永子の窓

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蜻蛉日記を読んできて(85)の6

2015年12月18日 | Weblog
蜻蛉日記  中卷  (85)の6 2015.12.18

「行きもてゆけば、粟田山といふ所にぞ、京より松明もちて人来たる。『この昼、殿おはしましたりつ』と言ふを聞く。いとぞあやしき、なき間をうかがはれけるとまでぞおぼゆる。『さて』など、これかれ問ふなり。我はいとあさましうのみおぼえて、来着きぬ。」
◆◆どんどん進んで行くと、粟田山というところに、京から松明を持って迎えの人が来ていました。「京の昼に、殿がおいでになりました」という報告を聞く。なんとも変なこと、留守の間を狙って来られたようで腑に落ちない。「それから」などと供のだれかが聞いているようであった。私はまったくあきれたことだと、それのみ思って家に帰り着いたのでした。◆◆



「下りたれば、心地いとせんかたなく苦しきに、とまりたりつる人々『おはしまして問はせたまひつれば、ありのままになん聞こえさせつる。≪何とか、この心ありつる。悪しうも来にけるかな≫となむありつる』などあるを聞くにも、夢のやうにぞおぼゆる」
◆◆車を下りると、気分がどうしようもなくひどく苦しいのに、居残っていた侍女たちが、「殿さまがおいでになりまして、どうしたのかとお尋ねにまりましたので、ありのままに申し上げますと、どうしてまたそんな気になったものかな。生憎なときに来てしまったね」と仰せになりました」などと聞くにつけても、上の空で夢の中のような心持でした。◆◆



■粟田山(あわたやま)=この山を越えると京都盆地。


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