扇子と手拭い

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録画では伝わらない空気(落語2ー43)

2011-05-28 20:34:40 | 日記
▼録画では伝わらない空気
 77日ぶりに落語を聴いた。出演者の顔ぶれが気に入って、前から楽しみにしていた。予想にたがわず、どの噺もテンポ、切れともによく、勢いがあって存分に楽しませてもらった。やはりナマはいい。録画、録音では、この空気は絶対に伝わらないからである。(敬称略)

 関東地方はきのう(27日)から梅雨入り。まだ5月だというのに驚いた。平年より12日早く、昨年より17日も早い梅雨入りだそうだ。この日の会場は初めてなので、チョイト早めにうちを出て、人形町に着いた。午後6時の開場、6時30分開演だが、8回のエレベーター付近は開場前から人でごった返している。

▼地元有志が運営引き継ぐ
 「変わった腰掛ね。こんなの初めて」と言うおばあさんに、連れが「随分、お尻が痛いわねえ」と問い返す。思わず吹き出しそうになって声をかけた。「それは腰掛ではなくて傘立てですよ。だから、いくつも大きな隙間があるのです」と私。「なんだ、そうだったの。どうりでおかしいと思ってたの」と、腰を掛けた2人が顔を見合わせ大笑い。

 この「東穀寄席」は、これまで東京穀物商品取引所が開催してきた若手落語家の勉強会を地元、人形町商店街の有志が運営を引き継いだ会である。

▼客席の笑いを掬い取り
 古今亭菊六が「浮世床」、立川生志が「看板のピン」、三遊亭兼好が「粗忽長屋」を高座にかけた。仲入り後は橘家蔵之助が「短命」、桂平治が「平林」を、そしてこの夜、トリを取ったのは瀧川鯉橋で、「水屋の富」を披露した。

 気の毒だったのは鯉橋。すぐ前がゲスト出演の大物、平治とあってやりにくかったに違いない。何しろ、落語の上手さでは定評の平治親分。身振り手振りも鮮やかに、客席の笑いをすべて掬い取った。貫禄である。

▼残念な携帯の響き
 それはさて置き、いずれも勢いのあるメンバーなので、小気味いいテンポで噺が運び、聴いている者を飽きさせない。会場のホールは立ち見が出る盛況。残念だったのは、落語の最中に、斜め前の席で携帯電話が鳴ったことである。

 メールらしく一目した後、電源を切らずに閉じたのにはたまげた。注意しようかと思ったが、公演中なので我慢した。マナーは守ってほしい。迷惑ばかりか、せっかくの落語が台無しになるからである。

▼心地いい兼好落語
 出演者6人の中でびっくりしたのは兼好演じる「粗忽長屋」。あたくしの「粗忽長屋」は柳亭燕路が手本だが、この手本にしっくりこない場面が所々ある。それに比べ、兼好のは行き倒れを題材に扱っている噺なのに、ギクシャクするところがなく自然体。その上クスグリが多いので客を楽しませ、聴いていて心地いい。

 兼好落語の特徴は、登場人物の演じ分けが上手いところだ。見事と言うほかない。聞き終わって「上手い」、と思わず唸った。彼は圓楽一門のスターだ。間違いなく、これからの落語会をしょって立つ噺家の1人だろう。三遊亭兼好、注目株である。