発酵-ベータアミラーゼ
一方、β-アミラーゼ(β-amylase)は、澱粉のα-1,4グルコシド結合を非還元末端からエキソ型に二糖単位で加水分解し、βアノマーのマルトースを生成する反転型の加水分解酵素です。( 至適pHは5.0、至適温度は40~60℃ ) 従って、澱粉の枝分かれ構造(α-1,6グルコシド結合)の手前でその作用は止まり、高分子のβ-リミットデキストリンが残ります。
(糖鎖がグルコシッド結合をした末端からグルコースを2個分ずつ、順に加水分解していく酵素です。)
β-アミラーゼによるアミロペクチン(多数のα-グルコース分子がα1→4結合及びα1→6結合によって重合 )の分解限度は55-60%(アミロースのβ-アミラーゼ分解限度は70-96%)です。
デンプンは75~80%のアミロペクチンと20~25%のアミロースで構成されているので、β-アミラーゼを単独で澱粉に作用させると、マルトースの収率は40%前後ですが、先に述べたα-アミラーゼの働きを借りれば、(α-アミラーゼで澱粉を液化した後にβ-アミラーゼを作用させると)マルトース含量が約55%のシロップが得られます。
先に書いたように、デンプンは直鎖状のアミロースと、枝分かれしたアミロペクチンが共存しています。アミロースは、グルコース※がα1-4結合で連なった鎖状分子で、グルコース6個で1巻きのらせん構造をしています。アミロースはα1-6結合による分岐をほとんど持ちません。(α1-6結合を持つものは、中間体と呼びます。)アミロペクチンは、平均でグルコース約25個に1個の割合でα1-6結合による分枝構造をもち、20から25個からなり、球状をしています。(直鎖部分の長さは18〜24残基、分岐間は5〜8残基の間隔がある)。
※ここでグルコースと書いたのはα-とβ-が混在しているからで、次のような配分になっています。
水溶液中でグルコースは、次の3種類の構造で一定の割合で存在する平衡状態となっています。
水中において平衡状態に達したとき、グルコースはα-グルコース(α-ピラノース、38%、上図左)とβ-グルコース(β-ピラノース、62%、上図右)の形で存在, 鎖状構造は0.01%程度です。
水中において平衡状態に達したとき、グルコースはα-グルコース(α-ピラノース、38%、上図左)とβ-グルコース(β-ピラノース、62%、上図右)の形で存在(鎖状構造は0.01%程度)しています。
上で示したグルコースは、α-D-グルコースで、この鏡面異性体にα-L-グルコースがあります。一体どういうものなのか。その存在理由は?それと上の式で気になるのが「平衡状態」に達したときのαとβの存在%の違いです。α-グルコースが38%、β-グルコースが62%と言うのですがその差は何に由来するのか。これらの疑問はしばし置いて、ここらで本来の大問題である「パン」に戻ろうと思います。