永子の窓

趣味の世界

源氏物語を読んできて(22)

2008年04月17日 | Weblog
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【若紫】の巻 (4)
 
 尼君は、無邪気な若紫を見るに付け
よむ歌は「おひ立たむありかも知らぬ若草をおくらす露ぞ消えむそらなき」
――これから先どんなになってゆくか、その落ち着き先も分からない若草(姫君)を後に残す露(私は)は消えるにも消えようがない――
 尼君は不用意にも源氏たちに家の中まで見られて恥じ入りながらも、世間で評判の源氏の君をお見上げし、気味の悪いほどの美しさだと思います。
 
 源氏は聖の庵室に戻って、このように思うのです。
「あはれなる人を見つるかな、……いとうつくしかりつる児(ちご)かな、何人ならむ、かの人の御かはりに、明け暮れのなぐさめにも見ばや、と思ふ心深うつきぬ」
――可愛い人を見たことよ、(こんな風だから、そこらの浮気者がめったに見つけられないような堀出しものをするのだ)それにしてもなんと愛らしい児だったことか、誰だろう。あの方(藤壺)の身代りに側に置いて、毎日のなぐさめにしたいものだ と思う心は大層深いものでした。
 
 その夜、寝かかったところに僧都の使いが来て、源氏の君とも知らずの、おもてなしの不備をわびつつ、どうぞ、私のところでお休みくださいと言います。
源氏は昼にみた児が気がかりで、またいろいろと知りたくて出かけます。
 この僧都は、尼君の兄に当たる人です。

 僧都は世の無常、来世のことを語ります。源氏はそれらを聞くにつけても
「わが罪の程おそろしう、あぢきなきことに心をしめて、生ける限りこれを思ひなやむべきなめり、まして後の世のいみじかるべき、思し続けて、かうやうなる住まいもせまほしう覚え給ふものから、昼の面影心にかかりて恋しければ」
――藤壺を恋うなどと、つまらぬ事に熱中して、一生このことに思い悩むのだろうか、まして来世には一層ひどいことだろうとお思いになるものの、昼に見た少女の面影が心をしめて恋しく――

 源氏は少女の素性を知りたく、巧みに話題を変えます。
僧都の話
 亡くなった按察使(あぜち)大納言の北の方は私の妹(先の尼君)です。具合が悪いので、私を頼り所として養生しているのです。尼君の娘(故姫君)は兵部卿宮とご縁がありましたものの、本妻は歴とした方で、身の不安定の中で、女の子を産んですぐに亡くなりました。
 
 源氏は少女の素性をしかと確認します。宮の血筋で、あの藤壺に似ていらっしゃるのももっともだ(藤壺の姪に当たる)。是非「見まほし」――妻にしたい――
では、また。

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