湘南文芸TAK

逗子でフツーに暮らし詩を書いています。オリジナルの詩と地域と文学についてほぼ毎日アップ。現代詩を書くメンバー募集中。

物の詩パート16

2016-04-25 23:40:35 | オリジナル
共通テーマ「物」でAが書いた詩を投稿します。

毛糸のカーディガン

春の朝
貧しい女の子が三冬の間着通したカーディガンが
ファイバーリサイクルに出された

ひじに穴があくと同色の毛糸で繕い
ボタンが取れるとつけ直して使ったが
六年生の冬には全体が窮屈になり
裾と襟ぐりは擦り切れほつれた
冬じゅう毎日同じカーディガンで
女の子は恥ずかしかった
けれどカーディガンは
冬じゅう毎日女の子と行動できて幸福だった
木枯し、落葉、藁、焚火、鉛筆、給食、絵具、猫、温めたミルク、チョコレート、石鹸
いろいろな臭いを吸い込んだ
雨や霙や雪も吸い込んだ

旅に出たカーディガンは
他の着古されたセーターたちと合流し
生まれ変わった時に次の持ち主が
冬じゅう毎日使ってくれることを夢見て
繊維に戻る


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