Annabel's Private Cooking Classあなべるお菓子教室 ~ ” こころ豊かな暮らし ”

あなべるお菓子教室はコロナで終了となりましたが、これからも体に良い食べ物を紹介していくつもりです。どうぞご期待ください。

タラゴン

2023年07月16日 | ハーブ

        

Alexis Benoist Soyer(アレクシス ブノワ ソワイエ:  1810 – 1858) )は、フランス北東部に生まれ、パリでシェフとしてキャリアを築きましたが、1830 年の七月革命によって中断され、イギリスに移住し、王族、貴族、地主の厨房で働きました。1840年代にアイルランドのジャガイモ飢饉が発生します。ダブリンで1時間に1,000人の食事ができるスープキッチンを設置し、安価で栄養価の高い食べ物のレシピを公開。パンよりも安い代替品を開発しました。

クリミア戦争中、疾患が蔓延し、食糧が不十分でした。英国政府の要請に応じて、1855年にクリミアで看護先駆者フローレンス ナイチンゲールと協力して兵士たちの状況を改善しました。彼が発明した (ポータブルな灯油ランプを応用した) Soyer's "Magic Stove" は、100年以上も軍隊で使用され続けました。クリミアで病気にかかり、健康を害し、ロンドンへ帰還してから1年余り後、脳卒中で亡くなります。

         

The Modern Housewife or, Menagere 1849から; 

Capon or Poulard à l’Estragon(エストラゴン風シャポンまたはプーラード:エストラゴンを使った茹でた鶏肉料理)

 

多くの創造力豊かで食に対して熱心な人々が、この料理を非常に高く評価し、愛していると聞いています。鳥は茹でるために縛り、胸肉を半分のレモンでこすります。薄いベーコンのスライスを縛り付け、小さなシチューパンの底を覆います。牛肉、仔牛肉、またはラムのトリミング、タマネギ2個、にんじん少々、蕪、セロリ、ローリエ2枚、タイム1枝、シェリー1杯、水2クォートを入れ、塩、胡椒、ナツメグで軽く味付けし、約1時間15分煮込みます。

フタに常に少し火を入れ続けます(フタの上に火種をおいての意)。グレービーの1/3を小さなボウルにこし入れ、漉し布を通して脂肪を取り除き、小さなシチューパンに入れます。色の良い茶色にするために少しグレービーまたは着色料を加えます。数分間煮込みます。約40枚のエストラゴンの葉を洗い、沸騰しているグレービーに入れます。良質なフレンチビネガー大さじ1杯と一緒にキャポンにかけて提供します。グレービーを澄ませることで見た目と味が改善されます。フランスではこのような方法で様々な種類の鶏肉や鶏肉が常に調理されています。ライスと一緒に提供されることもあります。

 

Soyer's Culinary Campaign 1857から;

チャービルとタラゴンのバター

バター2オンス、刻んだチャービル1ts、タラゴン1ts、塩、ブラックペッパー、カイエンを少量、タラゴンビネガー1TBS,又はレモンジュースを1/2個分

 

1907  A GUIDE TO MODERN COOKERYBY  Auguste Escoffier

                      

Auguste Escoffier(1846-1935)。エスコフィエは、味や顧客満足を重視することで、それまでのフランス料理の慣習にあった無駄な部分を削り、現代に近いフランス料理のスタイルの基礎を作り上げました。又、ホテル王セザール・リッツと組んで、世界中の美食家を魅了し、現代フランス料理の基盤を作りました。彼が作った料理は現在のフランス料理店でも提供されています。例えば、オペラ歌手のネリー・メルバに捧げられたデザート「ペーシュ・メルバ」( ピーチ・メルバ )、大作曲家ロッシーニが好んで食べた「トゥルヌード・ロッシーニ」( 牛フィレ肉のロッシーニ風 )などは、耳にしたことがある人は多いのではないかと思います。

彼は、カレームからデュボワへと続くフランス料理の伝統(キュイジーヌ・クラシック:古典料理)を受け継ぎながら、時代の嗜好に合わせて、視覚的豪華さから味覚を重視した、効率的でスピーディーな料理の提供へと転換をはかりました。800ページのLe Guide Culinaireに収録された5000ものレシピは、過去の伝統に根ざしながらも新しい世紀にふさわしい料理として手直しされ、今もこの本が料理人のバイブルとされている理由がここにあります。

 

Le Guide Culinaire(Guide to Modern Cookery)1903著から;英語版は少し内容が異なりますので2つ取り上げておきました。

 

Vénitienne( ヴェネツィア風ソース )

エストラゴンビネガー、刻んだエシャロット2杯、セルフイユ20gを5.5 dlに減らし、布でこして1/2Lの白ワインソースに加えます。その後、ハーブジュースとセルフイユとエストラゴンを1杯ずつ加えて仕上げ、ベール・ヴェール( beurre vert )80gを加えます。このソースは、様々な魚料理に合わせることができます。(フランス版)

 

VENETIAN SAUCE

エシャロット1TBS、セルフイユ1TBS、白ワインとビネガー各1/4パイントを鍋に入れ、混ぜ合わせます。酢を2/3に減らし、白ワインソース1パイントを加えて数分間煮込みます。布でこして、ハーブジュース適量とセルフイユとエストラゴンを各1tsづつ加えて仕上げます。このソースは、様々な魚料理に合わせることができます。(英語版)

TARRAGON BUTTER

生のタラゴン8オンスを洗って、水気を切り乳鉢ですり潰す。バターを1ポンド加え

篩いを通して冷蔵庫で保管する。

            

       Best Compound Butter For Steak (grillseeker.com) から

ステーキの上にのっているのがタラゴンバター。ここでは、無塩バターの中にオリーブオイル、ガーリック、レモンの皮、パセリ、チャイブ、ローズマリー、塩を使っています。何をタラゴンと一緒に使うかは調理人の自由ですが、エスコフィエの言うように、まづ、バターとタラゴンを合わせておきそれを冷凍保存しておきます。その中に何を入れるかは、その時々の主材に応じて決定するのが良いと思います。タラゴンバターを解凍の後、なるべく生の新鮮なハーブと合わせることが大事です。ハーブは香りが命です。とりわけ乾燥すると真っ先に揮発してしまう揮発性の成分を逃さず活かす使い方が肝要です。

 

                                     つづく

 

 


タラゴン

2023年07月15日 | ハーブ

      

 

これが今育てているフレンチタラゴンです。もう少し早くお目にかけたかったのですが、葉に病気が入ったり、植え替えたりで今に至ってしまいました。春の初めに出てくる葉に「先端が3つに分かれた分厚い葉」がみられるようですが、・・・なにせ昨年の夏の終わりに手に入れたフレンチタラゴンですから確言は出来ませんが、・・・丁度、レモンバームの葉と同じように、冬の終わりから春先に出てくる葉は厚く武装した状態で世の中に出てくるのではと、今のところそのように思っています。今は夏の葉が盛んにでているところで、ご覧の通りナヨナヨした葉で覆われています。

 

フランスの外交官で美食家のタレーランのもとで料理人として働いていたカレームは、1814年に始まったウィーン会議での夕食会で出した料理で評判をさらい、彼の名は一躍有名になりました。ウィーン会議が終わったときヨーロッパの地図と上流階級の料理は刷新される事になります。時代の流れに乗り、金と時間が際限なく与えられれば料理人はその才能をのびのびと伸ばすことが出来るという良い例です。このウィーン会議以降、何人の料理人が大きく羽ばたいたことか枚挙にいとまがありません。

 

                                   つづく

 

 


タラゴン

2023年07月05日 | ハーブ

イタリアの料理人、フランスの料理人達のクックブックに、この時代になってもまだタラゴンは出てこないのかという疑問が出てくると思います。

イタリアの料理人プラティナが1474年に出版した料理書『De honesta voluptate et valetudine』、イタリアの料理人スカッピが1570年に出版した『Opera dell’arte del cucinare』、フランスの料理人ラ・ヴァレンヌが1651年に出版した料理書『Le Cuisinier françois』。

 

これらの料理書は有名で知らない者はもぐりだと言われるほどのものですが、残念ながらタラゴンは出てきませんでした。それではと、中世から現代に至るまでの著名なフランス料理人を幾人か選出してみました。

 

ギヨーム・ティレル (Guillaume Tirel) 生年 1310年 没年 1395年

フランソワ・ヴァテール (François Vatel) 生年 1631年 没年 1671年

アントナン・カレーム (Antonin Carême) 生年 1784年 没年 1833年   

オーギュスト・エスコフィエ (Auguste Escoffier) 生年 1846年 没年 1935年

レイモン・カルヴェル (Raymond Calvel) 生年 1913年 没年 2005年

ティエリー・ヴォワザン (Thierry Voisin) 生年 1958年 没年 2018年

ピエール・エルメ (Pierre Hermé) 生年 1961年

ピエール・ガニェール (Pierre Gagnaire) 生年 1950年

ギヨーム・ゴメス (Guillaume Gomez) 生年 1973年

フィリップ・コンティシーニ (Philippe Conticini) 生年 1963年

アラン・サンドランス (Alain Senderens) 生年 1939年 没年 2017年

アラン・シャペル (Alain Chapel) 生年 1937年 没年 1990年

アラン・デュカス (Alain Ducasse) 生年 1956年

トロワグロ兄弟 (Troisgros brothers) 3 September 1928 – 23 September 2020

 

幸か不幸か上から3通目のカレームの料理書の中にタラゴンがありました。イヤ良かった。彼の料理書は今までの、いわゆる著述業者が書いた料理書ではなく、現役の料理人が書いた料理書ですから、その内容はレベルが一つ上です。期待して良いと思います。

 

Beurre  de  Montpellier( モンペリエバター)

新鮮な水で、大量のチャービル、20本のタラゴン、同量のバーネット、少量のチャイブを洗い、塩を入れた煮沸水で茹でます。緑色を保つために、フライパンで茹でます。5〜6分後に取り出し、冷水で冷やします。8個の卵を固く茹でます。(ラビゴット)ハーブから水分を絞り出し、完全に潰します。20匹のきれいに洗ったアンチョビ、2杯のケイパー、6個のゲルキン(キュウリのピクルス)、茹でた卵の黄身、小さなニンニクを加えます。10分以上潰し続け、8オンスの新鮮なバター、塩、「そして少量のすりおろしたナツメグを混ぜます。半パイントの良質なオリーブオイルとその4分の1量のタラゴンビネガーを入れてよく混ぜます。それは滑らかなバターになり、風味が絶妙です:シルク製のふるいで通したスピナッチエッセンスで少し着色し、一度に少しずつ混ぜてバターに淡い緑色を付けます。それが良い風味であるかどうか試してみてください。木製スプーンを使ってふるいを通します。小さなボウルに入れて氷上に置き、固くなるまで待ちます。このバターの調味料は非常に注意が必要ですが、酢の酸味は、油を少し加えることで調整できます。

        

    https://www.keldelice.com/guide/specialites/le-beurre-de-montpellierから

現在のモンペリエバターは、ほうれん草、チャービル、その他のハーブ、ケイパー、ゲルキン、アンチョビ、ニンニク、マスタードなどを使ったバターソースが一般的です。

モルタルでハーブをすりつぶし、刻んだエシャロット、ゲルキン、ケイパー、アンチョビ、ニンニク、固茹で卵の黄身と油、塩とコショウを加えます。混合物がペースト状になったら、泡立て器で柔らかくしたバターと合わせます。最後にすべてが準備ができてからサーブします。このようなソースは特に肉(子羊の脚肉、仔牛のカツレツ)や魚(鯛、スズキ)に添えて使います。

カレームのモンペリエバターの作り方。これは凄いですよね。1817年著の L'art de la cuisine francaise からの引用ですよ。ここで一つ疑問が出てきます。今まで何故タラゴンのレシピが出てこなかったのという疑問です。1600年代にあってもおかしくないですよね。

 

                                  つづく