永子の窓

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蜻蛉日記を読んできて 解説②

2016年10月22日 | Weblog
解説② 「蜻蛉日記下巻」上村悦子著より  2016.10.22

つづき
「作者に激しい嫉妬心をもえたたせなかったのは、相手の女性が参議兼忠女(むすめ)で相当身分がよかったこと、また現代的な魅力をそなえた人でなかったため、はでな振る舞いもなく、作者を刺激しなかったこと、年齢も老けて控え目であり、かつ、さっさと身を引いたこと、とくに兼家が作者にいち早くこの女性のことを告白し、歌なども見せて一時的な浮気であることを表白したことなどによるものであろう。
 
 兼家にもし超子や詮子が無ければ兼忠女腹のこの女子を時姫か作者に強引に育てさせ入内させたにちがいない。摂関家の女子は金の卵であったからである。しかも当時の権門家がいかに、冷酷・非情で自分の勢力を張ることのみ汲々として利己的であったかは彼の「ここに取りてやはおきたらぬ」の言葉によって伺える。
 
 女子を自分の勢力伸張の持ち駒としてのみ考え、兼忠女のお産の面倒はもちろん日々の生活の援助のしないくせに浮気の相手の女性から当然の権利のように産んだ子供をとりあげるとは! 兼忠女の苦労はどのように報われるのであろうか。彼女の苦しみはだれが理解してくれるのであろうか(後項でやはり作者が同情しているが、作者とて自分の将来のことばかりを考えて女子をとりあげていることを指摘したい)。兼忠女の権利とか人格はまったく無視されており、女にとってほんとに悲しい時代である。作者は兼忠女に比較すればまだまだ兼家にたしせつにされて仕合せな方だったのである。




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