グリーンブレーカーズ by 高木肥料店

農業の現場の おはなしなどなど。

吹き返しの乾いた風にも要注意。

2015-07-17 10:50:11 | Weblog
吹き返しの乾いた風にも要注意。

収穫された後、おコメは 等級検査という品質検査を受けます。これは
検査員による目視検査。

一定の量のなかで、整った形をしている米つぶの割合[整粒歩合]や虫
による食害の有無、さらには米つぶそのものの透明感などという検査項
目を経たうえで、最上級の一等米から 順番に 二等米、三等米そして
規格外/等外というぐあいに分類されていきます。

当然のことながら[品質の良さから]1等米の価格のほうがより高い値
がつくことになり、生産する農家さんたちは「育てたおコメが、より多
くの1等米であるように」と、努力し願うものなのです。

このようなコメ生産農家の通信簿というような意味合いを持つ等級検査
における数値の実際例があります。 平成17年から19年までの3ケ
年のあいだ の、7月中に収穫される宮崎米全体の等級検査の数値例
です。


ののの等級  17年  18年  19年

ののの1等  57%  54%  0.2%
ののの2等  37%  35%  0.4%
ののの3等  05%  09%  26%
ののの等外  01%  02%  70%

この表の17年や18年の数値が、平均的な年の宮崎における等級検査
の実際例です。1等米と2等米の合計が、収穫量の90%を占めるかん
じですね。

そしてここで問題にしたいのが平成19年における等級検査の数値です。

1等米と2等米の合計でも1%に届かず、さらには規格外のおコメが7
割もあったという、平成19年のこの異常ともいえる数字 は どうで
しょう。
1等米と2等米の合計でも1%に届かず、さらには 規格外のおコメが
じつに全体の7割にも及んだたというこの数字の意味するものとは、い
ったいどんな事象[がおこったのか]だというのでしょう。

じつはこの現象をおこした主原因が、今回のテーマとなる

 台風通過後の吹き返しの熱風

なのです。記録では、長時間(じつに23時間と公式記録されています)
にわたる高温で・乾燥した台風の吹き返しの強い風が、その後イネの生
育に大きな影響を及ぼしたという結果なのです。 

こわかったですよ。

例年であれば、収穫されたもののうちの9割以上のおコメが2等以上の
品質であるのに対して、19年に限っては 収穫されたおコメのうちの
じつに7割が 規格外の等外の品質でしかなかったのですから。

もちろん農家さんにとっての報酬であるおコメの価格に直結します。

簡単に・わかりやすいように説明するために・・・たとえば100俵の
おコメを生産するとして、その場合の1等と2等のおコメの価格を平均
して1俵1万円とし・3等と等外のおコメの価格を同じく平均して
1俵5千円であると 仮に仮定すれば・・・

平年では 90俵90万円 + 10俵5万円 の合計95万円
 
の収入であるのに対し、19年では 

5表5万円 + 95表47万5千円 の合計53万5千円

と、平年のほぼ半分の収入しかないことになってしまうのです。さらに
もちろん、これは大規模な農業者ほどダメージが大きくなり・・・

 1000俵であれば、平年950万円のところが19年では530万強。
 2000俵であれば、1900万のところが 1060万円。

たとえば10000俵近く出す集落営農などであれば、

 9500万円のところが、5300万円

にしかならないわけです。それでいて機械の償却費の代金や生産資材さ
らには地代や人件費などの経費は同じなのですから、こんなに怖い話っ
てないですよ。

ということで今回は、なんとか台風の強烈な風雨をのりきったと思った
のもつかのま、その直後にやってきた台風後の長時間の吹き返しによっ
て大規模な減収を被ったという、台風常襲地であっても予想もつかない
ことも起こる
という 自然のもたらした脅威というべき平成19年7月の
台風4号に関する怖い実例のおはなしでした。

熱風対策につづく。


◎ フィリピンの東海上を北西に進み、その後 東に進路を変えて
  九州・四国・東海・関東地方の太平洋沿岸を沿うように東に進
  んだ 平成19年の台風4号・・・ちなみに高知県土佐清水市
  付近を通過してのが14日、和歌山県串本町付近を通過した
  のが15日という[まさに現在の11号と同じ時分にやってき
  た
]強烈すぎる被害をのこした7月の台風でした。

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悪天候こそは、腕の見せどころ[前編]。

2015-07-15 16:02:26 | Weblog
悪天候こそは、腕の見せどころ[前編]。

6月から7月上旬にかけて降り続く雨の影響で、平年の半分以下の
日照におちいってしまった宮崎県地方。ほとんどすべての作物にお
いて、長雨のもたらしている日照不足の影響がでてきています。

のの 連鎖的悪循環な生育

その日照不足の影響ですが・・・

 作物が軟弱に育つ
 ↓
 作物の身体が、長く・軟くなる
 ↓
 葉が垂れる
 ↓
 込み合って、ますます日照が少なくなる
 ↓
 光合成がうまくできず、栄養不足の状態となり
 ↓
 下葉が黄化してくる
 ↓
 下葉から病気が発生する
 ↓
 根が弱る
 ↓
 果実の生育がばらつく・遅れる
 ↓
 果実の糖度や着色が悪くなる
 
といったような連鎖的な悪循環が生じることが知られています。

この生育環境の悪化による影響を真っ先に受けている作物 ・・・
それが 3月末から4月はじめに植えつけられ、例年であれば7月
末に出荷
される早期栽培のコシヒカリ
 と いうことになります。

そういった状態の代表的な生育の水田が こちら。

 株の色がどす黒いかんじ → 出来すぎイネ アップ

一株の大きさが長くなりすぎて、株と株の間の溝がみえないほどに
生育し、葉イモチ病が発生、ところどころですでに株の倒伏がはじ
まっています。

のの できすぎネの全体

こちらが全体像ですが、生育に凸凹がある[生育差がある]のが確
認できますよ。

こうなると、なかなか実が熟れないので刈り取りが遅れ、熟期がば
らつくので収穫適期がそろわず結果的に実の品質が低下しますし、
なにより 台風などの強い風雨に遭うと ばったりと株が倒れてし
まい、ヘタすると収穫が皆無になることにもなりかねません。

後編に つづく。


◎  栄養成長期と生殖成長期が分かれているイネ・・・栽培の
  基本を学ぶ[腕を磨く]には最適な作物だ と思います。


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脱け殻なのかと思っていたら。

2015-07-14 22:43:00 | Weblog
脱け殻なのかと思っていたら。


地下に棲息し、樹の根の養分を吸いながら、成長していく
セミの幼虫。やがて土中を這い出る時がきて、夕刻に地上
にでてきた幼虫は、足が踏ん張れる場所を探し、あくる朝
までには 背を割り皮を脱ぎ成虫となって飛び立っていき
ます。

前日の好天に恵まれた早朝には、木々の枝や建物の柱、な
かにはブロック塀などといった庭のそこかしこに、脱け殻
が たくさん見つけられます。
毎年毎年くり替えされる夏の風物詩といえる光景ですよね。

 脱け殻?

そして今朝。

めずらしく晴れ。ひと月ぶりといった表現も大げさとは思
われぬ梅雨の晴れ間。
ひさしぶりに温度が上がった晴天のもとで、水たまりに浮
かんでいたのであろう脱け殻をみつけました。

いつものごとく

 昨日の突然の豪雨で流された空蝉/脱け殻だな

と、なにげなく触ったところ、これは脱け殻ではなく幼虫
の遺骸/実蝉でしたよ。よくよくみれば背も割れてない。。

晴れの日の夕方でないと這い出してこないとか、いったん
這い出てきたら少々の雨や水でも動じることなく、これだ
と判断した羽化場所に突き進み陣取る・・・とか、いわれ
る幼虫ですが、さすがに50ミリ・いや ひょっとすると
80ミリを超えたかのような 突然の大雨には抗しきれず、
溺れてしまったものなのでしょう。
めったに見られぬ光景だけに、南九州の今年の梅雨のあり
様の異常さ[40日ほども降り続く]を改めて認識させら
れました。

そして、溺れてしまった この個体。

しっかりと、なかなかはずれないくらいに しっかりと、
アスファルトの地面に 爪先をくい込ませておりました。

 幼蝉のなほ飛びたたむ構えして

などと思いつつ、魂というものがあるのであれば、魂は
飛び立っていったのかななどとおもいつつ、アリがこぬ
うちにと、とりあえず埋葬したのですが、

這い出てきた地下に戻してよかったのかしらん。
 

◎ その場所にいると見せかけて実はいないという
  空蝉の術というのは有名ですが・・・その場所
  にないと見せかけて実はいるという実蝉の術と
  いうのも、っかえそうですねっ/笑。

51P4M6yKWYL__SL500_SS75_.jpg夢で終らせない農業起業」「里地里山複合大汚染



台風・ 気圧の低いやつも、もちろん怖い。

2015-07-09 18:18:51 | Weblog
台風・ 気圧の低いやつも、もちろん怖い。

日本の気象庁などの公式のコメントによれば

温暖化と台風の関係については、現時点では、温暖化の影響が台風の
 大きさや強さに及んでいると結論づけることはできません。
 しかし、気象庁気象研究所や財団法人地球科学技術総合推進機構を中
 心とする研究グループによる21世紀末頃を想定した温暖化予測実験
 によると、全球的な熱帯低気圧の発生数については、現在気候再現実
 験における発生数よりも30%程度減少する一方、海上(地上)の最大風
 速が45m/sを超えるような非常に強い熱帯低気圧の出現数について
 は、地球温暖化に伴って増加する傾向があるとされており、災害が全
 体として激化することを想定することが重要と考えられます。

 
というふうに温暖化と台風の関係が説明されています。つまるところ結
論づけるには、もうすこしデータの蓄積と更なる研究が必要だ・・・と
そういう見解をとられているようです。

しかし。

海水温が通常よりも2度~3度高い海域で発生し今年の3月にバヌアツ
を直撃し、大きな被害をもたらした サイクロン「パム」の中心気圧は
900hpa・ 最大風速は70 m/sに
も達したと、記録されています。

そしてそのような大きな被害をもたらした熱帯低気圧を列記してみれば


 発生年   名前    場所    死者・行方不明者数

 2013年 台風30号 フィリピン 7000人超
 2012年 台風24号 フィリピン 約1900人
 2011年 台風21号 フィリピン 約1300人[死者のみ]
 2009年 台風 8号 台湾    約700人
 2008年 ナルギス  ミャンマー 約14万人
 2007年 シドル   バングラ  約4400人


と、毎年のように “最大級”と称される台風やサイクロンが関係各国
に被害を及ぼしている現実がわかります。

・・・台風常襲地に住み、その地で農業に関係する仕事をしている身と
としては、上記の記録をながめているだけでも憂鬱になってしまいます。
近い将来において 930hPa、いや 940hPaくらいの勢力を保っ
たまま、数年に一度の割で九州に接近・通過する台風がやってくるよう
になったとしたら、はたしてこの地で健全な・計画的な営農ができてい
くものだろうか
と。

だって、宮崎市で歴代1位の最大瞬間風速57.9m/sを記録した19
93年の台風13号でさえ、宮崎通過時の気圧は[サイクロン・パムと
は比較にさえならない
]949hPaもあった と いうのですから。[
なみに本当に930hPaの台風が接近するとしたら、とりあえずこの地
を緊急避難するほうが懸命かもと考えてます、まじで
]。


◎ ブログを始めた20年ほど前に、台風時に発生する竜巻の
  話を書いたら、非常に珍しがられたものでした。しかし、
  いまや竜巻も全国区。日本のどの地区で発生してもおかし
  くない気象のひとつになってしまいました。
  この調子で台風常襲地も、年を追うごとに北に北にと進んで
  いったり
。。


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いま この時期だから、読みたい本。

2015-07-08 17:16:08 | Weblog
いま この時期だから、読みたい本。


 水木せんせい の 「総員玉砕せよ!」 

 と

 大友克洋   の 「気分はもう戦争」

 の 2冊。

 個人的な、自分なりの戦争ものの定番 として、
 この2冊を折にふれて読み返してきた のですが、
 今回、この本も加えねば と、強く思わされました。

 いま、いまなら 試し読みできる
 ということで よろしかったら。 

 こちら です。


◎ 安倍さんは無条件で若者好きなんだな と 
  おもわされていた だけに、
  なんだか この話 には びっくり。

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