永子の窓

趣味の世界

源氏物語を読んできて(53)

2008年05月18日 | Weblog
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【賢木(さかき)】の巻 (1)

源氏    23歳9月~25歳夏
藤壺    28歳~30歳
紫の上   15歳~17歳
六條御息所 30歳~32歳
斎宮    14歳~16歳
夕霧     2歳~4歳

 六條御息所の御娘の斎宮の伊勢御下向のときが近づいて参りました。
御息所は、源氏の正妻として高貴なご身分でいらっしゃると気遣っていました葵の上が亡くなられ、世間では、今度は御息所が正妻になられるのではとお噂もし、当方の人々も、もしやと期待しておりましたが、それどころか源氏の一層冷淡なお振る舞いに、やはり一切の愛着を断ち切って伊勢への下向を決心されます。
 
 そのことをお聞きになった源氏は、やはりこれきりで別れるのは残念な気になられ、お便りを、思い入れたっぷりにお書きになります。

 このところ桐壺院はお具合が悪く、源氏もお気持ちに余裕がないものの、御息所が自分を無情者と思い、世間からも情け知らずと思われてはと、進まぬ心を励ましてお出でになります。

「遙けき野辺を分け入り給ふより、いとものあはれなり。秋の花みなおとろへつつ、浅茅が原もかれがれなる虫の音に、松風すごく吹き合わせて、そのこととも聞き分かれぬ程に、物の音ども絶えだえ聞えたる、いとえんなり」
――はるかにも嵯峨野の奥へ参りますに、まことに風情のある気色でございます。秋の花々はみな萎たれて、浅茅が原も枯れ、虫の音も涸れ涸れに、松の木を吹き渡る風の音に、何の曲とも聞き分けられぬくらいに楽の音が途切れ途切れに聞えて参りますのは、大層趣深いことでございます――

 こうして、野宮(ののみや)にお着きになります。お義理の訪問のつもりですし、潔斎としての宮内に、こうした色めいた訪問は気が引けるものの、源氏は気持ちが募っていかれて、御息所の拒まれるのを、再三再四ご機嫌を取りながら嘆願されて、簀子、御簾、長押へと進み入ります。

 御息所は、以前はお互いに思い焦がれていましたのに、何の欠点があってなのか、愛情もさめて、疎くなってしまいました。が、今回のご面会は昔に似て、やはりお逢いしたい。

「……さればよ、と、なかなか心動きて思し乱る」
「思ほし残すことなき御中らひに、聞えかはし給ふ事ども、まねびやらむ方なし」
――源氏との関係もそろそろ終わりと断念されたはずなのに、ほらごらんなさい、今になって心がぐらついてお悩みになる。――
――もの思いの限りをつくされた間柄でいらっしゃるので、語り合われる事なども(いろいろで)ここに書きようがありません――

◆写真は 京都嵯峨野


ではまた。


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