政府・自民党は除染作業において年間1ミリシーベルトの目標を見直す方向で調整にはいっているという。その理由として「汚染された地域を1ミリシーベルトになるまで除染を続ければ、数兆円に上る巨額の費用が予想されるうえ、時間がかかることで、かえって住民の帰還がさらに遅れる恐れがあるため」としている。遅きに失したといえこの動きを歓迎したい。
自分のブログでも何度か上記の観点から見直しを急ぐべきだと主張してきた。第一、年間1ミリの除染基準自体に問題がある。決して1ミリを超えたからといって健康に影響に及ぼすというものではない。あくまでも社会的なリスク管理であって一つの目標に過ぎない。しかし、これまで日本では1ミリシーベルト基準を金科玉条のごとく崇められてきたことに問題があった。
政府・自民党がこの基準を見直すことを後押ししたのは国連の関連機関による福島事故災害の報告書の存在が大きいといえる。とりわけ最近の国際原子力機関の報告が決め手になった。すなわち、「除染の目標として必ずしも(国が長期目標に掲げる)1ミリシーベルトにこだわることはない。利益と負担のバランスを考え、地域の住民の合意を得るべきだ」といった提言である。さらに日本の原子力規制委員会の田中委員長もこれを同意する発言をして、政府も見直しのお墨付きを得たと見られる。
だが福島県の避難区域を抱えている市町村はこれに否定的なところが多い。というより、1ミリシーベルト基準はこうした自治体の強い要請によって決まったといっても過言ではない。基準を緩めることにより、政府の支援が削減されてしまうことを恐れている。今後これら自治体との協議が必要であるが、政府は見直しの意向を積極的に働きかけて欲しい。それが福島の復興に結果的に利益になることを。
ただ、テレビの別の報道では、国連人権委員会での勧告に言及して見直しを問題視する動きがあることを伝えていた。しかし、この勧告は特別報告者アナンド・グローバー氏が昨年日本を視察したことによるものだ。彼はどうも福島の実際の状況を十分把握せず、反原発派の市民団体や弁護士の意見を中心に報告書をまとめあげたきらいがあり、その内容が非常に偏って問題がある。
おそらく、見直しに反対するグループや自治体、メディアは、人権委員会の勧告を盾に抵抗することが予想される。どうも国連の人権委員会は慰安婦問題でも見られたように特定の思想や利害、思惑で左右される傾向が強い。事実がかなり歪曲されて勧告される伝統がある。今度の勧告もそうした危惧を抱く。
もちろん、人権そのものは大事であるが、一方の人権のみが強調されて、別の側の人権が損なわれることがあってはならない。原発事故での影響でも、危険を過剰に唱える側だけに視点をおいてはことの本質を見間違う心配がある。たとえば、今回の見直しに関しても、早く故郷に戻りたい人々の人権があることを忘れてならないだろう。これが今までの除染政策で軽視されてきたといえるのではないか。
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