ふろむ播州山麓

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電子書籍元年2010 №10 「ロングテール」

2010-08-21 | Weblog
 カール・マルクスは『ドイツ・イデオロギー』のなかで、強制された報酬のための労働は将来、自主的な労働にとって代わられるだろう、と主張した。人間が余暇と自由を獲得したとき、それぞれ各人が望む分野で、自己の成長をとげることができる。
 マルクスの言葉を借りれば、プロとアマの壁は消え去り、プロアマ共同共存の民主化の時代が来る。

 クリス・アンダーソン著『ロングテール』(2006 早川書房)からの引用です。ロングテールは長い尾。巨大恐竜のヘッドは高いが幅が狭い。しかし肩から背、そして長い尻尾へと延々と続く低い部分。アナログ商品であろうが、デジタルの商品であろうが、一品ずつの売上はわずかでも、尾の部分は長いので、低位のそれらすべてを足せば膨大な量、商売であればべらぼうな売り上げになる。
 彼の新著『フリー』(2009早川書房)とともに、IT時代の商業を考えさせる名著です。長い尾・ロングテールからの抜粋で、これからの書籍・出版を考えてみます。

 プロアマ共同の好例として、『ウィキペディア』についても言及されています。この百科事典は、地位の確立した権威ではなく、徹底した分権化と自己組織化に信を置く、もっとも純粋な形のオープンソースである。紙の百科事典は、印刷された瞬間から化石になっていくが、ウィキペディアは自己修復を続ける生きた百科事典である。
 だれもが何かについてくわしい。そのことについて、だれでもがウィキペディアの項目について修正をしたり、あらたな項目を設けたりできる。活字記述についての受け身の不満から、積極的参加への変換である。
 全体としてはおおいに成功したウィキペディアだが、ユーザーが書くという性質上、細かい部分はあいまいでいい加減だ。それは使ってみれば分かる。利用者は何のために使うのか、よく考える必要がある。
 この百科事典は最初の入り口としての情報源であって、最後の情報源にしてはならない。情報探しの起点であって、事実確認の決定版となる情報ではない。

 つぎにアメリカの出版業界をみると、新興のDIY出版が興隆である。ISBN付きの紙本を、わずかの予算で作れる。またオンライン書店で通販してくれる。作者がアマであっても、ベストセラーの仲間入りも夢ではない。初版は数十部のみの印刷でスタート。その後は、オンデマンド印刷で、必要な数部を追加する。出版業界の最大のロスであった返品は、排除解消された。
 いまではコストがあまりに安いために、紙本であろうが電子書籍であろうが、ほとんで誰でも簡単に出版できてしまう。つまり、いまや人々はどんな理由であれ、みな本を書けるのであり、市場に出す価値があるかという判断を、出版社に決定されることもなくなった。

 ヘッド部分である一部の有名作家と、末端に近いテールの作者との大きな違いとは何か? テールの先へ行けば行くほど、アマチュア作家は昼間の仕事を続けなければならないということだ。
 でもそれでいい。プロとアマの作家の違いは、あいまいになり続けている。最後には、どうでもいいことになるかもしれない。報酬のために書く本、ただ書きたいからつくった本、プロもアマも、どちらも高い価値を持ちうる。
 さて、テールの末端に位置するわたしの駄文。コピペのレベルから抜け出ていないようです。高い価値には縁遠い…。
<2010年8月21日>
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