粗忽な夕べの想い

落語の演目(粗忽長屋)とモーツアルトの歌曲(夕べの想い)を合成しただけで深い意味はありません

なかにし礼氏の反戦詩とイラクの老義勇兵士

2014-07-13 17:41:29 | プロ市民煽動家

作詞家なかにし礼氏が毎日新聞夕刊に寄稿した反戦詩が話題になっている。「回りはじめたら最後 君もその中に巻き込まれる」で始まる長大な詩は、先ほど政府が決定した集団的自衛権行使容認をうけたものだ。

詩の中盤に

平和しか知らないんだ 

平和の申し子なんだ

平和こそが君の故郷であり…

と「平和」を含んだ語句が3回続き最後も「平和のために!」と結ばれている。全体では「平和」の言葉が8回も登場するように、まさに「平和こそ全て、そして正義」ということだ。だから平和が奪われないように「泣きながら抵抗する」ことを訴えている。

最近自分自身、人間が天の邪鬼なのか、ただひねくれているのかわからないが、どうも「平和」を声高に叫ぶ動きにある種アレグギー反応を起こしてしまう。憲法第9条にノーベル平和賞を求める運動があったり、沖縄の児童の「平和を唱う詩」が話題になったり…。そして今回のなかにし礼氏の反戦詩だ。

そんなに平和を叫ぶのが尊いのか?なかにし氏は

世界史上類例のない 

六十九年間も平和がつづいた

理想の国に生まれたんだもの

と日本の平和を絶賛している。ただ、これも日米安保条約での米国の核の傘によるところが大きい。しかし、米国の一極支配の終焉と中国の台頭で日本の安全が脅かされつつある。国内で平和を唱えるばかりではすまない現実がある。

NHKのテレビで、最近のイラク情勢に巡る報道で、あるバグダッド市民のことを伝えていた。現在、スンニー派の原理主義勢力がイラク北西部を席巻している。バグダッドに住むシーア派の60歳を超えていると思える男性は過去スンニー派の爆弾テロで息子二人を失った。そして残ったもう一人の息子も今回のスンニー派原理主義勢力との戦闘で犠牲になった。

息子全てを失った父親は怒りを抑えきれず、政府シーア派の義勇軍に志願することを決意したのだ。その老兵には息子の幼い遺児がいる。この孫を置いて戦場に向かわなければなければならない祖父のつらさが痛いほど伝わってきた。

世界では平和を叫んでいれれない紛争地は少なくない。はたしてこの老義勇兵には日本の「平和」はどのように映るだろうか。「平和こそが君の故郷」などと悠長過ぎる話に違いない。

日本が69年平和が保たれたのはむしろ例外的に幸運だったといえるのではないか。もともと民族や宗教対立もほとんどない。海に囲まれた地続きの国境もない。そして強大な同盟国の庇護…。

しかし今この安全神話に陰りが見えだした。中国による度重なる尖閣諸島領海侵犯、外国反日勢力の国内での暗躍、アメリカの相対的な影響力低下。「平和の申し子」はどこへ行くのか?

 

毎日新聞夕刊に掲載されたなかにし礼氏の「反戦詩」

 


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なかにし礼の絵本詩集 (高橋哲雄)
2014-10-02 02:19:05
なかにし礼『絵本詩集 金色の翼』朗読CD付が10月25日発売されます。
詩と絵(宇野亜喜良)とベートーヴェンの音楽が融合した夢幻的旅へ誘われます。平和の詩人なかにし礼が謳う、愛と希望への讃歌をご堪能いただければ幸いです。野際陽子さんも大絶賛です。よろしくお願いします。

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