粗忽な夕べの想い

落語の演目(粗忽長屋)とモーツアルトの歌曲(夕べの想い)を合成しただけで深い意味はありません

イスラエルだけが悪いのか

2014-07-16 21:41:18 | 国際時事

イスラエルはエジプト政府による停戦の仲介を一時受け入れたが、ガザのイスラム原理主義勢力ハマスがこれに応じずロケット砲で攻撃したため、ハマスに対する空爆を再開したという。今後は地上軍をガザ地区に投入することもイスラエルは考えているようだ。

この紛争は過去に度々繰り返されているが、世界の世論はどうもイスラエルを非難するものが圧倒的に多い。とりわけ日本のメディアがそうである。今回もガザの養護施設がイスラエル軍によって空爆されて、病弱な住民たちが犠牲になった。その痛ましい映像が流れて、イスラエル軍のいかにも無慈悲な攻撃であるかのように強調されている。

しかし、本日のラジオに出演していた経済評論家の上念司氏が別な視点でこの現状を解説していた。東京ニッポン放送の夕方に放送される「ザ・ボイス」という番組で毎日日替わりで専門家が時事問題を独自の切り口で解説してくれる。番組内容はその日の内にネットでアップされユーチューブで聞くことができるが、目から鱗と感心することが多い。

上念氏によれば(動画の25分あたり)、イスラエルはガザを攻撃する前に攻撃すr場所を電話やビラ放送で知らせ、逃げるように呼びかけるという。ただ、民家とか病院、モスクにハマスがロケット砲を隠していて標的なるのだが、そこから逃げる住民に対してハマスが銃で脅して逃げるのを妨害する。結果的に犠牲者が多く出ているというわけだ。そして世界にガザの惨状を伝える映像が意図的に発信されることで、イスラエルを非難するプロパガンダともなっていると上念氏は指摘している。

イスラエルは地上軍を今後導入する予定だが、事前にガザの住民にビラを撒いて北部から逃げるよう連絡しているともいう。避難が完了したら攻撃するのではないかとも見られている。地上戦によって紛争はより深刻なるが、多くその犠牲になるのはガザの一般住民だ。つまり、ハマスがいわば住民を自分たちの防衛の盾として使っている可能性が高い。

こうした例は、かつて湾岸戦争でもフセイン政権が駐在の外国人を米軍に攻撃されそうな場所に集めて、無防備で晒したことが思い起こされる。おそらく、最近のシリアやイラクのイスラム原理勢力の占領地区にオバマ政権が空爆に踏み切れなかったのも、こうした人間の盾になった一般住民の犠牲を懸念したことが一因であると思う。

もちろん、それでイスラエルの空爆が正当化されるものではない。しかし、この世の紛争には一方だけが悪者と決めつけられない。大国や政府軍といった兵力で圧倒している側の攻撃が非難されることが多い。しかし、弱者側が劣勢を挽回するため、国際法を無視した非人道的な行為に走ることも少なくない。

かつて作家の村上春樹がイスラエルの講演で、自分は壊れやすい卵と高くて固い壁のどちらに与するかと問われれば弱い卵の側に付くと語っていた。近代兵器を駆使するイスラエルでなく、ロケット砲というローテク兵器で応戦するパレスチナ側を支持することを暗に表明するものだった。しかし、これは文学の世界では許容されても必ずしも現実の政治の世界では通用しないと思う。弱い者の同情だけでは事の本質を見誤ることもある。

追記1:上念氏は今日の番組で他の話題でもユニークな解説をしている。特に1番目の川内原発の基準審査認定(動画の冒頭から)や5番目の中国経済の内実(動画18分あたりから)については大いに傾聴すべき内容だ。

追記2:村上春樹がイスラエルの演説で言及した「壊れやすい卵」という表現は、おそらく石などを投げて抵抗する一般住民を想定したものと考えられる。彼はロケット砲については「高く固い壁」の側のものとしている。この点は自分自身の認識不足であった。

 

 


2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (なん)
2014-07-17 13:50:05
今英語のネットの世界で出回っているのが、ハマスの仕掛けたプロパガンダ写真です。ハリウッドのホラー映画の1シーンで、飛んできた建物の壁に潰され、体が内臓あらわにぐちゃぐちゃに横たわっているシーンがあります。ホラー映画に見慣れた人でも一瞬ぞっとする写真です。

ハマスはフェースブックなどを使い、にせのBBCIDを使い、この写真を「ガザが攻撃された」と広めています。

少しみればわかるのですが、、、例えばこの潰されて倒れている女性、顔と体はつぶれていてわかりづらいですが、半そで短パン姿です。ガザの女性でそんな人いません。

イスラエルとガザ問題は、よくわかりませんが、こうした嘘をまきちらすハマスに、この写真事件をきっかけに疑問を抱きはじめました、良い機会かと思います。

ハマスのこうした行為が逆効果となってあわられる日も遠くはないかもしれません。もっとも、イスラエル人の友達から言わせてば、ハマスは前からいつもこういう嘘を利用してきた、とのこと。

彼の言うことも、なお更「イスラエル人だから言っていること」ではないのかもしれません。
返信する
Unknown (うるしねまき)
2014-07-17 20:34:20
上念氏もラジオで指摘している通り、中国側が戦後南京事件での「虐殺写真」として示したショッキングなものは、実は同じ年1ヶ前の通州事件の写真とされています。これは中国軍によって日本人居留民が虐殺された時の写真です。
この事実を日本人研究者が指摘したら中国側はあわてて問題の写真を取り下げてしまいました。それ以外でも不自然な写真が多く、中国側の露骨なプロパガンダが見てとれます。
今日中国や韓国が行なっている日本叩きの多くがこれに類したものであることを考えると日本人は本当に心しなければならないでしょう。パレスチナのプロパガンダも決して他人事ではないですね。
返信する

コメントを投稿