Annabel's Private Cooking Classあなべるお菓子教室 ~ ” こころ豊かな暮らし ”

あなべるお菓子教室はコロナで終了となりましたが、これからも体に良い食べ物を紹介していくつもりです。どうぞご期待ください。

サマスクローズ 166

2020年12月28日 | ダマスクローズをさがして ― Ⅲ

ローマの詩人Ovid、又の名を、プーブリウス オウィディウス ナーソー( Publius Ovidius Naso, BC 43/3/20 – 17/18、帝政ローマ時代最初期の詩人)は、ミルラを次のように語っています。

Marcantonio Franceschini - The Birth of Adonis, 1690. 左がミュラー、中央にアドニスが描かれています。

 

『キニュラース( Κινύρας, Cinyras)の娘ミュラー( Μύρρα, Myrrha、ギリシヤ神話に登場するフェニキアの王女。ミルラ、またはミュラ)は実の父親に思いを寄せ、夜の闇によって紛れて父と交わります。父親は相手の素性を知るや剣を抜き、ミュラーを追求します。彼女はアラビア中を逃げ、9か月後、神々に助けを求めます。彼らはミルラを憐れみ、彼女をミルラの木に変えます。植物の形をしている間にミルラはアドニスを産みます。伝説によると、ミルラの木の芳香のしみ出しはミルラの涙です。』

 

Wikiによれば、

『キニュラースの家系は代々、アプロディーテーを信仰していた。しかし、王女ミュラーはとても美しく、一族の誰かが「ミュラーは女神アプロディーテーよりも美しい」と言ってしまった。これを聞いたアプロディーテーは激怒し、ミュラーが実の父であるキニュラースに恋するように仕向けた。父親を愛してしまい、思い悩んだミュラーは、自分の乳母に気持ちを打ち明けた。彼女を哀れんだ乳母は、祭りの夜に二人を引き合わせた。顔を隠した女性が、まさか自分の娘だとは知らないキニュラースは、彼女と一夜を共にした。しかし、その後、明かりの下で彼女の顔を見たキニュラースは、それが自分の娘のミュラーだと知ってしまった。怒った彼は、ミュラーを殺そうとした。しかし、彼女は逃げのび、アラビアまで逃げていった。彼女を哀れに思った神々は、ミュラーをミルラ(没薬)の木に変えた。やがて、その木に猪がぶつかり、木は裂け、その中からアドニスが生まれた。』 となっています。

 

 


ダマスクローズ 165

2020年12月26日 | ダマスクローズをさがして ― Ⅲ

ラムセス4世が編纂した大ハリス パピルスには、エジプト第20王朝の初期の王ラムセス3世の時代のプントへの旅程に、コプトスまではナイル川を使い、そこで輸入品を輸出品と積み替え、降ろされた輸出品は、ロバと人力で陸路を、紅海まで運び、そこからプントまでは船が使われたと書かれています。描かれた魚の種類からの推定すると紅海を通り、陸路はワディ(涸れ川)を利用していたと考えられます。

  

      大ハリスパピルス(部分)紀元前12世紀、大英博物館蔵

オシリス神,第20王朝時代,ラムセス2世,ラムセス4世が描かれています。

紀元前15世紀のハトシェプスト女王の治世のプントとの交易方法は、船は定期的に紅海を横断し、瀝青(モルタルとして使われた)、銅、彫刻した御守、ナフタなどの商品を陸路で死海を下ってアカバ湾の頂上にあるエラットに輸送しました。その場所で、紅海の東海岸に沿って北に走る山々を通る貿易ルートに沿って、海と陸の両方で北に運ばれてきた乳香とミルラに合流しました。

         

ファラオ ホルエムヘブ(Pharaoh Horemheb)18王朝の墓に描かれた香りの神ネフェルトゥム http://www.godelectric.org/nefertum 

 

古代エジプト人は、「閉じない美しい人」を意味する香りの神ネフェルトゥム(Nefertum)を崇拝し、エジプト神話では、最初の日光とエジプトの青い蓮の花の素晴らしい香りの両方を表しています。 ネフェルトゥムは、創造主であるプタハ神(Ptah)とバステト女神(Bastet)の息子と見なされていました。彼は通常、頭の周りに青い睡蓮の花を持っている美しい若い男として描かれています。

   

              神々に香を捧げる

エドフ(Edfu)のホルス(Horus)神殿の壁には、お香の秘密のレシピが刻まれています。パピルスエーベルス(Papyrus Ebers、紀元前1550年頃に書かれたエジプト医学パピルス)には、没薬、乳香、樹皮、その他の挽いたハーブを液体(蜂蜜、ワインなど)と混ぜて火の上に置く“家や服の香りを甘くする”レシピが書かれています。

特定の神々と女神は特定の種類の香と関連がありました。たとえば、ハトホル(Hathor)は没薬と強く関連していました。エジプト人は、没薬と乳香の木から神々の樹脂の「涙」と「汗」を集めて、お香にしました。宗教的な秘密は、設定された日数、象徴的な成分、および魔法の呪文を必要とするお香を作るためのプロセスを覆い隠していました。僧侶たちは、香りのよい樹脂にハーブ、蜂蜜、ワイン、レーズンを混ぜ合わせることで、神々の体を神秘的に作り出していると信じていました。寺院の彫像の前でお香を焚くとき、僧侶たちは神々の香りを神に捧げていたのです。

 

 


ダマスクローズ 164

2020年12月24日 | ダマスクローズをさがして ― Ⅲ

古代エジプトの貿易相手国の一つであるプント国について少し触れておきます。

       

プント国の比定地 https://historum.com/threads/a-muslim-majority-indus-valley-civilization.124818/page-18 紀元前25世紀には既にプントとの交易があったのですが、帝国の北にはエーゲ海に“テラ”(別名、サントリーニ島、Σαντορίνη、 Santorini もしくは ティーラ島、Θήρα、 Thira、ミノア文明下の大規模な港湾都市遺跡、アクロティリ遺跡)があります。(テラの位置に赤い小さい印をしておきました)そしてそこには、すでにダマスクローズがあったはずです。

  

アクロティリ遺跡には ”Ship procession fresco(6/22参考)” が描かれていました。古代エジプトとの文化交流があったのではと考えられます。

 

事実、エジプトのトトメス4世(Thutmose IV (紀元前1600年)の墓には古代エジプト文明におけるバラの最初の記録、バラを描いた象形文字があります。紀元前400年から200年のエジプトの埋葬室ではバラの花輪が発見されました。後年になり、エジプトの女王クレオパトラ(69-30 CE)は、マーカスアントニウス(Marcus Antonius , 83-30BCE)の道にバラの花びらを撒いたと言われています。

しかし、上の4行の内容に関する裏付けは、画像でお示しすることができませんでした。今のネット上では情報を得ることができませんでした。薔薇に対する関心度が個人的な嗜好の範囲内だったのでは、或いは薔薇から精油を取る技術がまだ成熟していなかったのかも知れません。後で登場しますが(発掘されたアッシリアとメソポタミアの楔形文から、シュメール人とアッシリア人(BC1200)が、香りを抽出する技術を最初に習得していたことが明らかになっています。)乳香とミルラの魅力にはとてもかなわなかったようです。

 

紀元前26世紀、エジプト第4王朝のクフ王の時代にプント国から黄金がもたらされたという記録があり、また、紀元前25世紀、エジプト第5王朝のサフラー王はプント国との交易を行っており、没薬と白金(第18王朝時代にファラオの装身具に使われた)が輸入されています。

エジプト第11王朝のメンチュヘテプ3世の時代(紀元前1950年頃)エジプトから紅海までの陸路の整備が行われました。

古代エジプトでプントとの交易に最も熱心なファラオの一人だった紀元前15世紀のエジプト第18王朝のハトシェプスト女王は、カルナック神殿の埋葬品を調達するため、ヌビアの金を財源に紅海艦隊を作り、アカバ湾の最奥エイラートから、約500年ぶりとなるプントとの交易を行っていました。ハトシェプストの時代、プントからは乳香と没薬(ミルラ)がもたらされました。ハトシェプスト女王葬祭殿には5隻の船団による航海の記録がレリーフで残され、そこには、ハトシェプストが航海責任者で大臣でもあるネシにプントから宝物を奪い取るよう命じたかのような説明があります。プントから輸入された品は香料や黒檀の他、アフリカ各地から運ばれてきた金、象牙、毛皮などでした。

ハトシェプスト王の統治から9年、神アメンへの航海成功の祈願が残されており、そこに生きたままの香の樹を始めとする宝物を持ち帰るとの決意が述べられており航海の困難さが窺えます。エジプト第20王朝の時代、つまりエジプト新王国の時代が終わると、プントとの交易は途絶え、プントは神話と伝説の国となり、非現実的な夢の国として語られるようになりました。

 

    女王ファラオ ハトシェプストの命令によるプントの国への遠征

 

 


ダマスクローズ 163

2020年12月22日 | ダマスクローズをさがして ― Ⅲ

古代エジプトのミルの木

http://apelasyon.com/Yazi/838-mur-myrrha-murmursafi 

 

ミルラは古代世界でワインの防腐剤として使用されていました。ミルラは紀元前2000年のエジプトの防腐処理の重要な成分であり、古代エジプトの女性はミルラのペレットを燃やしてノミを駆除していました。又、香水、葬儀、防虫剤としても使用されていました。又、古代エジプトのピラミッドで働いていた人々は、入浴後にミルラオイルでマッサージされたことが知られています。 アロマセラピーは紀元前3500年以来エジプトで見られ、「ミルオイル」が頻繁に使用されてきました。 トゥタンカモンの墓(Tutankhamon’un mezarında )には「ミル香:mür tütsüsü」が使われていたことが知られています。 ミルラオイルは、エジプトの第3治世(紀元前2650〜 2675年)のミイラの防腐処理に他のオイルと一緒に使用されました。 「ミル香」は古代エジプト、ギリシャ、イタリアの神聖な儀式で使われたことが知られています。

 

古代エジプトの香「神々の香り」“Fragrance of the Gods” Incense in Ancient Egypt

https://iseumsanctuary.com/2019/02/12/fragrance-of-the-gods-incense-in-ancient-egypt/ から、香りについて述べるとき、これまでも幾たびか登場してきたミルラを、避けて通ることは出来ないようですから、もう少しエジプトのお話ししようと思います。

香りは何千年もの間エジプトの土地と文化に浸透してきました。美しい香りとお香の燃焼は、古代エジプトの神々と女神の崇拝に欠かせない物でした。エジプトの葬祭殿では、毎日大量のさまざまなハーブや森が燃やされていました。線香、灼熱の儀式、神々への供物を描いた数多くのレリーフとパピルスは、香りと線香が重要な役割を果たしていた証です。お香は、生命の具現化と神々実在をの芳香によって現したものです。ファラオは、エジプトの多くの寺院や墓に必要な量をまかなうために、香を栽培し、高価な樹脂を輸入しました。

 

香は「神々の香り」と見なされ、古代エジプトでよく見られる香の描写は、ミイラや神や女神の像に香を捧げるファラオや僧侶を提示する多くのシーンが描かれた墓や寺院にみられます。 薫らせる線香は、多くの場合、木炭を入れたボウルを持っている手をした人間の腕の形をしています。

アビドス(Abydos)のセティ1世(Seti I)の神殿からの19王朝のレリーフには、お香を使う典型的な例がみられます。セティはアメンレの像に向かって前かがみになり、右手は蓮の花の花束に水を注ぎ、左手は腕の形をした線香(香炉)から神に向かって煙を漂わせています。 お香は畏敬の念と祈りを意味しています。そして、「神々の香り」を作り出すことによって、神を呼び覚ましているのです。

   

大気の守護神、豊饒神アメンラ(Amun、別名Amen、imn、 Ἄμμων, Ἅμμων、Ámmōn, Hámmōn)に線香を捧げる

    

デイル エル バーリ Deir el Bahri  https://ancientegyptonline.co.uk/deirelbahri/ 

  

ハトシェプスト女王葬祭殿に描かれたハトシェプスト王即位9年にプント国に遠征した兵士

     

          エジプトに線香の苗を運ぶ兵士  

上の図は、デイル エル バーリにあるファラオの優雅な葬祭殿にあるレリーフです。そこにはハトシェプスト女王が遣わした神秘国「プント国」への貿易遠征隊のメンバーがエジプトの兵士が木の枝と斧を持って描かれています。エジプト第18王朝の時代に、ハトシェプストはアカバ湾の岬とプント間の南方の貿易を促進するために紅海艦隊を建設し、ヌビアの金と引き換えにカルナックに埋葬品を運びました。

ハトシェプストは、プントに向けてエジプト遠征を行ったのです。

 

 


ダマスクローズ 162

2020年12月20日 | ダマスクローズをさがして ― Ⅲ

   

※12トウキンセンカ https://homme.botavita.jp/pages/calendula-officinalis

 

キク科 キンセンカ属 Calendula officinalis

アフリカン マリーゴールド、フレンチ マリーゴールドの二つの系統があります。

アフリカン マリーゴールド(African marigold)は、16世紀始め頃に、メキシコからスペインに渡り「インドのバラ(rose of India)」と呼ばれ盛んに栽培されました。
1535年スペイン皇帝チャールズⅤ世が、チュニジアに出兵した時には、アルジェリアの海岸に帰化植物になり、アフリカン マリーゴールドが一面に生えていたことから、アフリカンの名がついたといいます。
アフリカン マリーゴールドの学名Tagetes erectaは、ジュピターの孫で、エトラスカ人に占術を教えたという美しいターゲス(Tages)に由来します。種名エレクタは、「直立する」の意味。

高さ30~60cmの一年草または二年草。茎や葉にやや粘る軟らかい腺毛が多くはえます。茎は直立してよく枝分かれします。葉は互生し、長さ5~18cmの広楕円形~披針形で細かい歯状縁となります。下部の葉はへら状となります。花茎の先に径10cmの頭花が1個つき、黄色~濃いオレンジ色です。花は昼間開いて、夜間は閉じます。果実は痩果で冠毛はなく、Cの字のように強く曲がり、背側に多くの突起があります。利尿,発汗,瀉下,止血,胆汁分泌促進,通経,芳香性健胃作用がある.結膜炎に目薬として用いる.観賞用として広く栽培される.かつて花は黄色の着色料としてチーズやバター,米料理やスープの色付けに利用された.高価なサフランに対して「貧乏人のサフラン」とよばれました。花は古代ギリシヤの時代から薬用、染料などに利用されました。また、花と葉は食用になります。

有効成分は、トリテルペン、樹脂、苦味配糖体、揮発油、ステロール、フラボノイド、粘液質、カロチン他で、西洋ハーブ治療では万能の薬草の一つとして用いられ、炎症の肌の殺菌、治癒能力は感染症を予防する薬草として利用され、切り傷、けが、火傷、にきび、発疹、白癬、水虫や赤ん坊のおむつかぶれなど皮膚に各種の治療に用いられます。また、抽出液は、胃炎、胃潰瘍、大腸炎などに消化器系の炎症に用いられます。

 

 


ダマスクローズ 161

2020年12月18日 | ダマスクローズをさがして ― Ⅲ

    

https://www.lab2.toho-u.ac.jp/phar/yakusou/mihon/image/tatijyakousou-l.jpg 

上の写真はえらく姿勢が良いですが、普通に植えると下のようにごしゃごしゃとしています。

           

https://greenhuiz.com/products/thymus-vulgaris-thyme-common-seeds 

※11.タチジャコウソウ、Thymus vulgaris、立麝香草、(別名コモンタイム、 Garden thyme)

 

原産地は地中海沿岸です。日本には明治初期に渡来しました。小低木です。樹高は20~30cm、茎は叢生し、下部では匍匐しますが上部では直立します。花期は5~6月、薄紫色の小さな花を輪散花序につけます。花期の頃刈り取り、水洗いしてフレッシュで用いるか、日干しにして用います。ティー、香辛料、うがい薬、ローション、石鹸、浴湯料に。全草を水蒸気蒸留で精油(チアミン油)を得ます。芳香成分に発汗、収れん、利尿、強壮、鎮痙、鎮咳作用があります。活性物質として、チモール、カルバクロール、リモネン、ロスマリン酸、フラボノイド、トリテルペンを主成分とする1,5 – 3%の揮発性オイルを含有しています。呼吸性カタル、過敏性咳および百日咳に、口や喉の炎症のためのうがい薬やうがい薬として、ハーブやお酒の成分として使います。

  

日本全土の亜高山~高山帯には、シソ科ジャコウソウ属のイブキジャコウソウ Thymus quinquecostatusが自生しています(上図)。和名:伊吹麝香草、別名:百里香(ひゃくりこう)
日本全土の高山から低山までの日当たりのよい岩場や草地に生え、滋賀県の伊吹山に多く自生するところからこの名がついています。石灰石、蛇絞岩、安山岩地帯によく育ち、茎は地上を這って延び、じゅうたんのように群落をつくっています。木本類で一番矮性と言えます。6~7月の開花期に、地上の茎葉をそのまま刈り取り、水洗いした後に陰干しにします。有効成分は、発汗作用があるパラ・シメン、カルバクロール、チモールなどの精油成分を含みます。
発汗作用があり、かぜに用いると効き目があります。
乾燥したものを、1回量2~3グラム、カップに入れて熱湯を注いで服用します。

 

 


ダマスクローズ 160

2020年12月16日 | ダマスクローズをさがして ― Ⅲ

    

※9.シコン

https://www.richters.com/Web_store/web_store.cgi?product=X3016&show=&prodclass=Herb_and_Vegetable_Seeds&cart_id=111.100 

ムラサキ(紫、 Lithospermum erythrorhizon)ムラサキ科の植物の一種。多年草で、初夏から夏にかけて白い花を咲かせる。根は暗紫色で、生薬であるシコン(紫根)は、ムラサキ科のムラサキの根を乾燥したものです。
漢方的には清熱涼血、解毒、透疹などの効能があり、発疹、吐血、鼻血、腫れ物などに用いられます。特に、シコンを配合した紫雲膏は、火傷や凍傷の治療薬として有名です。
また、根は古くから紫色の染料として用いられ、中国、朝鮮、日本に分布する多年草「ムラサキ」の根を乾燥させたものです。中国最後の薬物書「神農本草経(しんのうほんぞうきょう)」には「紫草」の名で収載されています。

  

※10.ヒレハリソウ Symphytum officinale ( 鰭玻璃草 別名、コンフリー ) ヨーロッパ、西アジア原産。花色…紫、白、ピンク、水色。

コンフリーは、ヨーロッパ原産のムラサキ科ヒレハリソウ属の多年草です。分布域はヨーロッパ全域に渡り、牧草地、小川や池の周辺など、やや湿り気のある場所に自生しています。コンフリーは、少なくとも紀元前400年からハーブとして栽培されており、薬用、または食用として利用されていました。そのため、北アメリカやニュージーランドなど、多くの地域で逸出したものが野生化し、帰化植物として定着しています。日本には明治時代に食用、または牧草として導入され、昭和40年代には健康食品として一大ブームとなって各地で栽培されていました。ただし、コンフリーの摂取による肝障害の事例が海外において多数報告されており、2004年に厚生労働省が食用としての流通を規制しています。

昭和40年といえば、終戦から20年で、まだ家では庭でニワトリを飼っていました。コンフリーの大きく茂った、ごわごわした毛のある葉を思い出しました。親がどこららか聞いてきてニワトリのえさに植えていたのです。何処にでも大きく茂って、おまけに栄養価も高いというので植えていたのですが、2004年に、厚生労働省は、『コンフリーを含む食品を摂取して肝静脈閉塞性疾患で、主に肝臓の細静脈の非血栓性閉塞による肝硬変又は肝不全及び肝臓癌を起こす例が海外で多数報告されているとして』摂取を控えるよう注意を呼びかけると共に、食品としての販売を禁止しました。

知らないとは怖い物で、ニワトリだけで、人間が食べなくて良かったと思います。加熱で毒性が減ることはない、ピロリジジンアルカロイドのエチミジン(echimidine)とシンフィチン(Symphytine)によって肝障害が引き起こされます。特に根にある肝臓の解毒酵素(シトクロムP450)によるアルカロイドへの変換が原因で、急性毒性が有るほか胎盤を通じた胎児への影響があるといわれています。新しい、食べたことのない物には、特にハーブには気を付けねばなりません。薬用だった物を食用に回したのが間違いだったんですね。天ぷらにしても駄目ですよ。

 

 


ダマスクローズ 159

2020年12月14日 | ダマスクローズをさがして ― Ⅲ

      

https://www.chiba-muse.or.jp/NATURAL/special/yama/news/2016/160217coptis.htm 

オウレンの葉は、基本的には根元から伸びた葉柄の先に3つの小葉がつく「三出複葉」という形をしています(上図の1)。3つの小葉がさらに3つに分かれているものを「二回三出複葉」(図の2)、その小葉がさらに3つに分かれているものを「三回三出複葉」といいます(図の3)。二回以上の場合と区別する場合には、ただの三出複葉を「一回三出複葉」と呼びます。
オウレンのうち三回三出複葉の変種がコセリバオウレンで、二回三出複葉のものは変種セリバオウレン、一回三出複葉のものは変種キクバオウレンといいます。


               

※7.オウレン

オウレンは常緑多年生の草本植物で、数少ない日本特産の薬用植物です。北海道、本州、四国の針葉樹林下に群落しています。花季は3-4月、根元から高さ10 cm位の花茎を出し、2-3個の白色の花を付けます。雌株と雄株の区別があり、花びらのように見える5-7片のものは実は萼で、本当の花びらは、萼片より短く、細いさじ形になったものもので、5-6個あります。矢車のように広がった果実の先には穴があいていて、揺らすと穴から種子がさらさらと落ちます。9-11月頃、根茎を堀取って細い根を除いて乾燥させたものが生薬の「黄連」です。約3-7%のベルベリンという成分が含まれています。薬用に用いられる日本産のオウレンは、小葉の切れ込みによって1回三出複葉のキクバオウレンCoptis japonica var. anemonifolia (主に日本海側に分布)と2~3回三出複葉のセリバオウレンCoptis japonica (Thunb.) Makino var. major (Miq.) Satake(主に太平洋側に分布)の2種類があります。現在、国内栽培は福井県を主に、静岡や高知でわずかに行われている程度で、生薬として使用されているのは中国産(主に四川省)の同属植物が主です。

    

※8.カミツレ ジャーマンカモミール

Matricaria recutita L. 別名、カモミール、カモマイル、カモミーユ、キク科の耐寒性一年草。和名はカミツレ(加密列)。ヨーロッパ、特にドイツで薬用にされる一年草のハーブです。可憐な白い花にはリンゴのような香りがあり、風邪、頭痛、下痢などに薬草茶として利用されてきました。 地上部の茎葉、特に花に、良い香りがする精油を含んでいます。精油成分には主に、抗炎症作用があるカマズレンを多く含むほか、ノニール酸やテルペンアルコール、その他配糖体のアビゲニンなどを含んでいます。ストレスによる胃の痛みなどにハーブティーとして飲用されています。特有の香気はテルペンアルコールによるものです。医療でも活用されているカマズレンは、青色油状で腫れを引かせる消炎作用があり、その他の精油は延髄を興奮させて、発汗、血液循環を促す作用が知られています。その他、腸内ガスの排出や、体温を温める効果が知られています。外用では、入浴剤やうがい薬としても用いられます。

直径2cmほどの花は、成熟するにつれて黄色い中心部が盛り上がり、白い花弁が反り返った形になります。黄色い部分は中空で、つまむとフルーティーな甘い香りがしますが、葉には香りはありません。乾燥した花から水蒸気蒸留によって濃い青色の精油が抽出できますが、含有量が少ないため高価です。精油は、主に化粧品や香水、食品に利用されるほか、アロマテラピーに使われることもあります。
キク科植物にアレルギーのある方は、栽培にも利用にも注意が必要です。また、飲食用には適切に用い、多量摂取は避けます。耐寒性があり丈夫で、一度植えればこぼれダネで毎年芽生え、庭のあちこちに広がります。秋まきにして3月上旬にリン酸分が多めの肥料を施すと、株が充実して花をたくさん収穫できます。
カモミールと呼ばれるものとしては、ほかにローマカミツレ属の多年草ローマンカモミール、カミツレモドキ属の多年草で染色に利用されるダイヤーズカモミール、ワイルドカモミールとも呼ばれるコシカギクなどがあります。ジャーマンカモミールの花はローマンカモミールとよく似ていますが、葉には芳香がないことで簡単に識別できます。

ジャーマンカモミールは一年草ですが、種がこぼれて翌年もしっかりと芽を出すので改めて植え付ける必要はありません。

 

 


ダマスクローズ 158

2020年12月12日 | ダマスクローズをさがして ― Ⅲ

  

※5.ハマメリス https://jp.123rf.com/photo_23043019_hamamelis-virginiana.html 

ハマメリス (Hamamelis virginiana、 別名、アメリカマンサク、Witch-Hazel、American Witch-Hazel)アメリカ中南部に自生し、冬に芳香のある黄色い花が咲無数に咲きます。 枝を蒸留して得られる精油には殺菌、収斂作用があり、昔から利用されています。

 

※6.フキタンポポ https://blog.goo.ne.jp/kerriajp/e/23759a247753f8086baba1f7b456e2b4 

フキタンポポ(蕗蒲公英、Tussilago farfara キク科フキタンポポ属の多年草)

蕾は款冬花(かんとうか)という生薬で、鎮咳去痰作用があります。欧米でも古代ギリシャ時代から薬用として用いられてきましたが、近縁種であるキオン属同様に肝毒性が強いピロリジジンアルカロイドを含んでいることが判明したため、ドイツでは発売禁止となっています。

ヨーロッパ、北アフリカ、インド、中国、シベリアで自生しているので日本で栽培するにはそれなりの対策が必要です。しかし、フクジュソウと同じ時期に咲くことから、フクジュソウの代わりにお正月の花として出回っているようです。フクジュソウは咲くまでに7年以上もかかりますからねえ。今は安直なのが流行りですし、安価なのが魅力なのでしょう。福寿草もおいおい姿を消すのでしょうか。

 

 

 

 


ダマスクローズ 157

2020年12月10日 | ダマスクローズをさがして ― Ⅲ

※3.ダイオウhttps://takeda-kenko.jp/yakuhou/library/plant/vol34.html 

 

Rheum coreanum Nakai × R.palmatum Linn. 大黄甘草湯をはじめ各種の漢方処方に配合される生薬の一つですが、日本では生育させることが困難な薬用植物の一つです。薬効には、瀉下作用が挙げられ、含まれているセンノシド等の成分が大腸に作用して効果が現れるとされています。他にタンニン類が含まれており、収斂作用、止瀉作用等が期待できます。相反する作用、成分がそれぞれ主要成分として一つの生薬に同居しているのが特徴です。

   

※4.トルメンチラ 写真はエチゴキジムシロ (Potentilla togashii )

 

https://blog.goo.ne.jp/dachasnowman/e/583ceea6a923b2f5b165d9eb178bb170 

薔薇科。ヨーロッパ、西アジア、シベリア、まれに地中海に分布し、酸性の湿土、特にヒースの生い茂った荒野、沼沢地、混合林や丘陵に生える多年草です。茎(トルメンチラ根)に薬用があります。収斂、止血、抗炎症薬、傷薬に用いられ、激しい下痢に対しては強力な治療薬です。主としてチンキ剤が切り傷、擦り傷、日焼けを含む火傷に外用されます。薬用に根茎(トルメンチラ根)が用いられます。根茎には、カテコールタンニン、アルコールのトルメントール、配糖体のトルメンチリル、でん粉、糖、苦味質のキノビン酸などが含まれます。この薬草には上皮形成を促進させる作用があります。
        

 

 


ダマスクローズ 156

2020年12月08日 | ダマスクローズをさがして ― Ⅲ

化粧品の専門語の中から ”抽出” に関係する用語を取り上げました。いずれの用語も抽出された ”物“ を指す言葉です。

https://www.sccj-ifscc.com/library/glossary から

 

エキストラクト(Extract)

“溶剤を用いて抽出したエキス”という意味で、植物に由来するさまざまな成分、植物エキスを指します。ここでは ”エキストラクト” という言葉に抽出方法を指す意味は含まれてはいません。

皮膚の収れん作用や清涼感を付与する作用があるグリチルレチン、アズレン、ヒノキチオールなど。皮脂の分泌を調整し、肌のきめを整えてくれる、オドリコソウ※1、コウスイハッカ※2.、シラカバ、ダイオウ※3.、トルメンチラ※4.、ハマメリス※5.、フキタンポポ※6.、ホップなど。抗炎症作用があり、湿疹、かぶれなどの皮膚の炎症を軽減する、アロエ、オウレン※7.、カミツレ※8.、カンゾウ、シコン※9.、シソ、ヒリハリソウ※10.など。殺菌・静菌作用があり、肌や頭皮を清潔に保ち、ふけ、かゆみを防ぐ、カミツレ、タチジャコウソウ※11.、トウキンセンカ※12.、マンネンロウ、ユーカリなど。このほか、紫外線防止作用、皮膚賦活作用、保湿作用などさまざまな作用が植物抽出物にはあり、化粧品成分として使用されています。

(上で登場したハーブ、薬草;※1~12を次に紹介しておきます)

         

※1.オドリコソウ https://fng.or.jp/shinjuku/2017/04/24/post_801/ 

(踊子草、学名:Lamium album var. barbatumシソ科オドリコソウ属の多年草で、花の付き方が、笠をかぶった踊り子達が並んだ姿に似ているというのが名前の由来です。有効成分:テルペノイド、ラマルピド、アルカロイド、スタキドリンなど。腰痛には、乾燥したオドリコソウ適量を、木綿の袋に入れて、薬湯料として入浴します。

     

※2.コウスイハッカ https://love-evergreen.com/zukan/plant/13432 

(Melissa officinalis、別名、セイヨウヤマハッカ (西洋山薄荷) 、レモンバーム、メリッサ)。シソ科の多年生のハーブ。南ヨーロッパ原産。食べ物、飲料の香り付け、ハーブとして医療に利用されてきました

葉にはシトラールが含まれレモンの香りがします。茎の上部に輪散花序を出し、白色の小さな花を少数付けます。花冠は2唇形で、蜜を多く含むためミツバチがよく訪れます。精油を得るほか、ハーブティーやポプリ、料理の香りづけ、入浴剤などに利用します。

精油成分、タンニン類、フェノール酸、ロスマリン酸などが含まれます。 レモンバームには精神の高ぶりを鎮め、頭痛や腹痛などの痛みをやわらげる働きがあります自律神経のバランスを整えてくれます。

 

 


ダマスクローズ 155

2020年12月06日 | ダマスクローズをさがして ― Ⅲ

5.  溶剤抽出法

植物のような(電荷を帯びていない)非極性の化合物にはヘキサンのような極性の低い溶媒を使って効果的に抽出します。この抽出液をろ過し、蒸留により濃縮してコンクリート (香料)と呼ばれるろう状の塊を作ります。ヘキサンより極性がある香り成分はコンクリートからエタノールに抽出されます。エタノールを低温で真空蒸留して除去蒸発すると、この中に溶けていたアブソリュート(油)が残ります。(溶剤抽出法で得られた製品はエッセンシャルオイル(精油)ではなく、アブソリュートと呼びます。)

このように、アブソリュートは、熱や水によって精油成分が損なわれることがないため非常に良い香りがしますが、溶剤抽出にきつい化学薬品を使用するので、残留物が必然的にアブソリュート内にも存在し、肌が荒れる可能性があります。従って、アブソリュートはマッサージには適していません。アブソリュートオイルにはさまざまな程度の化学汚染物質が含まれているので、それらを摂取したり、肌に直接塗布したりしないでください。化学物質が、皮膚の炎症やアレルギー反応を引き起こす可能性があります。

一般的により環境にやさしい、または全体的な製品を求めるなら、純粋な水蒸気蒸留エッセンシャルオイルを使い、適切なキャリアオイル(ローズ、イランイラン、フランキンセンスなど)で希釈することです。オイルを適切に希釈していれば、問題は発生しません。

 

アブソリュートとは、花から石油エーテルやヘキサンを使って抽出したコンクリートをエタノールで再抽出してでき上がった精油のことですが、花のアブソリュートをとくに花精油と呼びます。例えば、ローズアブソリュート、ジャスミンアブソリュート、チュベローズアブソリュートなどがあり、その他にバニラアブソリュート、オークモスアブソリュートなどがあります。

  1. ※ 超臨界二酸化炭素抽出法( supercritical carbon dioxide extraction )

1970年代に開発された新しいエッセンシャルオイル(精油)の抽出方法です。水や二酸化炭素に温度と圧力を与えていくと、ある時点から気体と液体の両方の性質を持った状態が生まれ、超臨界流体になります。二酸化炭素の場合は、31.1℃、圧力75.2 kg/cm2以上の状態の臨界点である温度の状態にすると、温度や圧力を僅かに変化させることで密度が大きく変化する特徴を生かし、圧力を下げたり、温度を上げて低密度の状態にし、圧力を緩めて再び二酸化炭素を気化すると、エッセンシャルオイル(精油)分だけが残ります。超臨界流体は密度は液体に近いが、粘度は気体に近いので分離に要する時間が短く、低温で効率のよい抽出ができ、CO2は抽出されるオイルと化学反応を起こさず、無毒、無色、無臭で低温に保たれています。その為、天然のもつ微妙なニュアンスが再現できます。又、超臨界抽出法では、水蒸気蒸留では分子が大きすぎて取り出すことのできない成分も抽出することができるため、自然の植物中に存在している状態に極めて近い形のままの上質なエッセンシャルオイル(精油)を得ることができます。又、抽出条件を変えることで、同一素材から異なった香りのタイプの抽出物を得ることが出来ます。グレープフルーツ、ブラックペパー、バニラ、ワサビなどの食品香料を中心に応用が進められています。

https://www.sccj-ifscc.com/library/glossary_detail/1076 から

 

      

二酸化炭素は温度と気圧を変化させると、固体、液体、気体と変化し、31℃、72気圧を超えると気体でもない液体でもない物質に変化します。二酸化炭素は31℃という低温で超臨界二酸化炭素に変化するため、用いる物質に熱変化を起こさせずに自然に存在している状態で植物から精油を得ることができます。

 

 

 


ダマスクローズ 154

2020年12月04日 | ダマスクローズをさがして ― Ⅲ

3-2. 温浸法(仏:L'enfleurage à chaud、英:Hot enfleurage)は、熱を加えて抽出する方法で、熟成法とも呼ばれます。薔薇やオレンジの花(ネロリ)のように、摘みとった後に香りが失われる花に利用されました。冷浸法とほとんど同じやり方ですが、成分の純度を高める作業が高温で行われます。脂肪を熱して液体にし、これに花を投入し、脂肪が香気成分で飽和するまで(脂肪が香水を吸収できなくなるまで)、数度花を取り替えます。古代以来、エジプトで知られていた方法です。

 

  1. 油脂吸着法(Maceration, マセレーション法又は温室法)
    マセレーション法は、アンフルラージュ法に似ており、自宅でエッセンシャルオイルを“希釈された状態で”作ることのできる方法です。花や葉を押し潰し、油腺や細胞を破裂させて温かい状態の植物油に入れます。植物油にエッセンシャルオイルを吸収させた後、植材を取り除きます。そして、新しい植物を再び暖められた植物油の中に入れます。脂肪または植物油が十分に濃縮されるまでこの過程を繰り返します。

     

上の絵は、薔薇の花とアーモンドオイルのマセレイションオイル

 

簡単にできる薔薇油(Rose Macerated Oil)France's Natural Beauty Secretsから、

 

方法;

1.    薔薇の花びら、ライスオイル、ラズベリーオイル等(オイルの種類については後述)を瓶に入れる。

2. オイルと薔薇の花びらをダブルパンで、弱火で2時間加熱する。(決してクックしない)

3. 薔薇の花びらから匂いが出きったら火から外して24時間冷凍庫に入れる。

4. 冷凍庫から出して室温に置き、溶かす。

5. 綿の布で漉す。

6. オイルを瓶に詰める。

 

 

下の絵は、おそらくオイルの中に香り高いハーブを入れただけの、“ハーブオイル”でしょう。詳細はわかりませんが、これらを作る際に重要なことは、ベースとなるオイルの選択です。ご自分で作られる方の為に“オイル”について少し述べることにします。

         

 https://www.pinterest.jp/pin/725220346225029285/ から

https://shop.essentialoilsandyou.co.uk/collections/carrier-oils を参考にしました。

 

Almond oil

Avocado Oil

Argan Oil

Apricot Oil

Calendula Oil

Borage Oil

Black Currant Seed Oil

Pomegranate Oil

Macadamia Oil

Jojoba Oil

Rice Oil

Raspberry Seed Oil

Rosehip Oil

Sea Buckthorn Oil

 

 

 

ナッツアレルギーなど様々なアレルギーに気を付けて、オイルの選定及びその品質にはくれぐれも慎重にせねばなりません。

 

 


ダマスクローズ 153

2020年12月02日 | ダマスクローズをさがして ― Ⅲ

2. 水蒸気蒸留法
原料植物を蒸留釜に入れて蒸気を送り込みます。オイル成分を、熱蒸気を使って出します。(エッセンシャルオイルは揮発性です)すると植物中にある精油成分が遊離、気化して水蒸気と一緒に上昇します。この精油成分が混入した水蒸気を冷却すると、液体に戻りますが、エッセンシャルオイル(精油)は水には溶けない性質を持ち、水よりも軽い(一部の精油は水より重い)ため、水とエッセンシャルオイル(精油)の2層に分かれます。これを水と分離して取り出し、100%純粋の精油(エッセンシャルオイル)を得ます。分離した水には、水溶性の芳香成分と微量の精油が残っており、芳香蒸留水(オレンジフラワーウォーター(ネロリ水)、カモミールウォーター、メリッサウォーター、ラベンダーウォーター、ローズウォーターは全てフローラルウォーターです)として利用されます。水蒸気蒸留法は比較的安価な装置で行うことができますが、一方で原料植物が熱と水に晒されるため、また、デリケートな成分を含む精油は、熱と水に反応して壊れてしまうためこの方法ではエッセンシャルオイル(精油)が抽出できない植物もあります。ラベンダー、ペパーミントなど多くの精油はこの方法で抽出されています。

              

    https://www.orangeflower.jp/soap/shop/water/neroli_water.html 

 

  1. アンフルラージュ(Enfleurage)法

“Enfler” とは “腫れ上がらせる” という意味です。アンフルラージュ法は、油脂が香りを吸着する性質を利用して花から香料を抽出する方法です。古くから行われたやり方で、室温で行う冷浸法と、熱を加える温浸法の2種類あります。

 

3-1. 冷浸法(仏:L'enfleurage à froid、英:Cold enfleurage)は、ジャスミンやチューベローズ(月下香)など、摘みとった後も香りを失わない花から香気成分を抽出するために使われた方法です。室温で抽出が可能であるため、熱に弱い成分も抽出することができます。

脱臭した固形の動物性脂肪(通常は精製した豚脂やヘット(牛脂))をガラス板に塗り、花びらを並べて載せ、花びらに含まれる香気成分をトレーの脂肪に吸着させ、何度も繰り替えます。脂肪1kgにつき花2-3kgの割合で作業を1か月ほど続けた後、低温でエタノールと混ぜて香気成分を脂肪から分離します。

香り成分が多量に含まれた「ポマード」と呼ばれる脂が出来ます。このポマードをアルコールに溶かします。香り成分をエタノールに移した後、液体を加熱し、エタノールを蒸発させて精油を得ます。溶剤抽出法が一般的になる以前に、ジャスミンやチュベローズ(ゲッカコウ、月下香)など、水蒸気蒸留法では熱により壊れてしまうようなデリケートなエッセンシャルオイル(精油)を抽出するのに用いられていた方法です。フランスのグラースなどで、かつては盛んに行われていましたが、非常に多くの人手を要し、製造コストがかかることから、溶剤抽出法にとって代わられました。現在では、観光客に見せるアトラクションとして行われている程度で、今は商業的には実用されていません。 

          

   https://www.carrementbelle.com/blog/fr/2019/06/02/fabrication-parfum/ 

この冷浸法を利用して、チョコレートにハーブの香りを染み込ませようというレシピがありました。チョコレートの中にハーブを入れるという、極めて簡単な方法ですが、新らしいお菓子のヒントになりそうです。

 

ハーブチョコレート

冷浸法(Cold enfleurage)でチョコレートに香りを付けます。

               

チョコレートに含まれるココアバターに着目してチョコレートに花びらの香りを染み込ませます。アンフルラージュ抽出技術は、香りを抽出する方法です。 ここでは、花びらの近くに脂肪(カカオバター)を置きます。花びらは香りを拡散させ、脂肪はそれらを吸収します。 目的の香りの強度に達するまで繰り返します。

  

方法;

チョコレートを細砕する。花びら(又はハーブ)を半分蓋がしっかりと締まる瓶に入れてチョコレートを加える、残りの花びら(又はハーブ)を入れる。しっかりと封をして冷暗所に少なくとも4日間入れる。花びら(又はハーブ)を取り替えて好みの香りの濃さになるまで繰り返す。

(チョコレートはテンパリングをして型抜きをするので、その際にハーブを入れて香りをチョコレートに移してはどうでしょう。45~50℃で溶かす際に入れておけばと思うのですが、近々試みようと思います)

 

次にご紹介するチョコレートはどのように香りを付けているかはわかりませんが、一例として参考にしてください。ハーブとチョコレートの取り合わせは、色々と日本発の材料も試みられていますが、これといった、出色の味にはなかなか巡り会えません。少しでも参考になればと思います。

        https://www.lmorechocolat.com/parisian-herb-and-spice-truffles/