Annabel's Private Cooking Classあなべるお菓子教室 ~ ” こころ豊かな暮らし ”

あなべるお菓子教室はコロナで終了となりましたが、これからも体に良い食べ物を紹介していくつもりです。どうぞご期待ください。

全粒粉パンに再度挑戦ーー失敗した時の対処方法

2018年08月16日 | パン

全粒粉の香り、香ばしさを生かしつつ、ふわっとした滑らかなパンはできないものだろうか。全粒粉を使ったルヴァンリキッドを作り、それを前種にしたパンを作ってみようと思いました。水分の多い全粒粉を30時間以上をかけて分解すれば、滑らかな(滑らかすぎるかもしれないが)舌触りの、それでいて消化されずに残ったブランが香ばしさを演出してくれるのでは?と期待しつつ作ってみました。 

全粒粉ルヴァンリキッドを使ったパン

 全粒粉で作るルヴァンリキッドはご存知の方は多いと思うので省略しておきます。(正直な話、ライ麦を使ったルヴァンの作り方は知られているものの、全粒粉を使ったルヴァンはまだ知られていないのでは?と思い調べてみると、出るは!出るは!驚きました。こういうのを「無知の知」というのですね。)この全粒粉ルヴァンリキッドの中に強力粉と水を入れて12-16時間寝かせます。

寝かせた中種に強力粉、全粒粉、水を入れて練り、塩を入れてさらに煉り、成型をして焼く、計画です。

中種は次の手順で作ります。

強力粉               100

水                                  125

継代したルヴァンリキッド    20

12-16時間、21℃で静置。

 

最終ドウ。

強力粉              90

全粒粉             10

水                65

中種               20

塩              1.9

 塩を除いて混ぜ、2060分間静置。塩を混ぜて23時間、25℃で静置。

途中で12回フォールドをして成型。

221/2時間、25℃で静置して230℃で4045分間焼く。


本来ならここで、きれいに焼けたパンをお見せするところですが、ちっともドウが膨れてくれません。さてどうしようか? 捨てるわけにはいかない。皆さんはこういう時どうしていますか? 途中で発酵しなくなったドウをどうしていますか。(洒落ではないです)膨れないドウをどうしようか、ということは大変な問題です。

       

 チャパティを作りました。イヤ、「チャパティにしました。」と言うべきでしょう。全粒粉の割合が少ないですが少し水を追加して捏ねました。イーストで長時間かけて発酵させたパン生地の味は中々のものです!!

チャパティを食べながら思いました。チャパティを作らずとも良かったのではと。

旨味はあるのだから、言い換えればイーストはそれなりに働いているのだから、膨れさえすればパンになったのです。と言うことは、そうです、イーストを少し追加すれば、たとえ膨れなかったドウでもパンになったはずです。少し工夫を加えて作ってみようと思います。


つづく。





 

 


モルトの代わりに全粒粉を使ってパンが焼けるのだろうか?

2018年08月10日 | パン

7/31日に ”このあたりで今まで学んだ知識を整理する意味から、実際にパンを焼いてみましょう。モルトを使ったパンをご紹介します。英国タイプの( ストレート法 )でイングリッシュブレッド( 山食 )を作ろうと思います。” と言って始まった、今回はその続きです。( 新しい今回の記事は中ほどから始まります。)

 

材料;

超強力粉               50%

小麦粉                 50%

モルトパウダー            0.1%

イースト                1.6%

水                  66%

塩                  2%

ショ糖                1%

バター                  2%

 

1. 全ての材料を上から順にボールに入れてしっかりとグルテンが出るまで混ぜます。ドウの温度は24℃ になっているようにします。 ( 今回は、塩とショ糖とバターは一番後から入れることにします。ドッサっと一度に混ぜても結果は大して変わらないと思うけれども、今まで学んできましたからね。)

 2. 1時間したところでフォールドし、そのあと1時間休ませます。

( フォールドのことは「セモリナブレッド」のところで一度出てきましたが、パンチではなくフォールドします。私も以前はこの段階ではパンチをしていたのだけれど、パンチをすることに納得がいかなくて、最近はフォールドしています。ドウをボールから取り出して長―く延ばします。そのまま反対側へ折り畳んで、折り畳んだ先から反対側へ長―く延ばして折り畳みます。3回ほど繰り返すとその中に含まれている気泡を一方方向へと整理することと、気泡と同時にグルテンの方向も一方向へまとめることが出来るので食べたときの触感が滑らかになります。切った時の見た目もいいかな。)

 3. 型に合わせてドウを分け、粉を振ってまとめ、10-20分間休ませて成型をして型に入れます。

 4. 1 1/2―2時間発酵させます。

 5. スチームをして220℃で40-45分間焼きます。

 

美味しく焼けたかな?

     

 

手順4.のところで急に大きく膨らみました。1 1/2 時間待たなければならないところを45分くらいで予想外の大きさになりました。焼き色は少し濃いようです。食べた感じ少し塩がかっているかな?というところです。キメは見た通り粗いです。

室温が27℃あって、最初の捏ねの段階から温度が高かったようです。27℃ではアミラーゼの活性が高くモルトは必要なかったかも。塩が少し多めで、過剰な発酵を阻止してくれるかなと思っていたのですが・・・・・・・・言い訳はこのくらいにして、もう一度焼こうと思います。室温27℃は変えられそうもないので、そして、塩はこれ以上増やせない ----------- 色々と考えてみました。


そこで今日8/10にモルトの代わりに”全粒粉”を使って焼いてみました。全粒粉の中に含まれているであろう、”アミラーゼとプロテアーゼ” に期待して、全粒粉がモルトの代わりをしてくれるかな?という目論見からです。モルト0.1%の代わりに、全粒粉を16.6%を入れました。小麦粉は強力粉100%です。その他の変化はありません。


室温は同じ27℃。少し高いかなというところです。前回と比べてクラストの色づきはやや少なめ。クラムはもちもち感があります。この間よりも目が詰まった感じです。クラムも少し固めです。

全粒粉の中に含まれる酵素の働きは、166 倍を入れたにも関わらず、いや期待通りだったかも。全粒粉を入れたことで、モルトの働きと共に全粒粉の働き?も一緒に出たのだろうと感じました。そのためにモルトの働きが少しセイブされたのだろうと思います。

全粒粉の中には胚芽油が含まれています。その 80-90% はトリグリセリド※です。同じく全粒粉の中に含まれているリパーゼにより3つのパルミチン酸に加水分解されたものと思われます。パルミチン酸は常温では白色の固体で水には溶けない性質を持っています。そのために吸水性が悪くなり、グルテンの形成が不良になったのだと推測します。クラストの色づきの悪いのはマルトースの生成が悪かったからでしょう。

※ トリグリセリド。緑色がグリセロール部で、3分子のパルミチン酸がエステル結合しています。ここが外されたのです。( 上の絵はWikiからお借りしました )

パン作りって中々奥が深いですね。全粒粉をモルトの代わりに使うという目論見はもろくも崩れました。















発酵と塩 - 2

2018年08月06日 | パン

パンに塩を添加するにはいくつかの理由があります。塩はパンに風味を与え、ガスの保持力に影響を与えるからです。パンは、小麦粉の重量当たり1.52.0%の食塩を添加することで最高の容積になります。塩がレシピから除かれると、パン容積に18%の減少が見られるといいます。この時パンクラムのキメはセルの壁が厚くなることで均一になります。塩を入れるとパンの中にガスが保たれるにはいくつかの原因があります。その一つは、塩を多く入れすぎると、イーストの発酵を遅らせます。すなわち、食塩はドウへの水の吸収を遅らせ、最適なドウになるまでの時間を長引かせ、ドウの安定性を増加させるのです。α‐アミラーゼのような酵素があると、その活性は塩によって阻害されることはすでに述べた通りです。

 

 


発酵と塩 - 1

2018年08月02日 | パン

今回のパンの試作で気になった材料の一つに塩があります。塩が発酵中の酵母に及ぼす影響について調べてみました。


塩はパンに普通12%使用されます。塩には浸透成分としての性質と、Na +およびCl - イオンとしての性質が考えられます。塩を添加して、酵母細胞のガス生成を減らす、言い換えれば生地に塩を添加して発酵プロセスを制御することができます。

 30%以上のスクロースまたはグルコースフルクトースを加えた生地に塩が加わると、塩は砂糖のない希薄な生地よりも有害で、生地の水分活性が大きく低下します。

酵母細胞に、陽イオン毒性の暴露と浸透圧ストレスの曝露の両方が加わるからです。

 浸透圧ストレスに適応するため酵母細胞は、トレハロース、プロリン、およびグリセロールを含む相溶性溶質を蓄積するのですが、このお話は本題から離れますのでここまでにしておきます。)

 塩の添加は酵母細胞のガス生成を減少させるのですが、反面、塩レベルが低下すると生地中に残る炭酸ガスの量は少なくなります。塩は、グルテン膜の強化効果があり、塩が少ないと発酵中に生産されるガスを保持することはできなくなるからです。グルテン膜に対する強化効果のために、塩はパンレシピに含まれる必要があります。たくさんの砂糖をドウに入れた時の塩の量には気を付けねばならないようです。パネトーネなどのイースト菓子を作る時には、使うイーストの選定が問題になってきます。




フォーリングナンバー

2018年08月01日 | パン

α-アミラーゼの活動が正常であれば、しっかりとしたボリュームで柔らかな質感が得られます( FN= 250 )。活動が弱いとクラムが乾燥したボリュームのないパンになります( FN= 62 )。活動が過剰であれば固いクラストでボリュームのないパンになります( FN= 400 )。  FN(フォーリングナンバー)はα-アミラーゼの活動と密接な関係があります。「低アミロ小麦事件?」のところで取り上げてもよかったのですがここに入れました。

       

フォーリングナンバーの測定は、現在、国産小麦は品質取引が行われており、製粉用小麦の品質評価基準としては、容積重、水分及び澱粉粘度が上げられています。この基準にしたがって取引価格の増減が行われているのです。澱粉粘度については、フォーリングナンバー値 300 が基準で、簡単な装置なので生産現場で用いられている測定方法です。

                   
フォーリングナンバーは試験管に小麦粉を入れ、水を加えて温めながら撹拌した後に、撹拌棒が糊状になった溶液中を降下して試験管の底に到達するまでの時間です。
小麦粉中のα-アミラーゼの活性が高いと、デンプンが分解され、溶液の粘度が低下して撹拌棒の沈降が早くなります(=フォーリングナンバーが低下します)。

              


フォーリングナンバー測定用の試験官と撹拌棒
試験管に小麦粉を入れて水を加えて温めながら撹拌した後に、撹拌棒が糊状になった溶液中を降下して試験管の底に到達するまでの時間がフォーリングナンバーです。