Annabel's Private Cooking Classあなべるお菓子教室 ~ ” こころ豊かな暮らし ”

あなべるお菓子教室はコロナで終了となりましたが、これからも体に良い食べ物を紹介していくつもりです。どうぞご期待ください。

紅玉のコンフィチュール

2019年10月23日 | コンフィチュール

紅玉のコンフィチュール

 

9月下旬から10月は長野県から、11月に入ると青森県から紅玉が市場に出回ります。

紅玉はきれいな赤色で、これだけを使ってジェリーを作る方もおられますが、実と合わせてコンフィチュールにするときれいな色を生かすことができます。

         

 

全体がくたくたになるまで煮るとこのように茶褐色になってしまいます。見た目だけでなく味も、酸化が進みリンゴ本来の味と香りがなくなってしまいます。砂糖の量を増やせば退色はある程度防げますが応用範囲の狭いジャムになってしまいます。

 

     

 

 

紅玉本来の「紅色」と独特の酸味を生かすには、皮と実を分けて砂糖で煮るときれいに仕上がります。

 

これからの紅玉が出回る季節にお試しください。

 

紅玉(実)         1,400g

上白糖           300g

紅玉(皮)

上白糖            70g

水            400ml

ペクチン           15g

上白糖            70g

水            400ml

 

1. リンゴは皮を剥き、芯を取って3㎜大にダイスに切る。

上白糖をまぶしながら鍋の中に入れていく。約45分間煮る。

2. 皮は上白糖、水を入れて弱火で煮る。煮すぎると色が退色するので注意。

3. ペクチンと上白糖を混ぜ、水を入れて火にかけ煮溶かす。

4. 1. に2.と3.を入れて煮る。

 

リンゴジャムはタイム、カルダモンなどのハーブをつかったり、シナモンなどのスパイスをつかったりとバリエーションが豊富にありますが、今回はリンゴそのものを生かしたジャムにしました。

 

 


湯種

2019年10月16日 | パン

続 湯種

 

もう一例引用しておきます。

https://www.ploetzblog.de/2017/02/11/alm-rezepte-roggenbrot-mit-versaeuertem-malzstueck/ から


     

 

酸味のきいたライ麦パン

 

乳酸菌を入れたモルト(versäuertem Malzstück);

ライ麦粉997※       60 g

水               300 g

活性モルト         2.5 g

キャラウエイ        (3 g)

 

サワードウ;

モルト (50 ℃)

ライ麦粉            180 g

初種(Anstellgut※)     24 g

 

本練り;

サワードウ

小麦粉1050          60 g

ライ麦粉997          290 g

水 (65 ° C)        160 g

塩                 13 g

液状の不活性モルト(Flüssigmalz inactive)18 g

 

ライ麦粉をボイルした湯で混ぜる。65℃まで冷まして活性モルト、キャラウエイシードを混ぜる。65℃下で3-4時間置く。活性モルトは50℃で保管するか又は冷蔵庫内で保管した後50℃まで温度を上げて他のサワードウの材料と混ぜた後、8-10時間室温(20℃)で熟成させても良い。

 

本練りはドウの温度を30℃にして90-120分間室温において熟成させる。

ドウを濡らした手でボールから取り出し、250℃の中に入れ、スチームを効かせて220℃に持って行く。55分間焼く。焼き終わったら水を塗って照りを出します。 

 

 

※ドイツのライ麦粉は灰分量で分類されています。

成分/種類

灰分

蛋白

ペントザン

デンプン

タイプ 815

0.79~0.87

8.3

3.3

65.4

    997

0.95~1.05

8.7

3.7

64.1

    1150

1.10~1.25

9.2

4.2

62.0

    1370

1.30~1.45

9.7

4.5

59.9

    1740

1.64~1.84

10.7

5.6

54.3

    1800

1.65~2.00

 ―

 ―

 ― 

 

続く

 

 


湯種

2019年10月15日 | パン

湯種  5

 

山食はこの後少し手を加えて完成ですが、気にかかることが一つあります。それは「湯種法」が広く西ヨーロッパに、4年という短期間で広範囲に広がった理由です。

「湯種」で検索すると、そのヒット数は108,000,000、「water roux」では89,000,000になります。何故でしょうか?

 

それはパンの歴史と文化の度合いが日本とヨーロッパでは大きく異なるからだと思われます。

日本のパンの歴史はせいぜい200年、ヨーロッパはどれほどの歴史があるでしょうか。6,000年、それとも7,000年?それ以上かも知れません。粉の中に湯を入れて煮ることなどは今までに幾度となく経験してきたことなのです。下地があればすぐに抵抗なく受け入れることができます。一例を取り上げておきます。

 

https://www.theguardian.com/lifeandstyle/wordofmouth/2016/jan/28/how-to-make-the-perfect-rye-bread から

How to make the perfect rye bread

 

材料;

ライムギ粉         500g
塩              10g

挽割りライ麦         50g

パンプキン          50g

ヒマワリ又はその他の種    50g

イースト           10g

糖蜜又はモラセス       1TBS

 

方法;

小麦粉、塩をボールに入れてボイルしている湯を400ml入れてよく混ぜ、少し冷ましておく。

イーストに水を50-45ml入れる。

ドウの表面に軽くオイルを塗ってすべてが混ざるまで5分間錬る。

ボール又はバスケットに粉を打つ。ドウを丸めて入れる。濡らした布を被せて一晩1.5倍の大きさになるまで膨らませる。

オーブンを220℃ にしてシリコンクロスを敷いて膨らんだドウをその上にのせる。ドウに切れ目を入れる。

沸かした湯を入れる。

褐色になるまで35分間焼く。

冷めてからスライスする。

 

 


湯種

2019年10月14日 | パン

湯種  4

ごく普通の山食のレシピを使います。

レシピの中の小麦粉の一部分と水をwater rouxのために割いて使うことにします。

 

材料

湯種;

強力粉          15%

水            50%

 

本捏ね;

強力粉           85%

牛乳           8.3%

イースト         0.83%

水             25%

塩             1.1%

砂糖            3.3%

バター           5%

 

今まで通常の方法で作っていた山食を、材料の一部分を湯種と本捏ねに分割した以外は全く変えずに、2回のフォールディングの後、成型をして焼きました。

 

方法;

湯種の材料を混ぜて鍋で煮ます。

バターを除く本捏ねの材料を全て混ぜ、グルテンが出たことを確認してから湯種を少しずつ混ぜていきます。最後にバターを混ぜます。二回フォールドしてから型に入れて焼きます。

二回のフォールドと成形後の待機時間は27℃ 下で1時間ずつ、合計3時間の発酵時間を取りました。(型の中に入れてから後の1時間が、麦芽糖産生のための時間ということになります)

210℃で30分間焼きます。

   

 

 

焼いて食べた結果、砂糖の量を半分にしていいと思いました。麦芽糖の産生が思ったよりも多く、クラストが茶褐色に焼けたほどです。牛乳は削った方がいいかもしれません。

2回フォールドをして、その後成形、発酵の後、焼いたにもかかわらず、イーストの発酵力が予想以上に旺盛なのが驚きでした。

 

続く

 


湯種

2019年10月12日 | パン

湯種  3

 

オーストリアのレシピはこの後、次のように語られています。

「小麦粉450、イースト7g、砂糖50g、卵1個、卵黄1個、牛乳120ml、ヨーグルト40gを混ぜます。この中にまだ暖かい湯種を少しずつ入れて煉っていきます。」

注目すべきは、水を使わない点です。

デンプンを煮詰めてアミロースの中に入った水(物理的な分子間力によって水分がアミロースの中に取り込まれた状態)を煉ることで物理的に追い出すことができるのでしょうか。

 

日本のレシピ3つは7790%の水を添加しています。この量はパンとしては極めて常識的な水の量です。しかし、オーストリアのレシピは、ヨーグルト(40g)を水として換算したとしても56%の水しか使っていません。卵(80)を全て水として加えてやっと74%になります。つまり小麦粉の中に入った水はかなりの割合で離水すると判断してレシピの中に水を加えていないように見えるのですが。

 

アミロースの中に入り込んだ水を力ずくでもなんでも煉ることで追い出すことができれば、パンの老化を、「低アミロース小麦粉※を加えることで」かわすことは必要でなくなります。 

※   国産小麦粉の中でグルテン量が多く低アミロースな小麦粉にはユメチカラ、春よ恋、キタノカオリなどがあります。これらの小麦粉を加えるともちもち感があり、噛み応えがあるパンに仕上がります。

 

お話をもとに戻して、レシピに帰ると。この後、小麦粉を入れてその中にwater rouxを少しずつ入れていきます。温かいルーを入れていくので、アミラーゼの活性は高まります。

煮ることでデンプン粒から大量に飛び出したアミロースとデキストリンは急速に麦芽糖に分解されます。

煉り終わったドウは2時間後、小麦粉の中のグルコース等の単糖類はイーストによって消費されてしまいまが、その後2時間余りの間に迎える緩やかな、それでいて高いイーストによるガス発生が続くはずです。(2回目のガス産生は麦芽糖によるものです。去年78月のパン-ブログの中に詳細に述べておきました)ここで、湯種法で得られる自然な甘味は十分に獲得できます。

 

上で述べたアイデアの確かさあるいは不完全さは、実際にドウを捏ねてイーストを作用させパンを作ることで確固たるものに変わるはずです。早速パンを作ってみることにしましょう。


続く



湯種

2019年10月10日 | パン

湯種 2

 

オーストリアのサイト;https://www.tasteoftravel.at/saftiger-rosinenzopf/ では

小麦粉20gを水50mlの中に入れて混ぜます。ダマがないように均一に混ざったら更に水を50ml入れて混ぜます。これを鍋に入れて弱火でボイルします。沸騰しない程度に23分間熱します。(これを湯種とします。このサイトの投稿は3. April 2015ですから、日本で湯種法が言われてから4年ばかり経ってからのものです。)

 

つまり、小麦粉15gに対して水を100ml入れて加熱しています。小麦粉の5倍の量の水を入れているのです。日本の方法とは全く異なります。これにビックリし、しばらくして関心もしました。

 

上のレシピを読んで 「焼き上がったパンに対する「湯種」効果を、もちもち感とデンプンの老化スピードを弱めるといる2点にのみ焦点を当ててパンを作っている。」 のではとこの時思ったのです。

 

(上のオーストリアの方法は、あとでわかったことですが、今ではほかのヨーロッパの国々では広く知られている方法で、「Water roux」で検索すると山のように出てきます。)

 

上の方法(Water roux : ウオーター ルー)はデンプンの中に含まれるペクチンを含む小麦粉の中のたんぱく質(グリアジン、グルテニン、アルブミンの他、βアミラーゼ、プロテアーゼ等)を全て加熱変性させる手法を取っています。( 23分間の加熱がそれにあたります )

 

日本の方法(湯種法)は、小麦粉の中に小麦粉と同量かそれよりも少ない量の熱を入れてかき混ぜています。この方法だと一部の小麦粉は糊化されずに、その中のβアミラーゼが残り糊化した小麦粉を麦芽糖に、一晩かけて変化させます。それで優しい甘みが生まれるのです。しかしこの手法は細い綱を渡るような芸当です。

βアミラーゼは他のタンパク質よりも耐熱性がある ( 72℃ ) のですがこれよりも温度が高いと失活してしまうからです。タンパク質を熱変成させてしこしこ感を出したい反面、温度が高すぎると自然な甘みが得られないというジレンマが生まれます。

温度の高い夏、低い冬にはことのほか気を使わねばならないことでしょう。

 

ウオーター ルー法はこのジレンマをうまく解決した方法であると思います。

麦芽糖の甘みをウオーター ルー法とは別の方法で、一連のパン作りの中で解決しているのです。

 

続く

 


湯種

2019年10月08日 | パン

湯種  1


湯種を使ったパンが少し前から取り上げられるようになりました。今年はこれを少し掘り下げてみようと思います。

 

https://k-daidokoro.com/archives/1816 から湯種の作り方を拝見すると;

小麦粉50gに対して熱湯を100ml入れて湯種を作っています。

 

https://ameblo.jp/v-vn-n/entry-10560417536.html では

小麦粉50%に対して熱湯を37%入れて湯種を作っています。

 

https://ameblo.jp/nikonikotaechi309/entry-12151730981.htmlでは

小麦粉50gに対して熱湯50mlを入れています。

 

湯種を使ったパンのレシピはこのほかにもいろんなものがあります。それぞれに力作で焼き上がりもきれいですが、気になることが一つありました。それは『湯種のレシピは、小麦粉の中に入れる湯の量が一定ではありません。それもかなりのばらつきがあります。何故だろう。』という疑問です。それに、熱湯を必ず入れる事。まんべんなく必死で混ぜる事。混ぜた後は密閉して保管すること。湯種を作る時にはステンレスではなくプラスチックのボールを使うことなど注意すべきことが列挙されています。小麦粉と熱湯を混ぜることに神経が集中しているようです。温度の異なる季節によってもそれぞれに工夫がなされています。

(上のサイトを開いてみれば、それぞれにこれらの点に関して詳細に述べられていることに気が付かれることでしょう。)

 

このような湯種を使ったパンを日本のサイトで見かけるようになったのは今から8年くらい前からでしょうか。当時はあまり気にもかけていなかったのですが、おおよそ1年程前にヨーロッパのオーストリアのサイトで、湯種を使ったレシピを見て大いに気持ちが動かされました。それは今までの湯種とは全く異なるものでした。そのレシピを見て初めて「湯種」の正体を見たように思いました。


続く。