永子の窓

趣味の世界

蜻蛉日記を読んできて(91)

2016年01月03日 | Weblog
蜻蛉日記  中卷  (91) 2016.1.3

「かくてのみ思ふに、なほいとあやし。めづらしき人に移りてなどもなし、にはかにかかることを思ふに、心ばへ知りたる人の、『うせ給ひぬる小野宮の大臣の御召人どもあり、これらをぞ思ひかくらん。近江ぞあやしきことなどありて、色めく物なれば、それらにここに通ふと知らせじと、かねて断ちおかむとならむ』と言へば、」
◆◆こちらへの訪れが間遠なこのような状態が続くのは、どう考えてもおかしい。新しい女にあの人の心が移ったとも聞かないし、急にこんなふうになったことを腑に落ちないでいると、消息通の侍女が、「亡くなられた小野の宮の大臣様のお召人たちがいます。この人たちに懸想しておいでなのでしょう。中でも近江という女は、けしからぬ振る舞いなどがあって、色気たっぷりの女のようですから、そんな連中に殿がこちらへ通っていると知られたくないと思って、あらかじめ関係を絶っておこうというのでしょう。」と言うと。◆◆


「聞く人、『いでや、さらずとも、かれらいと心やすしときく人なれば、なにか、さわざさわざしう構へたまはずともありなん』などぞ言ふ。『もしさらずは、先帝の皇女たちがならん』と疑ふ」
◆◆そばで聞いていた別の侍女が、「さあ、どうでしょうか。あの連中はまったく気がおけない人だそうですから、そんなに気を使わなくてもよいでしょう」などと言っています。「ひょっとしたら、その女でなければ、先帝の皇女さまたちの許にお通いかしら」などと勘ぐったりしています。◆◆


■御召人ども=女房で主人の寵愛を受けた者をいう。

■近江(おうみ)という女=藤原国章の娘か。兼家の娘綏子(やすこ)の母。つまりこのとき、
兼家は近江の女と関係があった。

■先帝の皇女たち=村上天皇の皇女、保子内親王だという。


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