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中国推理ドラマ『開端』(RESET/リセット)~2022年のコンパクトな良質ドラマ

2022年04月16日 | エンタメの日記
2022年1月に放送された推理ドラマ『開端』(RESET/リセット)が好評です。
『開端』は中国ドラマとしてはコンパクトな構成で、キャストも少数、派手なセットや特殊効果に頼らずに「コロナ2年目」の時代に作られたドラマです。

 

タイトル:『開端』(RESET/リセット) 全15話(1話約45分)
原作:小説『开端』(オンライン小説レーベル「晋江文学」掲載) 作者:祈祷君
主演:趙今麦(チャオ・ジンマイ)、白敬亭(バイ・ジンティン)
放送媒体:テンセントビデオ独占配信  放送開始日:2022年1月11日
監督:孫墨竜、劉洪源、算
制作:正午陽光(DAYLIGHT ENTERTAINMENT/東陽正午陽光影視有限公司)

制作会社「正午陽光」は、ドラマ『琅琊榜』(ろうやぼう)、『歓楽頌』、『清平楽』(孤城閉〜仁宗、その愛と大義〜)など、多数のドラマをヒットさせている制作会社です。『開端』(RESET)にも、『琅琊榜』の制作陣が多数参加しています。

中国ドラマは、壮大なセットを組んだ豪華絢爛な歴史ドラマ、CG特殊効果をふんだんに使ったファンタジー時代劇、リッチでゴージャスな都市生活が強調された現代ドラマなど、規模と資金力を競い合うかのような傾向がみられます。
しかし、俳優のギャラや制作費の高騰が社会問題化し、政府当局はエンタメ業界全体に対して厳しい圧力をかけています。
また、2020年以降は、コロナ対策により撮影活動自体に規制がかけられています。
『開端』は全15話ですが、中国ドラマの中では短い部類に入ります。ほとんどのシーンが路線バスと警察署の中で展開され、主人公の二人はほぼ同じ服装で登場し、中国ドラマには珍しいほどの質実な作風です。

あらすじ
李詩情は嘉林師範大学に通う大学3年生。大学の前を通る路線バス「45番」に乗り市内の書店へ行こうとする。
バスの中で眠ってしまった彼女はバスが爆発する夢を見て飛び起きる。隣に座る青年を巻き込んで無理やりバスを降りると、不安にかられた彼女は「バスが爆発する」と警察に電話する。
その直後、交差点に飛び出してきたバイクと接触し、脳しんとうを起こし気を失ってしまう。目覚めたときは病院のベッドの上で、バスはすでに爆発し全乗客が犠牲になった後だった。
取り調べを受ける彼女の証言はつかみどころがなく、刑事の頭を悩ませる。病院のベッドで眠り落ちた彼女が目覚めたとき、再び「45番」のバスの中にいたーーー。

という切り出しから始まる超常現象推理ドラマです。

主人公:李詩情。20歳。嘉林師範大学に通う大学3年生。


李詩情を演じるのは現在19歳の演技派・趙今麦(チャオ・ジンマイ)です。
趙今麦(チャオ・ジンマイ) 2002年9月29日生まれ 身長165cm 瀋陽出身 中央戯劇学院在学中
2019年公開のSF映画「流転の地球」のヒロインにあたる役所を演じ注目を浴びる。映画公開当時17歳で、将来を嘱望される。実際には小学生の頃から子役として活動している。

もう一人の主人公、肖鶴雲。25歳。ゲーム開発エンジニア。ゲーム会社を起業。会議に向かう途中、バスの爆発に巻き込まれる。
「45番」バスの中で隣の席に座った肖鶴雲と李詩情は、超常現象を共有する無二の存在として、バス爆発という過酷な運命に立ち向かっていく。


肖鶴雲を演じるのは若手俳優の白敬亭(バイ・ジンティン)です。
1993年10月15日生まれ 身長183cm 体重75kg 北京出身
大学在学中に演技未経験ながら青春文学ドラマ「匆匆那年」(2014年)のメインキャストに選ばれる。細身で柔和な印象のルックスが特徴。
ドラマ、バラエティ、広告で活躍していますが、ルックスのせいかソフトな人物を演じることが多く、役柄の幅は広くありませんでした。
『開端』ではこれまでにない深みのある演技を見せています。

白敬亭は撮影時28歳、趙今麦は19歳で9歳差の二人ですが、芝居においては趙今麦のほうがリードしています。

『開端』の中国での評価

ドラマレビューサイト「豆瓣」(ドウバン)での評価:7.8点/10点
7.8点は比較的高評価の部類に入りますが、本当に評価の高い作品は8.5点を超えます。
2021年に放送されて好評を得た「バッドキッズ」は「豆瓣」で8.8点と評価されています。
『開端』では、物語が進むにつれてバスの乗客ひとりひとりがフォーカスされます。乗客は、ローカル配信主、アニメオタク、前科者、失業者など様々なバックグラウンドを持ち、ドラマを膨らませます。ただ、ストーリー展開のために作為的にキャラ設定されている部分もあり、改善の余地があるとのコメントが寄せられています。


推理ドラマの「中国事情」

中国の大都市には「死角なし」と言われるほど無数の監視カメラがはり巡らされています。
警察は監視カメラの録画映像の扱いに熟練しており、実生活の中で、監視カメラから逃れることは非常に難しいです。
よって、『開端』のような現代推理ドラマでは、「監視カメラがあるのが当たり前」で、それを逆手にとった行動が物語の鍵になります。
海外の視聴者からみれば「こんなところに都合よく監視カメラがあるのか?」と違和感を覚えるような場面でも、当然のように監視カメラが存在しています。
また、日本の推理ドラマでは、警察が人手不足でとにかく忙しそうに駆け回っている姿がよく描かれますが、中国ドラマではそういうシーンはありえません。
監視カメラがどこにもである、警察はやたらと人員が潤沢、といった前提は中国ローカル色といえます。


ロケ地:厦門(アモイ)

ドラマの舞台は架空の都市「嘉林市」とされていますが、ロケ地は福建省の厦門(アモイ)です。
ドラマの中で、長い橋の真ん中で路線バスが爆発するというシーンがあります。橋を使った撮影するためには地元交通当局の協力が必要となります。ロケ地の候補は他にもあったけれど、実在の橋を使った撮影許可が下りたのが厦門であったため、厦門が選ばれたと言われています。
厦門は多くのドラマのロケ地になっています。海に面し緑が豊かで街並みが美しく、もともとカメラ映えのする街ですが、地元当局がドラマ撮影に対して協力的であることも、厦門で多くのドラマが撮影される原因の一つと思われます。


中国ドラマの海外展開

歴史ものを中心に、日本でも中国ドラマが放送されるケースが増えてきています。中国メディア企業は中国ドラマの輸出に力を注いでおり、あらゆる国を対象に海外展開を目指しています。日本ももちろんターゲットですが、英語圏や東南アジアにもアプローチしています。
Netflix:2022年4月1日から台湾、シンガポール、マレーシア、ベトナム、ブルネイ向けに配信。
韓国の放送局/ネット配信:4月4日から放送。R15指定。

中国エンタメは、あらゆる面で韓国の影響を強く受けており、はっきりと口に出しては言いませんが、韓国を手本にしています。
『開端』もいってみれば「韓国ドラマっぽい」ドラマです。
全15話とコンパクトにまとまっており、推理もので、かつ中国色が比較的薄いので、海外展開に向いている作品といえます。

中国ドラマの撮影サイクル

中国のドラマの多くは、制作者と放送媒体が分離しており、全話分の制作が完了した後、放送媒体が発表され、放送スタートします。
『開端』の場合、2021年6月5日にクランクインし、2021年8月5日にクランクアップ。2022年1月11日に放送スタートしました。

2021年6月5日に公式Weiboにてクランクインを発表、アモイにてクランクイン。


2021年8月5日に公式Weiboにてクランクアップを発表。撮影期間は2ヶ月。


2021年6月の時点では制作スタッフがマスクをしていませんが、8月には全員がマスクをしています。

中国では、ドラマや映画に対し、当局によるセンサーシップ(検閲)が実施されています。
あらゆる面の表現に対して規制、制約があり、特に政治、道徳観念に反する表現、性的な表現に対する規制は厳しく、ドラマの中でできることは限られています。
そのような社会環境にありながらも、『開端』レベルの良質なドラマを生み出すことができるのは、中国エンタメ界の資金力、器材力、人材力の賜物であると思います。
コメント (2)
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