永子の窓

趣味の世界

源氏物語を読んできて(563)

2009年11月17日 | Weblog
09.11/17   563回

三十七帖【横笛(よこぶえ)の巻】 その(11)

 夕霧は、「妹とわれのいるさの山の」と、まことに良いお声で歌われて、

「こは何ぞかく鎖し固めたる。あなうもれや。今宵の月を見ぬ里もありけり」
――これはまた、どうしてこんなに格子を締め切ってしまったことか。なんとも鬱陶しいことだ。今宵の月を見ないところがあるとは――

 と、不平をおっしゃりながら、格子を女房に上げさせ、ご自分は御簾を巻き上げなさって、端近にごろりと横になって、

「かかる夜の月に、心安く夢見る人はあるものか。少し出で給へ。あな心憂」
――こんな月のよい晩に、呑気に夢をみている人がいますか。こちらへ出ていらっしゃい。ああ面白くない――

 とおっしゃいますが、北の方の雲井の雁は、

「心やましううち思ひて、聞き忍び給ふ」
――癪に障るので、聞こえないふりをしていらっしゃる――

「君たちの、いはけなく寝おびれたるけはひなど、ここかしこにうちちして、女房もさしこみて臥したる、人気にぎはしきに、ありつる所の有様思ひ合はするに、多くかはりたり」
――お子たちが無心に寝ぼけているようすなどあちこちにして、侍女たちも込み合って寝ていますのは、人が多く賑やかで、先ほどの一条邸のご様子とは全く違っています――

 夕霧は、ご自分が帰ったあとも、落葉宮がどんなに物思いに沈んでおられるだろうなどと思いながら、横になって眠れぬままにうとうとなさりながら、

「いかなれば故君、ただ大方の心ばへは、やむごとなくもてなし聞こえながら、いと深きけしきなかりけむ」
――どうして柏木は、落葉宮を一通りのお扱いをされながら、深い愛情を持たれていらっしゃらなかったのであろうか――

 と、何とも柏木の気持ちが分からない。

◆さし込みて臥したる=子供が大勢なので女房たちも一緒にその辺に寝ている。

ではまた。

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