Annabel's Private Cooking Classあなべるお菓子教室 ~ ” こころ豊かな暮らし ”

あなべるお菓子教室はコロナで終了となりましたが、これからも体に良い食べ物を紹介していくつもりです。どうぞご期待ください。

パセリ

2021年06月30日 | ハーブ

              2  パセリ

 

          世の中に顔を出したばかりのイタリアンパセリ 2021/5/16

 

第二回目はパセリを取り上げました。この二年草のハーブは、世界中で一番たくさん使われているハーブでしょう。それだけに改良も盛んにされて、種類が多くなりました。イタリアンパセリ(平らな葉)、カーリーパセリ(巻き毛の葉)、ハンブルクパセリ(根パセリ)の3つの品種があります。

ハッキリとはわかりませんが、「葉の縮れたパセリは1100年ほど前に作られたモノ、根パセリは約700年以上前に改良されたモノ」と言われています。興味深いのはカーリーパセリを作り出した理由です。

当時のヨーロッパは、今も一部にはそうですが、暗殺事例が多く、「ちょっとお食事にお越しになりませんか」と誘われて・・・、そのまま行きっきりになる例は少なくなかった時代です。一角獣の角を部屋の隅において、毒を盛った料理がその前を通ると、角から血が流れ出る、或いは黒く変色すると半ば信じられていたことから、毒殺目的で招待したのではないことを誇示するのですが、何故か政敵とおぼしき人物だけが急病で亡くなるのです。何が原因で死んだのか、わからない様に政敵を消すことが何時の時代でも政治家には重要なのでしょう。

ヘムロック(ソクラテスを毒殺した、あのドクニンジン)をよく使ったようです。

ドクニンジンは強烈な神経毒です。ドクニンジンに含まれるコニインの致死量は60~150mg/kgです。体重60kgの人間が660gのドクニンジンを食べると30分-1時間で呼吸筋が麻痺して死に至ります。そんなには食べられないだろうとお考えの貴方! ワインをたらふく飲ませて調子に乗せれば、600gの人参なんてどこかに入るモノです。半分位食べさせて苦しんでいるところを、テーブルの上のフォークかナイフで「グサッ」とやる手もあります。(実際は致死量の1/100の量も食べるとその後1時間くらいで呼吸困難等の中毒症状が出ますので暗殺計画は想像するよりも容易だったでしょう)

      

                     

何はともあれ、これがヘムロックで、非常にパセリに似ています。少々臭うので使うときには覚られないように気を付けねばなりませんが。

毒殺時代から時間が進んで料理を別の、「外交手段」として使い始めると、パセリの葉の形が邪魔になってきます。ヘムロックでないことを見せるために極端に葉の縮れたパセリが必要となったのです。

  

これは種を蒔いてから2年目の春のイタリアンパセリです。葉がフラットではなくややカールしているのが特徴です。この後、猛スピードで花枝を延ばし、花を咲かせ、実をならせます。葉は小さく硬くなります。食べるなら今の内です。

 

それでは安心して食べられるパセリのお話を始めることにしましょう。

 

 

 

     一般名称           学名           生育地             

      パセリ      Petroselinum crisp       地中海地域                  

 

             Petroselinum crispum (パセリ) 2021/6/11

イタリアンパセリはサルデーニャ或いは地中海東部が原産地です。鉢植えにすると出窓でも簡単に育てることが出来ます。他のハーブと合わせて、ブーケガルニやフィーヌゼルブを作って料理の風味を深めることが出来ます。

 

 

 

 

   

   

 

植物名ペトロセリナムは、ギリシャ語で石を意味するペトロに由来しています。パセリがギリシャの岩だらけの丘の中腹で成長していたために付けられた名前で、「パセリ:parsley」という言葉は、ラテン語の「petroselinon:ロック(petro)パセリ(selinon)」又は、パセリ オレオセリノン(parsley  Oreoselinon)に由来します。古英語のpeterisillieが訛ってpersely → parselyとなりました。ディオスコリデスがセリノンと呼ばれていた植物(セロリとパセリ)を2つに分別しました。もう一方のセロリはギリシャ語・ラテン語のセリノン (selinon) からイタリア語のセルラリ (sereli) となり、フランス語のセルリ (sereri) が生まれ、英語名のセロリになりました。パセリの学名の一部分に「セロリ:selinon」が残るのはそのせいです。

 

プリニウスが『パセリは死者を称える為に葬儀に供えられた』と述べているように、古代ギリシャ人は、パセリはギリシャの英雄アルケモラスが蛇に食べられたときに血がこぼれたところに現れたと言い伝え、パセリで墓に捧げるための花輪を作りました。初期のギリシャ人は、月桂樹がオリンピック選手を称えたのと同じように、ネメナとイスミアのスポーツゲームの勝者にパセリの冠を作りました。ギリシャ人は忘却と死の象徴として崇めたため、料理にパセリが使われるようになったのはローマ時代になってからです。リンネはサルデーニャで紀元前3世紀頃に栽培していたと考えていたようですが、パセリは何世紀にもわたって栽培されてきたため、その起源を特定することは困難でし、私たちが今日見ているパセリは、本来の姿とは全く違っている可能性すらあります。

 

   主な有効成分     アピオール     ルテオリン       ピネン              

              抗菌作用      抗酸化作用       抗炎症性                                                          

パセリは、フラボノイドと抗酸化物質、特にルテオリン、アピゲニン、葉酸、ビタミンK、ビタミンC、ビタミンAに富んでいます。

香りは精油成分のアピオール、ミリスティシン、β-ピネンによるものです。

アピオールには整腸効果がありますが、過度に摂取すると子宮収縮が起こります。かつては妊娠中絶、月経不順治療に使われました。

ピネンには消臭の効果が期待できますが、モノテンペンに属し、揮発性が高いため、皮膚に直接塗ると光過敏性の皮膚炎を起こす可能性があります。

アピオール、ミリスティシンはフェノールエーテル類ですから、強い消毒作用、抗菌作用、抗ウイルス作用、抗痙攣作用が特徴ですが、大量に長期間使用すると肝毒性、皮膚刺激性を示すので、短期・低濃度での使用が肝要です。(精油を利用することがなければ問題はありません。)

β-ピネンはモノテルペンで水、アルコールに不溶で樹脂様の芳香があります。

現在判明しているパセリの有効成分と作用機序はこんなところです。

 

     

 

プリニウスが残した言葉をもう少しご紹介しておきましょう。

(ラテン語の原書から英語の翻訳書に辿り着くまでにいくつかの誤訳、錯誤、過誤、意訳を経てきたのでしょう。今の我々には理解できない箇所があります。)

 

『パセリは世界中で人気があります。その小枝は国中のミルクの中で泳いでいるし、ソースではそれ自体でも人気がある。さらに、温かい煎じ薬と蜂蜜を一緒に目に塗ると効く。パセリだけを、または精白丸麦やパンと一緒に充血した手足に塗ると、素晴らしく効く。魚も、池で病気になっている場合は、新鮮なパセリによって蘇生する。

しかし、地面に生えている植物の中で、パセリ程、性別によって学者の間でさまざまな意見を引き起こしている植物はない。

クリュシッポスは、女性のパセリは硬くて巻き毛の葉、茎は太く鋭くて辛い熱い味があると言い、ディオニュシウスは、黒くて、根が短く、地虫が付いていると言う。両者は、パセリは食品に分類されるべきモノではないと共に同じている。パセリは死者を讃える葬式に捧げられているため、食べることは完全に罪であり、視力にも悪影響を及ぼす。

女性のパセリの茎は幼虫を繁殖させるため、男性であれ女性であれ、それを食べた者は子供が出来なくなる。事実、乳母がパセリを食べると乳飲み子はてんかんになると言われている。

しかし、男性の植物は害が少ないと言われている。これが、パセリが完全にタブーな植物に分類されない理由です。

パセリの葉を塗ると、胸の痛みをやわらげる。パセリを水の中に入れて沸騰させると、水が腐らない。ワインに加えられた根のジュースは腰痛を和らげ、同じ液体を耳に落とすと聴力がよくなる。

種子は利尿剤であり、月経と出産を助け、種子の煎じ薬を当てるとあざを自然な色に戻す。パセリを卵白と一緒に塗ったり、水で煮て飲むと腎臓のトラブルを、冷水の中で潰して口内の潰瘍を手当てします。種を入れたワイン、または根を入れた古いワインは、膀胱内の石を砕いてくれる。種子は白ワインの中に入れて黄疸患者に与える。』

 

木を除いて、「男」、「女」と称される植物はそうあるものではありません。今まで草本に男、女の区別を見たのは、マンドレイク(Mandrake)くらいです。ここは、「女性のパセリ」、「男性のパセリ」を「女性がパセリを食べると」、「男性がパセリを食べると」に読み替えると納得がいくのですが。この時代特有の言い回し、或いは何らかの理由があったのでしょう。そのまま訳しておきました。いずれ解ることです。 

 

 

                パセリの花  2021/5/21

特徴的な花序(散形花序)を見せるのがセリ科の特徴です。セリ科は、古くはラテン語Umbelliferaeの代替名として(散形科または傘形科)と呼ばれていました。枝の一箇所から花を支える花柄が同じ長さで出てその先に多数の花が放射状に付いています。

 

パセリの根は、消化器疾患、気管支炎、尿路症に古くから薬用に使用されてきました。ヒポクラテスの時代から、パセリは、一般的な処方としての強壮剤、解毒剤、抗リウマチ剤として、腎臓結石や膀胱結石を和らげるための治療薬として使用されてきました。ロシアでは今も、陣痛促進剤と一緒に子宮収縮を刺激するために、パセリジュースが与えられます。ジュースは歯痛の治療、ヘアリンス、乾燥肌のフェイシャルスチームにも使用されてきました。

パセリの根は、尿路の調子を整え、感染の可能性を減らし、痛みを伴う月経を軽減し、血圧を下げ、また、過剰な粘液を乾燥させることによって喘息、アレルギー、気管支炎を改善することに使われてきました。

 

ギリシャ時代は、パセリの葉、根、種を使い分けてきました。水に溶かしたり、アルコールに溶かしたり、直接塗ったりと様々な活用法を駆使しています。

現代科学はこれらの主張の多くを確認していますが、National Library of Medicine (NIH) が 2019に発表しているように、未だギリシャ時代の経験が現代の科学を上回っています。下に発表の一部を引用しました。

『今日まで、α-ピネンとβ-ピネンの体内でのバイオアベイラビリティー(生物学的利用能; 投与された薬物が、どれだけ全身循環血中に到達し作用するかの指標)は研究されていませんが、これらのテルペンに抗菌性、抗癌性、抗炎症性、および抗アレルギー性があることは明らかです。臨床研究もほとんど行われていません。この分野の知識を深める努力が必要です。』

 

 

  栽培               4-5月、9-10月 (15-20℃) に種を蒔く                             

パセリは日当りのよい場所~半日陰程度の水はけのよい湿った土壌でよく育ちます。光が強すぎると葉が固くなります。パセリの生育適温は15~20℃です。耐寒性・耐暑性に優れているので、1年を通して栽培可能です。二年草なので、4~5月と、9~10月に種を2回播くと、新鮮な葉がいつでも収穫できます。当然のことながら、一年目のパセリには種は付きませんし、二年目のパセリから葉を収穫することは出来ません。

 

プリニウスは播種から発芽までの期間を次のように述べています。

『家庭菜園の植物の中で最も成長が早いのは、バジル、ブライトゥ、セイヨウアブラナ、ロケットです。これらは、種を蒔いてから2日後に芽をだします。

ディルは3日で芽を出し、レタスは4日、大根9日、キュウリ5日、ひょうたん6日 —キュウリはそれよりも早い—クレスとマスタードは4日、サマービートは5日、ウインタービートは9日、オラージュは7日、タマネギは13日または19日、ロングオニオンは9日または11日、コリアンダーは発芽が遅く、クニラとワイルドマジョラムは30日以上経っても芽を出さない。最も時間のかかるのはパセリです。早くても39日かかり、ほとんどの場合49日しないと芽を出さない。

種子の古さにも依るが、ネギ、ロングオニオン、キュウリ、ひょうたんは新しい種程早く芽が出るが、パセリ、ビート、クレス、クニラ、ワイルドマジョラム、コリアンダーは古い種子ほど早く成長する。

ビートシードには、すべての種が同じ年に発芽するのではなく、翌年にのみ発芽するものもあれば、2年後のものもあるという奇妙なことがおこります。その結果、一定の量の種しか作物を生み出しません。いくつかの植物は、植えた年にのみ種子をつくるが、パセリ、リーキ、ロングオニオンなどは、一度播種されると繁殖力を保持したまま数年間生えています。』

 

紀元前100年頃に食べていた野菜の種類、種の保管方法と扱い方、発芽と播種の時期などの知識とその混乱ぶりが窺える内容です。野菜の殖やし方には手こずっているようです。しかし、野菜の種類の多さとその選択は自由で素晴らしいと思われませんか。

 

 

  キッチンカウンターから       大量のパセリを詰め込んだトルタ                 

Torta Di Prezzemolo(トルタ ディ プレッツェモロ)をご紹介します。最初にこのレシピを見たときは、本当にこんなに沢山のパセリを入れたトルテがあって良いものかと目を疑いました。友人のギリシャ人夫人から「こんなお菓子がありますよ。」と教えて頂いたレシピです。彼女が書いたレシピをそのまま御紹介しておきます。 

 

  

一人でトルタ1個を食べてはいけません。パセリだからと侮るととんでもないことになります。ギリシャにはパセリで作るソースもあります。知らないうちに沢山食べることになります。要注意です。美味しいモノには気を付けなければなりません。

 

  

 

  

 

 

プリニウスが言うようにパセリは料理の最初に加え、最後に細かく刻んで振りかけると言うのが一般的な使い方ですが、ソースや詰め物、スープや飾り物にも利用できます。殆どの料理に合いますし、料理を召し上がった後の口臭も消してくれます。料理の作例を3つしか取り上げませんでしたが、是非一度パセリを普段の料理に使ってみてください。パセリの汎用性に驚かれるに違いありません。それに料理の味が一段と上がったことにびっくりされるに違いありません。

 

パセリは他のハーブと違って、比較的多い量で販売されています。一度に使い切れないのが普通です。水に差しても芽は出ません。綺麗に洗って水気を切り、保存袋に入れて冷凍するに限ります。手で揉むと細かく割れて使いやすい大きさになります。

                   

 

 


レモンバーム

2021年06月10日 | ハーブ

 

                1    レモンバーム

 

                              レモンバーム  2021/3

 

ハーブを愉しんでおられますか ?

恐らく(貴方のハーブは)、「庭の片隅でひっそりと命を細々とつないでいる状態」なのではないでしょうか。シソや三つ葉、ショウガに山椒、ネギや大葉など日本にもハーブはたくさんあるのだけれど、ヨーロッパのハーブは今ひとつ馴染みがなくてという方が多いのではないでしょうか。「ホームセンターで見かけたから、お花屋さんで、ムードに押されて何となく買ってきたのだけれど。どう使って良いかわから無くて、お茶で飲むのが精一杯。」という方が殆どなのではないでしょうか。

 

(いわゆるヨーロッパの)ハーブは、これまでヨーロッパ人は4000年余りの間利用してきましたが、上手に利用してきたのは、紀元前約3000年から紀元後400年の間と、その後の、紀元後1900年から現在までの約120年間です。そこで古代ギリシャ時代と、古代ローマ時代に(経験に基づいて)書かれた文献、それにここ120年の間に得た科学知識、更に私が毎日の生活の中で経験している「ハーブの使い方」をご紹介していこうと思います。写真はいずれも私が小さな庭で育てているハーブをカメラに納めたモノです。

 

第一回は、メリッサ(別名;レモンバーム、バーム、上の写真)を取り上げました。冬の寒さが少し緩んで、最初に目に触れるのがこのハーブです。春から暑い夏の間を経て、秋に入る手前までの長い期間毎年お世話になるハーブです。ハーブティーにしてたくさん飲んでも副作用のないハーブで、安心して愉しむことが出来ます。木陰の、光りがチラチラ差し込む場所を好む植物で寒さにも強く育てやすいハーブです。部屋の中でも丈夫に育ってくれます。

 

(書き溜めが無いので、一つの記事をアップするのに3~4週間位かかりそうです。時間を見定めてご訪問下さい。一回のアップで一つのハーブのお話が完結するようにしました。その方が読みやすいでしょう。)

 

3月に地面を這うように茂っていたメリッサも今ではこんなに背が伸びました。

混み合ってくると蒸れないように間引くように刈り取ります。

それでは、始めることにしましょう。 

 

 

 

   一般名称         学名            生育地               

   レモンバーム    Melissa officinalis L.    南ヨーロッパ山岳地帯            


             Melissa officinalis L.( レモンバーム) 2021/3/28

レモンバームは気楽に楽しめるハーブの一つです。寒さにも強く栽培も簡単。この季節の葉は硬く表面にこわばった様な凹凸が見えます。

 

別名 Bee Balm, Balm Leaf, Melissa。古くは、メリテオン(melitteon)、メリフィロン(meliphyllon)、エリスラ(erythra)、またはテメレ(temele)とも呼ばれました。 ローマ時代はアピアストラム(apiastrum)、シトラゴ(citrago,)、そしてガリア人は、メリシモリオン(merisimorion)と名付けていました。古来、人々に愛されたのでしょう。この中には今の分類方法では他の植物とみなされるものもありますが、多くの呼称が残っています。

 

 

           

 

生息地; 南ヨーロッパ山岳地帯原産。後、イングランド南部に帰化。

 

高さは1m程のシソ科(Mint family)の多年草で、茎は正方形で枝分かれして、擦ると香りのよいレモンに似た香りを放ちます。葉は卵形またはハート型で、白または黄色がかった花は、6月から10月に咲きます。葉は冬に枯れますが根は残り、翌年の初春に芽を出します。”Melissa” とはギリシャ語で「蜜蜂」の意で、葉を擦ると蜜蜂が集まってきます。レモンバームの花に蜂が集まる事はありません。

 

った魔女の箒で、群れは最も簡単に制御できる。ハチ、クモやサソリなどの昆虫の刺傷に、ワインの中に入れると鼓腸に効果がある。葉は塩と一緒に投与すると、肛門部分に感染した腺病の痛みに効く。ボイルした汁は月経を促進し、炎症と痛みを取る。関節の痛み、慢性の下痢、腹部、喘息、脾臓、胸部にある潰瘍に効果がある。汁を蜂蜜と混ぜた軟膏は目の治療に特に効果がある。」と言い、ディオスコリデスは「葉の煎じ薬は、サソリに触れた或いはクモや犬に噛まれた人に適している。」と述べています。古く、レモンピール、ナツメグ、アンジェリカの根と組み合わせたバームエッセンスは、神経痛や神経痛に対して非常に有用であるとされ、「カルメル会の水」という名前で高い評価を得ていました。( Eau de mélisse des Carmes Boyerはいまも薬局で手に入れることが出来ます。)

古代ギリシャ・ローマの文献はその内容の幅は広く、含蓄に富みます、ここに現在の知見を加えて、完璧とまではいかなくても、日々の生活に活用できる情報に集約してみようと思います。  

 

 主な有効成分   モノテンペル  ロスマリン酸     ケルセチン             

           抗菌性       抗酸化作用      抗炎症作用                                      

レモンバームには精油成分(0.2 % 以下;シトラ―ル、シトロネラ―ル、ネラ―ル、ゲラニオール、リナロールなど)、ポリフェノール(ロスマリン酸、ケルセチン、ルテオリン)、タンニン、コハク酸、ウルソール酸、コーヒー酸、クロロゲン酸、リソスペルミン酸などが含まれています。

シトラ―ル、シトロネラ―ル、ネラ―ル、ゲラニオールは、テルペン系のアルデヒドですので抗ヒスタミン作用、抗真菌作用、抗菌作用、抗炎症作用、抗ウイルス作用、昆虫忌避作用があります。シトロネラールの精油を単独使用すると皮膚刺激性が強く、アレルギー反応を起こす事がありますが、レモンバームの葉を使う限りでは問題はありません。

 

レモンバームに含まれているフラボノイドに抗アレルギー性、抗喘息性、抗炎症性、抗酸化性、および抗新生物性、抗腫瘍性が期待できます。特にケルセチンは、関節炎やアレルギーの抗炎症剤として広く使用され、肝細胞への損傷を抑制するのに特に役立つ抗酸化剤です。ルテオリンは、植物によく見られるもう1つのフラボノイドで、抗炎症作用と抗菌作用がある一方、ヨーロッパで最初に使用された黄色の衣類用染料の1つでした。

 

プウリニウスとディオスコリデスは、創傷治癒、腫れ、犬の咬傷、虫刺され、過食にレモンバームを推奨していますが、これは、レモンバームに含まれるタンニンの抗菌性、防腐性、および駆風性を利用したものです。タンニンの抗菌性、防腐性、強力な抗ウイルス性は、特に下痢や赤痢の場合の消化器系のバランスを取ってくれます。

セスキテルペンは揮発性のエッセンシャルオイルを多く含み、苦い成分を含んでいます。セスキテルペン、モノテルペンは、非常に高い抗菌性および抗真菌性があります。R.C. Wrenは「Potter’s New Cyclopedia of Botanical Drugs and Preparations」で、「レモンバームは解熱作用と解熱作用があるため、冷やしたお茶は熱のある患者に心地よさをもたらす。」と述べています。著者は、抗菌性のあるレモンバームが感染症患者に効果があることを示唆しています。

ウィリアム ミッチェル博士は、著書「Plant Medicine in Practice」で、『レモンバームに含まれる芳香性エッセンシャルオイルは鎮静剤、抗けいれん剤、軽度の制酸剤の働きがある。』と述べています。モノテルペンには、駆風性、消化性、鎮静性、鎮痙性、抗菌性があるからです。ゲラニオール、リナロールはモノテルペンアルコールで殺菌、抗菌、抗ウイルス作用があり、毒性が無く皮膚刺激の原因にならない為、安心して使えます。

 

トリテルペノイドは、心臓の作用に影響を与える植物心臓配糖体で、ステロイドやフィトステロイドが存在するため、体にホルモン/ステロイド効果を及ぼします。一部のトリテルペノイド化合物はサポニンとして知られ、血液を薄くするのに役立ち、抗菌性もあります。

 

メリッサには、ロスマリン酸が含まれ抗ヘルペスウイルス剤の1つであると考えられています。ジェームズ デューク博士は、彼の著書「The Green Pharmacy」で、単純ヘルペスウイルスは口唇ヘルペスと性器ヘルペスの痛みとして現れると述べています。水痘・帯状疱疹ウイルスは帯状疱疹を起こすウイルスで、レモン香油には、両方のウイルスを除去し治癒する能力があります。ロスマリン酸は抗炎症作用があり、非常に強力な抗酸化剤であることが証明されています。ビタミンE(α-トコフェロール)とビタミンCの抗酸化作用の10倍の効果があります。

 

レモンバームに含まれるコーヒー酸にも抗ウイルス作用があり、単純ヘルペスの治療にも効果的で、レモンバームの葉から分離されたコーヒー酸が癌細胞のタンパク質生合成を阻害するため抗腫瘍活性を示します

 

レモンバームの薬効を要約すると、次のようになります。

抗酸化剤、抗炎症剤、鎮痙剤、神経質、抗真菌剤、抗ウイルス剤、発汗剤、肝臓剤、抗菌剤、抗腫瘍剤、抗うつ剤、抗菌剤、抗甲状腺剤、鎮静剤、駆風薬。

 

※ 注意 いずれの薬効もレモンバームを外用して得られる効用で、経口摂取して上の効果が得られることはありません。

 

レモンバーム(メリッサ)を使用する上で注意点が今後付け加えられるとするならば、プリニウスが、『蜂の巣をバームで擦ると、ミツバチは飛び去ることはない。この植物で作られた魔女の箒で、群れは最も簡単に制御できる。』と述べていた「蜜蜂を制御する何か」に対してでしょう。人間が大量に摂った時、弊害が起こるかも知れません。メリッサは、自身が踏みつけられたか、刈られたか、何かの危機に際して香りを放出したのです。人間の為に香りを用意しているのでは無いことを承知してメリッサの香りを利用することが大切です。

(ミツバチは体のナサノフ腺からゲラニオールを分泌して蜜を持っている花とミツバチの巣の入口を標識することが知られています。レモンバームにはゲラニオールが含まれていることから「何か」はゲラニオールではとも思われますが、詳しくはわかっていません。)ゲラニオールに敏感な人もいるため、香水への使用は規制されています。大量に浴びるとアレルギー性皮膚反応、眠気又はめまいを起こすおそれがあります。

 

     

 

  

5月になると、木漏れ日の下で気持ちよさそうに大きく枝を伸ばします。

 

 栽培        春または秋に種子、挿し木、または根の分割                

定期的に株を切り戻すと、そこから枝分かれして新しい葉が出てくるので、シーズン中にたくさんの葉を収穫することができます。また、切り戻しは暑い期間の株の蒸れ対策にもなります。レモンバームは長い間収穫できますが、花を咲かせると香りが落ちます。葉を収穫するために育てている場合は、花が咲く前に切り戻しをします。レモンバームは寒さに強く、関東以南の地域では防寒対策はほとんど必要ありません。挿し木は、水に挿す部分の下葉を取り除いて水に挿しておくと発根します。日光をさほど必要としないので室内でも栽培出来る利点があります。

HMPCは、下記の用量内において、その長年の使用に基づいて、「メリッサの葉はストレスの軽度の症状の緩和と睡眠を助けるために使用できる、又、鼓腸や軽度の消化器疾患の症状の治療にも使用できる。」と結論付けています。   (14 May 2013)

メリッサを使う上での注意事項は次の通りです。

 

メリッサは、大人と12歳以上の青年、成人、高齢者に使用すること。

ハーブティーとしてのハーブ量:1.5〜4.5gから、1日3回。

液体抽出物(45%エタノールで1:1):2〜4mlを1日3回まで。

チンキ剤(45%エタノールで1:5):2〜6mlを1日3回まで。2週間の治療後も症状が続く場合は、医師に相談する必要があります。(HMPCの評価では、これらの薬による副作用は報告されていません。)

 

  用途   軟膏      クールドリンク      ワインカクテル      スープ           

ハーブティーを作るには、沸騰した500mlのお湯をレモンバームの葉、約10枚に注ぎます。15分程蒸らしてから濾して飲みます。蜂蜜、レモンピールなどを加えると、さわやかな夏の飲み物になります。単独で、または他のハーブと組み合わせて飲むと発汗を促進するので、発熱を伴う風邪に優れています。一緒に使うハーブはレモンバームの香りを損ねない程度の、香りのきつくないハーブがお薦めです。

 

 

 

 キッチンカウンターから  レモンバームの葉に含まれる精油の量は僅かです;         

       葉そのものを卵料理やスープに安心して使うことが出来ます。           

 

                

 

 

 

          

ブレンダーではなくミキサーを使って撹拌するとズッキーニの皮のきれいな緑色になり滑らかなスープになります。翌日になっても色は褪めません。

           

           

スープは炒めたタマネギをベースに、デンプンを多く含む野菜を使うと脂肪分の少ない、或いは出来るだけ使わない仕上げとなります。ジャガイモ等の芋類、パンプキンなどのカボチャ類、エンドウ豆などの豆類、ニンジン、ゴボウ等の根菜類、カリフラワー等、身のまわりにはたくさんのデンプンを貯め込んだ野菜があります。工夫のしどころでもあり、貴方のセンスを活かす場所でもあります。