共通テーマ「離れる」でAが書いた詩を投稿します。
記憶の欠片
わたしが生まれた
済生会神奈川県病院を
通り過ぎて行ったはずだが
誕生時の記憶がないように
トラックが通って行った道も
わたしの記憶にはない
トラックが揺れた拍子に
わたしの手から落ちた小さな人形
引越先で降ろされた荷物が
傍らを通り過ぎていったが
人形は見つからないまま
それが最も古い記憶
――川越時代のお前はずっと不機嫌だった
母よ それは
知らない場所に連れて行かれる途中で
大事な人形を失くしたからだ
あなたの眼差しがわたしを離れ
川越で生まれた赤ん坊に向いていたからだ
あなたの心配も慈しみも一身に受けていた
横浜時代の記憶が欠片もないからだ
記憶の欠片
わたしが生まれた
済生会神奈川県病院を
通り過ぎて行ったはずだが
誕生時の記憶がないように
トラックが通って行った道も
わたしの記憶にはない
トラックが揺れた拍子に
わたしの手から落ちた小さな人形
引越先で降ろされた荷物が
傍らを通り過ぎていったが
人形は見つからないまま
それが最も古い記憶
――川越時代のお前はずっと不機嫌だった
母よ それは
知らない場所に連れて行かれる途中で
大事な人形を失くしたからだ
あなたの眼差しがわたしを離れ
川越で生まれた赤ん坊に向いていたからだ
あなたの心配も慈しみも一身に受けていた
横浜時代の記憶が欠片もないからだ
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