の蜜も実はソルビトールなのです。』

 

葉緑体の中で行われる、光合成とは「光エネルギーで水と空気中の二酸化炭素から炭水化物(ショ糖やデンプン)を合成することだ」とばかり、小学生の頃からの知識のままに過ごしてきました。上の内容は想像すらもしなかったことです。

 

バラの花の中にはデンプンだけでなく、ソルビトールが含まれている可能性が高いようです。その花びらを大量に集めて濃縮したバラ酒やロースベタルジャム、薔薇の花の砂糖漬けであるグルカンドには、特にダマスクローズ系の薔薇の花を使った場合には大量のソルビトールが含まれているのでしょう、食べると想像だにしないくらいの下痢を起こします。

 

ソルビトールの特長を下に挙げておきます。

高保湿性があり、砂糖、水飴とは比較にならないくらいの水分を保持します。また、浸透性が高く、煮物、漬け物などに利用されていますが、これは水分活性が高いせいで、言い換えれば結合水をたくさん作るからです。自由水の割合が少なく、細菌が繁殖するのを妨げているのです。言い換えれば干物を食べていることと同じことです。漬物は干物ではないと思われるかもしれませんがソルビトールを使えば、漬物が干物と同じ状態の水分活性しか持てなくなっているのです。

 

Wikipediaから水分活性について下に引用しておきましたので参考になさって下さい。

 

『(食品を入れた密閉容器内の水蒸気圧(P)とその温度における純水の蒸気圧(PO)の比で定義され、以下の式によって求められる。Aw=P/PO)を低下させるため、水分活性が低いと微生物の繁殖を抑えることができます。

水分活性(英: Water Activity、Aw と略される)は、食品を入れた密閉容器内の水蒸気圧(P)とその温度における純水の蒸気圧(PO)の比で定義され、以下の式によって求められる。

Aw=P/PO

食品によっては水分活性が規格基準に取り入れられているものもある。水分活性を低下させる手法としては一般に以下のような方法が用いられる。

・食品に塩分、糖分などを溶解させる事により自由水の比率を下げる。(塩漬け、砂糖漬け等)

・食品の水分そのものを除去する(乾燥食品、燻製、干物等)』

 

塩漬け、砂糖漬け、乾燥以外に食品を長持ちさせるためにソルビトールを使うことが今は流行っているようです。甘味と保湿が目的の添加ではなく、静菌性を主目的として使っている気がします。

 

因みに、ダマスクローズはエリザベス ブラックウェル( Elizabeth Blackwell;2/3/1821/2/3-5/31/1910、イギリス、ブリストル生まれ。奴隷廃止主義者にしてアメリカ合州国初の女性医師。1974年に出た18セント切手の肖像でもよく知られています。)著による A Curious Herbal の中に取り上げられています。                                       

                                 

ニオイリンドウ、アイリス、イチジク、トマト、サフラン、タバコ、ローズマリー、ヤドリギ、カモミール、コーヒー、毒ニンジン、アロエ、キャトミント、シロケシ、セイントジョンズワルト、イラクサ、タンポポなどの薬草を集めた中にこの花の名を見つけることができました。その中で彼女は、『ダマスクローズは緩下剤の働きがあり、子供や虚弱者に使われていました。現在では医用には用いられてはいませんが、その葉は薄緑色であり、花は淡紅色で夏期には6ヶ月間花を付ける。』と説明しています。

       

            Damask rose

    エリザベス ブラックウェル   ( 2/3/1821-5/31/1910 )

ダマスクローズにはソルビトールが特に多く含まれるようです。