Annabel's Private Cooking Classあなべるお菓子教室 ~ ” こころ豊かな暮らし ”

あなべるお菓子教室はコロナで終了となりましたが、これからも体に良い食べ物を紹介していくつもりです。どうぞご期待ください。

ダマスクローズ 152

2020年11月30日 | ダマスクローズをさがして ― Ⅲ

ローズウォーターのお話をもう少し続けようと思います。

薔薇の系統発生的見地からダマスクローズの起源を絞り込む方法は既にこれまで試みてきましたが、近年のアッシリアの楔形文字の研究で、薔薇の生産がBC4000年まで遡ることが明らかになりました。そこからBC1000年におけるラテン語、ギリシャ語、ペルシャ語、シリア語、トルコ語でのローズウォーターへの言及があったことが判ったのです。

ローズウォーターは主にダマスクローズから生産されるため、ローズウォーターの生産の経過を追跡することは、薔薇の移動を追跡することになります。ところで、ローズウォーターを製造するのに必要な花びらの供給源として、世界的に栽培されている薔薇には3種類あります。

薔薇油業界で優位を占めている Rosa x damascena は、シリア、ブルガリア、トルコ、ロシア、パキスタン、インド、ウズベキスタン、イラン、中国などの主要な薔薇油生産国で最も広く栽培されている薔薇です。そして、ロサ ケンティフォリアは、フランスとエジプトで少量栽培されています。ハマナスは日本と中国である程度栽培されている薔薇です。  

 

ローズウォーター、ロザセウム、古代のローズオイル、そして今日のローズオイル、薔薇のアター。古代のテキストで盛んに論じられている4つの薔薇の製品は次の様に分類することが出来ます。

 

  1. ローズウォーター、薔薇の花びらを水に浸して作ったフレーバーウォーター。
  2. 薔薇を砂糖または蜂蜜とブレンドすることによって生成される、薔薇の菓子、またはrosaceumと呼ばれる薔薇のペースト。
  3. イスラム教のテキストで引用されている薔薇油で、薔薇をゴマ油またはオリーブ油に浸し、太陽の下に置いたもの。
  4. 最後に、私たちが今日知っている薔薇油。これには、ローズオットー、ローズのアター、ローズエッセンス、またはローズエッセンシャルオイルとして知られているオイルがあります。薔薇のオットーは水蒸気蒸留によって抽出されます。ローズアブソリュート(室温で植物の香りを溶媒に移し抽出する溶媒抽出法、またはアンフルラージュ法で抽出した香料)は、溶媒抽出または超臨界二酸化炭素抽出※によって得られます。

 

超臨界二酸化炭素抽出法 ( supercritical carbon dioxide extraction ) という最新の抽出法が出てきたところで、これまでいくつか述べてきたローズオイル抽出法についてここでまとめておこうと思います。

  

 

芳香植物から精油を抽出するのには様々な方法がありますが、蒸留の過程は植物が持っている芳香性分を抽出する方法です。薔薇に限った方法ではありません。ハーブにも利用できます。

 

内容の説明の前に;

近年、精油などの香料が原因でアレルギー体質や化学物質過敏症の方のアレルギー、喘息などを誘発すると、精油の使用の自粛を呼びかける運動が起きています。特にある抗原に対し生体がアレルギー反応を起こす感作作用が問題になっています。精油の使いすぎ、過信、精油そのものに対する知識をしっかりと持った上での使用を心がけてください。

 

  1. 圧搾法
    圧搾法は、主に柑橘類の果皮から精油(エッセンシャルオイル)を抽出するときに使われます。果物の皮を手で絞り油胞を潰してスポンジで吸い込みます。スポンジが精油で浸ったら容器に精油を移します。圧搾法は熱による影響を受けないため、デリケートな成分を損なうことなく新鮮な香り成分を取り出すことができます。

過去にはエキュエルというおろしがねのような器具を用いるエキュエル法や、果皮部を絞るスクイーズ法、精油を海綿で吸い取るスポンジ法などで行われていました。現在は機械化され、エキュエル法はペラトリーチェ法に、またスポンジ法はスマトリーチェ法に進化しました。さらに、精油と果汁を同時に採取するインライン法(FMC法)で大規模に香りが劣化しないように抽出することができるようになっています。

 

 

 


ダマスクローズ 151

2020年11月28日 | ダマスクローズをさがして ― Ⅲ

     

      ルーミ https://www.aromagarten.com/loomi 

 

ルーミ(Loomi)の作り方

乾燥ライムは、、その深いシトラスの香り故にイラク、イランからモロッコにかけて大木の国々の料理に使われています。ルーミは、つまらない料理にも信じられない位の香りを付ける料理人の秘密の武器の一つです。

ソファの下に転がっていたものにしか見えませんが、味わいはとても明るく、すっきりしていて、苦味はまったくありません。壺の中に夏をに閉じ込めたようなものです。そのままの形で、皮に穴を開けて、押し、中の液体をそこから出して使います。又、その皮を細かく粉砕して使います。ルーミスープとシチューにジュースを入れるか又はその粉を魚に振りかけます。一度使うと他のものを使おうとは思わなくなります。

保存するライムを選ぶときは、小さいものを探してください。ルーミを作るのは簡単です。ライムを濃い塩水で15〜20分間茹でます。生理食塩水は皮の苦味を取り除き、ライムの脱水を助け、変色を防ぎ、カビの発生を防ぎます。

冷まして、ライムをワイヤーラックに置きます。風通しの良い日当たりの良い場所に置いてください。太陽に晒して均等に乾くように、頻繁に回します。

 

 

ラッシーは北インドで夏の間に飲まれます。ヨーグルトとローズシロップで作ります。特別に薔薇の花びらを入れると香りがよくて、気分が爽快になります。ヨーグルトの代わりにカードで作ることもあります。

 https://www.vegrecipesofindia.com/rose-lassi-recipe-lassi-recipes/ から

西洋の観光客に最も人気のあるインドの飲み物はラッシー[लस्सी]で、最も単純な場合は水、ヨーグルト、砂糖 (mithi lassi [मीठी लस्सी] sweet lassi) の混合物です。それは通常、冷たくして飲みます。もう少し手の込んだラッシーには、ローズウォーター(gulabi lassi [गुलाबीलस्सी])を入れます。サフラン風味の甘いラッシーもあります。あまり一般的ではありませんが、パンジャブ州とグジャラート州で最も人気があると思われるラッシーの塩辛いバージョン(ナムキンラッシー、namkin lassi [नमकीनलस्सी])があります。 jeera lassi [जीरालस्सी]は、トーストして挽いたクミンを入れた塩味のラッシーで、甘いものよりもさわやかです。

      

https://www.agefotostock.com/age/en/Stock-Images/Rights-Managed/SFD-12468373 

 

薔薇の花びらを入れたラッシーの作り方;

ローズシロップとヨーグルトは冷やしておいて、ミルク又はローズミルクの中にシロップを入れます。カードは自家製のものを、アイスキューブを入れて供します。

 

作り方:

  1. 冷やしたカード1.5カップをミキサーの中に入れます。
  2. 冷水を1カップ、乾燥薔薇の花びらを10-12枚、又は生の薔薇の花びらを5-6枚、ローズウォーターを1ts、ローズシロップを3TBS入れます。更に冷水を1カップ入れます。(冷水の代わりに氷を入れても良いです)

 

  1. ラッシーが泡立つまで混ぜます。ラッシーの濃さは水の量で調整します。水の代わりにミルク、又はミルクと水のハーフアンドハーフを加えることも出来ます。
  2. ラッシーをグラスに入れて、アーモンド、ピスタチオ、カシューナッツのスライス又はチョップを散らして供します。

 

ドイツ文献はこれでおしまいです。如何でしたでしょうか。ドイツらしさが随所に見受けられて、楽しい、ホットする気持ちになりました。

 

 


ダマスクローズ 150

2020年11月26日 | ダマスクローズをさがして ― Ⅲ

ハルションバーレーン チキン マチュブースTHE HIRSHON BAHRAINI CHICKEN MACHBOOS – مكبوس‎ البحرين

https://www.thefooddictator.com/hirshon-bahraini-chicken-machboos- から

  

チキン マチュブース、またはMachboos ala Dajaj(「スパイスチキンとライス」)は、ペルシャ湾の小さな島国、バーレーンの郷土料理です。

マチュブースは、Biryani(インド亜大陸料理)やKabsa(サウジアラビア料理)に似ていますが、調理方法、材料、辛さ、組み立て方が異なります。とはいえ、3つとも肉料理とご飯料理です。この料理は、乾燥ライム(Loomi、別名ルーミ)と、香り高いバハラット(Baharat:スパイスブレンド)が決め手です。

 

(以下、バハラット、チキン マチュブース、ルーミのレシピを次に引用しておきます。気に入ったら作ってみてください。)

  

  http://foodtasia.com/baharat-middle-eastern-spice-blend/

 

バハラットの作り方、Baharat - Middle Eastern Spice Blend

材料;( 1/4カップ分)

ブラックペッパー    1 ts

コリアンダーシード   1 ts

シナモンスティック   1 本

クミンシード      1 ts

クローブ        ½ ts

オールスパイス     1 ts

カルダモン       1 ts

ナツメグ        ½ 個分

スイートパプリカ    1 ts (optional)

 

方法;

スパイスを中火で2-3分間、パンの中で香りが出るまで焦がさないように焼く。

グランダーで細かく挽く。密閉して保管する。

 

マチュブースの作り方;

ルーミは、多くの場合オマーン産のライムで、茹でてから天日で乾かして作ります。黄褐色~黒い色をしています。濃縮されたライムのフレーバーは、非常にピリッと土っぽく、烟っぽい臭いがします。ルーミは、ブラックライム、ブラックレモン(レモンではありませんが)、そして乾燥ライムなど、さまざまな名前で販売されています。それらはホールで又は、粉末で購入することができます。粉末はすぐに酸化し、風味の多くが失われる可能性があるため、ホールで買った方が、香りが良いです。スパイスと同じように、それらを丸ごと保管し、必要に応じて粉砕します。(乾燥ライムは、中東の製品を扱っている店で見つけるか、オンラインで注文できます。また、鶏肉の空洞に詰めてから焼いたり、風味付けにご飯に加えても美味しいです。)

 

材料

さいの目に切った大きな玉ねぎ   2個、

ギーまたは無塩バター       大さじ3

ヒルションバハラットスパイスミックス(Hirshon Baharat spice mix)大さじ2

ターメリック           小さじ1

植物油              大さじ2

鶏もも肉、脚、胸肉の組み合わせ  (約3ポンド)

種を取り、さいの目に切ったハラペーニョ2本

みじん切りにした生姜       大さじ2

薄くスライスしたクローブまたはニンニク6つ

ジュースを取り除きさいの目に切ったトマト1個(14オンス)

穴を開けた乾燥ライム(loomi)   2個

皮を取り除き、種子を挽いた緑色のカルダモンポッド6つ

挽いたシナモン          小さじ1

クミン              小さじ3/4

クローブ             小さじ1/8

塩                小さじ2½

チキンストック          2½カップ

バスマティライス2カップ(15分以上浸した後、すすいで水気を切る)

みじん切りにした新鮮なコリアンダー大さじ3

みじん切りにした新鮮なパセリ   大さじ3

ローズウォーター大さじ3(オプションですが、強くお勧めします)

次に、カルダモンシードとシナモンの半分を追加します(香辛料が香るまで中火で鍋にスパイス全体を軽くトーストします)

すべてのスパイスを一緒に粉砕して粉末にします。残りのブレンドは密閉容器に保管してください。

 

方法

小さなボールに、バハラット2TBS、クローブ、ターメリック、クミン、カルダモンを大さじ2を混ぜ合わせます。鶏肉にスパイスミックスの半分を振りかける。

大きな鍋に油を熱し、玉ねぎがきつね色になるまで炒め、唐辛子と黒ライムを加えます。皿に加える前に、串、ナイフ、またはフォークの先でライムにいくつかの穴を開けてジュースを出してタマネギに浸透させます。鶏肉を玉ねぎの中に加え、鍋の中で数回ひっくり返します。チキンの上にシナモン小さじ1杯と残りのミックススパイスブレンドの3/4を振りかけます。鶏肉がスパイスでコーティングされるように中身をすべて一緒に返し、鍋に蓋をして、中火で3分間調理します。

ニンニク、みじん切りの生姜、さいの目に切ったトマトを鍋に入れ、鍋の材料を数回混ぜます。中火で3分間再び蓋をして、残りの塩をふりかけ、まだ熱いうちに鶏肉のストックに注ぎます。鍋に蓋をして、約1時間、または鶏肉が調理されるまで調理します。乾燥ライムを取り除きます。

鍋のストックから鶏肉を取り出す5分前に、刻んだコリアンダーを加えます。鶏肉をクックしている間に、米をよく洗い、冷水に10分間浸して水気を切る。鍋から鶏肉を取り出し、オーブンのトレイに置き、オイルで塗り、残りのミックススパイスパウダーを振りかけ(必要に応じて、作ったときに残ったバハラットスパイスの一部を使用します)、オーブンで鶏肉が黄金色になるまで焼く。チキンストックに米を入れてかき混ぜ、弱火で米が水分を吸収するまで炊きます。コメの上にローズウォーターをふりかけ、ギーを上に乗せます。鍋に蓋をして弱火で30分煮ます。大きなサービングプレートにご飯を盛り付け、グリルした鶏肉の半分を上に置き、刻んだパセリを飾ります。

コンデンスミルクと小麦粉から作ったフライボールにシロップ(gulab jamun [गुलाबजाम])を添えます。シロップ(ras gulla [रसगुल्ला])で調理したフレッシュチーズボールまたはコンデンスミルク (ras malai [रस मलाई]) で調理したチーズボールにローズウォーターを振りかけます。他の人気のある方法として、サフラン(主にラスマライ、ras malaiに)、または特に熱帯インドでは、パンダナス水(キューラ、pandanus water (kewra) をふりかけます。

 

 


ダマスクローズ 149

2020年11月24日 | ダマスクローズをさがして ― Ⅲ

   

※ ラスエルハヌートの主な成分は次の通りです;

カルダモン、クミン、シナモン、ナツメグ、クローブ、メイス、ドライジンジャー、オールスパイス、チリパウダー、コリアンダーシード、ブラックペッパー、スイートパプリカ、ホットパプリカ、フェヌグリーク、ドライターメリック。

その他、地域によって以下のスパイスを入れます。アッッシュベリー(ash berries、ローワン)、ショクヨウガヤツリ(chufa), グレインオブパラダイス(grains of paradise), ドイツアヤメの根( orris root), セイヨウニンジンボク(monk's pepper ) , クベブ(cubebs), 乾燥した薔薇の蕾, フェンエルシード又はアニスシード、ガランガラ, ヒハツ(long pepper ) 。 

 

モロッコのラスエルハヌートの作り方 

https://www.thelunacafe.com/moroccan-ras-el-hanout/ から

スパイスの購入時、調合時の注意点を述べておきます。

ガランガル(ショウガ科に属し、生姜、コショウ、レモンの香りがします)、 オリスルート(フィレンツェのアイリスの根茎で、フローラル、ベリーのような、ウッディな香りが加わります)、これらのスパイスのフレーバーをサンプリングするには、ティーカップに大さじ1杯のスパイスを加え、その上に沸騰したお湯を注ぎ、5分待ってから飲みます。

  

左上から時計回りに、オリスルート、ローズペタル、ガランガル、ドライジンジャー

 

ガランガルとオリス根の香りは、他のスパイスの強引なフレーバーによって弱められます。薔薇の花びらとラベンダーははっきりとした特徴がある香りなので、入れすぎないように注意する必要があります。料理用の薔薇のつぼみや花びらを購入するときは、先に香りを嗅いでから購入するとよいでしょうばらは新鮮なにおいであって、ウッディで麝香のような香りがしていてはいけません。

 

使用上の注意点;

ラスエルハヌートは、ホットでもアイスでも、コーヒーにもよく合います。 挽く前にダークローストのコーヒー豆に小さじ1杯程度を加え、通常どおりにコーヒーをいれます。

料理でラスエルハヌートを使用するとき、1つまたは2つのスパイスをもう少し追加することがよくあります。たとえば、薔薇の花びらの風味と香りを際立たせたい料理には、さらに追加して入れます。ラスエルハヌートは料理に合わせて自由に変えることが出来ます。

 

ラスエルハヌートの作り方(約3/4カップ分);

黒胡椒大さじ1

白胡椒大さじ1

大さじ1杯のグラウンドメイス

大さじ1杯のグラウンドターメリック

乾燥した薔薇のつぼみの花びら大さじ1

大さじ1杯の乾燥ショウガの根(または挽いたショウガ)

大さじ1ガランガル、オプション

オリスルート大さじ1、オプション

小さじ1杯の乾燥ラベンダー

小さじ1/2の乾燥アニスシード

小さじ1/2の砕いた赤唐辛子、オプション

12オールスパイスベリー

10個の緑色のカルダモンポッド

砕いたナツメグ2個

2クローブ

砕いたシナモンスティック1本

 

ナツメグをつぶすには、バッグに入れて密封し、木槌で数回叩きます。シナモンスティックも同じように潰すことができます。

すべての材料を測定し、コーヒーグラインダーに入れます。

グラインダーを回してスパイスを粉末に粉砕します。

冷暗所で気密に保管し、6ヶ月以内にご使用ください。

                                                                    

 

 

ローズウォーター(ma al-ward [ماءالورد])は、アラビアやイラクの米料理(マチュブース、machboosまたはmajboos [مجبوس])に軽い花の香りを与えるためによく使用され、インドのビリヤニ [बिरयानी] を思い出させます。長粒米、肉(マトン、鶏肉)、野菜、そしてたくさんの調味料(カルダモン、タマネギ、サフラン、シナモン、コショウ、乾燥ライム)を柔らかくなるまでゆっくりと一緒に調理します。ミックススパイスバハラット(baharat)は、北インドのスパイスに欠けているわずかな辛味をマチュブースに与えるためによく使われます。ローズウォーターは、完成後にマチュブースに振りかけます。香りが出るまで数分かかるので、その間は蓋を閉めておく必要があります。

北インドは、牛乳をベースにしたおいしいお菓子で知られており、その多くにはローズウォーター(gulab jal [गुलाबजल])が隠し味で少量入っています。

 

 

 


ダマスクローズ 148

2020年11月22日 | ダマスクローズをさがして ― Ⅲ

薔薇と薔薇油(Farsi attar [عطر]、Turkish gül yağı)は、西アジアと中央アジアでは重要な香料で、たくさんのスイーツに使われています。

トルコ人はコーヒーに強いばらの香りがするゴムのような食感の、非常に甘い菓子であるロクム ( locoum : ターキッシュ ディライト ) を入れます。イランでは、蜂蜜とジャムは薔薇の花で香り高いものとします。ローズアイスクリームは多くの中東諸国で知られています。薔薇の香りは、北アフリカから西アジア、中央アジアまでのイスラム文化でいくつかの役割を果たしています。宗教的な意味合いがあり、アラビアの国々では、特にモスクでは部屋の脱臭剤として使用されています。薔薇は料理ではそれほど重要ではありませんが、それでもモロッコではラスエルハヌート※ ( Ras el hanout:ミックススパイス) の成分の1つとして使われています。

   

写真は珍しい(Turkish Delight:Lokum) ピスタチオと薔薇のロクムhttp://www.lokumturkishdelight.com/detay.asp?iType=548&iPic=1100 

 

ロクム別名ターキッシュデライトは、凡そ1700年代にトルコで生まれました。小麦粉やコーンスターチなどのでんぷんと砂糖を使うお菓子で、通常、少量のローズウォーター、オレンジ、またはレモンで香り付けします。刻んだピスタチオ、ヘーゼルナッツ、クルミ、またはデイツを入れたバリエーションがあります。キャンディーは通常、小さな立方体にカットして、個別包装します。ゴムのような食感のロクムは、現代のジェリービーンズの先駆けと言われています。

 

材料

水(合計)      4 1/4カップの

グラニュー糖     4カップ

レモンジュース    大さじ1

コーンスターチ(合計)1 1/4カップ

クリームオブタルタル 小さじ1

ローズウォーター   大さじ11/2

粉砂糖        1カップ

植物油        小さじ1

 

方法、

  1. 9インチのベーキングパンの側面と底面にバターまたはショートニングを塗る。脂を塗ったパラフィン紙を貼り付ける。

 

  1. 鍋に、1 1/2カップの水、グラニュー糖、レモンジュースを混ぜ、中火にかけて砂糖が溶けるまで絶えずかき混ぜる。混合物を沸騰させ、弱火にして、キャンディー温度計で混合物が115℃ になるまで煮る。火から下ろし、取っておきます。

 

  1. コーンスターチ1カップ、クリームオブタルタル、残りの2 3/4カップの水を鍋に入れて中火にかける。すべての塊がなくなり、混合物が沸騰し始めるまでかき混ぜる。混合物が接着剤のような粘度になったら、攪拌を停止する。

砂糖とレモンジュースの混合物を約5分間絶えずかき混ぜます。火を弱め、よくかき混ぜながら1時間煮る。

 

  1. 混合物が黄金色になったら、ローズウォーターを入れてかき混ぜる。準備した鍋に混合物を注ぎ入れ、均等に広げて一晩冷ます。
  2. 冷めたら、粉砂糖と残りの1/4カップのコーンスターチを一緒にふるいにかけます。

ロクムが入っているベーキングパンをきれいなカウンターまたはテーブルにひっくり返し、油を塗ったナイフで1インチの小片に切ります。

 

  1. 粉砂糖の混合物をコーティングする。ワックスまたはパーチメント紙でくっつかないように密閉容器に入れて保管する。

                      

 

 


ダマスクローズ 147

2020年11月20日 | ダマスクローズをさがして ― Ⅲ

  

※ ブルガリアのバルカン半島にあるスタ ラプラニナ山 ( Stara Planina) のすぐ南のローズバレーでおこなわれる薔薇のお祭り。

 

ブルガリア、カザンリクのバラの谷で香料用に栽培されているロサ ダマスケナ トリギンテペタラ(R. × damascena trigintipetala)。別名カザンリク ( Kazanlik) は、


     

その上質な香りから、香水やローズウォーターやローズコンクリートを作るのに必要なローズオイル(ローズオットーまたはローズアブソリュート)を取るために商業的に収穫されています。花びらは食用です。それらは、食品の風味付け、付け合わせ、ハーブティーとして使用され、砂糖に漬けてグルカンド※にします。カザンリクは落葉低木で、高さ2.2メートルに成長し、茎は頑丈で湾曲した棘と硬い剛毛が密に生えています。葉は羽状で、5枚(まれに7枚)の小葉あります。色は淡い〜中程度のピンクから淡い赤です。比較的小さな花はグループで咲き、不定形な茂みを作ります。

 

※ グルカンドは普通、Kazanlik の他に、China rose, French rose, Cabbage rose を使って作ります。グルカンドについては2016/6/25のブログ、カテゴリ・・・コンフィチュール-ジャム~ローズペタルジャムにかいておきましたが、下にそのコピーを引用しておきます。

     

これは、私が作ったグルカンドです。以前にも書いておきましたが(9/20)、ダマスク系の薔薇にもマルチフロリンによる強烈な瀉下作用があると認識した上で作ったり、食べるようにしてください。


インドのサイトに、特にアーユルヴェーダに関心のある方たちの間でよく知られている薔薇の花びらの砂糖漬け(グルカンド)は、作り方は簡単です。http://www.blendwithspices.com/2013/11/gulkand.html に書かれています。参考になさって下さい。内容は、薔薇の花びらと砂糖を瓶の中に入れて陽の下で29日間(或いはそれ以上)置いておくというものです。

        

              ブルガリアのロゼリキュール

 

 

 


ダマスクローズ 146

2020年11月18日 | ダマスクローズをさがして ― Ⅲ

“薔薇”という言葉の語源について。・・・・・・思えば、「薔薇」という言葉について今まで何もお話してこなかったのは、何とも間の抜けたことでした。遅まきながらお話することにします。

 

薔薇は、ラテン語の rosaに由来し、ギリシャのシャクナゲ [ rhodon , ῥόδον] にまでその起源をさかのぼることができますが、残念ながらそれ以上のことは何も出てきません。薔薇は、オデッセイア [Ὀδυσσεῖα] に登場する青銅器時代のギリシャで知られていたのですが、どの種類の薔薇がホメロスに、夜明けと薔薇の花の女神の有名な比喩をさせたのかは判っていません。

ギリシャのロードン(rhodon , ῥόδον)の源は、おそらく現在は失われた西アジア語にあると思われます。ギリシャ語からの借用語ではないのですが、独立したルートからの、未知の言語から派生した言葉であろうと考えられています。アルメニアのヴァルトローズ [vart rose, վարդ]、スロベニアのvrtnicaローズ(rož)、グルジアのヴァルディ [vardi , ვარდი]、アラビア語のアルワード [ al-ward ,الورد]、ヘブライ語のvered [ורד ]とCoptic urt。この言葉はアラビア語からアフリカやアジアのイスラム諸国で話されている多くの言語に広まりました。

 

ラテン語に由来する“rosa”は、現代ヨーロッパの言語の ”ローズ” のおおもとで、ほとんどの場合、わずかな違いしかありません。ローズという名は英語だけでなく、ドイツ語、デンマーク語、フランス語でもおなじです。その他のゲルマン語では、アイスランド語のロス ( rós)、スウェーデン語のロス ( Ros)、オランダ語のルース ( Roos) があります。ロマンス諸語のイタリア語、スペイン語、ポルトガル語は、rosaです。バルト語とスラヴ語ではSの音が全体に響き渡り、時には口蓋音で発音されます。ラトビア語の( rozes)、リトアニア語の(rožės)、チェコ語の( růže)、ポーランド語の( róża)、ロシア語の( roza [роза])などがあります。バスク語 ( Arrosa) では最初に母音がきます。

サンスクリット語のshatapattra [शतपत्त्र] は百枚の葉(満開の花の意)であり、vrittapushpa [वृत्तपुष्प] は丸い花を意味します。

ローズオイルのアター(attar ; ottoとも綴る)という用語は、アラビア語のitr [عطر]香水に由来するペルシャ語のアタール ( atar : عطر、香水)までさかのぼります。 また、カザフ語の ätirgül [әтіргүл] は(香りのある薔薇)の意です。

 

参考サイト

Indian Spices: Rose (indianetzone.com)

San Marcos Growers: Rose

The Rose FAQ (mc.edu via archive.org)

B and B Nursery: Rose Classes (via archive.org)

Rose Classification

Geschichte der Rose (Kim Ai) (via web.archive.org)

Aroma from Carotenoids: Rose

chemikalienlexikon.de: Phenylethanol

Pflanzen des Capitulare de Villis: Hundsrose (biozac.de)

Recipe: Majboos Laham [مجبوس لحم] – Lamb with rice (epicurious.com via archive.org)

Recipe: Machboos Dijaj [مجبوس دجاج] – Chicken with Rice (www.netcooks.com)

Recipe: Rasgulla [रस गुल्ला] (tripod.com)

Recipe: Ras Malai [रस मलाई] (recipecottage.com)

Recipe: Gulab Jamun [गुलाब जामुन] (recipecottage.com)

Cooking with Kurma: A Bed of Roses (kurma.net)

 

 

 

ロサ ダマスケナ トリギンティペタラ-カザンリクR. Damascena Trigintipetala – Kazanlik 

ブルガリアのカザンリク地方で今も香料用として栽培されていることから別名(Kazanlik)が付いています。

            

  

https://www.flickr.com/photos/davidcarlson/14675363132 

  

            R. Damascena Trigintipetala – Kazanlik

 

エッセンシャルオイルの抽出に何世紀にもわたって使用されてきた薔薇。 その強い香りの花は直径5cm、二重で、白に溶け込むピンク色のわずかに波立った30枚の花びらでできています。 耐病性があり、活発で、半日陰耐性、枝分かれがよく、薄緑色の葉が150 cmの高さまで、または壁に上らせれば250 cmまで成長し、最大150cmの幅まで広がります。 この薔薇は1612年以前に選ばれた、ブルガリアのカザンリク地域で栽培されている主要な品種の1つであり、この薔薇の名前はエッセンシャルオイルの薔薇としてヨーロッパ全土で有名です。

主に装飾的で香りのよい観賞用薔薇として知られていますが、料理でも重要です。ヨーロッパではローズ製品は比較的重要ではありませんが、マジパンの風味付けにはローズウォーターが必要であり、飲み物に含まれることもあります。さらに、ブルガリアでは甘いロゼリキュール※があります。薔薇の花びらの良い香りのワインは古代ローマで人気がありました。

 

 


ダマスクローズ 145

2020年11月16日 | ダマスクローズをさがして ― Ⅲ

ビル ド ブリュッセル Ville de Bruxelles

      

濃いピンクのダマスク。

Jean-Pierre Vibert(フランス、1837年以前)によって作出されました。1862年にF.C.DavisによってLa Villede Bruxellesとしてオーストラリアに紹介されました。

センティフォリア、ダマスク。ローズピンクの明るいエッジ。 強い香り。 平均直径7.5cm。大きく26-40花びら、クラスター開花、小さなクラスター、平らな花の形。春または夏に咲く一季咲き。枝はよく分岐しています。高さ90から150cm。 幅90から150cm。USDAゾーン4bから9b。 庭に植えたり柱に絡ませることができます。

 

ガリカ ローズ プレジダン ド セーズ Gallica rose Président de Sèze

一季咲き、花径7.5cm、作出者Mme. Hébert 1828,フランス、耐寒性、

別名: Madame Hébert

     

      

プレジデント・ド・セーズは、最も印象的で美しいガリカの薔薇の1つで、ルーアンからそう遠くないばらの庭師によって育成され、ルイ16世の弁護士であるレイモンド デ セーズ(1792年12月の王に対する裁判)に彼の死亡年に捧げられました。

花は大きい、二重の、ロゼッタ咲きで、フルーティーな香りがします。つぼみは竜の形をした羽のようながく片で覆われています。一季咲き。

パープルピンクからパープルカーマインまで、エッジが明るいユニークな配色。明暗の比率や色の濃さは、明らかに天候に依存し、年ごとに変動します。

赤オレンジブラウンの大きなローズヒップ。高さ1.5m、幅1.5m。緩い、直立した低木。芽は多くの小さな剛毛と棘で覆われています。奇数羽状複葉の濃い緑色の葉は、5つの中程度の楕円形で不規則な歯の小葉で構成されています。 若葉は、細長く、薄緑色です。シュートは多くの小さな剛毛と棘で覆われています。

 

 


ダマスクローズ 144

2020年11月14日 | ダマスクローズをさがして ― Ⅲ

レダ Léda

  

白に近い、或いは白色のダマスクローズ。

作出者は不明です。イギリス、1827年以前からあったと思われます。1861年にノーザンプトンナーサリィ(Northampton Nurseries)から「レダ」としてオーストラリアに導入されました。白または白のブレンド、赤いエッジ。 強い香り。 ミディアムでダブルの(17〜25枚の花びら)、ボタンアイ、フラット、昔ながらの、反射したブルームフォーム。 シーズン後半に時折繰り返し咲きます。

 

 

デューク ドゥ ケンブリッジ Duc de Cambridge

      

Jean Laffay(フランス、1840年以前)によって作出されました。

藤色または紫のブレンド。強い香り。大きい(26〜40枚の花びら)、平らな花の形。春又は夏に咲く一季咲き。高さ120から245cm。USDAゾーンは4bから9b。非常に病気に強い。この薔薇はサンノゼヘリテージローズガーデン(San Jose Heritage Rose Garden)で育っています。彼らはブリーダーをLaffayとしてリストしています。Mike Lowe(薔薇収集家)は、この薔薇に1848年の日付を付けています。2002年のカタログで、Pépinières Loubert (薔薇育種家) は、ブリーダーはMargottinであり、日付は1867であると述べています。1998年9月、モントリオール植物園 (Le Jardin Botanique de Montreal)は、薔薇の黒点、うどんこ病、さびに対する抵抗性の調査を実施し、0%から5%の感染率を示した優れた耐病性を持つ品種の1つであることを証明しました。

 

 


ダマスクローズ 143

2020年11月12日 | ダマスクローズをさがして ― Ⅲ

ヨークアンドランカスター Damask Rose York and Lancaster with pink and white flowers

  

      

 

冒頭、このブログの最初に、“ダマスクローズ 二色のヨーク ランカスター“ の絵をご紹介した折に『ヨーク家とランカスター家にちなむ薔薇の花ですが、花の起源と「ダマスクローズ」との系統関係は不明です。』と述べたのですが、以下に詳しい説明がありましたので改めてここにご紹介しておきます。

 

『ダマスクローズの品種 “ヨークとランカスター” は、ヨーク家とランカスター家の間のいわゆる薔薇戦争(1455–1485)にちなんで名付けられました。 2つの家は、ヨーク家の白薔薇(Rosa alba Maxima)とランカスター家の薔薇(Rosa gallica Officinalis)を示すエンブレムで表されていました。和解のしるしとして、勝利を収めたチューダー家は、紋章のシンボルとして、内側に白と外側に赤い花びらを持つ新しい薔薇を選びました。この2色の薔薇の作成に成功したブリーダーはこれまでにいませんが、Rosa damascena versicolor York と Lancaster(16世紀の業績)は、同じ植物に赤みがかったピンクと白の花を咲かせることに近づいています。時折、両方の色が1つに組み合わさった花を見つけることがあります。』

 

上で書かれていることは。、さほど新しい内容ではありませんが、薔薇の絵を見たときに、今までとは違った印象を受けられたのではありませんか? 成る程、この薔薇 “ヨークとランカスター” はダマスクローズの血を引いていると。

 

ダマスクローズにはさまざまな栽培品種があり、西側諸国では古い薔薇への関心が高まるにつれ益々入手可能な状況です。これらの薔薇のいくつかは、主に東方からのもので、イスファハンローズ(中央イランの都市イスファハン[اصفهان]にちなんで名付けられました)やブルガリアローズ(ブルガルスカロザ、Bulgarska roza)のように、主にエッセンシャルオイルの供給源として評価されています。セミフィルドフラワーで30の花びら(trigintipetala)として知られています。ただし、主に装飾目的で使用されるものもあります。これらのほとんどは、17世紀から18世紀にかけてヨーロッパのブリーダーによって開発されました。例として、Celsiana ( 10/28 )、Léda、Duc de Cambridge、Quatre Saisons (10/30)、Ville de Bruxelles、Gloire de Guilan (11/12 ) などがあります。この中で由来が怪しいのは、非常に丈夫な品種であるローズ ド レシュです。これは、明らかにイランから輸入されたものですが、ガリカと見なされることもあります。( ローズ ド レシュのお話は既に11/2に詳しく述べていますので、そこを参照下さい ) 以下 Léda、Duc de Cambridge、Ville de Bruxelles の、ここで新しく登場した3種の薔薇についてご紹介しておきます。

 

 


ダマスクローズ 142

2020年11月10日 | ダマスクローズをさがして ― Ⅲ

マダム カロリーヌ テストゥ Madame Caroline Testout Rose

四季咲き、香りは微香、花径8.5㎝、一輪咲き、樹高,半直立0.8m

ペルネ・デュッシェ(Joseph Pernet-Ducher、フランス)1890年に作出

    

         

健康な緑色を保つためには、( 耐病性は、うどんこ病、黒星病ともに普通ですが、) 壁面に這わせるため1週間~10日に1回以上の定期的な薬剤散布をした方が良いでしょう。薬剤散布をしない方針であれば、日光、良い土壌、新鮮な空気、水、そして頑丈なアーチ道を用意する必要があります。

ティーハイブリッドクライミング、マダム カロリーヌ テストゥは、今でも世界中の庭で栽培されています。つぼみは大きくて球形で、花は明るいピンクで中心が濃くなります。デヴィッド オースティン(David Austin)はこの薔薇を使って "Wife of Bath"※ を制作しました。香りが強く開花を繰り返します。この薔薇は、1年前の枝にのみ開花し、翌年の花のために新しい枝を用意しなければならないので、開花期間が短いです。(ただし、一部のダマスクローズは秋に2回目の短い開花をします)。

 

ハイブリッドティー種という系統を確固たるものとした、リヨンの魔術師、ペルネ デュッシェが作出した品種です。ラ フランスが最初のハイブリッドティー種であるといわれていますが、ハイブリッドティー種という系統を世に知らしめたのは当品種です。オールドローズからモダンローズへと移り変わっていくその瞬間の様子を間近で見ることができる貴重な品種です。長蕾から開花していく艶やかなピンク色の半剣弁高芯咲き。花弁数は20〜30弁程度の、オールドローズの雰囲気がまだ残っている独特な花容です。花弁数が多くても雨でも花が開きやすい、完成度の高い薔薇です。樹勢はあまり強くありませんが、耐暑性、耐病性にも優れています。

 

※Wife of Bath

   

https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Rose_Wife_of_Bath_17RM2420-PSD.jpg 

 

チャイナローズ、Rosa chinensis は、新しい枝に花をつけるため、一年中開花して成長します。中国の薔薇の遺伝子を利用して、ヨーロッパのブリーダーは18世紀に驚くほど多様な新しい薔薇を作りました。例としては、ブルボンローズ、ポートランドローズ、ノイゼットローズ、およびその後に作られた二度咲きの薔薇や大きな一輪咲きのティーローズなどがあります。Rosa multiflora を集団遺伝子(genetic pool)に含めると、多くの花が咲く薔薇が生まれます。これは、ポリアンサ(polyantha)やフロリバンダタイプ(floribunda types)と呼ばれます。オールドガーデンローズは、1867年に最初のティーローズハイブリッド(ラ フランス)が導入される前に育てられたすべての薔薇を表現する用語です。

 

 


ダマスクローズ 141

2020年11月08日 | ダマスクローズをさがして ― Ⅲ

薔薇の病気を3つ取り上げましたが、如何だったでしょうか。少しでも薔薇の栽培のお役に立てればいいのですが。寄り道から ”ドイツ文献 “ に戻り、10/28~11/2 ” の先を続けます。

 

エッセンシャルオイルは、薔薇の花びらから得られるアルコール抽出物や水性蒸留物(ローズウォーター、薔薇油を蒸留する際の副産物として得られる)を使用します。

花びらのエッセンシャルオイルの含有量は少なく、1% をはるかに下回っています。薔薇油は揮発性であるため、開花した最初の朝に最も含有量が高くなります。したがって、蒸留に使用される薔薇の花は、日の出前または日の出時に、毎日手で摘み取ります。

薔薇油の特徴的な成分は、非環式モノテルペンアルコール(acyclic monoterpene alcohols)、ゲラニオール(geraniol、最大75%)、シトロネロール(citronellol 、20%)、ネロール(20%)、およびノナデカン(nona­decane)やヘンイコサン(hen­eicosane)などの長鎖炭化水素(long-chain hydro­carbons、最大10%)です。

薔薇油の重要な微量成分は β-ダマセノンです。低濃度(0.01%)にもかかわらず、その C13-ノルイソプレノイド(C13-nor­isoprenoid)は油の品質に顕著な影響を及ぼします。構造的に関連する化合物である β-ダマスコン(β-damascone)および β-イオノン(β-ionone)とともに、カロテノイドから酵素的に生成されます。同様に、サフランの葉とパンダナス(pandanus leaves)の葉からも、カロテノイドを酵素分解して芳香分子を得ることが出来ます。

生花の匂いの特徴は 2-フェニルエタノールですが、これは水蒸気蒸留中に失われ、ローズウォーターに蓄積します。したがって、ローズオイルとローズウォーターは正確いえば同じものではありません。最良の場合でも、100 kgもの新鮮な薔薇の花から10g(0.01%)のエッセンシャルオイルが蒸留されます。副産物のローズウォーターを再蒸留すると収量が3倍になるため、1kgの薔薇油には約 3000〜5000kg の新鮮な薔薇の花が必要です。あるいは、溶媒、通常はヘキサンによる抽出を使用して、半固体の緑がかった塊を得ることができます。収率は蒸留の約10倍であり、さらに、2-フェニルエタノール(2-phenyl ethanol、総揮発性物質の約60%)の天然含有量が得られます。

薔薇属のいくつかは西ヨーロッパから東アジアに自生し、中央アジアに多様性の中心があります。何世紀にもわたる交雑のため、野生の薔薇の種間の元々の植物学的関係は不明瞭です。ほとんどのヨーロッパの薔薇は、コーカサス山脈で自生するローザガリカに一部分由来しています。

古代から18世紀にかけて、ヨーロッパ、西アジア、中央アジア、北アフリカで栽培されたほとんどすべての薔薇は、ローザガリカに属するか、ガリカ由来の品種であるようです。その例外は、ムスクローズ(Rosa moschata、インド)またはアベシニアのホーリィローズ(Rosa richardii)です。

ダマスクローズは、ロサガリカとロサフェニシアまたはロサモスカタの受精による交配種であり、このことは古くから知られています。交雑は数千年前にアナトリアで最初に発生したと思われます。ダマスクローズ(または、いずれにせよ、今日のダマスクローズに非常によく似た薔薇)は、青銅器時代から西アジアで知られており、その栽培は後にギリシャとローマに広がりました。

ダマスクローズはローズオイル(ローズオットー, rose otto)としても知られています)の主要な供給源ですが、ヨーロッパの中世では、ローズオイルは R.ガリカの花から得ていました。フランスと北アフリカでは、ローズオイルは今も R.centifoliaとcentifolia-gallica の雑種から得ています。シャルルマーニュの Capitularede villis で言及されている薔薇は、おそらくR. caninaです。中国では、自生の薔薇(R. rugosaなど)が、香料のフローラルの香りの原料として、また薔薇風味の紅茶の製造に古くから使用されてきました。

エッセンシャルオイル事業では、香りの高い薔薇の品種(オイルローズ)を大規模に栽培しています。 主な生産国はヨーロッパのフランスとブルガリアですが、トルコとイランでははるかに多くのローズオイルが生産されています。宗教儀式でローズオイルとローズウォーターが必要とされているのです。 有名な生産地は、ブルガリアのシラーズ(Shiraz)とメッシュ(Meshed、イラン)、イスパルタ(Isparta、トルコ)、カザンラク渓谷(Kazanluk valley、ブルガリア)です。

多くの薔薇の品種が知られていますが、 たとえば、R. albaは、おそらくロサ ダマスケナと中央ヨーロッパの野生種であるロサ カニーナの雑種です。

さらに、プロヴァンスで最も人気のある百葉の薔薇(Rosa centifolia)があります。これは、おそらくR. albaとの交配によって Rosa gallica から派生したものです。 密集した花びらにちなんで名付けられました。

グロワール ドゥ ギラン Damask rose Gloire de Guilan

    

            http://roses.shoutwiki.com/wiki/Datei:IMGP3331-3-w.jpg 

   

https://huonperennials.com/plant-descriptions/roses/damask-roses/gloire-de-guilan/ 

      

非常に古い品種と思われます。 ナンシーリンゼイ(Nancy Lindsay)が紹介。イランでアターを作るために使用しているところを見つけました。鮮かな緑の葉、澄んだピンクの絹のような質感の花は、四分されて折りたたまれています。 貧しい土壌に育ち、 夏に開花します。

 

 


ダマスクローズ 140

2020年11月06日 | ダマスクローズをさがして ― Ⅲ

日本の薔薇のさび病は、ケネオラ ジャポニカ(Kuehneola japonica)、フラグミディウム フジフォルメ(Phragmidium fusiforme)、フラグミディウム ロサエ ムルティフロラエ(P. rosae-multiflorae)の3種類の糸状菌が原因だといわれています。いずれも、着生した葉の上や枝上で越冬した冬胞子が、翌春の伝染源となり、その後夏胞子が空気伝染して感染します。最初に下の絵のような茶色の粉のようなものが出来ます。ご覧になったことがあるでしょうか。 黒星病、うどんこ病に比べて、日本ではあまり話題にはなりませんが、なかなかにやっかいな代物です。

  Phragmidium fusiformeによるさび病、葉裏(上)と葉表(下)葉の裏と表では姿が異なります。

 

さび病菌は、高度に特化した植物病原体で、多様で、さまざまな種類の植物にかかわります。例外もありますが、非常に狭い範囲の宿主を持ち、非宿主植物に伝染することはありません。

さび病菌の胞子は、風、水、または昆虫によって分散されます。胞子が特定の植物に遭遇すると、胞子は発芽して植物組織に感染します。さび胞子は通常、植物の表面で発芽し、発芽管と呼ばれる短い菌糸を成長させます。

この生殖管は、接触屈性( thigmotropism;キュウリの巻きひげが支柱に巻き付く時のように、接触の刺激に反応してある方向に動いたり成長したりすること)で気孔を見つけ、葉の表面の気孔に向かって菌糸を延ばします。

 

気孔の上に、菌糸の先端が付着器と呼ばれる感染構造を生成し、付着器の下側から、細い菌糸が下向きに成長して植物細胞に感染します。真菌が植物に侵入すると、それは植物の葉肉細胞で成長し、ハウストリアといわれる特殊な菌糸を生成します。

吸収根は細胞壁(Cell wall)を貫通しますが、細胞膜 (Cytoplasm) は貫通しないので、植物細胞膜は、吸収根の周りに陥入し、吸収根を基盤とした空間を形成します。吸収根はアポプラスト経路※を止めて植物の栄養素を、胞子の成長が起こるまで、どんどん植物細胞に浸透し奪い続けます。このプロセスは10〜14日ごとに繰り返され、同じ植物の他の部分や新しい宿主に広がる多数の胞子を生成します。

      

              アポプラスト経路(橙線)

※アポプラスト経路

アポプラスト(apoplast)とは、植物体内において細胞膜の外側の、水溶液(アポプラスト液)で満たされた空間です。アポプラストは水と溶質の移動と拡散に不可欠な空間で、アポプラストを植物物質の輸送経路と見たとき、この経路をアポプラスト経路(apoplastic pathway) と呼びます。

  

https://www.sciencedirect.com/topics/immunology-and-microbiology/haustorium

上の図で。赤い点が葉表の細胞壁に張り付いたカビの胞子です。菌糸(発芽管、赤い線)を延ばし、アポプラストに侵入しています。黄色い線は吸収根で、葉肉内で発育して

ハウストリアを生成し、そこから胞子を放出します。下に顕微鏡写真を引用しておきました。

                     葉の断面、上が葉表

さび菌は葉の表から侵入して葉の裏側からさび胞子を放出します。葉の下に向かってお椀のように口を開いているのがさび胞子器(aecium)で、お椀の中の赤いつぶつぶがさび胞子 (aeciospore) です。

この胞子が宿主の葉の表面に取り憑くと、新たなさび病が発生します。葉の表にくっつくと、この絵の様に、或いはこの前の葉の様にさびの膿疱を作って胞子(夏胞子:uredoniospore)を放出します。夏はこの回路を繰り返してさび病を広めます。葉の表面の粉状のさび色または茶色のものは胞子の堆積物です。

  

図1. この絵は小麦のさび病のライフサイクルを示したものです。薔薇のさび病とは一部分異なりますが絵の内容が良いのでし薔薇くこの絵で説明を続けます。上で述べた事象は、さび病菌の生活環の内、右~右下の部分にかけての部分です。

     

    葉の裏側にできた薔薇さび病Phragmidium tuberculatum 夏胞子の膿疱

     

       https://www.sciencephoto.com/media/776459/view 

膿疱を切断したことろ。上の方に褐色に染まっているのが夏胞子 ( Urediniospore ) です。これが風に吹かれて宿主の葉に付き、繁殖を繰り返します。

   

https://gramho.com/explore-hashtag/teliospores (上が葉の裏面)

薔薇の葉の断面に寄生した、フラグミディウムさび病菌(Phragmidium rust fungus)の冬胞子(テリウム、telium)。その上に、蒲の穂のように見える細長い胞子;5〜7個の細胞に分割された長い楕円形のテリオスポア(Teliospores)が見えます。

     

https://www.sciencephoto.com/media/666420/view/rose-rust 

Phragmidium mucronatumのキャプションスキャニング電子顕微鏡写真。

茎のteliosporesから出た冬胞子(telium)、緩んだ夏胞子がその下に見えます。倍率x400。 別の写真で見ると下の様になっています。

              

https://www.researchgate.net/figure/A-E-Uromyces-hawksworthii-UB-Mycol-Col-22875-A-Circular-to-irregular-dark-brown_fig2_278783722 

    

  

葉が勢いを無くし、緑の葉が少なくなるとさび胞子の上に冬胞子が発生し,さび菌は冬の段階に入ります。冬胞子は感染しませんが、それらは発芽して担子器から担子胞子を生成します。

 

2つの半数体真核細胞を融合するプロセスである核融合(Karyogamy;細胞核の合体。これに対して、細胞質だけ融合して核が合体しないものを 細胞質融合(plasmogamy、原形質融合ともいい、2個の細胞が合体する際に最初に起こる過程です。一般には,これにひきつづいて核融合(karyogamy)が起こって合体が完成しますが、担子菌類ではこの二つの過程が間をおいて起こるため, 異核接合体(heterokaryon )という特殊な状態になる。)が起こります。

 

図1. をもう一度取り上げます。

  

一つの細胞の中に白と黒の二つの核があるのが、 異核接合体のさび胞子、夏胞子、冬胞子です。テリオスポア(Teliospore)までは二核です。次の段階で核融合が起こり、担子器が生じます。担子器が縦に4つに分かれて担子胞子 ( Basidiospore, 減数分裂した胞子、図では白と黒に分かれた胞子 ) が作られます。春になると風に飛ばされて、上の図では小麦の代替宿主(小さび病ではオオアマナの類、赤さび病ではアキカラマツの類、黒さび病ではオオトリトマラズの類)に取り付きます。

 

薔薇に感染するPhragmidium tuberculatumおよび他のいくつかの種には代替宿主がいまません。最初に形成された胞子は若い茎に感染し、歪みと明るいオレンジ色の膿疱の生成を引き起こし、葉に感染してほこりっぽいオレンジ色の胞子(夏胞子)を生成し、それが、さらに感染をひろげます。夏の終わりに、夏の胞子を作る膿疱が切り替わり、暗くて丈夫な休眠胞子を生成します。これらの胞子は茎や支柱に付着し冬を乗り切ります。そして、春に再び感染が始まります。夏の間、さび胞子の繁殖は10〜14日ごとに発生します。ほとんどの感染は防除を必要としないほど軽いものですが、稀に深刻な損傷を引き起こす場合があります。

   

        Basidium, illustration from Soviet encyclopedia, 1926 

担子器の上部から減数分裂した担子胞子が生まれ、放出されようとしています。

       

https://mrnatural.ca/applications/mold-species-library/basidiospore/

担子器の上部から担子胞子(青)が放出されています。

   

   

中国西部でRosa omeiensisとRosa lichiangensisに感染していたサビ菌Phragmidium zhouquensis

https://www.researchgate.net/figure/Phragmidium-zhouquensis-BJFC-R01516-holotype-A-Gross-features-of-infected-leaves-B_fig1_281362890

A;Phragmidium zhouquensis に感染した薔薇の葉。 B、C;テリウムの表面。 D;表面が疣状のteliospores。 E;黄色で透明な疣状の卵胞子、各細胞に2〜3個の胚芽孔がある、 F;テリウムの垂直断面、スケールバー:A = 1 cm、B =500μm、C、F =200μm、D、E =50μm

  

薔薇のサビ病のライフサイクルを現した図です。担子胞子が代替宿主ではなく、薔薇の蕾や若い葉に付きます。

 

さび病は治療が非常に困難です。マンコゼブやトリフォリンなどの殺菌剤は役立つかもしれませんが、病気を根絶することはできません。胞子の発芽を止めるために硫黄燻蒸をする方法もありますが、使えるケースが限られます。良い衛生状態、良好な土壌排水、注意深い散水で問題を最小限に抑えることが大切です。錆が発生した場合は、影響を受けたすべての葉を取り除き、燃やしてすぐに対処する必要があります。堆肥にしたり、感染した植生を地面に残すと、病気が広がります。

十分な空気循環を取るために、植物を十分に離して完全な太陽の下で剪定し空気に触れさせます。温室では、結露を避け、胞子の生成と拡散を防ぐために、感染を見つけたらすぐに駆除します。越冬する胞子の数を減らすために、秋の清掃では落ち葉を集めて処分します。

先に書いた、9/22のツクシイ薔薇、以下10/24までに取り上げた18種の薔薇の内、サビ病に弱い準絶滅危惧種、絶滅危惧種は、気候変動、大気汚染等の影響もあって、人の手を借りなければ絶滅するのも時間の問題かも知れません。

薬剤耐性菌の出現を回避するためには作用機序の異なる殺菌剤をローテーションさせて使うことが大切です。下の一覧表を参考に薬剤を散布してください。

 

https://www.sc-engei.co.jp/myroses/dispersal/1.html から

商品名

成分

殺菌剤の系統

作用性

予防
効果

治療
効果

薔薇の
適用

ベニカⅩファインスプレー

メパニピリム

アニリノピリミジン系

病原体のアミノ酸やタンパク質の合成を阻害

 

ベニカⅩファインエアゾール

メパニピリム

アニリノピリミジン系

病原体のアミノ酸やタンパク質の合成を阻害

 

STサプロール乳剤

トリホリン  

EBI剤  

病原体の細胞膜成分の合成を阻害

マイローズ殺菌スプレー

ミクロブタニル  

EBI剤  

病原体の細胞膜成分の合成を阻害

ベニカⅩスプレー

ミクロブタニル  

EBI剤  

病原体の細胞膜成分の合成を阻害

パンチョTF顆粒水和剤

トリフルミゾール  

EBI剤  

病原体の細胞膜成分の合成を阻害

シフルフェナミド

酸アミド系

病原体細胞のミトコンドリア内の呼吸を阻害

GFベンレート水和剤  

ベノミル

ベンゾイミダゾール系

病原体の細胞分裂を阻害

トップジンM
(ゾル、スプレー)

チオファネートメチル

ベンゾイミダゾール系

病原体の細胞分裂を阻害

モスピラン・トップジンM
スプレー

チオファネートメチル

ベンゾイミダゾール系

病原体の細胞分裂を阻害

GFモストップジンRスプレー

チオファネートメチル

ベンゾイミダゾール系

病原体の細胞分裂を阻害

サンケイオーソサイド
水和剤80

キャプタン

有機塩素系

病原体の酵素に作用

 

STダコニール1000

TPN

有機塩素系

病原体の酵素に作用

 

サンケイエムダイファー
水和剤

マンネブ

ジチオカーバメート系

病原体の酵素に作用

 

家庭園芸用カリグリーン

炭酸水素カリウム

炭酸水素塩
(天然系成分)

細胞のイオン薔薇ンスを崩し

細胞の機能障害を起こす

 

                           

 

 


ダナスクローズ 139

2020年11月04日 | ダマスクローズをさがして ― Ⅲ

うどんこ病

  

ここまでひどくはないけれど、蕾の下の、萼のところに白いマフラーをしているのを見ることがあります。敵は越年してこの準備をしていたのです。

  

          

この様になったら、黄色く変色して成長せず、蕾はぽとりと地面に落ちてしまいます。ヨードの入ったうがい薬で拭いてみても、変色して見栄えがよくありません。良い方法はないものでしょうか。目の前に開花を控えていて気の揉める時期です。

 

うどんこ病に勝つ方法

薔薇のうどんこ病は通常、初夏または初秋に現れます。この病気は真菌Sphaerotheca pannosa(スファエロセカ パンノサ)によるもので、棘、つぼみ、若い葉、新芽など、植物のすべての陸生部分に影響が及びます。5月初旬頃になると、葉の表面の結節が膨らみ、ビロードのような白い胞子が現れます。この段階になると、菌糸体が葉の内側に浸透し、葉の表面の処理だけでは死滅させることは出来ません。(この段階での処置を下に書いておきます)光合成が悪化し、葉の形が変わり、乾燥して落ちます。花の蕾は開かず、乾いて落ちます。植物の芽は枯れ、植物自体も元気がないように見えます。弱った植物は冬になると枯れるかもしれません。

夏になると、菌は胞子(分生子:conidia)をまき散らします。秋の始まりまでに、真菌は植物の上で菌糸体(mycelium)に成長します。落ちた蕾や剥がれ落ちた樹皮の下で、病原体は越冬します。

急激な温度変動、土壌の通気不良、光の不足、過剰な窒素肥料、土壌中のカルシウムの不足、低湿度または高湿度、詰めて植えることで病気を引き起こします。

  

Sphaerothecapannosaに引き起こされる薔薇の小枝、蕾、葉のうどんこ病の症状

https://www.researchgate.net/figure/Powdery-mildew-symptoms-caused-by-Sphaerotheca-pannosa-as-on-the-Rose-twig-bud-and-on_fig1_330970836 

 

処置方法をいくつかご紹介しておきます。参考になさってください。

菌糸体が葉の内側に浸透すると、葉の表面の処理だけでは死滅させることはません。 影響を受けた植物はソーダの溶液で洗う必要があります。水1リットルあたり小さじ2杯のソーダ、または粉砕硫黄の噴霧処理をします。(ソーダで処理したときは同じソーダ処理を続けます。)

植物を処理するときは、最初にポットの中に土を入れておきます。大きな茂みの葉はソーダの溶液で注意深く洗い、小さな茂みは溶液の入った容器に完全に浸した後、よくすすぎます。植物の処理は、病気が完全に消えるまで2週間間隔で行います。治療中に葉が黄変して落ちても、慌てることはありません。うどんこ病に犯された葉は落ちるのが当然です。薔薇の葉の腋には生きた芽があり、そこからまた新しい葉が現れます。

花害と戦う2番目の方法は、病気の薔薇をガラスフレームのある小さな、18°Cに加温した温室に入れて硫黄燻蒸します。ポットの中の土とその間の空間は濡れたぼろきれで覆います。その後、花によく水をやり、きれいな水をまきます。植物、湿ったぼろきれ、温室のフレームの内側は、粉状の硫黄にまみれていますが、この方法では2回の処理で十分です。硫黄処理は少なくとも10日間隔で行います。

 

植物に異変を素早く見つけたら、真菌に突然変異が起こらないように、毎回異なる方法で殺菌剤を使用する必要があります。病気が消えるまで10〜12日間隔で処理する必要があります。 7日間の間隔で、10リットルの水又は調合剤に対し40〜50gのソーダ灰と40gの石鹸の溶液を植物に噴霧する必要があります。

秋にはうどんこ病の影響を受けた植物の部分を切り取って燃やす必要があります。予防のために、各開花の前に、葉が完全に濡れるまで、0.3%のスーパーリン酸塩溶液と0.3%の硝酸カリウム溶液で根にも施薬をする必要があります。

 

うどんこ病菌、灰色かび病菌に対して効果があるとされる炭酸水素ナトリウム(重曹)もお奨めです。手軽であることに加えて、ミツバチ等有用動物に対する影響が少ない安全性、使いやすい、特異的な作用機作からうどんこ病菌、灰色かび病菌に耐性が出にくい、作物にやさしい、炭酸水素ナトリウムは植物に吸収され、光合成の原料として利用さる、散布中、散布後にいやな臭いがないなどの理由が挙げられます。炭酸水素ナトリウム1gを水500~1,000mlに混ぜて使います。(狭い範囲で、ニオイを気にしない範囲であれば食酢も効果があります。3mlを水50mlに混ぜて使います)ただし、展着剤が入ってないので晴れの日が続く時を狙って3日間隔で3~4回噴霧します。https://www.rakuten.ne.jp/gold/hana-online/bara_byougaityu.html 

日本では、うどんこ病は4~6、9~11月に出てきます。これだけ方法があるということは、なかなかこれといった方法が無いということでしょう。幾つか試して、あなたに合った方法を見つけることだと思います。手強い相手です。

 

 


ダマスクローズ 138

2020年11月02日 | ダマスクローズをさがして ― Ⅲ

     

※2 薔薇類黒星病は、糸状菌(カビ)の一種薔薇類黒星病菌(Diplocarpon rosae Wolf、ディプロカルポン ローザエ ウォルフ)の(不完全な段階のMarssonina Actinonema] rosae)によって引き起こされる、深刻で有害な病気です。薔薇を育てていて一番困る病気だろうと思います。分生子層を葉の表面の表皮下に作り、成熟して裂開すると多数の分生子を放出して、葉に暗褐色~暗灰色の円い斑点を作ります。花蕾(からい)が侵される場合もあります。最初に紫~褐色の小さな斑点ができ、その後病斑が拡大します。病状が進むと病斑の周りが黄色く退色し、黒い粒状の病斑が認められるようになり、さらに進行すると葉が容易に落ちるようになります。昆虫やダニによる損傷に対する感受性も増加します。病気をチェックしないままにすると、感染した植物は葉のほとんどを失い、甚だしい場合は枝が枯れることがあります。シュートとして出てきた枝がほんの2~3年の間に枯れるのはおそらくこの病気でしょう。

葉の上面に小さな暗い病巣は、数週間かけてゆっくりと拡大し、直径約13 mmまでの不規則な縁取りのある円形の黒い斑点になります。

1年目に出た茎、葉柄、茎、茎、ローズヒップ、萼片、花びらにも、小さな紫がかった赤から黒の病変が形成される場合があります。わずかに隆起した不規則な斑点は、最初は紫がかった赤で、後で黒くなります。

これらの斑点は、春の一次感染の主な原因です。現象はしばしば各葉の斑点の周りに発生し、後に葉全体に広がります。より感受性の高い薔薇の品種が重度に感染すると葉は、通常、黒点の真菌によるエチレン生成のために大きくならないうちに落下します。黒点の真菌は落ち葉や病変で越冬します。

 

病巣で生成された白いぬるぬるした微細な胞子(分生子、conidia)の塊は、水または風に吹かれた雨によって、落ち葉の病変から春に出た葉の開口部に飛散し、20℃前後の温度条件下で、葉が7時間濡れたままの場合、または大気湿度が95%以上の場合、分生子は葉組織を貫通する1つまたは複数の生殖管を生成し、3~6日で発病します。

病変が最初に見えるようになってから5〜14日後、黒点病変内に暗い斑点として現れる皮下の小胞(subcuticular acervuli)内に分生子が生成されます。

1つの大きな黒点に数週間にわたって数百の小胞(acervuli)が生成される場合があります。各小胞は4,000個以上又は、2細胞硝子分生子(hyaline conidia)を生成することができます。アセルブリ(acervuli)は表皮細胞を不規則に破裂させ、白いぬるぬるした塊の分生子を放出します。

粘着性の分生子は、主に水のはねかえりと風に吹かれた雨だけでなく、手、衣類、道具、昆虫やダニによっても運ばれます。直径10 mmの2つの黒い斑点がある薔薇の葉では、30日間で250万個以上の胞子が作られます

分生子が発芽する前に少なくとも5分間湿っている必要があります。このような胞子は乾燥しても、2〜4週間生存し続ける可能性があります。分生子の発芽は、18℃〜26°Cが最適です。最低温度 0℃~3°Cおよび最高温度30℃~33°Cあることが条件です。発芽は、6°C未満の温度で36時間以内、24時間で開始します。 9℃~12°C、および18℃では9時間です。疾患の発症は、20℃~27℃で最適であり、18℃~6℃(および30℃~33℃)では急速に低下します。

分生子が発芽し始めてから7時間以内に葉の表面を乾燥させると、感染は発生しませんが、その後 15℃~24℃、または10℃~12℃では13時間後に発芽を始めます。長時間の湿った暖かい天候の期間中、ブラックスポットは非常に深刻になる可能性があります。

 

多数の二次感染は分生子によって引き起こされます。秋の落葉に続いて、hyphaeは死んだ葉の組織に深く入ります。そして古いacervuliの下に黒い斑点(pycnidia)を形成します。pycnidiaは春に破裂し、白くぬるぬるした分生子の塊を出し、病気のサイクルを完了します。The sexual stage(Diplocarpon rosae)が病気のサイクルの一部になることは稀です。

 

春から秋にかけて雨の多い時期、特に4月下旬から発生することが多く、梅雨期に広がります。落葉や枝の病斑で越冬するので、病葉、病枝、枯れ葉を集めて焼却し、早めに薬剤(サプロール、サルバトーレME、ダコニール、トップジンM、ベンレート、マネージ等 )を散布します。胞子の発育には水滴が必要なので、水滴のつかない温室で発生することはありません。

    

https://eol.org/pages/159386 

こんな葉、見かけますよね。黄色くなると手で取り除きますが、そのまま地べたに捨てていました。これだと胞子を薔薇まいているようなもの。良くなかったのですね。

       

黒星病を、図を使って説明すると;

胞子(分生子: conidia)は侵入した茎組織で生成され、春の季節(20〜26.7°Cの範囲が適温、29.4°Cを超える温度では病気の蔓延を食い止めます)に水を介して(一般的には雨や風によって)葉の開口部に拡散します。その後、葉の組織に浸透する生殖管を生成し、葉のキューティクルの下側に菌糸体を作ると病変が現れます。病変が現れると、気候が最適に湿って暖かいままである限り、無性的に、継続的に分生子を生成します。これらの分生子は、二次接種源として感染していない新しい葉に分散し、感染サイクルを繰り返します。(下図、右下) 

秋の季節に落葉が起こると、Diplocarpon rosaeの菌糸(hyphae)が枯れ葉の組織に侵入し、古いアセルブリ ( acervuli ) の下に分生子 ( conidiophores ) が並ぶピクニジウム( pycnidia、無性生殖で胞子をつくる器官 ) を形成します。その後、ピクニディアは感染した組織の病変で越冬し、春に破裂し、分生子を放出し、水によって分散させ、病気のサイクルを繰り返します。

Diplocarpon rosaeにも性的段階(下図 左)がありますが、環境条件が悪いと観察されません。この段階では、性胞子(子嚢胞子、ascospores)がアポテシウム(apothecium)の中で形成されます。子嚢の形成に適した気象条件であれば、春に子嚢を含むアポテシウムが観察されます。しかし、これはめったに起こらず、子実体は通常、病原体の無性のライフサイクルが起こる分生子で満たされています。

   

チェリーの黒星病ライフサイクル, The New York State Agricultural Experiment Station- from Tree Fruit Crops IPM Disease Identification Sheet No. 8.から。詳細な薔薇の黒星病の図が見つからないのでこの図を取り上げました。

     

黒星の中に出来た小胞(Acervuli)、および分生子 (conidia)

A ; マスクメロン果実の黒星病菌Colletotrichum lagenariumのAcervulus ( アセルブルス ), B ; cetaeと分生子, C ; コムギ葉の断面の graminicola acervulus,  D ; 葉の表面のacervulus, E ; 真菌Marssonina spのAcervulusと分生子

         

                   conidia

         

https://www.insectimages.org/browse/subthumb.cfm?sub=9528&Node=6

ピクニディア(無性生殖で胞子をつくる器官)から、分生子(conidia)を放出しています。

 

黒星病を防ぐには1.

耐性のある品種の最高品質で無病の植物のみを購入します。ARS数が多い薔薇、特に光沢のある厚い葉の薔薇は、通常、ブラックスポットやその他の一般的な薔薇の病気に対して中程度から良好な耐性があります。

黒星病への耐性は、Rosa wichuraiana、R. multiflora、R. cinnamomea、R. pendulinaとの交雑育種によって、多くの現代の栽培品種に育てられてきました。R. arvensis, R. canina, R. kordesii, and R. moschata、ノイ薔薇、ハマナシ、モッコウ薔薇、サンショウ薔薇これらはすべて、耐性または免疫力が高いです。つる薔薇や木立薔薇は、半つる性の薔薇ほど頻繁に病気になることはありません。

黒星病に耐性のある栽培品種は、感受性の高い栽培種よりも真菌の侵入が遅く、病気のサイクルが完了するまでに時間がかかります。

 

黒星病を防ぐには2.

慎重に収集して堆肥にする、または、秋にすべての落ち葉を燃やし、春に新しい成長が始まる前にもう一度燃やします。可能であれば、特にシーズンの初めから中旬に感染した葉を取り除くと、黒星病の広がりがさらに減少します。

 

黒星病を防ぐには3.

秋と春先にタイプと品種に応じて枝を剪定します。枯れ木と感染した枝はすべて取り除き、燃やす必要があります。つぼみから2.5 -5cmを徹底的に剪定すると、黒星病菌の持ち越しが大幅に減ります。

黒星病を防ぐには4.

植物の活力を維持します。

a.適切な植栽。有機物含有量の高い、よく準備した、水はけのよい土壌を使い、薔薇を一日中太陽(または毎日最低6時間の日光)の照る場所に置きます。出来れば、水分、光、土壌の栄養素を薔薇と競合する大きな低木または樹木の近くに植えることは避けます。

b.栽培種、薔薇の種類に適した良好な空気循環がえられる距離を置きます。

c.葉が濡れている中で植物を扱わないこと。

d.土壌試験に基づいて肥料をやります。高窒素肥料の過度の使用は避けてください。新しく植えた薔薇は、しっかりと定着して着実に成長するまで施肥しないでください。土壌(pH)は5.5〜6.5にする必要があります。

e.乾燥期間中は一週間隔をあけて水をやってください。土壌は20〜30cmの深さまで湿っている必要があります。特に午後遅くや夕方に水をやるときは、葉の上から水をやることは避けてください。葉を濡らさないで散水の出来るソーカーホース(マイクロ点滴灌漑ガーデンホース)を使うか又は、葉を濡らさない方法を施行してください。冬の防護策としては、極低温、凍結融解の反復、および風や大雪と氷による損傷をあげることができます。

f.可能な限り、庭に植えた薔薇の感染源となる、近くに生えている野生または世話をしていない薔薇を取り除きます。

 

黒星病を防ぐには4.

葉の裏と表に、殺菌剤をスプレーします。春に芽が開いたときに始め、9月または10月初旬まで続けます。耐性のあるツル薔薇には殺菌剤はほとんど必要ありません。ハイブリッドティーローズ、ハイブリッドパーペチュアル、その他の薔薇で黒星病に耐性を持つ薔薇を選択しておくと、殺菌剤による制御が容易になり、殺菌剤の塗布が少なくて済みます。感受性の高い薔薇の品種をグループ化すると、噴霧が容易になります。薬品のスプレーは散布よりも効率的です。若い、影響を受けやすい葉の成長をカバーするために、7〜10日間隔でスプレーすることが必要です。期間が雨の場合は、スプレー間隔は5日または7日に短縮し、乾燥している場合は10日まで延長する必要があります。

可能であれば、雨が降る前にスプレーして、水しぶきや風に吹かれた雨によって広がる胞子から葉を保護する必要があります。

出来れば、さまざまな病気や動物の害虫を駆除するためにも、複数の病気に効く殺菌剤、殺虫剤、および殺ダニ剤を選びます。ラベルをチェックして、1つまたは複数の殺菌剤が含まれていることを確認してください。https://ipm.illinois.edu/diseases/rpds/610.pdf 

 

ダコニール(液体1000倍)、オーソサイド水和剤80これらの薬剤は。植物体内に入った病原体に効果はありません。葉の表面に付着している、または飛んできた病原体を退治する薬剤で、予防目的で散布します。ベンレート水和剤、トップジンMゾル、サプロール乳剤は、薬の成分が葉の中に浸透し、既に侵入した病原体まで退治する浸達性の薬剤です。薬剤を使用するにあたっては、薬剤に耐性をつけさせない様にローテーション散布(輪番散布)します。(詳細は一覧表で下に引用しておきました)

 

より自然で毒性のない方法としては、希釈ニームオイル(Neem oil)が黒星病、アブラムシに対する殺虫剤として効果的です。また、水で1:3に希釈した牛乳を葉にスプレーするのも効果的です。真菌は24〜32°C(75〜90°F)の温度で最も活動的であるため、通常、成長期の最も暖かい時期に7〜10日間隔で噴霧を繰り返す必要があります。