Annabel's Private Cooking Classあなべるお菓子教室 ~ ” こころ豊かな暮らし ”

あなべるお菓子教室はコロナで終了となりましたが、これからも体に良い食べ物を紹介していくつもりです。どうぞご期待ください。

ハーブ

2017年10月23日 | 月桂樹

月桂樹 1 

     

     

とても香りの良い月桂樹が手に入りました。長い間待ち望んでいたニオイがします。体の隅々にまで溶け込むような香りです。安らぎが香りとなって匂っています。

月桂樹について調べてみました。

 

月桂樹(ラウルス・ノビリス: Laurus nobilis、別名 Sweet Bay. True Laurel. Bay. Laurier d'Apollon. Roman Laurel. Noble Laurel. Lorbeer. Laurier Sauce. Daphne. )

「クスノキ科の常緑高木。地中海沿岸原産。雌雄異株。葉にはシネオール ( 芳香成分 ) が含まれ、葉を乾燥させたものをローリエ(フランス語: laurier)、ローレル(英語: laurel)、ベイリーフ(英語: bay leaf)などと呼ぶ。」 

月桂樹の葉に含まれるα-メチレン-γ-ブチロラクトン構造をしたコスチュノリド( costunolide ) などのサポニンであるセスキテルペン類が胃液分泌を亢進し、胃排出能を抑制することで強いアルコール吸収抑制活性を発揮します。

血管を拡張し、唾液の分泌を促進し、食欲の増進や消化を助けます。穏やかな麻酔作用があるので蜂刺され、リューマチ、神経痛などの効果があると言われています。

 

「月桂樹」と言えば古代ギリシャで競技に勝った勝者が頭にのせていた姿を思い出します。ギリシャのペダニウス・ディオスコリデス ( Dioscorides Material Medica, AD 50-60 ) からまず取りかかりました。

 

月桂樹 2

1-49. DAPHNELAION

SUGGESTED: Laurel Oil — Laurus-Alexandrina [Fuchs], Daphne-Alexandrina※1 [Brunfels], Ruscus hypoglossum, [Linnaeus], Ruscus hippoglossum, Uvularia, Baslingua

— Laurel of Caesar [Mabberley], Horse Tongue, Double Tongue

 

月桂樹— スイートベイ、ラウレル、ローマンラウレル ラウリナムは完熟したベイリーフの実 ( 木から落ちそうな、外皮の内側には手で絞れるほどの油を蓄えた) をボイルして作る。 

未熟なオリーブのオイル、イトスギ ( Cypress ※2 ), カヤツリグサ ( juncus odoratus ※32 ) 菖蒲( calamus ※4 )を「ベイリーフ」をボイルした後に入れたり、「ベイリーフの実」を入れることがあります。 

Daphne※1

アポローンに求愛されたダフネが自らの身を月桂樹に変える話は、ギリシヤ神話の中で有名です。ダフネは月桂樹を指します。

 

      

     Apollo and Daphne by Pollaiolo, c. 1470–80 (National Gallery, London) 

                        ダフネの両方の腕と片方の脚はすでに木になっています。


月桂樹 3

Cypress 2

Cupressus sempervirens, Cupressus funebris — Cypress

フランス( Gallia )とイタリアトスカーナ産の ( Hetruria ) 松の軟らかい樹脂。以前はトルコ、イズミルの松から取れる樹脂 ( colophonia resina ) すなわちコロポン ( colophon ) を使っていた。

 

juncus odoratussynonym of Juncus marginatus Rostk. 3

日本でカヤツリグサの仲間で薬効があるとされているのは「カンガレイ;Scirpus triangulatus Roxb.」です。ヨーロッパにあるカヤツリグサは「ヒメカンガレイ;S. mucronatus L.」ですが、これが上で言うカヤツリグサにあたるのか疑問です。

少し調べてみました。少し古い文献ですが。"An Experimental History of The Materia Medica" から。( 本当に古い。AD. 40-90 2カ所に「カヤツリグサ」の記載がありました。

 

1-16. カヤツリグサ ( SCHOINOS )

カヤツリグサはリビア、アラビアにあるが、ナバテア王国 ( パレスチナに存在した古代アラビアの王国 ) のものが一番良い。アラビアのものがそれに次ぐ。リビア産は使えない。

新鮮な、赤い、花の咲いたものを選ぶ。切ると紫色になる。少し焼いて、噛んだり手で揉むとバラの花のような甘い香りがする。花、茎、根を使う。利尿作用、通経作用、鼓腸を改善する。花は飲み物にすると胃痛、激しい吐き気に効果があります。同様に肺、肝、腎臓にも効果があります。解毒剤と一緒に使いますが、根は収斂作用がきついので胃がキリキリとする時に使います。水腫、痙攣には1ティースプーンを、時には同量のペッパーを一緒に与えます。煎じて腰湯にすると外陰部の炎症に効果があります。

Babylonian juncus 又は teuchitis と呼ばれることがあります。

 

4-52. カヤツリグサ

Schoenus incanus — Bog Rush

Schoenus ferrugineous — Rusty Bog Rush

Shoenus mucronatus — Clustered Bog Rush

Juncus conglomeratusj uncus effusus — Rushes, Sweet Rushes

Juncus arabicus — Rush, Sea Rush

Juncus acutus — Sharp Rush, Dutch Rush

 

二種類あります。一つはsmooth juncus, あとの一つはsharp juncusです。

実に注目すれば、2つのタイプに分けることができます。一つは実のないタイプ、後の一つは丸く、黒い実のある-しかし、茎は肉厚なものです。

3つ目のタイプは―更に肉厚で上の2つよりもザラザラとした- holoschoenosと呼ばれているものです。これは上のものと似た種を付けます。種はどれも(干して飲み物の中に入れて薄めたワインと一緒に飲みます)下痢、下血、利尿し対して効果があります。又、頭痛

煮も効果があり、根の近くの柔らかい葉は毒グモに刺されたときに使います。

エチオピアカヤツリグサの種は眠気を誘います。又の名をjuncus laevis, oxypternos又は supercilium solisと言い、ローマ人は juncus marinus あるいは juncus manual Africans, chuduaと言います。

 

色々調べましたが「カヤツリグサ」を特定することができませんでした。


月桂樹 4

calamus ※4

「菖蒲 ( Calamus aromaticus ) はインド産の赤-黄色で節が太く割ると小さいピースになるものが一番良い。茎は繊維質で白っぽく口にすると粘液質で渋く、刺激がある」とThe Materia Medicaに記載がある通り、原産地は南中国から近東。 

旧約聖書にも記載があり、古くから使われていたことが分かります。

雅歌

4:14ナルド、サフラン、菖蒲、肉桂、
さまざまの乳香の木、
没薬、ろかい、およびすべての尊い香料である。

 

イザヤ書

43:24あなたは金を出して、
わたしのために菖蒲を買わず、
犠牲の脂肪を供えて、わたしを飽かせず、
かえって、あなたの罪の重荷をわたしに負わせ、
あなたの不義をもって、わたしを煩わせた。

 

名称は国によって次のように変化します。

Name: Acórus cálamus L. ( Acorus calamus L. )

Engl.: calamus, European sweet flag, sweet flag, cinnamon sedge, flagroot, gladdon, myrtle flag, myrtle grass, myrtle sedge, sweet cane, sweet myrtle, sweet root, sweet rush, sweet sedge.
Deu.: Echter Kalmus, Deutscher Ingwer, Europäischer Kalmus, Kalamus, Kalmus, Magenwurzel.
Suom.: rohtokalmojuuri, kalmanjuuri, kalmojuuri.
Sven.: kalmus, kalmusrot.
Fran.: acore roseau, acore calame, acore odorant, acore vrai, acorus aromatique, belle-angélique, radote, roseau odorant.
Ital.: calamo aromatico

 

       

絵はhttps://www.henriettes-herb.com/galleries/photos/a/ac/acorus-calamus-3.html から 

https://www.henriettes-herb.com/eclectic/madaus/acorus.html には菖蒲に関する、ヨーロッパとのかかわりが詳しく書かれています。参考にしてください。 

( こういったレシピをみると今更ながらに、当時の交易範囲や当時の人達の世界観が今以上に広いことに驚かされます。インドやアジアにまでも手を広げていた商人、貿易商などごく一部分の人達だけだったのでしょうが、人種、地域にこだわりのない広い心が素晴らしいと思います。国という国境が生み出す弊害が今はとても大きいようです。)

 

夏の終わりから秋にかけて花をつけるハーブは、ちょうど今咲いています。あと一回くらいで、本項をいったん切り上げることにします。「匂いゼラニウム」と「ステビア」を取り上げようと思っています。

 

月桂樹 5

ベイリーフに戻ります。

     

古代ギリシャ、ローマの書物の中には、Alexandrian Laurel, Cherry Laurel, Dwarf Laurel, Roman Laurel, Spurge Laurel の名がありRoman Laurel以外のローレルは今もネット画像上で見ることが出来ます。

上の絵は1350年代に流行った「健康全書」に描かれた「ベイリーフ」です。

ベイリーフの葉に含まれるミルセン※は、香水として使われています。主にハエ、蛾、ネズミなどの忌避剤として、他の香料、メントール、シトラール、シトロネロール、シトロネラール、ゲラニオール、ネロール、リナロールを製造する際の原料としても使われています。又、抗菌,抗黴、抗炎症、利尿、収斂作用があります。

栄養学的にベイリーフはミネラル、ビタミンに富み、ベイリーフ100g中に鉄43㎎、マグネシウム8.167㎎、ビタミンB6 1.74㎎、カルシウム834mg、総繊維26.3g、炭水化物74.97g、ビタミンC 46.5㎎、銅0.416㎎、ビタミンB9 180µg、亜鉛3.7㎎が含まれています。 

※ミルセン (myrcene)

天然に存在する有機化合物でローリエ、バーベナ、キャラウェイ、フェンネル、タラゴン、イノンド、オウシュウヨモギ、セイヨウトウキ、ミルキア属、マツ属、アモムム属(ショウガ科)、ハッカ属、アキギリ属、カラハナソウ属、アサ属の植物などに含まれます。

 

インドの料理を作るとき、特にビリヤニには欠かせないハーブです。ベイリーフと呼ばれていますが、実は、クスノキ科ニッケイ属の植物で、英語ではインディアン・ベイ・リーフ(Indian Bay Leaf)、ヒンズー語でテージバッタ(Tejpatta)、マラヤーラム語でシナモンアム・タマラ(Cinnamomum Tamala)、テルグ語でビリヤニ・アーク(Biryani Aaku)、またはバグハラク(Bagharakku)というハーブです。

 

テージバッタは、ネパールから入って来て、ヒンズー語となった言葉です。
インドでは乾燥させて内臓疾患に、スパイシーな煮込み料理や炒め料理に香り付けに使われます。北インド、ネパール、ブータンでは、料理、お茶にします。

英語名のインディアン・ベイ・リーフから、この葉がローリエ(ベイ・リーフ)の仲間だと思われていますが、葉の大きさと厚みがローリエとは全く異なります。下欄の3.がそれにあたります。

 

ベイリーフと呼ばれている5種を取り上げました。

1. Bay laurel (Laurus nobilis lauraceae)

 http://florawww.eeb.uconn.edu/198500843.html から

    

 

2. California Bay Leaf (Umbellularia californica)

 http://www.laspilitas.com/nature-of-california/plants/682--umbellularia-californica から

    

 

3. Indian Bay Leaf (Cinnamomum tamala, Lauraceae)

 https://www.amazon.in/Live-Indian-Plant-Tejpatta-Spice/dp/B01N42C40L  から

    

 

4. Indonesian Bay Leaf or Indonesian laurel (Salam leaf, Syzgium polyanthum, Myrtaceae)

 https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Syzy_polyan_070404-3398_sbrg.jpg から

    

 

5. West Indian Bay Leaf (Pimenta racemosa, Myrtaceae)

http://herbaria-old.plants.ox.ac.uk/vfh/image/index.php?item=1326&gazetteer=5991 から  

 

  

 

月桂樹 6

インディアン・ベイリーフについてもう少し詳しく調べました。

https://www.healthbenefittimes.com/indian-bay-leaf/ から

    

絵はhttps://www.ayurtimes.com/tejpata-tej-patta-tejpat-indian-bay-leaf-cinnamomum-tamala/ から 

インディアン・ベイリーフ(Cinnamomum tamala)は2-10mになる常緑樹で熱帯、亜熱帯地方の900-2500mのヒマラヤ高地、インド北東部メガラヤ(Meghalaya)州のカーシ丘陵(Khasi hills)、はインド、タミル・ナードゥ州のニルギリ丘陵(nilgiri hills)、シッキム州の麓で見られます。インド、ネパール、ブータン原産です。

インドベイリーフは3つにわけることができます。楕円形の、先のとがった、滑らかで固い葉のベイリーフがあります。

ベイリーフはインド、ネパール、ブータン料理には欠かせないものです。ムグライ料理分けてもビニヤニやコルマには必要です。ローストして挽いたベイリーフをスパイスに混ぜたものはガラムマサラと呼ばれています。