Annabel's Private Cooking Classあなべるお菓子教室 ~ ” こころ豊かな暮らし ”

あなべるお菓子教室はコロナで終了となりましたが、これからも体に良い食べ物を紹介していくつもりです。どうぞご期待ください。

湯種

2019年10月16日 | パン

続 湯種

 

もう一例引用しておきます。

https://www.ploetzblog.de/2017/02/11/alm-rezepte-roggenbrot-mit-versaeuertem-malzstueck/ から


     

 

酸味のきいたライ麦パン

 

乳酸菌を入れたモルト(versäuertem Malzstück);

ライ麦粉997※       60 g

水               300 g

活性モルト         2.5 g

キャラウエイ        (3 g)

 

サワードウ;

モルト (50 ℃)

ライ麦粉            180 g

初種(Anstellgut※)     24 g

 

本練り;

サワードウ

小麦粉1050          60 g

ライ麦粉997          290 g

水 (65 ° C)        160 g

塩                 13 g

液状の不活性モルト(Flüssigmalz inactive)18 g

 

ライ麦粉をボイルした湯で混ぜる。65℃まで冷まして活性モルト、キャラウエイシードを混ぜる。65℃下で3-4時間置く。活性モルトは50℃で保管するか又は冷蔵庫内で保管した後50℃まで温度を上げて他のサワードウの材料と混ぜた後、8-10時間室温(20℃)で熟成させても良い。

 

本練りはドウの温度を30℃にして90-120分間室温において熟成させる。

ドウを濡らした手でボールから取り出し、250℃の中に入れ、スチームを効かせて220℃に持って行く。55分間焼く。焼き終わったら水を塗って照りを出します。 

 

 

※ドイツのライ麦粉は灰分量で分類されています。

成分/種類

灰分

蛋白

ペントザン

デンプン

タイプ 815

0.79~0.87

8.3

3.3

65.4

    997

0.95~1.05

8.7

3.7

64.1

    1150

1.10~1.25

9.2

4.2

62.0

    1370

1.30~1.45

9.7

4.5

59.9

    1740

1.64~1.84

10.7

5.6

54.3

    1800

1.65~2.00

 ―

 ―

 ― 

 

続く

 

 


湯種

2019年10月15日 | パン

湯種  5

 

山食はこの後少し手を加えて完成ですが、気にかかることが一つあります。それは「湯種法」が広く西ヨーロッパに、4年という短期間で広範囲に広がった理由です。

「湯種」で検索すると、そのヒット数は108,000,000、「water roux」では89,000,000になります。何故でしょうか?

 

それはパンの歴史と文化の度合いが日本とヨーロッパでは大きく異なるからだと思われます。

日本のパンの歴史はせいぜい200年、ヨーロッパはどれほどの歴史があるでしょうか。6,000年、それとも7,000年?それ以上かも知れません。粉の中に湯を入れて煮ることなどは今までに幾度となく経験してきたことなのです。下地があればすぐに抵抗なく受け入れることができます。一例を取り上げておきます。

 

https://www.theguardian.com/lifeandstyle/wordofmouth/2016/jan/28/how-to-make-the-perfect-rye-bread から

How to make the perfect rye bread

 

材料;

ライムギ粉         500g
塩              10g

挽割りライ麦         50g

パンプキン          50g

ヒマワリ又はその他の種    50g

イースト           10g

糖蜜又はモラセス       1TBS

 

方法;

小麦粉、塩をボールに入れてボイルしている湯を400ml入れてよく混ぜ、少し冷ましておく。

イーストに水を50-45ml入れる。

ドウの表面に軽くオイルを塗ってすべてが混ざるまで5分間錬る。

ボール又はバスケットに粉を打つ。ドウを丸めて入れる。濡らした布を被せて一晩1.5倍の大きさになるまで膨らませる。

オーブンを220℃ にしてシリコンクロスを敷いて膨らんだドウをその上にのせる。ドウに切れ目を入れる。

沸かした湯を入れる。

褐色になるまで35分間焼く。

冷めてからスライスする。

 

 


湯種

2019年10月14日 | パン

湯種  4

ごく普通の山食のレシピを使います。

レシピの中の小麦粉の一部分と水をwater rouxのために割いて使うことにします。

 

材料

湯種;

強力粉          15%

水            50%

 

本捏ね;

強力粉           85%

牛乳           8.3%

イースト         0.83%

水             25%

塩             1.1%

砂糖            3.3%

バター           5%

 

今まで通常の方法で作っていた山食を、材料の一部分を湯種と本捏ねに分割した以外は全く変えずに、2回のフォールディングの後、成型をして焼きました。

 

方法;

湯種の材料を混ぜて鍋で煮ます。

バターを除く本捏ねの材料を全て混ぜ、グルテンが出たことを確認してから湯種を少しずつ混ぜていきます。最後にバターを混ぜます。二回フォールドしてから型に入れて焼きます。

二回のフォールドと成形後の待機時間は27℃ 下で1時間ずつ、合計3時間の発酵時間を取りました。(型の中に入れてから後の1時間が、麦芽糖産生のための時間ということになります)

210℃で30分間焼きます。

   

 

 

焼いて食べた結果、砂糖の量を半分にしていいと思いました。麦芽糖の産生が思ったよりも多く、クラストが茶褐色に焼けたほどです。牛乳は削った方がいいかもしれません。

2回フォールドをして、その後成形、発酵の後、焼いたにもかかわらず、イーストの発酵力が予想以上に旺盛なのが驚きでした。

 

続く

 


湯種

2019年10月12日 | パン

湯種  3

 

オーストリアのレシピはこの後、次のように語られています。

「小麦粉450、イースト7g、砂糖50g、卵1個、卵黄1個、牛乳120ml、ヨーグルト40gを混ぜます。この中にまだ暖かい湯種を少しずつ入れて煉っていきます。」

注目すべきは、水を使わない点です。

デンプンを煮詰めてアミロースの中に入った水(物理的な分子間力によって水分がアミロースの中に取り込まれた状態)を煉ることで物理的に追い出すことができるのでしょうか。

 

日本のレシピ3つは7790%の水を添加しています。この量はパンとしては極めて常識的な水の量です。しかし、オーストリアのレシピは、ヨーグルト(40g)を水として換算したとしても56%の水しか使っていません。卵(80)を全て水として加えてやっと74%になります。つまり小麦粉の中に入った水はかなりの割合で離水すると判断してレシピの中に水を加えていないように見えるのですが。

 

アミロースの中に入り込んだ水を力ずくでもなんでも煉ることで追い出すことができれば、パンの老化を、「低アミロース小麦粉※を加えることで」かわすことは必要でなくなります。 

※   国産小麦粉の中でグルテン量が多く低アミロースな小麦粉にはユメチカラ、春よ恋、キタノカオリなどがあります。これらの小麦粉を加えるともちもち感があり、噛み応えがあるパンに仕上がります。

 

お話をもとに戻して、レシピに帰ると。この後、小麦粉を入れてその中にwater rouxを少しずつ入れていきます。温かいルーを入れていくので、アミラーゼの活性は高まります。

煮ることでデンプン粒から大量に飛び出したアミロースとデキストリンは急速に麦芽糖に分解されます。

煉り終わったドウは2時間後、小麦粉の中のグルコース等の単糖類はイーストによって消費されてしまいまが、その後2時間余りの間に迎える緩やかな、それでいて高いイーストによるガス発生が続くはずです。(2回目のガス産生は麦芽糖によるものです。去年78月のパン-ブログの中に詳細に述べておきました)ここで、湯種法で得られる自然な甘味は十分に獲得できます。

 

上で述べたアイデアの確かさあるいは不完全さは、実際にドウを捏ねてイーストを作用させパンを作ることで確固たるものに変わるはずです。早速パンを作ってみることにしましょう。


続く



湯種

2019年10月10日 | パン

湯種 2

 

オーストリアのサイト;https://www.tasteoftravel.at/saftiger-rosinenzopf/ では

小麦粉20gを水50mlの中に入れて混ぜます。ダマがないように均一に混ざったら更に水を50ml入れて混ぜます。これを鍋に入れて弱火でボイルします。沸騰しない程度に23分間熱します。(これを湯種とします。このサイトの投稿は3. April 2015ですから、日本で湯種法が言われてから4年ばかり経ってからのものです。)

 

つまり、小麦粉15gに対して水を100ml入れて加熱しています。小麦粉の5倍の量の水を入れているのです。日本の方法とは全く異なります。これにビックリし、しばらくして関心もしました。

 

上のレシピを読んで 「焼き上がったパンに対する「湯種」効果を、もちもち感とデンプンの老化スピードを弱めるといる2点にのみ焦点を当ててパンを作っている。」 のではとこの時思ったのです。

 

(上のオーストリアの方法は、あとでわかったことですが、今ではほかのヨーロッパの国々では広く知られている方法で、「Water roux」で検索すると山のように出てきます。)

 

上の方法(Water roux : ウオーター ルー)はデンプンの中に含まれるペクチンを含む小麦粉の中のたんぱく質(グリアジン、グルテニン、アルブミンの他、βアミラーゼ、プロテアーゼ等)を全て加熱変性させる手法を取っています。( 23分間の加熱がそれにあたります )

 

日本の方法(湯種法)は、小麦粉の中に小麦粉と同量かそれよりも少ない量の熱を入れてかき混ぜています。この方法だと一部の小麦粉は糊化されずに、その中のβアミラーゼが残り糊化した小麦粉を麦芽糖に、一晩かけて変化させます。それで優しい甘みが生まれるのです。しかしこの手法は細い綱を渡るような芸当です。

βアミラーゼは他のタンパク質よりも耐熱性がある ( 72℃ ) のですがこれよりも温度が高いと失活してしまうからです。タンパク質を熱変成させてしこしこ感を出したい反面、温度が高すぎると自然な甘みが得られないというジレンマが生まれます。

温度の高い夏、低い冬にはことのほか気を使わねばならないことでしょう。

 

ウオーター ルー法はこのジレンマをうまく解決した方法であると思います。

麦芽糖の甘みをウオーター ルー法とは別の方法で、一連のパン作りの中で解決しているのです。

 

続く

 


湯種

2019年10月08日 | パン

湯種  1


湯種を使ったパンが少し前から取り上げられるようになりました。今年はこれを少し掘り下げてみようと思います。

 

https://k-daidokoro.com/archives/1816 から湯種の作り方を拝見すると;

小麦粉50gに対して熱湯を100ml入れて湯種を作っています。

 

https://ameblo.jp/v-vn-n/entry-10560417536.html では

小麦粉50%に対して熱湯を37%入れて湯種を作っています。

 

https://ameblo.jp/nikonikotaechi309/entry-12151730981.htmlでは

小麦粉50gに対して熱湯50mlを入れています。

 

湯種を使ったパンのレシピはこのほかにもいろんなものがあります。それぞれに力作で焼き上がりもきれいですが、気になることが一つありました。それは『湯種のレシピは、小麦粉の中に入れる湯の量が一定ではありません。それもかなりのばらつきがあります。何故だろう。』という疑問です。それに、熱湯を必ず入れる事。まんべんなく必死で混ぜる事。混ぜた後は密閉して保管すること。湯種を作る時にはステンレスではなくプラスチックのボールを使うことなど注意すべきことが列挙されています。小麦粉と熱湯を混ぜることに神経が集中しているようです。温度の異なる季節によってもそれぞれに工夫がなされています。

(上のサイトを開いてみれば、それぞれにこれらの点に関して詳細に述べられていることに気が付かれることでしょう。)

 

このような湯種を使ったパンを日本のサイトで見かけるようになったのは今から8年くらい前からでしょうか。当時はあまり気にもかけていなかったのですが、おおよそ1年程前にヨーロッパのオーストリアのサイトで、湯種を使ったレシピを見て大いに気持ちが動かされました。それは今までの湯種とは全く異なるものでした。そのレシピを見て初めて「湯種」の正体を見たように思いました。


続く。



中華バンズ

2019年08月02日 | パン

ほんと暑いですね。お元気でしょうか?

 

夏の暑さを吹き飛ばす?パンをご紹介しようと思います。

実はパンは買ったことがありません。自家製で何十年も間に合わせています。

今の季節は、暑くてどうしようもありませんが、一つだけいいことがあります。

それは、パンの発酵が良くて助かることです。これからご紹介するパンはその最たるものです。

 

ところで、いくらおいしいパンでも、2-3か月も続けていると飽きてきます。

そんな時に作るのが、中華バンズです。簡単に作れて美味しくて、ふわふわしていて、

幸せな気分にしてくれます。一度はどこかでご覧になったことがあるでしょう。

料理好きな方はもすでにご存知かもしれませんが。

 

バンズ

 

材料 (6個、二人分)

ドウ:

イースト              4ml

湯            125ml

甘藷糖             1 1/2 TBS

薄力粉              180

塩                -

太白ごま油         1 1/2 TBS


油はピーナッツオイルでもグレイプシードオイルでもベニバナ油でもいいです。

これに挟むポークの料理方法も書いておきます。いつも作っている、これは、日本味に仕上げます。八角を使った方法もあるのですが、日本味の方がさっぱりしているでしょう。

  

ポーク:

ばら肉             500

ガーリック         2g

ジンジャー         5g

蜂蜜            20g

醤油            50g 

日本酒            50ml

オリーブオイル       20ml 

 

方法; 

1  イーストを125mlの湯の中に入れる。

  砂糖、薄力粉、塩、オイル、イーストを入れて混ぜる。

  オイルを塗ったボールに入れて2倍の大きさに膨らませる。

2. ボードの上でドウを煉る。カバーをして30分間休ませる。

3.  フィリングを作る;皿の上に肉を置いてマリネする。一晩寝かせる。180℃で

   約50分間焼く。(冷めたら冷凍バッグに焼き汁と一緒に入れて冷蔵庫で保管します。

4. ドウを楕円形に延ばし、ベーキングペーパーの上にのせて6-8分間蒸す。


蒸したバンズにねぎのせん切り、レタスなどの野菜類、豚肉は一日冷蔵庫で休ませたものを薄く切って一緒に挟んでいただきます。


下のサイトではとりのささ身を使った中華バンズが紹介されています、。参考になさって下さい。

https://ahp-recipe.jp/sheet.php?recipe=889

  





全粒粉パンに再度挑戦ーー失敗した時の対処方法

2018年08月16日 | パン

全粒粉の香り、香ばしさを生かしつつ、ふわっとした滑らかなパンはできないものだろうか。全粒粉を使ったルヴァンリキッドを作り、それを前種にしたパンを作ってみようと思いました。水分の多い全粒粉を30時間以上をかけて分解すれば、滑らかな(滑らかすぎるかもしれないが)舌触りの、それでいて消化されずに残ったブランが香ばしさを演出してくれるのでは?と期待しつつ作ってみました。 

全粒粉ルヴァンリキッドを使ったパン

 全粒粉で作るルヴァンリキッドはご存知の方は多いと思うので省略しておきます。(正直な話、ライ麦を使ったルヴァンの作り方は知られているものの、全粒粉を使ったルヴァンはまだ知られていないのでは?と思い調べてみると、出るは!出るは!驚きました。こういうのを「無知の知」というのですね。)この全粒粉ルヴァンリキッドの中に強力粉と水を入れて12-16時間寝かせます。

寝かせた中種に強力粉、全粒粉、水を入れて練り、塩を入れてさらに煉り、成型をして焼く、計画です。

中種は次の手順で作ります。

強力粉               100

水                                  125

継代したルヴァンリキッド    20

12-16時間、21℃で静置。

 

最終ドウ。

強力粉              90

全粒粉             10

水                65

中種               20

塩              1.9

 塩を除いて混ぜ、2060分間静置。塩を混ぜて23時間、25℃で静置。

途中で12回フォールドをして成型。

221/2時間、25℃で静置して230℃で4045分間焼く。


本来ならここで、きれいに焼けたパンをお見せするところですが、ちっともドウが膨れてくれません。さてどうしようか? 捨てるわけにはいかない。皆さんはこういう時どうしていますか? 途中で発酵しなくなったドウをどうしていますか。(洒落ではないです)膨れないドウをどうしようか、ということは大変な問題です。

       

 チャパティを作りました。イヤ、「チャパティにしました。」と言うべきでしょう。全粒粉の割合が少ないですが少し水を追加して捏ねました。イーストで長時間かけて発酵させたパン生地の味は中々のものです!!

チャパティを食べながら思いました。チャパティを作らずとも良かったのではと。

旨味はあるのだから、言い換えればイーストはそれなりに働いているのだから、膨れさえすればパンになったのです。と言うことは、そうです、イーストを少し追加すれば、たとえ膨れなかったドウでもパンになったはずです。少し工夫を加えて作ってみようと思います。


つづく。





 

 


モルトの代わりに全粒粉を使ってパンが焼けるのだろうか?

2018年08月10日 | パン

7/31日に ”このあたりで今まで学んだ知識を整理する意味から、実際にパンを焼いてみましょう。モルトを使ったパンをご紹介します。英国タイプの( ストレート法 )でイングリッシュブレッド( 山食 )を作ろうと思います。” と言って始まった、今回はその続きです。( 新しい今回の記事は中ほどから始まります。)

 

材料;

超強力粉               50%

小麦粉                 50%

モルトパウダー            0.1%

イースト                1.6%

水                  66%

塩                  2%

ショ糖                1%

バター                  2%

 

1. 全ての材料を上から順にボールに入れてしっかりとグルテンが出るまで混ぜます。ドウの温度は24℃ になっているようにします。 ( 今回は、塩とショ糖とバターは一番後から入れることにします。ドッサっと一度に混ぜても結果は大して変わらないと思うけれども、今まで学んできましたからね。)

 2. 1時間したところでフォールドし、そのあと1時間休ませます。

( フォールドのことは「セモリナブレッド」のところで一度出てきましたが、パンチではなくフォールドします。私も以前はこの段階ではパンチをしていたのだけれど、パンチをすることに納得がいかなくて、最近はフォールドしています。ドウをボールから取り出して長―く延ばします。そのまま反対側へ折り畳んで、折り畳んだ先から反対側へ長―く延ばして折り畳みます。3回ほど繰り返すとその中に含まれている気泡を一方方向へと整理することと、気泡と同時にグルテンの方向も一方向へまとめることが出来るので食べたときの触感が滑らかになります。切った時の見た目もいいかな。)

 3. 型に合わせてドウを分け、粉を振ってまとめ、10-20分間休ませて成型をして型に入れます。

 4. 1 1/2―2時間発酵させます。

 5. スチームをして220℃で40-45分間焼きます。

 

美味しく焼けたかな?

     

 

手順4.のところで急に大きく膨らみました。1 1/2 時間待たなければならないところを45分くらいで予想外の大きさになりました。焼き色は少し濃いようです。食べた感じ少し塩がかっているかな?というところです。キメは見た通り粗いです。

室温が27℃あって、最初の捏ねの段階から温度が高かったようです。27℃ではアミラーゼの活性が高くモルトは必要なかったかも。塩が少し多めで、過剰な発酵を阻止してくれるかなと思っていたのですが・・・・・・・・言い訳はこのくらいにして、もう一度焼こうと思います。室温27℃は変えられそうもないので、そして、塩はこれ以上増やせない ----------- 色々と考えてみました。


そこで今日8/10にモルトの代わりに”全粒粉”を使って焼いてみました。全粒粉の中に含まれているであろう、”アミラーゼとプロテアーゼ” に期待して、全粒粉がモルトの代わりをしてくれるかな?という目論見からです。モルト0.1%の代わりに、全粒粉を16.6%を入れました。小麦粉は強力粉100%です。その他の変化はありません。


室温は同じ27℃。少し高いかなというところです。前回と比べてクラストの色づきはやや少なめ。クラムはもちもち感があります。この間よりも目が詰まった感じです。クラムも少し固めです。

全粒粉の中に含まれる酵素の働きは、166 倍を入れたにも関わらず、いや期待通りだったかも。全粒粉を入れたことで、モルトの働きと共に全粒粉の働き?も一緒に出たのだろうと感じました。そのためにモルトの働きが少しセイブされたのだろうと思います。

全粒粉の中には胚芽油が含まれています。その 80-90% はトリグリセリド※です。同じく全粒粉の中に含まれているリパーゼにより3つのパルミチン酸に加水分解されたものと思われます。パルミチン酸は常温では白色の固体で水には溶けない性質を持っています。そのために吸水性が悪くなり、グルテンの形成が不良になったのだと推測します。クラストの色づきの悪いのはマルトースの生成が悪かったからでしょう。

※ トリグリセリド。緑色がグリセロール部で、3分子のパルミチン酸がエステル結合しています。ここが外されたのです。( 上の絵はWikiからお借りしました )

パン作りって中々奥が深いですね。全粒粉をモルトの代わりに使うという目論見はもろくも崩れました。















発酵と塩 - 2

2018年08月06日 | パン

パンに塩を添加するにはいくつかの理由があります。塩はパンに風味を与え、ガスの保持力に影響を与えるからです。パンは、小麦粉の重量当たり1.52.0%の食塩を添加することで最高の容積になります。塩がレシピから除かれると、パン容積に18%の減少が見られるといいます。この時パンクラムのキメはセルの壁が厚くなることで均一になります。塩を入れるとパンの中にガスが保たれるにはいくつかの原因があります。その一つは、塩を多く入れすぎると、イーストの発酵を遅らせます。すなわち、食塩はドウへの水の吸収を遅らせ、最適なドウになるまでの時間を長引かせ、ドウの安定性を増加させるのです。α‐アミラーゼのような酵素があると、その活性は塩によって阻害されることはすでに述べた通りです。

 

 


発酵と塩 - 1

2018年08月02日 | パン

今回のパンの試作で気になった材料の一つに塩があります。塩が発酵中の酵母に及ぼす影響について調べてみました。


塩はパンに普通12%使用されます。塩には浸透成分としての性質と、Na +およびCl - イオンとしての性質が考えられます。塩を添加して、酵母細胞のガス生成を減らす、言い換えれば生地に塩を添加して発酵プロセスを制御することができます。

 30%以上のスクロースまたはグルコースフルクトースを加えた生地に塩が加わると、塩は砂糖のない希薄な生地よりも有害で、生地の水分活性が大きく低下します。

酵母細胞に、陽イオン毒性の暴露と浸透圧ストレスの曝露の両方が加わるからです。

 浸透圧ストレスに適応するため酵母細胞は、トレハロース、プロリン、およびグリセロールを含む相溶性溶質を蓄積するのですが、このお話は本題から離れますのでここまでにしておきます。)

 塩の添加は酵母細胞のガス生成を減少させるのですが、反面、塩レベルが低下すると生地中に残る炭酸ガスの量は少なくなります。塩は、グルテン膜の強化効果があり、塩が少ないと発酵中に生産されるガスを保持することはできなくなるからです。グルテン膜に対する強化効果のために、塩はパンレシピに含まれる必要があります。たくさんの砂糖をドウに入れた時の塩の量には気を付けねばならないようです。パネトーネなどのイースト菓子を作る時には、使うイーストの選定が問題になってきます。




フォーリングナンバー

2018年08月01日 | パン

α-アミラーゼの活動が正常であれば、しっかりとしたボリュームで柔らかな質感が得られます( FN= 250 )。活動が弱いとクラムが乾燥したボリュームのないパンになります( FN= 62 )。活動が過剰であれば固いクラストでボリュームのないパンになります( FN= 400 )。  FN(フォーリングナンバー)はα-アミラーゼの活動と密接な関係があります。「低アミロ小麦事件?」のところで取り上げてもよかったのですがここに入れました。

       

フォーリングナンバーの測定は、現在、国産小麦は品質取引が行われており、製粉用小麦の品質評価基準としては、容積重、水分及び澱粉粘度が上げられています。この基準にしたがって取引価格の増減が行われているのです。澱粉粘度については、フォーリングナンバー値 300 が基準で、簡単な装置なので生産現場で用いられている測定方法です。

                   
フォーリングナンバーは試験管に小麦粉を入れ、水を加えて温めながら撹拌した後に、撹拌棒が糊状になった溶液中を降下して試験管の底に到達するまでの時間です。
小麦粉中のα-アミラーゼの活性が高いと、デンプンが分解され、溶液の粘度が低下して撹拌棒の沈降が早くなります(=フォーリングナンバーが低下します)。

              


フォーリングナンバー測定用の試験官と撹拌棒
試験管に小麦粉を入れて水を加えて温めながら撹拌した後に、撹拌棒が糊状になった溶液中を降下して試験管の底に到達するまでの時間がフォーリングナンバーです。



 

 


モルトを入れたパンを作ってみる

2018年07月31日 | パン

このあたりで今まで学んだ知識を整理する意味から、実際にパンを焼いてみましょう。モルトを使ったパンをご紹介します。英国タイプの(ストレート法)でイングリッシュブレッド(山食)を作ろうと思います。

 

材料;

超強力粉               50%

小麦粉                 50%

モルトパウダー            0.1%

イースト                1.6%

水                  66%

塩                  2%

ショ糖                1%

バター                  2%

 

1. 全ての材料を上から順にボールに入れてしっかりとグルテンが出るまで混ぜます。ドウの温度は24℃ になっているようにします。 ( 今回は、塩とショ糖とバターは一番後から入れることにします。ドッサっと一度に混ぜても結果は大して変わらないと思うけれども、今まで学んできましたからね。)

 2. 1時間したところでフォールドし、そのあと1時間休ませます。

( フォールドのことは「セモリナブレッド」のところで一度出てきましたが、パンチではなくフォールドします。私も以前はこの段階ではパンチをしていたのだけれど、パンチをすることに納得がいかなくて、最近はフォールドしています。ドウをボールから取り出して長―く延ばします。そのまま反対側へ折り畳んで、折り畳んだ先から反対側へ長―く延ばして折り畳みます。ドウを延ばすことでその中に含まれている気泡を一方方向へと整理することと、二回延ばしてアワと同時にグルテンの方向も一方向へまとめることが出来るので食べたときの触感が滑らかになります。切った時の見た目もいいかな。)

 3. 型に合わせてドウを分け、粉を振ってまとめ、10-20分間休ませて成型をして型に入れます。

 4. 1 1/2―2時間発酵させます。

 5. スチームをして220℃で40-45分間焼きます。

 

美味しく焼けたかな?

     

 

手順4.のところで急に大きく膨らみました。1 1/2 時間待たなければならないところを45分くらいで予想外の大きさになりました。焼き色は少し濃いようです。食べた感じ少し塩がかっているかな?というところです。キメは見た通り粗いです。

室温が27℃あって、最初の捏ねの段階から温度が高かったようです。27℃ではアミラーゼの活性が高くモルトは必要なかったかも。塩が少し多めで、過剰な発酵を阻止してくれるかなと思っていたのですが・・・・・・・・言い訳はこのくらいにして、もう一度焼こうと思います。室温27℃は変えられそうもないので、そして、塩はこれ以上増やせない ----------- 色々考えたのですが次のように変更してみようと思います。

 

1. モルトは入れない

2. ショ糖とイーストの量を2%にする


美味しいパンが焼けますように!!




モルトを使う ― 1

2018年07月29日 | パン

マルトースがガスの発生に一番影響力があると分かり、大きく膨らませるのが目的であれば、ドウの中にマルトースを添加するか、もしくはα-アミラーゼを添加することが考えられます。

リーンな生地にこだわるのであれば、モルト、真菌アルファアミラーゼ※を入れてα-アミラーゼを間接的に増やす手があります。 

  真菌アルファアミラーゼは、アスペルギルス・オリゼ(ニホンコウジカビ)から作られた改良剤です。反応温度は50-60 ph値は5.0-6.0

 生地にアミラーゼを添加すると、マルトースがたくさんできます。たくさんα-アミラーゼを使うと、高レベルで損傷デンプン(例えば8%)が小麦粉中にある場合、80%以上の損傷デンプンが分解されマルトースレベルが6%に達することがあります。

これは6%のスクロースをドウに添加したのと同じ効果です。ただし、高いレベルのマルトースは酵母への浸透圧ストレスを引き起こし、発酵能力を低下させ、酵母の生存率を低下させ、発酵速度を低下させるので注意すべきです。




オートリーズ

2018年07月27日 | パン

最近?言われている製パン方法の一つにオートリーズがあります。小麦と水を混ぜて30分間置いて、そのあとイーストと塩を入れる方法です。イーストと小麦と水を混ぜた30分は従来ならば小麦粉内にある糖類が発酵の最盛期を迎えているはずの時間帯ですが、イーストと塩を入れないドウはアミラーゼが単独で小麦粉に働きかけている時間帯です。イーストをドウの中に入れたとたんにイーストのマルターゼが働き始めます。マルトースが盛んに作られ生地の伸びと焼き色に大きく貢献することになります。

ただしここまで読んでこられた方ならお分かりのように、ここで作られたマルトースの分解は発酵開始から80-180分後になります。しかもα-アミラーゼ添加によるほど効果はありません。