子羊たちが成長するに伴い、なくしていったものは、たくさんあります。
たとえば、ゆったりした時間。そして小さきものに目をとめる瞬間・・・。
そう・・・子羊たちと一緒に過ごす時間は、まさに、小さきものに目をとめる時間でもありました。
何を見ても不思議だった幼児期。道端の石やどんぐりや、ありさん・・・あれこれと目にとめては手に取り、母にそのかわいい手をかざしては、「これ見つけたよ」と、それはうれしそうに見せてくれました。
そんな日々も、成長と同時になくなり、今は時がただセワシナク過ぎていくようです。
ふと気がつくと、それと一緒に私の中のセンスオブワンダーは、少しづつ影をひそめていきました。
先日、職場で、O田さんというおばあちゃんの訪問介護をしてきました。この方は週に3回、施設に通い、残りの日は職員が訪問して一緒に散歩をします。
認知が重いので、その時の気分にムラがあり、なかなか難しいところもあるのですが、本来は真面目なおばあちゃんです。
そのO田さんの家は、裏に小瀬の公園が広がる絶好の場所。そこには、一面の紅葉林があるんです。私もこの仕事をするようになり、初めて目にした場所です。一番はずれにあって、あまり知らない人が行かないような場所です。もちろん秋には、一面の紅葉が見られてそれは素敵です。
今は緑萌える時期。青々した紅葉の葉が茂っています。
その散歩道をいつものように押し車のO田さんと、歩いていきます。
雨上がりでしっとりした地面、苔が水を含んできれいに輝くさまも美しい風景です。
紅葉の木の木漏れ日が、その苔むした地面をチラチラと照らして、本当に素敵。
O田さんと、のんびりそぞろ歩くうち、ふとその地面を見ました。すると・・・
たくさんたくさん、紅葉の赤ちゃんが生えています。
「わぁ、かわいいねー」二人で声をそろえて、おおはしゃぎ。よくみるとあちこちに生えています。
小さい、この世に出てきたばかりの紅葉の赤ちゃん。
あぁ、命ってなんてすばらしいのか。
子どもと歩いている時に、見つけていた小さきものたち。
今はお年寄りとのそぞろ歩きで見つけることができます。
私のはしゃぐ様子に、目を細めては一緒に喜ぶO田さん。
仕事の中で、こんな風に自分を取り戻すことができることを感謝しつつ、その日の散歩は終了しました。
いくつになっても、小さきものを愛でる心を持ち続けていたい。
そう願ったお散歩時間でした。