ふろむ播州山麓

京都山麓から、ブログ名を播州山麓に変更しました。本文はほとんど更新もせず、タイトルだけをたびたび変えていますが……

会津と北三陸

2013-07-22 | Weblog
 NHKが面白い。毎朝楽しみに見るのが連ドラ「あまちゃん」。そして日曜夜には「八重の桜」。日々私時間に余裕があるからとも言えますが、毎日毎週の習慣になってしまいました。朝はBSをみますので「あまちゃん」はNHK総合放映より半時間早い7時半ですが、8時からの本放送もあらためて再視聴する始末です。家族からは「中毒ですね」とバカにされていますが、どちらの番組も実にすごい。「八重の桜」も日曜BS18時、総合で20時からと二度みています。テレビのフィクション表現の可能性を実感させてくれるのが両番組なのでしょうか。
 ともに舞台は東北です。しかし主人公のあきちゃんは北三陸の久慈から東京に出ます。八重は会津から兄覚馬のいる京都に移ります。またともに方言駆使。基盤の共通するこのようなドラマが同時に二本並行し、またともに高視聴率を獲得したことは、かつてあったのでしょうか。

 ドラマ八重の桜にはハンディがあります。史実が歴然としています。機微は書きかえる事ができても、歴史の本筋を変更することは許されません。テレビなり映画、歴史小説は史実との戦いかもしれません。作家は身近な日常を自由に描くことができても、本筋の史実を書きかえることはできません。「忠臣蔵」をどのように表現しようが、夏や秋の討ち入り事件に改竄することは許されません。有名な人物を真中に時代劇を描くのは、不自由な枠の中で創造するという面白みなのでしょうかね。

 「あまちゃん」は1984年から現在にいたる現代史のフィクションです。原作の宮藤官九郎は想像で好きなように書けます。ただ現代史の大切な譲れない事実ははずせませんが、歴史に残りようのない庶民がどう生きたか、どのように自由に表現しても間違いではなく許されます。事実と架空と、織り交ぜ表現しているパロディが「あまちゃん」の面白みなのでしょうね。
 ふたつの人気番組はこれからのTVドラマがどのように進化していくのかを予言しているのかもしれません。表現の自由を推し進めれば、その代表は「水戸黄門」かもしれません。無難で平凡なストーリーはいつかマンネリになってしまいます。ワンパターンで結末のみならず、話の展開までもがファンに読まれてしまいます。
 安心感はあっても、視聴者は意外性を感じません。ところが「あまちゃん」は毎回、視聴者を驚かせる意外をこれでもかと見せつけます。制作者と出演者、そして視聴者が架空世界で悲喜こもごもな朝を送っているのかもしれません。

 大晦日の紅白歌合戦に「あまちゃん」のキーソング「潮騒のメモリー」が決定したそうです。天野春子こと小泉今日子歌ですが、ドラマの主人公のアキちゃん(能年玲奈)と親友の足立ユイちゃん(橋本愛)。そして春子の若き日を演じる有村架純、鈴鹿ひろ美こと薬師丸ひろ子など。総出演で盛り上がりそうなのが今年の紅白歌合戦です。まだ7月で「あまちゃん」もあと2カ月強続きます。年の暮れを語るのは早すぎ、鬼はきっと笑うことでしょう。しかしフィクションには歴史物と異なり、とてつもない表現や共感の可能性がある。連続テレビドラマの未来を示唆するのが「八重」と「アキ」かなあ、と思ったりします。今日は、近ごろ書かないことへの叱責にやっと応えての駄文です。
<2013年7月22日>

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毎日が土曜日♪

2013-07-10 | Weblog
 関東から旧友がやって来ました。彼はこの六月に定年退職したばかり。いまは毎日が日曜日かと思いきや、「毎日が土曜日ですよ。今日が日曜日だと翌日は月曜で会社。明日も休日ですから本日は土曜日です」。会ったのは一昨日の月曜日でした。
 完全週休二日制が広まる前に『毎日が日曜日』という言葉が定着したのでしょうね。城山三郎著の同名小説があります。1976年刊ですがアマゾンの『毎日が日曜日』紹介文を引用します。
 「日本経済の牽引車か、“諸悪の根源"か。毀誉褒貶の著しい日本の総合商社の巨大な組織とダイナミックな機能、日本的体質と活動のすべてを商社マンとその家族の日常生活とともに圧倒的な現実感で描く。世界に類のない機動力を持った日本の総合商社の企業活動の裏側で展開されるなまなましい人間ドラマを通して、ビジネスマンにとっての“幸福な人生"とは何かを興味深く追求した話題作。」

 友人の泊っているホテルで朝待ち合わせ、市内を案内しました。行先は客人の希望する所ばかりですが、まず壬生寺の東向かいの根付美術館「清宗根付館」(せいしゅうねつけかん)。建物は京都では珍しい武家屋敷。ユニークな美術館です。わたしも初めての訪問でした。
 ところで根付ですが、ご存じない方も多いのではないか。現代ではケータイのストラップのような物でしょう。流行したのは江戸時代で、一品一品手作りの小さなアートです。パンフレットには「象牙、木、鹿の角、陶磁器、金属や漆を素材として、日本人独特の器用さで精巧な彫刻が施されています」。観覧中の半時間余りの間、訪れた客はわたしたちふたりだけ。あまり知られていない静かなアートスポットですが、作品も屋敷もすばらしい。

 館を出てすぐ北斜め向かいが、新撰組壬生屯所だった八木邸です。すごいのがここのガイドのおじさん。詳しい説明がユーモアたっぷりで実に楽しい。わたしたちが座り込んで話を聞いているその座敷で、芹沢鴨らが暗殺された。「そうです。この部屋です。あなたのその位置に泥酔した芹沢鴨が寝ており、横は愛人のお梅さん。屏風越しでそこのあなたの位置に平山五郎と彼の愛人吉栄が臥せていました。みな布団の上から刀で何度も何度も突き刺されたのです。床も壁も天井も、この部屋は血みどろになりました。隣室の鴨居に刀傷が残っていますね。逃げようとした芹沢を切りつけた時の跡です。触らないでくださいね。触れないでと言うとみなさん触ろうとします。触らないでくださいね」。すごいスーパー歴史ガイドさんです。おすすめの幕末スポットですよ。

 そして新京極「スタンド」での昼食後に向かったのが、東山の「ねねの寺」として有名な高台寺。客人がここを希望した理由は、タダ券を偶然もらったからだそうです。久しぶりに訪れましたが、傾斜地の広い庭を整備中で、木々が大きく育つころにはすばらしい庭園になりそうです。ここのガイドさんは処々に点々と配された女性陣。マニュアル解説ぽいのですが、それでも質問に対していい答えが返ってきます。やはりみなさんプロ集団ですね。しかし広い境内の散策は猛烈に暑かった。
 高台寺を出ると掌美術館のある一角、「京・洛市ねね」の域中の小さなお店「てんこく屋空空」。はじめて行ったハンコのお店ですが、ご主人がすごい。篆刻作家の中川古啓さんです。このお店が彼の工房でもあるのですが、漢字、書、篆刻などについて延々と、ユーモアたっぷりに話してくださる。わたしたちはたちまち彼のファンになってしまいました。
 中川さんはホームページを開いておられ、漢字を語るブログがすばらしい。最近の記述は七夕や祇園祭から祭字など。わたしのブログなど足元にも及びません。おすすめします。
 http://tenkokuya-kuku.cocolog-nifty.com/blog/
<2013年7月10日 友は当日夜、木屋町「きみや」で会食の後に新幹線で帰りましたが、次回はまたまたローカルな京スポットをふたりで開拓することになりました>
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富士山とブラックバス

2013-07-01 | Weblog
 新幹線で東京に向かう車中、いちばんの楽しみが富士山。今日は見えるかしら、といつも思いながら居眠りしてしまう。それでも近づくと目が覚め、見落とすことはありません。不思議ですが、理由は簡単です。車内がざわざわするからです。
 「わあっ!」とか「きれい!」とかという声とともに、ケータイがパシャパシャと音をたてます。海側の席の乗客は山側のドア窓に移動もする。ですから寝ていても、見える日には必ず優姿に出会えます。

 世界文化遺産に選ばれたことは素直に喜びますが、富士五湖の西湖・河口湖と山中湖には納得がいきません。6月29日付けの新聞が報じましたが、この三湖では毎年、ブラックバスが放流されているのです。山梨県の公認です。
 2005年施行の外来生物法はブラックバスの放流を禁止しています。しかし山梨県の三湖と神奈川県の芦ノ湖のみは、法施行以前から漁協が漁業権をもち、例外的にブラックバスの放流が認められています。三湖では釣り人から遊漁料を徴収している。そして10年に1度、放流の可否が見直しされるのだが、世界遺産登録が決まった直後、またもやバス放流が10年延長されることになりました。
 地元漁協では「業者の生活がかかっている」と主張しています。確かに百軒以上が釣用貸しボートで生計をたてている。三湖の遊漁料合計は年一億円近くにのぼるそうです。

 しかしどうも納得がいきません。また西湖には貴重種のクニマスが棲息しています。サカナ研究家でタレントの「さかなクン」が発見しましたが、秋田県田沢湖の固有種が公害汚染水のために絶滅する前、戦前に西湖に卵がいくらか移されていた。それが奇跡的に生きのび、西湖での棲息が確認されたのが2010年。
 ブラックバスとクニマスが共存できたのは、湖での棲息域に違いがあるためだそうですが、クニマスの稚魚はきっと外来種の餌食になっていることでしょう。
 世界に誇る文化遺産の富士山一帯です。レッドリストに野生絶滅種と記載されている貴重なクニマスを放流して、三湖を名所にしてみてはいかがでしょう。この遺産魚がどんどん増えれば食用にもできます。塩焼きでもフライでもおいしいらしい。そのためにはまずブラックバス退治を先行しなければなりません。ブラックバス・バスターズでしょうね。

 クニマスの故郷である田沢湖では「クニマス里帰りプロジェクト」を継続中です。しかし七十年以上も前の汚染水の影響はいまだに残り、酸度の高い田沢湖でのクニマス復活はむずかしい。片や里帰りをこころから望み、一方では遊びの漁で収入を得ようとする。
 わたしは富士三湖がクニマスで溢れることを望みます。田沢湖の水質改善も同様です。
<2013年7月1日 山開き>
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