湘南文芸TAK

逗子でフツーに暮らし詩を書いています。オリジナルの詩と地域と文学についてほぼ毎日アップ。現代詩を書くメンバー募集中。

11月の初雪&失うの詩パート7

2016-11-24 11:25:55 | オリジナル
一昨日は夏みたいに暑かったのに、54年ぶりの11月の初雪って!!
体調にお気をつけください 慣れない雪道で怪我しないようにね。
逗子海岸は真っ白。海上は気嵐です。

では、共通テーマ「失う」でSが書いた詩を投稿します。

赤い色なしで

ゆびを一本失うという 悲劇から
ああ 四十年経った
命ごいなど しなければよかった
なつかしい向こう見ずなわたしは
もう どこにもいない ああ 死んだのでも
眠っているのでもないピアニストのゆびで
せめて わたしを笑わせてくれる ひとを
求めたりもした
些細なことにも 笑うようにしてきた
冬のコートを着た冬が わたしを引きずって
すたすたと歩いた わたしは 笑いながら
冬に 引きまわされた

明日という日が もし わたしそっくりの
むさくるしい女の顔であるなら わたしは
そんなものを 待とうとしないかもしれぬと
いうおそれがある
自殺願望! 死んでおしまいにしたい!
失われた時を求めて それから ついに
見出した時とは何?
数は少ないが 大きかった 恋の
二つ三つが 紫色の
毛糸の房つきのこっけいなあの帽子が
わたしの マドレーヌ菓子か それとも
もっと抽象的な マルセル・プルースト風の
アメのつつみ紙が私のマドレーヌか

鏡のなかの老いたわたしを わたしは
ぼくと呼ぼう ゴキブリの色のぼく だから
ぼくは川っぷちに向かう――

男に変身したぼくは すこし エレガントだ
ほら ごらん 初老の男が三人
釣りをたのしんでいる 一人ずつの三人は
仲間ではない ひょっとすると五人かも
かれらのくちびるに 色はない
何人いようと 風景だ
風景として存在で き る !
わたしは四十年前のあの夜 男になるべきであった
万年筆のキャップを外すように
かんたんに 男になるべきだった
野獣の形相の 男に
なるべきだっ

赤い色なしで
<失われし時>を生きるべきだった
あとさきなど考えず 悲劇の夜の 満月を
忘れ去り 魚を
釣っていればよかったのだ
男のように
むさくるしい
へやの
ドアを開け
川っぷちにいくべきだった
風景のように
存在すべきだった

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