Annabel's Private Cooking Classあなべるお菓子教室 ~ ” こころ豊かな暮らし ”

あなべるお菓子教室はコロナで終了となりましたが、これからも体に良い食べ物を紹介していくつもりです。どうぞご期待ください。

デンプン

2018年07月24日 | パン

これまで見てきたパンの発酵の仕組みをもう少し詳しく見ておきたいと思います。ドウの発酵に関してすっきりしないところがまだまだあるからです。

例えば、発酵という現象はガスを出す、エチルアルコールを出すという、水を出すという一方通行ではないはずです。必ずそれらの進行を阻害する、インヒビターが存在するはずです。そうでなければ、小麦が今まで種でいられるはずはありません・・・・・・・・・等々の疑問点が存在するからです。

 パンを作っていて、小麦粉の中に水とイーストを入れただけで発酵が進むことを経験しますよね。これまでの説明で、おそらくα-アミラーゼとβ-アミラーゼが小麦粉に働きかけているからだろうと想像していますが、アミラーゼが何に対して働きかけているのでしょうか。デンプン粒の細胞壁にアミラーゼが直接作用するのでしょうか? 

 葉の細胞にある葉緑体の中で合成されたでんぷんは、夜の間に分解されて糖になり、維管束を通って種子の貯蔵器官に輸送されます。貯蔵器官の細胞には、たくさんのアミロプラストがあり、その中で再び糖からでんぷんに合成されます。これがデンプン粒です。アミロプラストは細胞小器官の一種で、コムギの胚乳内では、楕円形をした大型のアミロプラストと、小型のアミロプラストが混在しています。

    

               https://www.alic.go.jp/joho-d/joho08_000165.html から 

 大きなアミロプラストは写真から約10-20μはあると思われますので、これらの粒がローラーで製粉される過程で圧し潰されて中からデンプンが出てきます。これに小麦粉の中にあるα-アミラーゼが働きかけます。 

α-アミラーゼは「デンプンやグリコーゲンのα-1,4-結合を不規則に切断し、多糖ないしマルトース、オリゴ糖を生み出す酵素です。」と以前述べたように、その通りの働きかけをデンプンに対して行い、デンプンは下のようなデキストリンになります。

               

               デキストリン

  α-グルコースがα-(1→4) または α-(1→6)グリコシド結合によって重合しています。

 このデキストロースにβ-アミラーゼが働きかけて粉砕されたデンプンがマルトースになるのです。粉砕デンプンがマルトースになる時間は非常に早く、小麦粉の中に水を入れてかき混ぜた時に0.1しかなかったドウの中のマルトースが1.0%に、3時間後には2.0%にマルトースの量が増えているほどです。又、ミキシング後に最初の量の10-15倍になっているとの報告もあります。(言い忘れていましたが小麦粉の中に含まれている粉砕デンプンの量は小麦の種類、粉砕方法にもよりますが、小麦粉の全体の量の58%であると言われています。)

小麦粉の中のα-アミラーゼの活性は限定的ですので、それを補うためにα-アミラーゼを含むモルト、あるいは真菌由来のα-アミラーゼ( 真菌α-アミラーゼ※ )を小麦粉の中に入れてドウの中のデキストリンの生成を活性化し、ガス生成を盛んにして大きな、クラストの色の良いパンが作られています。

※真菌α-アミラーゼはアスペルギルス・オリザエ( Aspergillus oryzae ) から作ります。このα-アミラーゼは、パン職人が吸入して喘息を起こす、吸入アレルゲンとして知られています。oryzaeにアフラトキシン生産能はありませんが。この酵素を使ったパンを食べるとアレルギー感作を起こす疑いがあるともいわれていますが 真偽のほどは私にはわかりません。