永子の窓

趣味の世界

源氏物語を読んできて(23)

2008年04月18日 | Weblog
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【若紫】の巻 (5)

 源氏はせっかちにも僧都に言います。
「あやしき事なれど、幼き御後見に思すべく聞え給ひてむや。思ふ心ありて、行きかかづらふ方も侍りながら、世に心の染まぬにやあらむ、独住にてのみなむ。まだ似げなき程と、常の人に思しなずらへて、はしたなくや」
――ぶしつけな話しですが、私をあの小さいお方のお世話役と思ってくださるように、尼君にお話くださいませんか。思う子細があって、かかり合う妻がいますが、夫婦の中がしっくりせず、独り暮らしでばかりいます。まだ夫婦などとは不似合いな年頃だのに、と世間並みの男同様に私をご判断なさるようで、きまりの悪いことです――

 僧都は「まだ無下に、いはけなき程に侍るめれば、戯れにても御覧じ難くや…」
――まだ一向に頑是ない年頃のようですから、冗談にもお世話願はれますまい――

 今度は、源氏は尼君に直接願い出ます。
尼君は「あやしき身一つを、たのもし人にする人なむ侍れど、いとまだいふかひなき程にて、御覧じゆるさるる方も侍り難ければ、えなむ承りとどめられざりける」
――こんなつまらぬ尼の身一つを頼りにしている子で、まだ頑是ない年頃で、大目に見過ごしていただけるという点も難しいようですから、お受け申しかねます――
 
 源氏の美しさの表現を原文で拾ってみます。
「御追風いとことなれば」――衣にたきしめた香が風に連れて漂ってくるその匂いのゆかしさ――
「いとはづかしき御けはひに」――こちらが気が引けるほどの美しいお方――
「類なくゆゆしき御有様にぞ」――比類もなく気味の悪い程の美しいご様子――
「この世のものとも覚え給はず、と聞え合へり」――人間界の存在ともお見えにならぬと言い合っています。――

「見まほし」「お世話」「御後見(おんうしろみ)」「御覧じ」は、皆、妻にしたい、結婚するの意です。

 源氏は二人に同じような断わりの返事をされ、「本意なし、と思す」――つまらないと思われる――

やっと源氏の居場所を見つけた左大臣家の者たちが迎えにきます。
一行は花を愛で、瀧の辺で一休みしつつ帰京の途に着きます。
その折りに、若紫は源氏と出会い、第一印象は、
「宮の御有様よりも、まさり給へるかな」
――父宮のご様子より、ご立派でいらっしゃる――

 「雛遊び(ひひなあそび)にも、絵書い給ふにも、源氏の君とつくり出でて、清らなる衣著せ、かしづき給ふ」
――若紫は、それからは雛遊びにも、絵を書くにも、これは源氏の君だとわざわざ作って、きれいな著物を着せて大事になさる――
*清ら=第一級の人に対する敬語
*清げ=第二級  〃  〃
では、また。


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