永子の窓

趣味の世界

蜻蛉日記を読んできて(130)

2016年06月11日 | Weblog
蜻蛉日記  中卷  (130) 2016.6.11

「かくてその日を暇にて、又物忌みになりぬと聞く。
あくる日、こなたふたがりたる。
又の日、今日をまた見んかしと思ふ心こりずまなるに、夜ふけて見えられたり。一夜の事度もしかじかと言ひて、『こよひだにとて急ぎつるを、忌み違へにみな人ものしつるを、出だしたててやがて、見捨ててなん』など、罪もなく、さりげもなく言ふ。いふかひもなし。明くれば、『しらぬ所にものしつる人々いかにとてなん』とて、急ぎぬ。それよりのちも、七八日になりぬ。」

◆◆こうしてその日は物忌みがなく、次の日、また物忌みになったということです。翌日はこちらの方角が塞がったけれど、その次の日、今日は見えるかと性懲りもなく思っていると、夜が更けてから見えました。先夜のことをあれこれと弁解して、「せめて今夜だけでもと思って、急いだので、忌み違えに皆が出かけるのを送り出して、そのまま後を見向きもせずに、飛んできた」などと、自分には非もないような平気な顔で言う。なんとも言いようがないこと。夜が明けると、
「はじめての所へ出かけた人々が、どうしているか気になるので」と言って急いで帰って行きました。それから音沙汰がなく七、八日経ってしまった。◆◆


■罪もなく、さりげもなく言ふ=兼家邸も作者邸も物忌みが続いたが、物忌みが終わった翌日、兼家は真夜中にやってきて、先夜の弁解をして、まったく悪びれもせず、あっさりしているので作者のほうが拍子抜けしている。兼家の性格がよく現れている。


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