Annabel's Private Cooking Classあなべるお菓子教室 ~ ” こころ豊かな暮らし ”

あなべるお菓子教室はコロナで終了となりましたが、これからも体に良い食べ物を紹介していくつもりです。どうぞご期待ください。

コブラ

2017年09月03日 | お菓子の歴史

コブラ 

コブラ(又はコブラー)はアメリカのお菓子です。初めてアメリカの料理書に現れるのは1877年刊のTRIED AND APPROVED. BUCKEYE COOKERY AND PRACTICAL HOUSEKEEPING. COMPILED FROM ORIGINAL RECIPES. あたりではないかと思われます。(あたりでと言うのは、私の持っている本で調べた結果、一番古いという意味です)とりあえずこの本に記されたレシピをご紹介しましょう。

コブラと言えば、ピーチコブラだと思っていたのですが、意外にもプラムコブラが取り上げられていました。

   

 上の絵は https://www.bettycrocker.com/recipes/fresh-plum-cobbler/587ce605-008c-4af5-a5d9-eb6ecdd38943 から引用させていただきました。プラムの上にクッキー生地が乗っています。これもコブラです。1877年のレシピはどのような内容でしょうか。

 

プラムコブラ

小麦粉1.1 L、溶かしたラード4 TBS、塩1/2 ts、ベーキングパウダー2 tsをミルク又は水でビスケットを作るように混ぜる。薄く延ばしてプディングディッシュ又は9 x 8 インチの大きさのドリッピングパンに敷き込む。

小麦粉 3 TBSと砂糖2 TBSを混ぜて上に撒く。缶詰のダムソンプラムを1.4 Lのせて砂糖をその上に1カップ振りかける。淵を小麦粉と水を混ぜたもので濡らす。上にクラストをのせて淵をくっつける。十字の長さ1インチの長さの切り口を2カ所開けて1/2時間オーブンで焼く。ピーチ、アップル、そのほか新鮮な又は缶詰の果物を使って作ることができます。--- Miss S. Alice Melching.

 

小麦粉600gに対してラード60gを使った生地はパイ生地ではなくビスケット生地でしょうが、かなりリーンな生地です。このレシピを見れば、どう見てもパイです。コブラ “ cobbler “ を日本の辞書で引くと、”コブラ―パイ、フルーツパイの一種 “ と出てくるのも合点がいきます。

  

 https://civilwartalk.com/threads/the-white-house-cook-book.100422/ から

 

1887刊、ジレット夫人 ( MRS. F. L. GILLETTE. ) のホワイトハウスクックブック厳選レシピ集から、

 

ピーチコブラ

深いディッシュに厚めのリッチクラストを敷き込む。ジューシィな酸味のあるピーチを半分に、または4つに切る。砂糖、スパイスで味を調えて軽く煮る。ディッシュに入れて同じ厚みのあるリッチパフペイストで蓋をする。きつね色になるまで焼く。上のクラストを小さなピースに割って中のフルーツの中と混ぜる。熱くして、または冷たくしてサーブする。ソースがなくてもおいしいが、ブランディ又はワインと一緒に食べるのもよい。ピーチをほかの果物に代えてもよい。カラントをこの方法で作ると最もおいしい。カラントをシーブに通して筋を取る。果肉1パイントに対して砂糖を4オンス、ブレッドクラム2オンス入れて焼く。生クリームを添えてサーブする。ホワイトカラントをレッドカラントの代わりに使うこともできる。

 

"White House" cookbooks は次のサイトで見ることが出来ます。

https://babel.hathitrust.org/cgi/mb?a=listis;c=1508896029

 

 

  

http://www.simplyrecipes.com/recipes/blackberry_cobbler/ から

これはブラックベリーのコブラですが、これを見て、先のレシピを眺めると、「コブラ」というお菓子の、大げさに言えば、方向性がみえてきます。ああっ!そうなんだ。フルーツの上にビスケット生地をのせるのも、パフペイストリィをのせて焼くのも同じ目的なんだと気が付きます。アメリカのコブラのレシピは1877年から現在に至るまで、ほとんど変化がありません。

しかし、ホワイトハウスのレシピは、やはり頭一つ上に出ています。パフペイストリィをコブラに使うことは気が付きませんでした。格調高いコブラに仕上がっています。 

それではプディングのようなコブラはどこから来たのでしょう。やはりこれは、イギリスからではないかと思い、私の悪い癖で山を張ってみました。2つの理由を拾い上げてみました。

一つはアメリカのかつてのイングランド植民地のレシピ、二つ目はイギリスのレシピです。これを見て、一番最初に取り上げたコブラと次のイギリスがらみの2つのコブラが全く異なる内容であれば、二種類のコブラがアメリカに存在する理由がわかると思います。

   


http://12tomatoes.com/georgia-peach-cobbler/
 から

 

ジョージア州は「モモの州」と呼ばれ、州の中でもっとも有名なお菓子がピーチコブラです。又、ジョージア州は1732年から1802年までイギリス領北アメリカ南部植民地でした。そのジョージア州のコブラのレシピを取り上げました。

 

ジョージアピーチコブラ

 

材料(8-10人分)

生のピーチ            6-8個

溶かしバター             1本

小麦粉               1カップ

砂糖                1カップ

ブラウンシュガー         1カップ

ベーキングパウダー         1 TBS

塩                  1/8 ts

ミルク              1カップ

バニラエッセンス          1 ts

レモンジュース           1/2個

 

方法;

1. 溶かしたバターを9 x 13 インチの大きさのベーキングディッシュに入れる。

2. ボールに小麦粉、砂糖1カップ、塩、ベーキングパウダーを入れてゆっくりとミルクを注ぐ。バニラを入れて混ぜる。バターを (2) で作ったバターの上に流し入れる。

3. ブラウンシュガー、スライスしたピーチ、レモンジュースをソースパンに入れて強火で熱する。砂糖を溶かしてピーチから汁が出るまで混ぜる。

4. ピーチをバターの上に入れる。

5. 190℃で40-45分間、表面がきつね色になるまで焼く。

 

 

 

ここに用意した料理書はThe Pudding Clubによる “ Great Britsh Puddings “ です。その中からPlum and cinnamon cobbler を取り上げました。

 

材料(6-8人分)

プラム                700g

オレンジの皮とジュース        1個

ライトブラウンシュガー        75g

シナモンスティック          1本

バター                75g

小麦粉               175g

ベーキングパウダー          2 ts

塩                  -

シナモン               1 ts

ミルク                125g

デメララシュガー           1 TBS

生クリーム

 

方法;

プラムを半分に切って種を取る。大きなソースパンにオレンジジュース、ライトブラウンシュガー、シナモンスティックを入れてゆっくりとボイルする。3-4分ボイルして火から下ろす。45-60分間冷まして、23 cm のベーキングディッシュの中に6 cm の深さまで入れる。

ボールの中に小麦粉、ベーキングパウダー、塩を入れてクラム状にする。又はフードプロセッサーに入れてクラム状にする。シナモン、オレンジゼスト、ミルクを混ぜて、ドウのような混ぜ物にする。

混ぜ物を果物の上にひと匙ずつ入れてその上にデメララシュガーを振る。220℃で25-30分間きつね色になるまで焼く。熱いコブラにクリームを添えてサーブするのが一番美味しい。

 

   

 

これは、プディング・クラブの裏表紙に使われている絵ですが、思わず「エッツ!」と声を出さずにはいられないくらいに,精緻で正確なプディングの姿です。

ビートン夫人の頃のスタイルでもありますが、歴史が営々と引き継がれていることを思い知らされた絵でもあります。ここにご紹介しておきます。

 

 

それでは果物の上にビスケット、クラムをのせて焼く、コブラはどこから来たのでしょうか。賢明なる( このブログをごらんになっている ) 諸氏なら即座に “ フランス ” と答えられることでしょう。

ここにもう一つの料理書があります。Lee Bailey’s Country Desserts という本で、リー・ベイリーが子供の頃に家族が作っていたレシピを集めたものです。彼はルイジアナ出身です。150のレシピの中にコブラが4種。もちろんピーチコブラも入っていました。このレシピが今のアメリカの代表的なコブラであれば、私の思惑は当たったということになります。もちろん賢明なる諸兄の考えも。(ルイジアナ州は元フランス植民地で1812年、アメリカ合衆国の州になったのです。)


 

それでは果物の上にビスケット、クラムをのせて焼くコブラはどこから来たのでしょうか。賢明なる( このブログをごらんになっている ) 諸氏なら即座に “ フランス ” と答えられることでしょう。

ここにもう一つの料理書があります。Lee Bailey’s Country Desserts という本で、リー・ベイリーが子供の頃に家族が作っていたレシピを集めたものです。彼の家族はルイジアナ出身です。150のレシピの中にコブラが4種。もちろんピーチコブラも入っていました。このレシピが今のアメリカの代表的なコブラであれば、私の思惑は当たったということになります。もちろん賢明なる諸兄の考えも。(ルイジアナ州は元フランス植民地で1812年、アメリカ合衆国の州になったのです。)

それでは、ルイジアナのピーチコブラを見てみましょう。

   

               Lee Bailey’s Country Desserts から

 

ピーチコブラ 

材料;

小麦粉                 1 1/2カップ

塩                    1/4 ts

ショートニング             1/4 カップ

氷水                   5 TBS

大きく熟れたピーチ             7個

砂糖                  1 カップ

バター(小さく刻む)           1/4カップ

ホイップクリーム又はアイスクリーム    -

 

方法;

深い、7 x 9インチの大きさのディッシュにバターを塗る。

小麦粉、塩をフードプロセッサーに入れてバターとショートニングを入れる。小豆になるまで回す。氷水を入れてまとめて冷臓器に入れる。ワックスぺーパーに挟んで延ばす。ピーチをスライスする。

ドウを大きく延ばしてディッシュの中に敷き込む。その中にピーチを入れる。砂糖を振り、刻んだバターをのせる。延ばしたドウの端をパタッとピーチの上に折り返す。

オーブンに入れて220℃で45分間表面がきつね色になるまで焼く。ホイップクリーム又はアイスクリームを添えてサーブする。

 

コブラはアメリカに入植した人達が祖国の味を、大陸で手に入る果物を使って再現したお菓子です。その土地土地で少しずつ変化した結果、pandowdy, grunt, slump, buckles, crisp, croustade, bird’s nest pudding、crow’s nest pudding等とコブラはいろいろな名前で呼ばれています。Lee Bailey’s Country Desserts のコブラの表紙絵の左下にも “ コブラ等 ( Cobbler and the like ) “ と、書かれています。