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永子の窓

趣味の世界

源氏物語を読んできて(232)

2008年11月25日 | Weblog
11/25  232回

【玉鬘(たまかづら)】の巻】 その(11)

三條が、
「皆おはします。姫君も大人になりておはします。まづおとどにかくなむと聞こえむ」
――みな無事でいますよ。姫君も立派に成長なされました。先ず乳母さまに申し上げないと――

 みな驚いて、夢のような心持で、屏風類を取り払って、言葉もなく先ずは泣き合っております。乳母は、

「わが君はいかがなり給ひにし。ここらの年頃、夢にてもおはしまさむ所を見むと、大願を立つれど、(……)」
――わが主君の夕顔さまはどうしていらっしゃるのでしょうか。長年夢にでも、おいでになるところを知りたいと大願を立ててお祈りしておりましたが、(何分遠い筑紫のこととて、風の音にさえもご消息がなく、姫君が痛々しく、私も死ぬに死ねないのです)――

と、話を続けますので、申し上げにくいことではありますが、右近は、

「いでや聞こえてもかひなし。御方は早う亡せ給ひにき」
――いえもう、それは申し上げても詮無いことです。夕顔の御方は早くにお亡くなりになってしまったのです――

 と、言うやいなや、三人ながら涙にむせかえり、どうしようもないほど咳きあげて泣き続けました。

 日も暮れそうなので、仏前に献ずる燈明のことなど用意を整えて、案内者が急がせますので、乳母は、供の者たちが怪しむだろうと、まだ豊後介にも知らせず、慌ただしくそれぞれ立ち別れて出発しました。右近がそれとなく気をつけて見ますと、

「中に美しげなるうしろでの、いといたうやつれて、うへにのし単衣めくもの着こめ給へる髪のすきかげ、いとあたらしくめでたく見ゆ。」
――中でも愛らしそうな後姿ですが、たいそう旅やつれして、四月頃に着る単衣のような上着に着こめられている髪の透き影がこの辺ではもったいないほどの立派さです。――

 右近は痛々しくも悲しくも見守り申し上げております。

 幾分歩きなれています右近たちは、先に御堂に着きました。乳母たち一行は、

「この君をもてわづらひ聞こえつつ、初夜行う程にぞ上り給へる。いとさわがしく、人詣でこみてののしる。」
――この姫君のお世話に手間取られて、初夜(そや)の勤行の始まる時分に、やっと登って来られました。御堂の内はひどく騒がしく、参詣の人が立て込んでがやがやしています。――

◆初夜の勤行=勤行(ごんぎょう)は仏教用語。お勤め(おつとめ)、精進とも。宗教儀式のひとつ。初夜の勤行(そやのごんぎょう)とは、何日か参籠して勤行をする最初のお勤めで、夜から始まる。

 寺院・自宅の仏壇の本尊や位牌の前で、経典や偈文などを読誦したり、合掌礼拝したりする。おこない方は、宗旨により異なる。

◆写真:長谷寺山門

ではまた。

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