粗忽な夕べの想い

落語の演目(粗忽長屋)とモーツアルトの歌曲(夕べの想い)を合成しただけで深い意味はありません

翁長県政、沖縄県民にとって、無駄で有害な1年

2015-12-12 15:58:27 | 沖縄の虚像と実像

翁長雄志氏が沖縄県知事に就任して今月10日で1年になる。この間、翁長知事は「辺野古に新基地をつくらせない」という公約を果たすために政府との対立をことさら煽ってきた。しかも、知事自身も「政務の9割を基地問題で費やしている」と公言する通り、まるで基地反対活動を知事の仕事と勘違いしているようだ。

しかし、県民の多くはこんな一介の問題に知事が忙殺されることを望んではいないはずだ。もちろん基地が必要以上に残ることには県民は反対だろうが、基地問題で沖縄が振り回され、やたら政府と対立することにはうんざりしているに違いない。

その証拠に、知事による辺野古埋立て承認取り消しに対して、政府が撤回を求める代執行の訴訟をおこしたが、県民が政府の対応に憤って世論が沸騰したという話を聞いたことがない。「怒っている」のは県内の一部のプロ市民と多く県外からきた活動家ばかりである。彼らは辺野古に集結して反基地の過激な抗議活動を続けているが、一般の沖縄県民はこれを冷ややかに見ている。

翁長知事は辺野古移設に反対するのは「県民のアイデンティティ」のためだと盛んに強調している。つまり、これは「オール沖縄」すなわち「県民の総意」ということだ。これを理由づけるために知事は沖縄の過去の歴史の過酷や今日置かれている厳しい状況を訴えている。70年前の壮絶な沖縄戦、27年に及ぶ米軍統治、そして現在も続く米粉基地の存在。しかし、あまりにも被害者意識を誇張したものだ。

たとえば、今月2日行われた代執行訴訟の口頭弁論で翁長知事は「国土面積のわずか0・6%しかない沖縄県に、73・8%もの米軍専用施設を押し付け続ける」ということをなんと5回も繰り返し強調している。しかし、これはよく言われることだが、あくまでも米軍専用施設であり自衛隊との共用使用を含めて考えると、米軍施設全体で全国土の23%であり、北海道に次いで2位となる。

また評論家の恵隆之介氏の指摘だが、沖縄の全ての島嶼約150から伸びる排他的経済水域は45万K㎡となる。その海底資源は兆を超えて京の単位になるほど膨大なものだという。(動画「沖縄の声」最初7分辺り11分辺り)

日本全体の排他的経済水域447万K㎡で世界8位の広さだが、その10%を沖縄県が占めているのだ。しかもその西南部を中国と接していることを考えれば、沖縄はに本の空海での防衛上死活的な位置にある。したがって、中国の近年の著しい軍事的拡張をみれば沖縄の米軍基地の必要性は高まることがあっても下がることはない。

しかし、翁長知事にはそんな国防上の危機感が全く感じられない。それどころか、知事は口頭弁論で沖縄を日本とアジアの架け橋」とか「平和の緩衝地帯」とか能天気なことを繰り返し強調している。まるで日本と中国の間に入って仲介役を務めるような第三者的な態度である。

ちなみに「緩衝地帯」という用語の意味をウィキペディアで調べてみた。

 

大国や大きな文化の核に挟まれた諸国・地域のこと。このような地帯を挟むことで、対立する国家間の衝突をやわらげる効果が期待できる。

 

…しかし、紛争の結果としてどちらの支配圏に組み込まれるか定かでない場合も多く、大国が軍事的な行動する場合の意思決定を逡巡せざるを得ない不透明な地域として捉えられやすい。

どちらかの勢力に明確に属さない曖昧な地域を挟むことで、大国間の衝突を和らげる意味合いがある。逆に、そうした紛争の結果の不透明さが軍事的に積極的な野心を持つ実力者の心理をたきつける場合も多く、安全どころか紛争地域になりやすいという側面もある。

 

翁長知事は「国家間の衝突をやわらげる効果」を期待したいのだろう。しかし、昨今の東シナ海の緊張をみれば、実際は「軍事的に積極的な野心を持つ実力者の心理をたきつける場合も多く安全どころか紛争地域になりやすいという側面」があることは見逃せない。

それ以上に翁長知事が緩衝地帯と自ら公言すること自体、まるで日本から独立するかような誤解を与える物言いで問題だと思う。その危惧は既に翁長知事が9月、国連の人権理事会で行った演説で「自己決定権」に言及したことでも窺える。この表現は世界では「民族自決権」の意味で解釈されたからだ。

こんな沖縄独立を一般の沖縄県民は決して求めていない。しかし一部の極論が跳梁跋扈して沖縄の独立の動きが活発にならないとも限らない。そうすれば軍事的な野心の旺盛な中国が食指を伸ばしかねない。それこそ「紛争地域」になる危険性が高まる。現在の辺野古での活発な反政府活動はそれを予兆している。翁長知事はそんなな危険なボタンを自ら押そうとしている。

すでに中国の軍事的拡張は尖閣諸島で際立っている。中国海警の接続水域進入は状態化していて、石垣島の漁民は尖閣で漁業がもはやできなくなっている。翁長地は自分の県内のこうした窮状に耳を傾ける姿勢が見られない。それどころか、「日本とアジアの架け橋」などと放言していることには怒りを覚える。県民の声を聞かずに何が「沖縄のアイデンティティ」だと心底思う。

お詫び:日本の排他的経済水域の面積と順位が間違っていました。記事を訂正してお詫びします。


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