ラッセのにわで
価格:¥ 1,470(税込)
発売日:2001-07
だいたい、「ラッセのにわで」・・は、大人にはイマイチよくわからない絵本です。
あんな小さいボールを必死に追いかけ、いろいろな木の精や、果物の精に出会っていきます。みんなボールをあちこちに投げて、あとは、知らん振り。
そのたび、ラッセは、ボールの行方を追うのです。
これが、なんと、子どもが好きなお話なのです。子羊らが幼児期には、結構読まされました。そのたび、長い話で、しかも似たようなエピソードにクラクラしながら、読んだものです。
ところが・・です。このお話を実感する出来事が先日あったのです。それは、息子羊が、学校にボールを忘れてきたのが発端でした。
本人、ボールを忘れてきたことに次の日に気づきました。もう、真っ青です。これは、ママ(羊飼い)が誕生日にプレゼントしてくれた、大事なサッカーボールなのですから。もちろんママの怒りたるや、すさまじいの一言。いちおう、ワールドカップボールのレプリカ、結構考えて買ったものですしね。
やはり、ただのボールではなく、息子にとっては、世界で唯一つの僕のボール。ママにとっては、息子に初めて買った思い出のボール。
そう、他人から見たら、たかだか、汚いボール。なのでしょう。実際、娘などはどこ吹く風。なくなったって又買えばいいじゃん。とのこと。
しかし、息子と私にとっては、そうではないのです。そこで、暗くなっていましたが、学校に探しに行きました。まだ、残っていた先生方にも尋ねますが、ありません。もう、半泣きの息子です。帰ってから、使っていたお友達にも電話して、次に誰に渡したか、聞きますが、わかりません。
そう、人のボールなど子どもにとってはどうでもいいのですからね。
次の日に、サッカー部に聞くことにしました。K君のお母さんも心配してサッカーの子に聞いてくれたところ、なんと、部室に保管してくれていたことが判明しました。なんということ。しかし、見つかったうれしさで、息子羊、急におちゃらけが戻りました。よっぽどホッとしたのでしょうね。
そう、ここで、はっと思ったのです。これは・・・ラッセちゃんではないの? ラッセぼうやにとっては、唯一の大事なボールなのですね。大事だし、なくしたらきっと怒られることは、確実なんでしょう。もう、わかるかぎり訪ね、行方を捜さなければいられないのです。それも、今日、です。明日ではダメなのですね。そうでなければ、おちおち寝てもいられないくらいなのでしょう。
自分がその立場に立ったとき、子どもの目線になったとき、はじめて、このお話が見えます。すると、子どもたちが、このなんでもないお話のどこに惹かれたのかが、よくわかります。
子どもは、特に我が家の子羊2匹は、ため息をつきたくなるくらい、忘れっぽいのですが、息子のほうはまだ、大事なものは忘れないと思っていたのですが。
幼い頃のボールというものは、なくなって初めて大切だったと気づくような、なんか、そんなものの代表のような気がします。その大切さに気づいたとき、初めて、他人にはわからないけれど、人にはそれぞれ大事なものがあることに思い至るのでしょう。それを教えてくれるのが、りんごの精はじめ、いろいろな精霊たち、そして、今この瞬間の過ぎ行く時なのですね。「ラッセのにわで」・・・もう一回ゆっくり読んでみたくなりました。
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