Annabel's Private Cooking Classあなべるお菓子教室 ~ ” こころ豊かな暮らし ”

あなべるお菓子教室はコロナで終了となりましたが、これからも体に良い食べ物を紹介していくつもりです。どうぞご期待ください。

キッシュ~サーモンキッシュ

2016年06月27日 | パン

Mulot's Tourte au Saumon ミュロのサーモントルテ

本格的な夏の日差しが照り付けています。あまりの日差しで鉢に植えていたディルがタネを付ける前に萎れています。これから美味しいディル料理が食べられると思っていた矢先なのに残念です。3月に種を植えて準備していただけになおさらです。ディルをきれいに演出し、活用しているサーモントルテ(キッシュの一種なのだけれど、パリのサンジェルマン・デプレ店ではトルテと呼んでいる)を出しているミュロを思い出しました。

Mulotとは Gerard Mulotジェラール・ミュロのことで、ここのサーモントルテは素晴らしい味をしているだけではなくディルとサーモンを生かしたところが北欧の料理を思い起こさせて期待が膨らみます。似たようなトルテは多いけれど、トルテの上にクラストをかぶせるのではなくアパレイユを流し入れてディルの緑色、トマトの赤、アパレイユの黄色を生かしたレシピは食欲を刺激して素晴らしい取り合わせです。なぜこんなことを突然言い出すかと言えば、そうです、これからミュロのサーモントルテに負けないキッシュを作ろうというのです。

その前に、ミュロのサーモントルテってどんなものなのか紹介しておかなくてはいけませんね。
絵はhttp://www.yelp.com/biz/g%C3%A9rard-mulot-paris-5から引用させていただきました。



ショーケース上段のどれかがサーモントルテだと思います。少し小さいですが感じはわかるでしょう。中が見える絵を次に取りあげました。




ジェラール・ミュロが直接作っていたころはディルの緑がもう少し鮮やかに、全体に均一に置かれていたように思います。普通は丸く作るのですが、切り売りの場合は下のように四角く作っています。表面と切り口が見えるのでミュロのトルテ(キッシュ)がどのようなものかがわかります。ミュロのレシピを紹介しておきましょう。

サーモンは前もって下処理をします。北欧では生の鮭を塩・砂糖・黒胡椒・ディル、ディルシードなどの香辛料とアクアビット又はブランデーとレモンに漬けて、前処理(gravlax:グラブラックス)をすることが多く風味も増すのでこのレシピもそのようにしています。(北欧にジャガイモが輸入されたのは、1756年にドイツで起こった七年戦争後であると言われているのでジャガイモで作った、しかもキャラウェイ、フェンエル、アニスなどで風味を付けたアクアビットを使うと北欧の、少し異国めいた雰囲気になることでしょう。)一番上に見えるのはディルの葉です。
ほうれん草、マシュルームをバターでソテーし、塩と白コショウを振ります。トマトは塩を振りかけておきます。
クラストは軽く仕上げるためにコーンスターチを入れます。クラストの高さは2.5cm、厚みは3.3mmにして空焼きしておきます。バターでソテーしたフィリングを入れて、生クリーム、牛乳、卵で作ったアパレイユを入れて焼きます。


ミュロの現在のオーナーはGe'rard Mulotで、彼がアルザス(フランスとドイツの国境にまたがる地域)出身であることと、キッシュの形とは関連があるようです。
キッシュ:Quiche ( /ˈkiːʃ/ KEESH ) はアルザス地方の方言キュッヘン ( Küchen ) に由来しています。キッシュに大きな影響を与えたスタニスワフⅠ世は、後にロレーヌ ( Lorraine ) と名前を変えた当時、ドイツの支配下にあった中世ロートリンゲン ( Lothringen ) で生まれました。スタニスワフⅠ世が1766年に亡くなるとロレーヌはフランスに統合され、キッシュはフランス国内に広まります。(1766年スタニスワフの死後、公国はフランスに併合され、紆余曲折のあと1919年のヴェルサイユ条約の結果、今はフランスに帰属しています。)

ドイツにはベーコンを入れた Speckkuchen とタマネギを入れた Zwiebelkuchen があります。どちらも似た形をしているので後の方の絵を引用しておきましょう。 http://www.lecker.de/zwiebelkuchen-rezepte-fuer-herzhaftes-herbstgebaeck-51497.htmlから引用させていただきました。





http://www.monika-web.de/zwiebelkuchen.htmlからは四角に焼いたトルテを引用させていただきました。




レシピは次の通りです;

Zutaten (für 1 Backblech)

Für den Hefeteig:
300 g Weizenmehl Type 550
250 ml lauwarme Milch; ca.
1 TL Zucker
1/2 TL Salz
20 g Hefe (1/2 Würfel)
75 g Butter oder Margarine

Für den Belag:
1,5 kg Zwiebeln
100-150 g durchwachsener Speck
1 EL Butter oder Margarine
1 eingeweichtes Brötchen
250 g Sauerrahm
3 Eier
1 TL Salz
etwas Pfeffer
1 TL Kümmel (mehr oder weniger, ganz nach Belieben)
1 Prise Muskat
Öl oder Margarine für das Backblech

この絵からも、ミュロのトルテ(キッシュ)はドイツの影響を大いに受けているといっていいでしょう。
今のミュロのサーモントルテは昔に比べてトマトとマシュルームの量が少ないようです。それに、どのトルテも(絵を拡大するとわかるのですが)クラストの真ん中で、クラストを継いだように見えます。フィリングを焼いている途中でクラストの真ん中が落ち込んだのかもしれません。クラストはイングランドのパイを参考に、威厳に満ちたクラストに変身させようと思います。数あるレシピの中からこのトルテにあった、柔らかでいて口当たりのあるクラストを使いましょう。フェンネルシードとディルの組み合わせは日本人には少し癖があるかもしれません、ハーブを何種類か使った、優しい香りを演出しましょう。




クラストの下から順にマシュルーム、サーモン、ホウレン草、トマト、ディルをのせています。
マシュルームは太白ごま油でソテーして、マシュルームの持ち味を生かしました。サーモンはタイムとローズマリーの若芽、ホワイトペッパー、ホワイトワインに漬け込んで癖のあるにおいを取るとともバターでソテーして味に深みを与えました。クラストはご覧の通りサクサクに仕上がりました。クラスト先端は細かい「銃眼」模様をつけました。キッシュは厚みを4.5cmにしてフィリングと生地のコンビネーションが楽しめるようにしました。






トルテ~アプリコットトルテ

2016年06月26日 | 洋菓子

Aprikosentorte

アプリコットのタルトといえば、あなべるの「アプリコットのタルト」を思い出すかも知れない。



さらにおいしいものは作れないだろうか。Aprikosentorte mit Gussはどうだろうこういう感じかな?というのがあったのでリンクしておこう。

このレシピはアプリコットとアーモンドを組み合わせたタルトで、あなべるのレシピと基本的には変わらないけれど、バニラシュガーを使ったところが目を引く。7月はアプリコットの季節なので生のアプリコットを使った新しいアプリコットのタルトにトライしようと思う。

画像は http://www.davewilson.com/product-information-commercial/product/apricots から引用しました。

サイトの中にはアプリコットの品種が数種紹介されています。(商業用ですが)

サイトからどんなレシピのアプリコットタルトが今の時代にのっているのか眺めてみよう。季節の果物を使ったタルトは色々あるけれど、品のいい、見た目のいい、味はもちろんいいものがいい。こんなのはどうだろうかレシピ



Zutaten für 0 Portionen        1個分

für Rührteig:            生地:
3 Eier, getrennt           卵           3個
250 g Zucker            砂糖         250g
1 Vanillezucker          バニラシュガー     1
100 ml Öl             オイル         100ml
100 ml Milch            牛乳         100ml
250 g Mehl             小麦粉        250g
1/2 Pack. Backpulver        ベーキングパウダー  1/2パック

für Belag:              トッピング:
800 g Zwetschgen            西洋スモモ
Zimt-Zucker oder Puderzucker      シナモンシュガー又は粉糖

これは西洋スモモのレシピだけれど、形がいい。アイキャッチングに優れている。上のレシピのいいところと合わせて2?で割れば?(ここが難しい、そして楽しいところだ)いいタルトができるかもしれない。
上のレシピは強力粉に少し多めのバターと粉糖を入れたタルト生地で、アパレイユに乳脂肪分約28%、pH約4.5のサワークリームを使っている。バニラプディングパウダーの中にバニラシュガーとシナモンを入れたリッチな味だ。

Teig

250 g Mehl (Type 550)
150 g Butter
120 g Puderzucker
1 Ei, Größe M
1 Tl Backpulver


Guss

0,5 l Crème fraîche
2 Eier (Größe M)
1 Pk. Vanille-Puddingpulver
2 El Puderzucker
2 Pk. Vanillezucker
3 El Zitronensaft

次回投稿時には新しく作ったタルトの絵をお見せしよう。無事にアップロードできるかな?楽しみだ。






こんなのを作ってみた。



レシピは次の通り;
粉糖を入れたパートブリゼを空焼きしておきます。さっくりとした口当たりに仕上がります。そこにカトルカールからバターを取って代わりに牛乳を入れた生地を流し込みます。縦に細長く切った生のアプリコットを並べて170℃で30分間焼きます。一口口に含むと、思った以上に酸っぱいアプリコットの酸味が舌を刺激します。冷ましてから、粉糖の中にバニラビーンズを1か月以上寝かせて、バニラの香りをしっかりと捉えたバニラシュガーをたっぷりと振りかけます。少しするとアプリコットから出る熱気で粉糖が溶けます。その上にしっかりと煮込んだ濃いアプリコットジャムを流し入れます。アプリコットの酸味を和らげるとともに、アプリコットの光るような朱色を演出します。
アプリコットのとろりとした朱色と奥深い甘酸っぱさをうまく引き出せれば成功です。


オールドローズ~ダマスクローズ

2016年06月25日 | ダマスクローズ

オールドローズ~ダマスクローズ  Damask Rose




このバラが現在言われているところのダマスクローズ Rosa damascena versicolor (Rosa damascena variegata)です。


 

上にあるRosa phoeniciaとRosa gallicaを交配して作ったバラです。

現在のダマスクローズは後年になって作られたバラです。それでは元のダマスクローズはどんな姿をしていたかというと、


Rosa rubiginosa da New Kreüterbuch di Leonhart Fuchs, pubblicato nel 1543

レオンハルト・フックス(Leonhart Fuchs または Leonhard Fuchs、1501年1月17日 – 1566年5月10日、ドイツの医師、植物学者)が1542年に『植物誌』の中で書き表したものです。
白と赤い花が描かれていますが、このバラの花は1500年頃に昨出された花です。Rosa eglanteria であり、「スイートブライヤー」とも呼ばれ、若葉にりんごのような爽やかな香りがありますが、ダマスクローズとは大きく異なります。スイートブライヤーはピンクの花をつけ、この絵のように赤と白の花をつけることはありません。バラの花は栽培方法と気候の変化により、花の色が年毎に大きく変わることはありますが、八重の花が一重になることはないでしょう。
ダマスクローズは香りがよく、一つの枝に白と赤の花を付けるという言い伝えがこのような絵を作ったのでしょう。

この絵をフックスが引用したのには訳があります。それは1350年代に大いに富裕層をはじめ貴族の間でもてはやされたTacuinum Sanitatis「健康全書」の中で盛んにダマスクローズが描かれたからです。その内のいくつかをご紹介しておきましょう。






これら二つの薔薇の絵(Roxe)はいずれもローマで作られたものです。それまではどのような形をしていたかというと、単なる「健康を維持するための書物」だったのです。( 絵の下に文字が 2-3 行 ありますが、そこには上から順に、Nature:バラの花の性質、Optimum:薔薇の花を取るべき最適条件、Usefulness : 適応症,Danger : 忌避用件、Neutralization : 中和条件、Effect : 効果が端的に書かれています。)当初はこのような説明だけだったのですが、この頃発達してきた細密画の技法が採用されて細かな絵がここにが入るようになります。この書物を持っていることが社会的ステイタスを意味するようになり、一気にヨーロッパ中に広まります。パリでも、ウイーンでも、ローマでも、ルーアンでも、ヴェニスでもそれぞれの地域の選りすぐりの技法で、同じ図柄のサニタティスが描かれています。そして後年、フックスのような植物書が現れたのです。

現在オールドローズといわれる中に1600年以前にオランダで作出された、一季咲きで豊かな香り(ダマスクの香り)がするロサ ケンティフォリア Rosa centifoliaがあります。別名キャベッジローズ、プロバンスローズ、ハンドレッド・ペタルド・ローズ ( Cabbage Rose, Hundred-Petalled Rose, Provence Rose ) などといわれています。ダマスクローズと呼ぶ人もいますが、このバラも又、Rosa damascene を親にもつ交雑種であろうと言われています。花はダマスクローズを思わせるものであり、その姿もそれに近いのですが。

 

絵を入れておきます。https://www.botanikfoto.com/en/details/image-photo-cabbage-rose-rosa-centifolia-fantin-latour-426205.phpから引用しました。

 

 

ダマスクローズのお話はこれまでにして、今年は先のブログでお話ししたローズペタルジャムとグルカンドを作ることに気をとられてしまいました。来年は、来年の5月の終わりには(5月のこの季節だけに花を付ける一期咲の花なので)両方の性質を持った、ダマスクローズの香りとローズペタルジャムのきれいな赤のジャムを作ろうと思っています。さてなんて名前をつけたものだろう。今からゆっくりと製法と名前を考えることにしましょう。
そのときには再びこのブログでご紹介しますね。

http://www.livinginseason.com/tag/damask-rose/に「薔薇のレシピ」がいくつか載っています。参考になさってください。


ジャム~ローズペタルジャム

2016年06月25日 | コンフィチュール

Rosepetal Jam

 

次のサイト http://www.feastingathome.com/rose-petal-jam/ を参考にしてローズペタルジャムを作りました。

 

バラの花びらと水を一緒に煮ていて赤かった花びらが白っぽくなるのをみていると不安になりますが、砂糖を入れてレモンジュースを入れると一気に色が変わります。





絵とレシピは上の http://www.feastingathome.com/rose-petal-jam/から引用させていただきました。

赤いバラの色がきれいですが、花びらの中に砂糖を入れて長時間煮たのでせっかくのダマスクローズの香りがありません。




これはインドのサイトに、特にアーユルベーダに関心のある方たちの間でよく知られている”薔薇の花びらの砂糖漬け(グルカンド)”です。作り方は簡単でhttp://www.blendwithspices.com/2013/11/gulkand.htmlに書かれています。参考になさって下さい。内容は、薔薇の花びらと砂糖を瓶の中に入れて陽の下で29日間?置いておくというものです。

 

 

グルカンドのレシピに登場する”ダマスクローズ”とはどのようなバラを指すのでしょうか。次の機会には知られざるダマスクローズについて述べるとともにその実態にふれようと思います。