ふろむ播州山麓

旧住居の京都山麓から、新居の播州山麓に、ブログ名を変更しました。タイトルだけはたびたび変化しています……

天狗のミイラ №2 「トンビが鷹を産む」

2011-01-30 | Weblog
子母澤寛の小説に『父子鷹』(おやこだか)があります。海舟勝麟太郎と父の勝小吉を描いた名作ですが、このブログでも紹介したことがあります。少年麟太郎が野良犬に金玉の片方を喰いちぎられ、瀕死の重傷を負ったときの話しです。キーワード「勝海舟 金玉 山麓」。このような言葉でヒットすると思います。金玉話しに興味ある方はご一読ください。「坂本龍馬 金玉」でも、連載「金玉」につながります。

 さて、今日は「金玉」ではなく、鷹タカや鳶トビ、トンビの話題です。海舟の父親の小吉は、どうしようもない無頼漢のように思われていますが、なかなかの人物でした。この親にしてこの子あり。親子ともに鷹であったのです。小吉は決してトビではありません。トビがタカを産んだのではなく、タカの子は、当然ですがタカだったのです。だからタイトルは「父子鷹」な訳でしょうね。「父鳶子鷹」ではありません。

 鳶が鷹を産むという諺ですが、本当は間違っています。トビはワシタカ科の鳥類です。トビは本来、タカの仲間なわけです。タカであるトビの子は、だからタカであるのです。
 小林桂助著『原色日本鳥類図鑑』保育社刊をみますと、タカもワシもトビも、みなワシタカ科に属しています。全鳥名22種を列挙します。
 ハヤブサ・シロハヤブサ・チゴハヤブサ・コチョウゲンボウ・チョウゲンボウ・イヌワシ・カタシロワシ・オオノスリ・ノスリ・ケアシノスリ・クマタカ・チュウヒ・ハイイロチュウヒ・オオタカ・ハイタカ・ツミ・トビ・オジロワシ・オオワシ・ハチクマ・サシバ・ハゲワシ。
 この22種が「ワシタカ科」に分類されています。「トビ」トンビは堂々とワシやタカの仲間な訳です。「トビの子は、タカそのものである」と言って、間違いはないのです。
 同図鑑によると、タカは4類に分類されています。
 ハヤブサ類
 ノスリ類
 オオタカ類
 チュウヒ類
 トビの姿はタカの「ノスリ」にそっくりです。ただノスリとトビのいちばんの違いは尾羽。ノスリの尾先は丸いのですが、トビの尾羽はV字型に切れている。それ以外は見分けが付かないほどよく似ています。
 食性をみると、ノスリはほかのタカ同様、生きたノネズミや小鳥、ヘビやカエルなどを捕食します。生食です。鳴き声は「ピーエー」。
 ところがトビは「ピーヒョロロ」で、死魚や小動物の死体を食します。トビが蔑まれる原因は、死肉ばかりをあさるいやしい食生活にあるようです。

 ところでトビにそっくりなノスリは、俗名を「糞鳶」(くそとび)といいます。立派なタカなのに、なぜクソトビなのか? この呼び名はいまも各地に方言として残っていますが、最古の記載は平安時代初期につくられた辞典『和名類聚鈔』(略「和名抄」)です。
 <鴟は一名を鳶。和名は「土比」。また一名を「鵟」(のすり)という。音は「狂」で「久曾止比」。喜食鼠…>
 屎(糞)クソをみますと和名「久曾」とありますから、「久曾止比」は糞鳶・屎鴟にちがいありません。

 天狗は「トビ」トンビと同類と信じられていましたが、天狗「糞鳶」とも平安時代から記されています。これは「ノスリ」を意味するのか、それとも蔑称として「糞」を付けて呼ばれたのか? 天狗の「糞鳶」「屎鴟」のことは、これからの宿題にしておこうと思っています。

 ところで今回の参考書、小林桂助先生の『原色日本鳥類図鑑』ですが、わたしの手持ち本は、昭和31年初版で33年の3刷版です。実は小学生のとき、小遣いを貯めて買った、超高額図書だったのです。奥付に定価1200円とありますが当時、これだけの金額は月収の数倍だったのです。眼の玉が飛び出すほどの高額ですが、少年は清水の舞台から飛び降りたわけです。
 著者の小林先生とはその後、たびたび文通し、少年は教えを受けました。確か小学6年から中学生のころでした。

 そしていま、手元に『小林桂助コレクション鳥類標本目録』2006年刊があります。ご子息の小林博司氏から贈られた図書です。桂助先生は2000年に91歳で亡くなり、これまで収集された世界の鳥類標本約15000点が、博司氏から兵庫県立「人と自然の博物館」に寄贈されました。日本最大最高級の鳥類剥製標本のコレクションです。
 目録をみると、ノスリはドイツ・スイス・国内の標本が15点。トビは千島・色丹・国内・ロシア・中国など18点が掲載収蔵されています。
 不思議なことにこの目録と図鑑が機縁になり、最近に森岡弘之先生(国立科学博物館・山階鳥類研究所)との交流もありました。かつての野鳥少年が、数十年ぶりにトビとノスリで復活し出したようです。これからは、ノスリ、トビそしてテングのことなどを、考えてみようと思っています。小林桂助先生の不肖の旧少年弟子として。
<2011年1月30日 南浦邦仁>
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天狗のミイラ №1

2011-01-22 | Weblog
「カラスてんぐ、実はトンビ」と題して新聞各紙が報じました。1月19日夕刊に載りましたが、ご覧になった方も多いことでしょう。
 和歌山県工学技術センターが、コンピュータ断層撮影CTで天狗のミイラを解析したところ、鳥のトビ2羽の骨や羽根と、粘土や和紙の合体でつくられたものであることが判明しました。
 天狗のミイラは近世期、かつてたくさんの山伏たちが厨子に納めて背に負い、各地を巡ってご利益を説いたものである、と記されています。この和歌山のミイラ天狗は、御坊市で行き倒れた山伏が持っていたものを、地元の小竹八幡神社が明治期から大切に保管してきたものだそうです。

 読者の反応は、「子供騙しの作り物だなあ」とか「トビよりワシやタカの方が似合いそうなものだが」。そのような感想が多いのではないでしょうか。
 しかしわたしは、この記事に驚いてしまいました。

 鎌倉時代の絵巻物「天狗草子」をみると、天狗が鳶トビに姿を変え、四条河原あたりの上空を飛ぶ。河原に肉片を見つけ、舞い降り脚でつかんだところ、河原に住む子どもが肉の中に鉤針を仕掛けていた。針はトビの脚に食い込みはずれない。また針には長い紐がついており、トビの天狗は童に捕えられ、首を折られ葬られてしまう。
 その天狗の家族や仲間たちは嘆き悲しみ、河原に落ちていた鳶天狗の羽をこそっと拾って故人をしのび弔う。
 このような話が画で描かれています。「天狗草子」が描かれたのはおおよそ700年前です。

 古典学者の山口仲美氏によると、天狗の鳴き声は「ひいよろよろ」「ひょうよろよろ」「ひいひいひ」。これは鳶の鳴き声と同じであり、狂言に登場する鳶は「ひいよろよろ」「ひいひい」と鳴く。

 かつてトビは天狗になる、あるいは天狗は鳶に化身すると信じられていた。天狗の妖術が敗れると、羽や首を折られ死ぬ。そのように信じられていたようです。
 これからは時々、天狗や山伏について、天の狗すなわち空の犬、トビのこと、そのような雑談を書いてみようと思っています。かつて紀州で行き倒れた名もなき修験者に思いを馳せながら。
<2011年1月22日 久しぶりの作文でした 南浦邦仁記>

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「東アジアを考える」情報ガイド №3 「私の履歴書」

2011-01-12 | Weblog
 近ごろの新聞連載でいちばん興味深く、毎朝楽しみに読んだのが、ウィリアムJペリー「私の履歴書」(2010年12月1日~31日・30回連載・日本経済新聞)でした。
 現在進行形の朝鮮半島危機とオーバーラップし、文を読んでいると「いまの話しなのか? 過去のことなのか?」。一瞬、時間の前後が溶解し消えてしまうことが、何度かありました。不思議な体験です。
 ペリー氏はクリントン大統領時の国防長官だった方です。あまりの名文に、わたしは30枚のスクラップを作りましたが、自分自身の復習をかねて、ダイジェストでお届けします。全文は図書館でも、ウェブ版でも読めます。そのうちに、本でも出版されますが。

 黒船が江戸湾に来航した。嘉永6年6月3日(1853)のことである。艦隊4隻を率いるのはマシュ・カルブレイス・ペリー提督。実は筆者WJペリーの5代前はロバート・ペリーという。ペリー提督の兄か弟であった。だから4代前は、提督の甥になる。
 ウィリアムは1947年4月、はじめて日本を訪れた。わずか18歳の若き彼は海軍の技官であったが、瓦礫と化した東京に驚く。「東京で目にした光景は、今も忘れない」
 そして同年6月から1年半ほどの間、沖縄で全土の地図を作成する軍務に当たる。沖縄は、東京よりもっとひどかった。一切の建物もなく、ただまっ平らな大地が、荒涼と広がっていた。住民は瓦礫のこの中で暮らしていた。「戦争とは何と残酷なものだろうか」そして人々に何という苦難を強いるのだろう…。まだ18歳だった若年兵のペリーは、「心の中で何度もそう自分に問いかけた」。そして脳裏に焼きついた「戦争」のイメージは以来、彼の体の中から消えたことはない。
 沖縄勤務から50年後の96年、米国防長官として沖縄米軍・普天間基地の返還も決断した。「まさしく、縁は異なもの不思議なもの。(幕末からの)時空を超えた絆で結ばれた日本において、私の半生を紹介できることになったのも、この不思議な縁のなせる業なのだろう」
 ペリー提督はかつて沖縄にも寄港している。そして彼は帰国退官後、大著『日本遠征記』を書き残した。

 ペリーはかつての朝鮮半島危機について記している。あえて人名と年を伏せて紹介しよう。正解は文末に記しますので、正解当てゲームの感覚で読んでいただければ。

 4月21日、訪問先の韓国・ソウルから特別機で東京の羽田に到着した。防衛庁長官と夕食を含めた会談をこなし、翌22日に次の総理大臣が内定していた副総理・外務大臣と外務省で会談した。席上、外相は北朝鮮の核問題について、対話による外交的解決の必要性を強調する一方で、こう述べている。「仮に北朝鮮がなおも態度を変更せず、国連安保理で制裁を決定することがやむを得ない状況になれば、我が国としては憲法の範囲内で責任ある対応を取る」
 米国はそのころ、国防総省内部で検討していた北朝鮮の核疑惑施設への「外科的空爆」を断念した。代案として国連安全保障理事会で対北朝鮮経済制裁決議を採択すると同時に、それと連動させる形で「万が一」の場合に備えて、在韓米軍を強化するアプローチを取り始めていた。統合参謀本部議長と考え抜いたプランは在韓米軍を数万人程度、増強することだった。
 在韓米軍司令部は、「第2次朝鮮戦争」が勃発した場合、最大で40万人の米軍が必要と分析していた。「第1次増派」の兵力増強をペリーは大統領に進言する積りだった。
 しかしひとつの懸念事項があった。それはほかならない、同盟国・日本の対応である。仮に北朝鮮が韓国に南侵を電撃的に開始した場合、我々は何としてでもそれを食い止めると決めていた。
 そのためには在日米軍基地施設をすべてフルに活用しなければならない。大量の航空機、軍事物資、そして新たな追加兵力。それらを順次、日本を経由して戦地である朝鮮半島に送り込むという、我々の有事計画の骨子であった。
 ペリーが求めようとしたのは、日本の自衛隊による戦闘行為への参加ではない。ただ、朝鮮半島で軍事衝突が発生した場合、その後方支援のために在日米軍基地の使用が必要であり、それを事前に許可してほしいということだった。もちろん日米安全保障条約第6条では、朝鮮半島などでの「周辺有事」の際に、米国が日本の米軍施設を使用することを認めてはいる。ただ、実際にそうなった場合、やはり時の日本政府にきちんとその旨を説明し、全面的な理解をえた上で、支持してもらわねばならない。

 さて、ペリーが記したこの文は、1994年の朝鮮半島危機、17年ほども前のことである。当時といまと、余りにも似た出来事が繰り返されている。なお登場人物は、愛知和男防衛庁長官、羽田孜次期首相、クリントン大統領です。

 ペリーは連載2日目の12月2日付で、こう書いています。
 「あれから15年以上の歳月が経ち、朝鮮半島情勢は今、かつてないほど緊張している。94年当時(金日成→金正日)と同様、権力継承期(→金正恩)にある北朝鮮が仮に予想外の無謀な行動に出た場合、オバマ政権は私と同じく、同盟国・日本の全面的な支援を必要とするだろう。その時、すでに多くの経験知を持つ日本が、賢明な判断を下すと、心から信じて止まない」
<2011年1月12日>


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検証北朝鮮・延坪島ヨンピョンド事件 №13 最終回 <2010年12月20日~21日>

2011-01-11 | Weblog
12月20日
<韓国>軍関係者は午前、延坪島から南西部海上に向けて、海上射撃を同日中に実施すると発表した。北朝鮮は「我が領海への射撃」とみて、韓国領への砲撃を警告。
 韓国軍では午前中に、F15KやKF16などの戦闘機が出撃態勢を構えている。駆逐艦や哨戒艦も周辺海域に配備。K9自走砲や多連装ロケットシステムMLRSも北に向けて応射の構えを取った。在韓米軍約20人も参加しており、後方支援に当たる。国連軍の代表も現場状況の監視に当たる。
 この日は濃霧で200メートル先も見えない天候であった。19日は好天であったが射撃せず、この日に約1500発を発射した。砲弾は11月23日に中断した訓練の残りを使用したとする。訓練は14時半から16時まで実施された。翌日の訓練は、中止が決定。

<国連>安全保障理事会が緊急会合を招集(米国19日午前・日本20日未明)。懸念される軍事衝突の回避に向け、南北双方に自制を求める報道向け声明の採決を模索したが、中国は「本国政府からの指示が届いていない」という事情で、本会合を再開できない状態が継続。会合は8時間以上に及んだ。米ライス大使は「これ以上議論をすることは、特に必要でも生産的でもない」。英国案に大多数が同意する準備ができていたのだが「強い声明を全会一致でまとめることができなかった」。日本の西田恒夫国連大使は「何とか妥協したい」
 
<北朝鮮>訪朝中のリチャードソン知事が声明で北朝鮮との合意事項を明らかにした。
 ①国際原子力機関IAEA監視要員の復帰。
 ②保有する核燃料棒の売却による国外搬出交渉の開始。
 ③南北間の緊張回避を目的とする米韓との軍事委員会設置。
 米国務省によると、リチャードソン知事は訪朝中、定期的に同省に連絡を入れていた。
 知事は20日に平壌を離れる予定だったが、濃霧のために帰国を1日延期した。平壌空港で知事は記者団に対し、当面の軍事的衝突は回避したと語った。
 朝鮮人民軍最高司令部は20日、韓国軍が同日実施した海上射撃訓練について「臆病者の幼稚な火遊びに過ぎない」。「卑劣な軍事的挑発にいちいち対応する一顧の価値も感じなかった」とする報道文を発表した。発表は韓国軍訓練終了の3時間後。


12月21日
<韓国>漢江をはさみ北朝鮮を望む京畿道金浦市の愛妓峰154㍍山頂に、高さ30㍍のクリスマス電飾が7年ぶりに灯った。南北対話の促進を背景に04年6月、軍事境界線付近での「宣伝戦中止」合意で中断していた。電力難の北朝鮮では、遠くからでも電飾がよく見えるという。

<中国>平壌から北京に到着したリチャードソン米ニューメキシコ州知事は「北朝鮮が、韓国の射撃訓練に報復せず、ウラン濃縮施設のIAEA査察受け入れに同意した機運をとらえ、各国は対話を再開すべきだ」
 外務省の姜瑜副報道局長は記者会見で「対話と協調の軌道への復帰を関係国に希望する」と表明した。
 姜は同記者会見で、黄海で中国漁船が韓国海洋警察の警備艇に体当たりして転覆した事件について「韓国側に抗議し、同国関係者の厳重処分と損害賠償を請求した」ことを明らかにした。事件海域は「中韓漁業協定に基づき両国の漁船が操業できる水域」で、中国側も漁業権を持っているとの認識を示した。「相手国の漁船を取り締まる権利はない」とした。韓国側は不本意であろうが、拘留していた乗組員3人を起訴せず12月25日に釈放。「操舵していた船長は死亡しており、3人は衝突に積極的には加わらなかった。また捜査にも協力した」。撮影ビデオは公表されず、中国の漁民3人は、仁川国際空港で中国総領事館担当者に引き渡された。そして25日正午発空便で大連に飛び立った。

<日本>在沖縄海兵隊の移転先となる米領グアムのインフラ整備を支援するため、4億2千万ドル(約370億円)を2011年度予算案に計上する方針を、政府民主党は固めた。国際協力銀行JBICへの出資を通じて、現地の上下水道、電力事業に融資する予定。370億円は、日本が米国と合意している総負担経費、計60億9千万ドル(約5000億円弱)の最初の負担である。

<2011年1月10日 連載「検証北朝鮮」は本日で終了します。世界を背中に背負って平壌に乗り込まれ、金正日さんとひとりで渡り合ったリチャードさんに、こころより敬意を表し、ご苦労さまと申し上げます。南浦邦仁記>

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検証北朝鮮・延坪島ヨンピョンド事件 №12 <2010年12月10日~12月19日>

2011-01-10 | Weblog
12月10日
<ノルウェー>ノーベル賞委員会のルンデスタッド事務局長は、劉暁波の平和賞授賞式に、中国本土以外で暮らしている劉支持の中国人・民主活動家約50人を招待。
 招待されながら欠席した国は17カ国。中国、パキスタン、エジプト、ロシア、イラク、スーダン、カザフスタン、イラン、キューバ、ベトナム、モロッコ、チュニジア、アフガニスタン、サウジアラビア、ベネズエラ、スリランカ、ネパールの大使ら。ナバネセム・ビレー国連人権高等弁務官も欠席した。

<米国>クリントン国務長官は、拘束されている劉を釈放せず、妻や親族の出国すら認めなかった中国政府を強い口調で非難し、米政府は人権問題では中国に妥協しない姿勢を示した。オバマ大統領は劉の釈放を要求する声明を発表した。

<日本>12月3日から開始した日米共同統合演習が終了した。
 前原外相は翌1月に発令する人事で、
 杉山晋輔・地球規模課題審議官を、アジア大洋州局長に起用。
 斎木昭隆・アジア大洋州局長を大使に転出。(2008年1月より6カ国協議の日本首席代表)
 西宮伸一・ニューヨーク総領事を経済担当外務審議官に。
 小田部陽一・審議官を大使に転出。

 菅首相は北朝鮮による日本人拉致事件の被害者家族と都内で面会した。半島有事などに備えた自衛隊による拉致被害者救出活動の検討を進めたいと強調。「救出に自衛隊が直接出て行って、韓国の中を通って行動できるかというと、ルールは決まっていない。救出に携わることができるような日韓の決めごとをしたい」と自衛隊派遣を念頭に、日韓で協議する考えを示した。
 午前、韓国の李庸傑国防次官が防衛省の中江公人次官と会談。日韓の今後の防衛協力について協議。

<韓国>韓国軍は学生生活を送りながら女性士官候補生としての軍人教育も受ける「女性士官養成課程」を、淑明女子大に創設した。選抜された30人が2年間の訓練の後、士官として28ヶ月間の軍務につく。男子大学生には同様の養成制度があるが、女子大への設置ははじめて。韓国の男性は原則20カ月の兵役を経験するが、女性には兵役の義務がない。同女子大の韓栄実総長は「北朝鮮には韓国の30倍に当たる15万人の女性軍人がいる。韓国軍にも、繊細で合理的、思考の柔軟性を備えた女性の必要性が増している」と強調した。

<インドネシア>前原誠司外相はインドネシアのバリ島のホテルで、ユドヨノ大統領と会談。朝鮮半島問題について「中国も含め連携していくことが重要だ」との認識で一致した。また両国の経済関係強化での協力を確認した。マルティ外相との間では、貧困対策のための約84億円を限度とする円借款の供与に関する書簡を交換した。

<マレーシア>韓国の李大統領は、国賓としてマレーシアを訪問した。ナジブ首相と会談し、修好50年を迎えた両国の一層の協力強化をうたう共同声明を表明。朝鮮半島緊迫のため、訪問日程は1日のみに短縮された。


12月11日
<北朝鮮>新義州から平壌に向かっていた貨物列車が転覆。約40両のうち8両に金正恩副委員長の誕生日(来年1月8日)のための贈り物用のテレビや時計などが積まれていた。正恩後継に反対する勢力による妨害行為の可能性もあるとして、公安当局が捜査している。<聯合ニュース12月27日付>
 9月15日にも鉄道転覆事故。威境北道清津の製鋼所と茂山鉱山を結ぶ貨物列車が転覆した。<共同>
 さらには9月18日にも、列車転覆事故があった。平壌から豆満江に向かう列車が被害を受け、ロシアの鉄道関係者も乗車しており、17人ほどが死傷。枕木が約5メートルにわたり抜き取られていた。何者かが故意に起こしたとみられる。<共同>

<中国>中国国防省は、米ゲーツ国防長官が来年1月10日から14日まで、中国を訪問すると発表した。10日にワシントンで開いた米中の国防次官級協議で合意した。中国軍の陳炳徳総参謀長も来年訪米する。
 外務省の姜瑜副報道局長は、欧米政治家らが服役中の劉暁波へのノーベル平和賞を支持しているのは「中国への内政干渉」であるとし、「主権の相互尊重と内政不干渉が国際関係の基本原則」と強調する談話を発表した。
 外務省の斎木は11日、北京入りし、中国外務省で武大偉朝鮮半島問題特別代表と会談した。武は8日9日に訪朝し、金総書記と会談した戴国務委員に同行し、同席していた。極秘事項の「重大な共通認識」とされる金総書記が望んだ米国との対話仲介の依頼について、斎木はすでに米国から聞いており、同席者の武に直接確認したのであろう。6カ国会合について斎木は「対話のための対話には関心はない」と記者団に話した。


12月13日
<ロシア>ラブロフ外相はモスクワを訪れた北朝鮮の朴宜春外相に、ウラン濃縮計画への「深い憂慮」懸念を表明し、北朝鮮と距離を置く姿勢を明確に示した。北朝鮮に対し、核・ミサイル開発を禁じた国連安保理決議の順守を求めた。伝統的友好国である北朝鮮の核開発に対して、直接懸念を伝えたと発表するのは異例である。また延坪島砲撃を「非難に値する」と指摘。対話による事態打開のため、北朝鮮核問題を協議する6カ国協議を「再始動」する必要があるとした。


12月14日
<韓国>北朝鮮は、寧辺のウラン濃縮施設以外に、3か4カ所に秘密の濃縮施設を保有すると、14日付け朝鮮日報が報じた。
 株式市場株価指数KOSPIは騰勢を強め、3年1ヶ月ぶりに2000の大台を回復した。

<中国>外務省の姜瑜副報道局長は、北朝鮮の金総書記が日米韓中ロとの6カ国高官の緊急会合の無条件での開催に「積極的な態度を示した」と明らかにした。金は8日9日に訪朝した中国の戴国務委員に語ったという。

<ロシア>2009年9月に北朝鮮を脱出してロシア極東沿海地方に密入国し、ロシアへの亡命を希望していた北朝鮮男性について、ロシア政府が亡命受け入れを拒否。代わりに韓国が受け入れることが、14日に判明した。この男性は朝鮮人民軍総参謀部のロシア語通訳だった。北朝鮮は身柄引き渡しを求めていたが、ロシアは国際条約を理由に拒否。またロシアへの亡命については、北朝鮮の住民受け入れを基本的に認めていないために拒否していた。


12月15日
<韓国>韓国政府は、空襲や災害を想定した避難訓練を、14時から15分間、実施した。空襲警報のサイレンが鳴ると、大半のバスや乗用車が停車し、歩行者は公務員らの指示に従い、地下鉄駅構内などに退避した。
「民防衛特別訓練」は全国民の退避所への移動を命じる特別訓練。韓国全土には2万5724カ所の退避所があるが、大半が民間施設で、核や毒ガス攻撃から身を守れないのが現実であるという。核・生物兵器の攻撃に耐えられる「1等級非難所」は全国で10カ所のみ。収容定員は計1万2807人。ソウルには一般市民が使える1等級施設はない。2等級以下は民間の商業施設の地下や地下鉄などが指定され、深さや広さにより4等級まで区分されている。ソウル市民は、避難所の存在を知らない人が多いともいわれている。政府は攻撃を受けたときの対処を定めた「戦時国民行動要領」の内容と退避所位置を周知するためにも、特別訓練への参加を徹底させる方針。14時から20分間、社会生活が完全に停止する。飛行機と列車は運行可。

<中国>北京入りした米スタインバーグ国務副長官は、崔天凱外務次官と会談。スタインバーグ率いる米政府訪朝団は、17日まで滞在して対応を協議する。団員はキャンベル次官補(東アジア・太平洋担当)、ソンキム6カ国協議担当特使ら。
 中国政府は自らの外交努力を強調しながらも「北朝鮮への影響力には限界がある」とし、16日から平壌入りする米リチャードソン知事を見据え、姜局長は「米朝間で、接触と対話を強化することを支持する」と語った。両国には翌1月の胡錦濤国家主席の訪米の友好ムードつくりという共通目標がある。
 中国人民銀行が発表した4半期ごとのアンケート調査では、「物価が高すぎる。受け入れがたい」とする回答が、全体の73.9%に達した。1999年の調査開始以降、最高を記録した。11月の消費者物価指数CPIは、前年同月比5.1%の上昇(中国国家統計局11月11日発表)
 公明党の山口那津男代表は北京の人民大会堂で習近平国家副主席と約50分、会談した。習は「両国の共通利益は、意見の食い違いをはるかに上回る。中国は日本をパートナーとみなし、ライバルとはみなしていない。中国は覇権を求めない」と強調した。山口は張軍志外務次官とも会談し、北朝鮮問題での日中協力を求めた。

<インド>ニューデリーを訪れている中国の温家宝首相は、印マンモハン・シン首相と迎賓館で会談し、電力分野など200億ドル(約1.7兆円)規模の商談を決定。また中印間の貿易額を2015年に今年の見込み額の1.7倍の1000億ドル(約8.4兆円)に拡大する目標で合意した。対テロなどでの連携強化でも一致した。長年の懸案である国境紛争での進展はなかったが、利害が一致する経済と安保で、接近を加速する。
 さらに、外相が毎年相互訪問することや、首脳の訪問定例化でも合意した。また両国の政策を擦り合わせる枠組みとして、閣僚級の「戦略経済対話」の設置を決めた。アフガニスタンの治安安定と復興に向けた協力でも一致。製造業を強みとする中国と、ITなどサービス業を得意とするインドの、相互補完関係が重要との認識が両国には共通している。先進国への対立軸として、中印の二大新興国は結束を目指す。貧困の解消という両国共通の課題についても、国境問題が妨げにならないように留意し、二国間対話の協力枠組みを増やすとした。インドの対中貿易赤字(09年度192億ドル)の是正が大きな課題である。

<日本>菅首相は新たな首相秘書官に防衛省の前田哲報道官の起用を発表。防衛省からははじめての秘書官。現在の秘書官体制は、政務1人、事務5人。


12月16日
<北朝鮮>外務省報道官は、中国が提案している6カ国高官会合を巡り、米国が北朝鮮の核開発を理由に拒否していると批判し、「すべての対話の提案を支持するが、決して対話を哀願しない」との談話を発表した。
 リチャードソン米ニューメキシコ州知事が平壌に到着した。5日間の滞在予定。寧辺のウラン濃縮施設視察も希望している。北朝鮮の金桂官第1外務次官の招待を受けた私的訪問。延坪島砲撃後、米国要人が北朝鮮に入るのははじめてである。
○ウィリアム・ビル・リチャードソン:1947年11月15日生まれ。クリントン政権下の国連大使。2003年よりニューメキシコ州知事。全米唯一のヒスパニック系知事。1994年の朝鮮半島危機に際して、ジミー・カーター元大統領の北朝鮮訪問に尽力した。2007年に平壌を訪れ、朝鮮戦争時に行方不明になった米兵6人の遺骨返還を実現した。米国の対北朝鮮融和派の代表格である。

<中国>米スタインバーグ国務副長官は北京で、外交政策を統括する戴秉国国務委員と会談。北朝鮮に非核化への具体的な行動を促すよう、中国側に一段の取り組みを要請した。中国側は北朝鮮が6カ国協議に積極的な姿勢を示したことを説明し、開催への理解を改めて求めた。しかし日米韓は北朝鮮の非核化への取り組みや、ウラン濃縮活動の停止を求めており、溝は残ったままである。
 スタインバーグは張志軍外務次官、武大偉朝鮮半島問題特別代表と、個別に会談。来1月の胡錦濤国家主席の公式訪米についても話し合った。

<韓国>韓国軍合同参謀本部は、延坪島で18日~21日のいずれかで、砲撃訓練を実施すると発表した。在韓米軍約20人も参加し、主に後方支援に当たる。国連軍事停戦委員会や国連軍司令部の代表も現場で状況を監視する予定。
 米キャンベル次官補、ソンキム特使はソウルを訪れ、魏聖洛・半島平和交渉本部長、金星煥外交通商相らと協議。
 日中韓は3カ国が広範な分野で協力事業を推進するための常設事務局の設置協定に署名した。文化交流事業などの共同プロジェクトを目指す。ソウルでの署名式には、韓国の金星煥外交通商相、日本の武藤正敏駐韓大使らが出席した。

<米国>ゲーツ国防長官は、1月10日から中国を訪れ、その後の14日に東京に立ち寄る方向で調整している。


12月17日
<中国>16日から開催の中米高官協議(戴秉国国務委員・スタインバーグ米国務副長官)は、中国が北朝鮮寄りの姿勢を崩さぬまま、平行線に終わった。しかし中国側は、胡国家主席の1月の訪米を失敗させられない。オバマ政権はこの機を捉え、日韓連携に加えてロシアを取り込み、中国を孤立させて、北朝鮮に圧力をかける姿勢に追い込む方法を模索している。

<北朝鮮>韓国が明日18日から21日まで、延坪島で予定している海上射撃訓練の即刻中止を要求した。もし実施すれば、11月23日の砲撃に続く「第2、第3の自衛的な打撃が加えられる」とする警告文を韓国側に送付した。<「朝鮮中央通信」>

<パキスタン>首都イスラマバードを訪れた中国の温家宝首相は、ギラニ首相と会談。両国協力の拡大のため、13の合意文書に署名した。経済協力では約140億ドル(約1.175兆円)を投資する見通し。またパキスタンを襲った洪水の復興支援のための借款を含め計6.39億ドルを供与。中国工商銀行がイスラマバードとカラチに支店を開設する。

<日本>政府は新たな「防衛計画の大綱」(新防衛計画大綱)を閣議決定した。
 米キャンベル国務次官補は東京で、外務省の斎木局長らと協議。

<ロシア>外務省は「非常に憂慮している」との声明を出し、韓国に訓練の中止を呼びかけた。ボロダフキン外務次官は、米国と韓国の駐ロシア大使を外務省に呼び、射撃訓練中止を要請した。


12月18日
<韓国>軍は延坪島南西沖で21日まで訓練を開始。内1日は射撃訓練を実施すると発表。初日の18日、悪天候「視界不良」を理由に射撃は見送った。周辺の天候は終日良好で、波も穏やかだった。20日か21日に実施する見通しと言う。
 北朝鮮からの抗議について、韓国政府筋は「人殺しが『自分は被害者だ』と言うような妄言だ」と憤り、軍当局者は「21日までに必ず訓練を行う」、「北に譲歩すれば、この水域での訓練が今後難しくなるばかりか、自国の『領海』とする北の主張を認めたとの誤解を国際社会に与えかねない」と強調した。

 13時ころ、同国中西部の黄海、於青島オチョンドの北西約130キロ。韓国排他的経済水域EEZ内で、中国漁船約50隻が不法操業。取り締まりに当たっていた海洋警察の警備艦3000t級が停戦命令を出した。そして海洋警察官4名が、小型ボートから漁船に乗り込もうとしたところ、漁民は鉄パイプなどで暴行。韓国側4人全員が重軽傷を受け、警備艦に引き返した。すると漁船1隻約60tは警備艦に2度体当たりし、転覆してしまった。海上に放り出された乗員10名の内、5人は中国漁船が救助し、4名は韓国艦が救助したが船長は死亡。韓国側は3人を拘束。また警備船6隻とヘリコプター4機を投入して、もうひとりを探したが行方不明である。
 黄海の韓国EEZ内では、中国漁船が不法操業を繰り返し、取り締まりに当たる海洋警察官に漁民らが暴行する事例が目立ち、問題になっていた。しかし韓国外交通商省は漁船乗務員に死者と行方不明者が出たことに関し、在韓中国大使館に遺憾の意を伝えた。韓国政府は今回の事態が、中国との外交問題に発展するのを避けたい意向である。

<北朝鮮>韓国軍の延坪島での射撃訓練開始について、北朝鮮外務省報道官は、この訓練を契機に再び北朝鮮が砲撃しても「責任は韓国を挑発にそそのかした米国にある」「米国の黙認の下、(韓国の)軍事的挑発策動によって、朝鮮半島は一触即発の重大な情勢である」との談話を、朝鮮中央通信を通じ発表した。
 北朝鮮を訪問中のリチャードソン米ニューメキシコ州知事は、韓国軍の訓練に関連して「北朝鮮軍部と外務省の金桂官第1外務次官ら3人と会談し、最大限自制するよう強く促した」とする声明を発表した。リチャードソンが北に提案したのは、①南北間のホットラインを稼働させる。②韓国、北朝鮮、米国の3カ国が参加し、紛争地域を共同監視するための軍事委員会を設立するなど。
 リチャードソンは国連安全保障理事会の緊急会合が「あらゆる当事国に最大限の自制を求める強い決議案を採択するよう期待する」という声明を発表した。
 知事は朝鮮人民軍板門店代表部の朴リムス副代表とも会談した。同行しているCNNによると、知事は朴副代表に、南北の軍当局者間のホットライン開設や、軍事的衝突の危険性を常に抱える黄海の南北境界水域を対象に、南北と米国の軍当局者による監視委員会を設置することなどを提案した。朴副代表も前向きな関心を示した。

<中国>張志軍・中国外務省次官によると、北京駐在の韓国と北朝鮮の大使を18日に相次いで外務省に呼び、緊迫する朝鮮半島情勢を巡って双方に冷静な対応を求めた。

<日本>内閣府発表の「外交に関する世論調査 10月21日~31日実施」で、
中国に親しみを感じる、とする回答は20.0%(前回調査より18.5㌽減)
 中国に親しみを感じない。77.8%(19.3㌽増)
 日中関係は良好。8.3%(30.2㌽減)
 日中関係を良好とは思わない。88.6㌽(33.4㌽増)

<中ロ>18日夜に中国の楊外相は、ロシアのラブロフ外相と電話会談。朝鮮半島南北の緊張緩和に向けて、ともに努力することを確認した。中国が応じた理由は、ロシアがバランスのとれた国連安保理の声明案を提示したためである。以下、ロシア提示の声明案。
 ①朝鮮半島情勢の悪化を受け、安保理は緊急会合を開催する。
 ②関係各国に、朝鮮半島の緊張を高める行為の自粛を要請する。
 ③大韓民国と朝鮮民主主義共和国の緊張緩和に向けた努力の必要性を強調する。
 ④大韓民国と朝鮮民主主義共和国の対話再開と、平和的な外交手段の必要性を強調する。
 ⑤国連事務総長に、大韓民国と朝鮮民主主義共和国へのすみやかな特使派遣を要請する。


12月19日
<国連>ロシアの国連代表部筋は、ロシア政府の要請により、朝鮮半島情勢をめぐる安全保障会議の緊急会合が現地18日(日本19日)に開かれることになったと述べた。「北朝鮮に加え、延坪島で射撃訓練を計画している韓国の双方に、軍事行為の自制を求める声明採択」を目指すとした。
 中国も事態悪化を回避するため、全体会合開催に応じた。しかし緊急会合は1日延期され、19日(日本20日)の召集となった。ロシアのチュルキン国連大使は、18日夕方(日本19日)の声明で「安保理議長が本日の会合開催を拒んだのは遺憾。安保理の恒例から逸脱するものだ」と強い調子で米国を批判した。
 米国が開催を1日遅らせたのだが、理由は平壌を訪れているリチャードソン知事からの連絡、金総書記との合意事項の最終報告を待っていたためであろう。翌20日に平壌協議の結論が届く。
 緊張緩和策について、英国とロシアがそれぞれ案文を出し、報道向け声明の取りまとめを探ったが、北朝鮮への強い姿勢を唱える日米韓と、慎重な中ロとの溝は埋まらず、翌20日に再協議することになった。
 英国の提出した案は「北朝鮮を非難する」「北朝鮮によるさらなる攻撃を防ぐ重要性」を強調した。
 一方のロシア案は、砲撃事件には触れず、緊迫している韓国軍の射撃訓練と、反発している北朝鮮の双方に「最大限の自制を求める」というもの。さらにはロシアは後に、英国案に近づけ「非難という言葉は使わずに、北朝鮮の砲撃を間接的に非難する」折衷案を探った。中国のみが抵抗する図式になった。

<韓国>19日も韓国軍は海上射撃を見送ったが、「気象条件さえよければ、必ず実行する」と述べた。「気象条件を重視するのは、北が再砲撃などを行ってきた場合に十分に反撃できるようにするため」と説明した。
 中国漁船転覆事件について、韓国海洋警察は暴行シーンなどを撮影したビデオは「捜査の都合上、当面は非公開にする」と発表した。映像はこれまでほとんどが公開されており、非公開措置は韓国政府が中国との外交関係に配慮したためとみられる。

<北朝鮮>韓国軍の海上射撃訓練に対抗し、北朝鮮は野砲や多連装ロケット砲などを擁する砲兵部隊に対し、準備態勢の格上げを指示した。黄海側の空軍基地では、戦闘機を格納庫から出して、待機させている。


<2011年1月10日記。後1回、12月20日21日記載で完です>



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検証北朝鮮・延坪島ヨンピョンド事件 №11 <2010年12月4日~12月9日>

2011-01-09 | Weblog
12月4日
<北朝鮮>政府関係者は砲撃事件の被害として「4人が死亡した南朝鮮の何倍もの規模だった」として、はじめて死傷者が出たことに言及した。民間人も含まれるかどうかは不明。
 崔泰福労働党書記は、5日間の訪中を終えて帰国。中国では、呉邦国全国人民大会委員長と会談。また吉林省などを視察。胡国家主席との会談はなかった。

<韓国>金寛鎮国防相は延坪島を訪問し、将兵を激励した。


12月5日
<イラン>原子力庁のサレヒ長官は、ウラン濃縮活動に必要なイエローケーキ(ウラン精鉱)を国内で生産し、中部イスファハンのウラン転換施設に向けて初出荷したと発表。「ウラン抽出から核燃料生産までの一貫した核燃料サイクルが独力で可能になった」と述べた。

<北朝鮮>韓国軍が6日より海上射撃訓練を開始するのを前に、北朝鮮は延坪島砲撃など、挑発行為の正当化や韓国批判を繰り返している。
 朝鮮中央放送は、韓国の「挑発的狂乱により、朝鮮半島情勢は統制不能の極限状況へと突き進んでいる。南朝鮮は何としても第2の延坪島事件を作り、それに言いがかりを付けて戦争の火を放とうとしている」
 金永日労働党国際部長は、カンボジアでの国際会議の演説で、島砲撃を「南軍の領海射撃に対応した、やむを得ない自衛的措置」と主張。
朝鮮通信によると「延坪島周辺水域を南朝鮮の領海とは永遠に認めない」

<韓国>金寛鎮国防相は韓国北西部の最前線部隊を訪ね、将兵を激励した。

<米国>オバマ大統領は、中国の胡錦濤国家主席と電話会談。北朝鮮の延坪島砲撃やウラン濃縮活動を非難した。またオバマは、挑発行動は許されないとの「明確なメッセージ」を北朝鮮に伝えるため、日米韓などと足並みをそろえるよう胡首席に要請。北朝鮮抑止に向け、影響力を行使するよう中国に促した。一方の胡は、6カ国協議首席代表による緊急会合開催を提案したが、オバマは挑発的な行動を北朝鮮がやめるのが先決と、非常に強い姿勢で迫った。また胡は朝鮮半島情勢について「適切に対処しなければ、制御できなくなる可能性がある」、日米韓の軍事演習にも強い懸念を表明した。
 オバマ大統領が望んだ胡国家主席との電話協議は、砲撃事件から2週間近くも経って、やっと実現した。この時間差は米中関係冷却の象徴<米紙「ニューヨークタイムズ>。米中の対話がないまま日米韓外相会談を迎えれば、「日米韓対中朝」の構図を世界に印象付けかねない。中米が対決色を薄めるため、取りあえず対話の場をつくったという見方もある。
 ホワイトハウス高官が、中国に電話協議を申し入れていることを明らかにしたのは、砲撃事件の2日後の11月25日だった。関係国に冷静な対応を求めることで米中が早期に一致するだけでも、北朝鮮への十分な心理的圧力になると、米側は判断していた。
 しかし中国は「南北のどちらが先に砲撃したか分からない」と異議を唱え、電話協議は棚上げになってしまった。2011年1月のワシントンへの胡主席の公式訪問が迫り、米中双方にいら立ちが増し、やっと実現した電話協議であるが、何が話し合われたのか? 両国の発表は異なる。正確な内容は不明である。

◎その後、毎日新聞12月22日付(1面トップ)が、オバマ・胡の電話協議の内容を詳報した。オバマは「中国が北朝鮮を放任してきたから、こういう事態が起きたのだ」「中国が北朝鮮にしっかり対応しなければ、われわれにも考えがある」と、胡に異例の強い表現で詰め寄った。
 外交筋は「脅しに近い表現だ。翌1月(18日~21日にその後に決定)に予定されている胡主席の米国公式訪問に悪影響が及ぶ、という意味ではないか?」と推測。中国側は胡訪米を、新しい時代の中米関係に意義深い影響を与える極めて重要な訪問であると位置づけている。首脳会談を実現し、「成功させねばならない」


12月6日
<韓国>6日から韓国軍は単独で全国29カ所で海上射撃訓練を開始。延坪島には強力な多連砲ロケットを新たに配備し、自走砲も12門に倍増。北朝鮮が砲撃の理由にあげた、北方限界線NLL近くの大青島沖での射撃訓練も実施する。12日までの予定。
 韓国軍合同参謀本部は、年内に追加の米韓合同海上軍事訓練を実施することを米国側と協議中と発表した。
 延坪島砲撃で犠牲になった民間人2人の葬儀が、韓国北西部の仁川市で行われた。宋永吉市長や海兵隊幹部など100人余りが参列した。
 李大統領直属の諮問機関「国防先進化推進委員会」は、韓国軍が段階的に進める計画だった男子国民の兵役期間短縮を取りやめ、陸軍で従来の24か月に戻すべきだとの報告書をまとめた。2014年までに段階的に18カ月まで短縮する計画を進めていた。しかし少子化の中、就業人口減の問題がある。また短縮中止による国民の反対は、選挙投票にも影響する。韓国の軍備拡張の動きのなか、決断が難しい課題のようだ。

<スイス>イランと英独仏米中ロ6カ国のイラン核問題を巡る協議が、ジュネーブで1年2カ月ぶりに再開。双方の不信感は根深く、協議で何を話し合うかでも隔たりがあり、「今回の話しあいは入り口論に終始しそう」。7日までの日程。

<日本>ロシア哨戒機IL38が2機、日米共同統合演習の空域に進入し、数時間にわたり周辺を飛行した。日米の訓練は一時中断された。また領空侵犯の恐れがあるとして、航空自衛隊のF15戦闘機などが緊急発進スクランブルした。
 日米共同統合演習(実動演習)に参加している日米の3隻が、燃料補給などを目的に、舞鶴海上自衛隊北吸岸壁に入港した。日米のイージス艦「みょうこう」と「シャイロー」。海自の護衛艦「くらま」。

<米国>ワシントンを日米韓3カ国外相会談で訪れた前原誠司外相は会談後の記者会見で、「3カ国対3カ国の構図にならないように、5カ国が一致して北朝鮮に働き掛ける構図をつくることが重要だ」と語った。また前原は、斎木昭隆外務省アジア大洋州局長の名前をあげて、モスクワに派遣することを宣言した。
○ロシアはソ連時代から北朝鮮の伝統的友好国である。しかし延坪島砲撃では、名指しで北朝鮮を非難した。「中朝と溝があり、ロシアを日米韓側に引き込める」という判断があった。米国がスタインバーグ国務副長官らを北京に派遣する一方、韓国ではなく日本が別働隊として、対ロシア交渉に当たるのが適任との判断が日米韓にあった。斎木はこれから、東アジア問題のみでなく、日米韓の代表としてロシアとの交渉に当たることになったようだ。斎木は外務省アジア太平洋州局長職を降りる。彼は6カ国担当、環太平洋特使のような立場になるのであろうか。「中ロ朝vs米韓日」この構図は、<「朝」中vs「ロ」米韓日」>そして<中vs「北」ロ、米韓日>に変化していくのだろう。しかし近い未来には、<中「朝・韓」米ロ日>のような構図が誕生するかもしれない。

○森本敏・拓殖大学大学院教授は「東アジア情勢が緊迫する中、普天間基地問題で日米関係が停滞した。米国は、韓国との同盟の方がいざとなったらはるかに信頼に足ると思いはじめた」。米国はそのように日本を牽制しているのだろう。
○日本外務省幹部は「アメリカにとって優先度が高いのはイランとアフガンだ」。米国は西アジアと東アジア、両面作戦を展開するだけの余裕に乏しい。東アジアは日韓ロが中国を巻き込み、朝鮮半島問題を解消すべき。私見だが米国の本音はこのあたりにあると思う。米軍が東アジアで動員できるのは、在日在韓の米軍だけである。

<米国>軍トップのマレン統合参謀本部議長が、韓国に向かった。在韓米軍、韓国軍首脳と話し合う。


12月7日
<米国>日米韓3カ国外相会談をワシントンで開催(現地時間6日午後)。北朝鮮を非難する共同声明を発表。北朝鮮による韓国砲撃は1953年の朝鮮戦争休戦協定違反であることを確認。ウラン濃縮は国連安保理決議違反と指摘。核計画の放棄を約束した2005年の6カ国協議共同声明を守ることを求めた。安全保障分野を含めた3カ国の連携強化を確認し、砲撃とウラン濃縮施設建設を非難する共同声明を発表した。会談は約2時間半。日米韓3カ国外相会談は2006年以来の開催である。
 中国が提案した6カ国協議首席代表による緊急会合については、日米韓3カ国外相とも、北朝鮮に譲歩しない姿勢を示すため「非核化」に向けた具体的な措置と、韓国との関係改善を前提条件に挙げる原則的な対処方針を崩さなかった。北朝鮮がさらなる挑発的行為をとらないよう中国の努力に期待感を表明。米国はスタインバーグ国務副長官を、日本は斎木昭隆アジア大洋州局長を特使として、北京に派遣する。斎木はモスクワも訪問する。
 北朝鮮によるウラン濃縮や軽水炉建設をめぐり、国際原子力機関IAEAの査察官受け入れ、ウラン濃縮問題を議題とすることなどが、6カ国協議再開の条件とされたもよう。
 共同声明の要旨は、
 ①北朝鮮による韓国・延坪島砲撃を強く非難。北朝鮮の挑発的、好戦的な態度に、結束して対応する。
 ②北朝鮮によるウラン濃縮施設の建設は、国連安保理決議と、核放棄確約を盛った2005年9月の6カ国協議共同声明に違反すると非難した。
 ③6カ国協議再開には、完全で検証可能かつ不可逆的な非核化に向けた具体的措置が必要である。
 ④北朝鮮への対応で、中国、ロシアとの協力を強化。北朝鮮が6カ国協議共同声明を順守するため中国の努力に期待する。
 ⑤必要に応じて国内措置による制裁強化を含め、国連安保理決議のもとでの制裁を完全実施する。

 米政府高官は「われわれは中国が北朝鮮に『機能付与』をしてきたと考える」。「機能付与」とは、「息子が麻薬を買いに行くことを知っているのに、父親が車を貸して小遣いもやるような行動だ」と、専門家は中国を非難した。<ワシントン・ポスト7日付>
○米国が目指すのは、北朝鮮に対する「国際社会の一致した非難」。ロシアの賛成を得て中国に圧力をかけ、国連安保理で何らかの声明を出したい。しかし中国の反対姿勢は強く、「1カ国だけでも反対を続ける」見込みである。しかし年明けの1月18日~21日には胡主席が訪米し、米中首脳会談がワシントンで開かれる。中国側は北朝鮮問題を理由に、胡主席が批判されることは避けたい。
 クリントン・前原はワシントンで35分間会見した。国務長官は、2011年度以降の在日米軍駐留経費の日本側負担、いわゆる思いやり予算を早期にまとめることを希望した。また米軍普天間基地移設について引き続き協議の考えを表明した。前原は「色々な機会に協議していきたい」と語った。

<北朝鮮>「流血の衝突を避けて、南北統一問題を平和的に解決する方法は、対話と協商だ」<労働党機関紙「労働新聞」論説>

<中国>外務省の姜瑜副報道局長は、中国政府が朝鮮半島の安定に「積極的で建設的な役割を果たしていることは誰の目にも明らかだ」と、外交努力を強調した。

<日本>前原外相はワシントンで、翌1月10日~13日にも米国再訪の意向を表明した。米軍普天間基地の移設問題、春に予定されている菅首相が訪米しての安全保障の共同声明、それらについての意見交換・事前協議を行う予定。日米間で2005年に合意した「共通戦略目標」の修正も焦点。1997年に策定した日米防衛協力新指針「ガイドライン」の改定も課題。

<ミャンマー>米ヤン国務副次官補(東アジア・太平洋担当)が、4日間の日程でミャンマーを訪れた。滞在最終日の10日にはアウンサンスーチーと会談。


12月8日
<ロシア>電子偵察機IL20が1機、能登半島沖の訓練水域に侵入。11時ごろ、北海道の西方から日本海を南下。日米合同訓練空域を横切り、15時に姿を消した。ロシア太平洋艦隊のマルトフ報道官は「艦隊の日常業務として、既定の任務を遂行した。空域に関する国際法に違反していない」
 全ロシア世論調査センターは南クリール諸島(和名:北方領土)に関する世論調査の結果を発表した。11月1日のメドベージェフ大統領による国後島訪問について、82%が「正しい行動」と回答した。日本との関係悪化などを理由に「訪問すべきではなかった」という回答は5%。島の帰属について、日本と協議を続けるべきかの問いに、「続けるべき」と答えたのは22%(02年調査15%)。「協議の余地はない」は63%(同74%)。

<北朝鮮>午前9時ころ、南北境界水域にある白翎島ペンニョンド付近の自国海域に向けて、砲弾数発を発射。
 中国の戴秉国国務委員が、8日9日の日程で平壌を訪れた。金総書記は、6カ国会合開催に積極的な態度を示したという。また金は延坪島砲撃で、韓国民間人2人が死亡したことに遺憾の意を表明し、砲撃は韓国軍の軍事演習に対する「自衛的な対応措置だった」との従来からの主張を繰り返した。

<韓国>米軍のマレン統合参謀本部議長はソウルで、韓国軍の韓民求合同参謀本部議長と共同記者会見を開いた。韓国軍が自衛権行使として戦闘機やミサイルで、挑発に使用された北朝鮮の軍基地などを、即時に精密攻撃する方針について原則一致した。またマレンは日本が今後、米韓合同軍事演習に参加するなど、域内の安定に大きな役割を果たすよう求めた。米軍制服組トップが公式の会見で、米韓演習への日本の参加問題に言及するのは異例。韓国軍内では反発の声があり、日本では集団的自衛権行使を禁ずる現行憲法解釈の問題などがある。マレンは2国間訓練へのオブザーバー参加を足がかりに、本格的な3カ国協力を進めたい意向を表明。翌日の日本訪問で、自衛隊首脳とこうした防衛協力問題を話し合うと語った。

<米国>国務省高官は、ウラン濃縮施設を米国の核専門家に公開した北朝鮮が、実験レベルの濃縮施設などのほかにも関連施設をひそかに保有している可能性があり、米政府として懸念を抱いているとした。また「北朝鮮がシリアに重水炉を輸出していた」と言明。金総書記が新たにウラン濃縮技術を第三国に拡散させることへの警戒感を表明した。一連の発言は、プルトニウムに続き、ウラン濃縮という第2の核開発ルートを確保した北朝鮮への危機感が、オバマ政権内で高まっていることを示唆している。
 米民主党重鎮のリチャードソン・ニューメキシコ州知事は、16日から20日まで北朝鮮を訪問する。同州政府が現地8日に発表した。クローリー米国務次官補は、政府のメッセージなどを託さないことを明らかにした。

<ノルウェー>在米中国人学者で民主活動家の楊建利はオスロで共同通信とインタビュー。10日のノーベル平和賞授賞式には、中国国外で暮らす多数の活動家が出席するが、楊は彼らの取りまとめ役をつとめている。彼は「30年来の中国の民主化運動を国際社会が認知するという歴史的意義がある」。また「強大な国家が劉氏ひとりを、なぜそこまで恐れるのか。中国という国家は脆弱であることの証左だ」。中国内では「短期的に反発は起きるだろうが、長期的には、政府内の官僚にも、人権改善や民主化が必要との意識の変化をもたらすだろう」と述べた。


12月9日
<北朝鮮>中国の戴秉国国務委員が平壌を訪れ、金総書記と対談し「重大な共通認識」に達した。砲撃後、総書記が外国要人と会談したのははじめて。中国のメンツは保たれた形になった。中国の武大偉(朝鮮半島問題特別代表・6カ国協議議長)も同行。戴は姜鍚柱副首相とも会談し、米国や韓国との対話を促した。
 中国側が12月22日に発表したこの日の、金総書記との会見内容は、「金が米国との対話実現や関係改善のための仲介努力を、中国に要請」したというものである。また中国側も、「米朝対話が朝鮮半島の緊張を打開する鍵になる」との認識を示した。この「重大な共通認識」、北朝鮮の米国との対話希求から、東アジアの非常事態は好転していく。

◎この日の中朝会談、金総書記が依頼した「中国が共和国と米国との橋渡しをすることを望む」という驚くべき発言を機に、不安定だった半島情勢は、一気に緩む。16日から金と親しい数少ない米国人であるリチャードソンが訪朝し、金総書記の真意を確認した。そして20日の米朝の基本的合意。韓国の軍事演習の20日をもっての中止。国連安保理会合の20日をもっての閉会。すべて12月9日の「重大な共通認識」から始まった。
 それ以前の12月5日、オバマ大統領が胡国家主席と行った電話協議が大きく影響している。オバマの糾弾ともとれる対中国「胡錦濤」非難が、この日に中国の強力な対北朝鮮姿勢になり、金総書記の「中国の仲介を得て、米国との対話を行う」という決定的発言になったと思える。この日、戴は「相当に強く北朝鮮側に圧力をかけた」とされる。
いずれにしろ、12月5日のオバマの胡に対する糾弾的な電話協議。9日の平壌での中国の戴と武の金との会談。そして12月11日の北朝鮮での内乱の兆候を思わせる列車転覆事故も大ショックである。金正恩の1月8日の誕生日の祝い品を満載した列車が、何者かによって転覆させられたのである。密告と盗聴でがんじがらめの同国で、反権力のテロ行為など、ほとんど100%といっていいほど不可能なはずだ。金総書記らが受けた危機感は相当のものであろう。私見だが、米CIAが現地エージェントに指示したのであろうか?
そして12月16日に米リチャードソン知事が訪朝する。知事訪朝は私的な行動とされるが、米国の実質的な特使として平壌に入ったことは違いない。ついに、米朝両者は基本的合意に到る。その後、12月20日の韓国軍の砲撃訓練の短縮終了。同20日の国連安保理会合の突然の解散。12月20日をもって、ウラン濃縮そして延坪島を巡る混乱は、一応のピリオドを打つ。ただ予断は許されないが。

◎ペリー元米国防長官は、日経新聞のインタビューに対し、北朝鮮はすでに10発近い核爆弾を保有している可能性がある。そのため、北朝鮮は従来以上に強気の姿勢を示すのは確実である。米朝交渉が始まった場合でも、相当の曲折は避けられない。
 米朝間のハイレベル協議の前提条件として、
 ①経済制裁などの実施と一定の冷却期間。
 ②日米韓3カ国による政策すり合わせ。
 ③米国の特使選定。
 訪朝したリチャードソンに対し、北朝鮮は寧辺のウラン濃縮施設への国際原子力機関IAEA監視団受け入れを表明している。しかしギブス米大統領報道官は21日の記者会見でも、今回の訪朝は「私的な訪朝」、リチャードソンとオバマの面会の予定もない、としている。公式な特使の選定が待たれるが、ペリーは「候補としては、オルブライト元国務長官、ナン元上院議員がいる」

<北朝鮮>対韓国窓口機関の祖国平和統一委員会は「南北の武力紛争と先鋭化した情勢を打開する唯一の活路は(2つの)南北宣言の履行しかない」。韓国との協力と交流などをうたった南北宣言を挙げて、緊張緩和に言及した。

<中国>ノーベル平和賞に対抗してあらたに設立した「孔子平和賞」。台湾の元副総統の連戦を初の受賞者に選んだ。しかし受賞者は北京で行われた授賞式には来ず、代わりに選考委が「平和の天使」と呼ぶ正体不明の天使に、賞金10万元(約130万円)とトロフィーが渡された。連はスポークスマンを通じて「受賞の話しは聞いておらず、受け取る予定もない」と、コメントした。

<日本>米国のマレン統合参謀本部長は防衛省で、北沢俊美防衛相と会談。マレンは次いで自衛隊制服組トップの折木良一統合幕僚長と会談し、日米韓3カ国連携の協力関係を、戦略的レベルに引き上げるべきだとの認識を表明。また日本と韓国が「過去を乗り越え」、日米韓3カ国の合同軍事演習実現に向け努力するよう、重ねて促した。
 自衛隊と米軍は、沖縄県沖での統合演習の模様を記者団に公開した。ジョージ・ワシントンには海自から20人、近くの海自護衛艦「ひゅうが」には米軍から5人が、戦闘指揮センターで席を並べた。艦橋に立つ自衛官は「昨日はロシアの情報収集船が3000㍍の距離まで接近してきた。合同演習に興味津々なのでしょう」

<ロシア>外務省の斎木局長はモスクワを訪問し、北朝鮮への圧力などを要請した。

<インドネシア>バリ島で開かれた「バリ民主主義フォーラム」の共同議長をユドヨノ大統領と務めるため、韓国の李大統領がインドネシアを訪れた。

<マレーシア>韓国の李大統領は、「南北統一が近いと感じるし、統一に備える必要がある」。また、一日も早く平和統一を実現し「北の住民に最低限の権利を保障する責任が韓国にはある」。韓国政府関係者は「北の変化を待っているだけでは不十分である。どうしたら北朝鮮の内部に変化をもたらせるか、能動的に考える必要がある」と話した。

<韓国>「朝鮮日報」は、韓国政府が南北関係に関する方針を、韓国による北朝鮮の「吸収統一に備えることへ転換」と報じた。また2011年を「統一準備元年」と統一省は捉え、計画している。「統一税」の具体化も急速化するであろう。「吸収統一」という語には「北の反発が大きいので、明文化はしない」<12月27日付>

<2011年1月9日記。 この連載もやっと峠を過ぎました。12月21日付まで続け、取りあえずお休みしようと思っています。「東アジアを考える本雑誌」の紹介は、散発的に掲載予定です。朝鮮半島にやっと新春の陽光が差し込めたことに安堵していますが、まだまだ油断はできません。幸多かれと祈ります>
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北朝鮮と東アジアを考えるための本や評論 №2

2011-01-08 | Weblog
 月刊「Voice」2011年1月号が、特集「『世界秩序』に取り残される日本」を組んでいます。サブタイトルは「米国の衰退、中露の暴走、北の暴発…」
 ダイジェストで2作を紹介します。まず春名幹男氏(名古屋大学特任教授・元共同通信社・外務省参与)「米中の本音を読み取れない民主党の愚」。なお○印部分は、片瀬の私見です。

 東南アジアのミャンマーについて、日本のメディアはアウンサンスーチーさんと、民主化運動の行方にばかり注目している。日本のメディアが書かなければならないのは、中国がミャンマーの「後ろ盾」になって、巨額の投資をしているという事実についてである。
 中国はミャンマーのシトウェ港を軍民両用港として確保し、そこから雲南省まで約2300キロのパイプライン建設に着工した。海賊が出没するマラッカ海峡を領有する争いが続く南シナ海を避けて、陸路中国への資源動脈を延ばすのである。大陸国家である中国は、中央アジアから中東まで陸続きである。

○ちなみに中国が陸で境を接する国は東から、ロシア、北朝鮮、モンゴル、ベトナム、ラオス、ミャンマー(ビルマ)、インド、ブータン、ネパール、パキスタン、そして旧ソ連の各国に続く。
 12月10日のノーベル平和賞授賞式に欠席した国は17カ国である。中国の隣国をみると、パキスタン、ロシア、ベトナム、アフガニスタン、カザフスタン…。北朝鮮やミャンマーなどが見当たらないが、はなから呼ばれもしていないのだろうか?
 中国の南部西部には屹立した山脈が連なっている。特にヒマラヤ山脈は険しい。ミャンマーとの間にも横断山脈ホントワンが横切っているが、国境から大都市の成都や重慶のある四川盆地まで、わずか600キロほどの距離である。

 ミャンマーは秘密裏に、北朝鮮から核技術を導入し、核開発に乗り出しており、極めて危険な兆候を増している。米政府は2009年に対ミャンマー政策を変更した。制裁一本槍だった政策を、オバマ大統領は軍事政権との直接対話戦略に切り替えた。ミャンマーがこれ以上、中国に切り込まれるのを防ごうとしているのである。

○北朝鮮は中国の別働隊として核やミサイル、そしてそれらの技術を世界中に拡散しているのではないか? 「朝鮮労働党39号室」は、国際的に孤立した国、ミャンマーやイランなどに救いの手、危険な武器で差し伸べる。

 同誌に大前研一氏の「グローバル経済のアイロニー」も掲載されている。
 もっか中国は、新疆ウイグル自治区の西のはずれにあるカシュガル(タクラマカン砂漠の西の端。キルギスとの国境に近い)を、最重要拠点のひとつと捉えている。その街を「第ニの深玔」にすべく、砂漠の真ん中に高層ビルの建設や鉄道の敷設を始めている。カシュガルが繁栄すれば、ウイグル自治区のイスラム勢力を平定しやすくなる。それだけではなく、(シルクロードの)その地点を通れば、インドや東南アジアを通過せず、中東の油をパキスタン経由で中国に持ち込める。すでにそのためのパイプライン建設もスタートしているという。日本ではまったく報道されないが、五年ほど前からそのような動きが始まっている。そういう意味では中国はイスラムとの対立を選ばず、共存策を選択したといってもよい。資源外交的にも、国内政治からみても、アメリカに対する対立軸としても、これは彼らにとって必然の選択といえる。

○これまでパキスタンはアメリカに密着してきた。ところがこの数年、中国との関係を重視し出したのである。インドと中国が接近する動きも、インドと良好な関係にないパキスタンを変化させている。インドとは、中国もパキスタンも、歴史ある国境紛争を抱えている。
 12月17日、パキスタンの首都イスラマバードを訪れた中国の温家宝首相は、ギラニ首相と会談。両国協力の拡大のため、13の合意文書に署名した。経済協力では約140億ドル(約1.175兆円)を投資する見通し。またパキスタンを襲った洪水の復興支援のための借款を含め計6.39億ドルを供与。中国工商銀行はイスラマバードとカラチに支店を開設する。1兆円以上の投資には、この意味が含まれている。

○いずれにしろ中国が、石油はじめ資源確保のために打っている世界戦略はすごい。中東の石油は、海のシルクロードからも、砂漠を抜けるパイプラインからも、中国に豊富に届くようになる。ちなみにパキスタンの西隣は、米国を悩ますアフガニスタンと、核とミサイルで北朝鮮と緊密に連携しているイランである。
<2011年1月8日>

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検証北朝鮮・延坪島ヨンピョンド事件 №10 <2010年12月2日~12月3日>

2011-01-06 | Weblog
12月2日
<中国>中国を訪問中の北朝鮮・崔泰福労働党書記・最高人民会議議長は、中国東北部の吉林省長春市を訪問し、同省トップの孫政才・共産党委員会書記と会談。経済協力の強化方針を確認。
 姜瑜中国外務省副報道局長は、6カ国協議の首席代表による緊急会合について「協議し始めてこそ、問題解決が可能になる」。また翌日から開始される日米共同統合演習(実働演習)と、米韓が検討している追加の合同軍事演習について、「国際社会は情勢をエスカレートさせるいかなる行為も支持しない」と述べた。

<日本>朝。日米韓外相会談を7日(現地6日)にワシントンで開くと、外務省が発表。前原外相は12月6日~8日の日程で、訪米する。
 日本経済新聞朝刊2日付「私の履歴書」で、元米国防長官のウィリアムJペリーは、第2次朝鮮戦争が勃発した場合、最大で40万人の米軍が必要になる。総理大臣が内定していた羽田孜にペリーは「日本全国すべての米軍基地をフルに活用しなければならない。大量の航空機、軍事物質、そして新たな追加兵力。それらを順次、日本を経由して戦地である朝鮮半島に送り込む」。半島で有事が起きた場合、米軍が自由に在日の基地を使用する必要がある。94年4月、ペリー国防長官「私が来日した目的はその確証を得ることだった」

<米国>国連安保理事会の12月の議長国をつとめる米国のライス国連大使は、北朝鮮の新たなウラン濃縮施設を批難する報道向け声明を、安保理で合意できなかったことを明らかにした。「安保理は声明について議論し、大多数の賛成はあったものの、全会一致による合意ができなかった」。北朝鮮に対する「決議違反」や「非難」といった文言を入れることに、中国が反対したため。
 ライス国連大使は、2006年と2009年に安保理が採択した対北朝鮮制裁決議に基づき、国際社会からの制裁の徹底や強化に軸足を移す考えを示した。

<韓国>東亜日報2日付が発表した世論調査では、過半数の国民が、李大統領の対応に、厳しい評価を下した。
 ①国民の57%が、「制裁・圧迫」を通じて北朝鮮の根本的な変化を促すように求めた。
 ②南北首脳会談や特使派遣を通じて、関係改善の突破口を探るべきだとの回答は38.7%にとどまった。

<ウィキリ-クス>在モンゴル米国大使館の機密公電。2009年8月にモンゴルを訪れた北朝鮮外務次官(当時)の金永日は、2回目の核実験を受けた国連安全保障理事会の制裁決議に、中国とロシアも同調したと繰り返し非難した。中ロが日米韓に歩調を合わせているため、6カ国は「5対1」の構図になったと指摘。「協議はわれわれ(北朝鮮)の体制を崩壊させることに真の目的があるので、米国との対話だけを望んでいる」と述べた。

<ロシア>外務省は中国が提案した6カ国協議の首席代表会議について、「ロシアは参加の用意がある」と述べた。


12月3日
<北朝鮮>11月22日から26日まで、定期対話のために平壌を訪れていた欧州連合EUの実務代表団(局長級)が、現地で砲撃事件について北朝鮮側に24日、砲撃の翌日、北朝鮮外務省などに直接抗議文書を提出。公式行事への参加や市内見学などを取りやめていた。3日になってはじめて、この事実が発表された。北朝鮮側の24日の反応について代表団の一員は、「はっきりとした説明はなく、全体状況をまだ把握しきれていない印象だった」。ウラン濃縮についての北朝鮮側は「わが国はエネルギーが不足しており、ウラン濃縮は平和利用が目的だ」
 米国の自由アジア放送は、砲撃事件などで北朝鮮の情勢が不安定化している。米などの物価が高騰しており、後継者の金正恩に対する不満が庶民(両江道の消息筋情報)の間で高まっていると報じた。住民は金正恩の責任だとして、露骨に不満を漏らしているという。

<韓国>新国防相に内定の金寛鎮は、「交戦規則」の見直しに着手。敵の攻撃に「同種同量」の兵器で反撃する従来の考えから、「民間被害が出た場合は、相応以上の反撃に出る」とする方向で調整中。「敵の挑発への対応は自衛権レベルで、国連軍司令官の同意なく、韓国の独断で十分に戦闘機を動かすことができる。また可能なすべての戦闘力を投入し、足りない場合は合同支援戦力まで投じて、追加で打撃できる」と述べた。23日に韓国空軍戦闘機F-15Kが出撃しながら攻撃しなかったことについて「合同参謀議長が攻撃命令を出すべきだった」と批判。金は、明日4日に新国防相に就任。
 米韓両国が、自由貿易協定FTA交渉で合意。米通商代表部USTRのカーク代表は「大きな進展があった。両国の大統領が進展を検証する時だ」。韓国外務省の金宗壎・通商交渉本部長は「実質的に事実上妥結」。両者は11月30日から、閣僚級の交渉を行っていた。
 サムスン電子は、李健煕会長の長男・李在鎔を社長に昇格する人事を発表。大企業グループでは異例の3代世襲。

<中国>中国共産党は金融緩和路線を転換し、引き締めに軸足を置くことを決定。10月の消費者物価指数は前年同月比 4.4%の上昇。

<日本>午前。日米共同統合演習(実働演習)が、日本周辺の海空域や自衛隊基地などではじまった。10日までの8日間の日程。日米あわせて4万4500人。前回の3万1000人を大きく上回った。
 自衛隊3万4100人、艦艇約40隻、航空機約250機。米陸海空軍と海兵隊から1万400人、艦艇約20隻、航空機約150機。60隻の艦艇の参加は過去最大の規模。空母ジョージ・ワシントンも参加。航空機400機は過去2番目の規模に達する。先日の米韓合同軍事演習の6倍の規模である。
「日米の安全保障で今後、強化が必要なのは弾道ミサイルと島嶼防衛」と自衛隊幹部。北沢俊美防衛相は「日米間の共同統合運用の能力維持や向上のためにやるという基本的な考え方で実施している」と、通常訓練であることを強調した。
 韓国軍幹部もオブザーバーとして初参加したが、米側からの働きかけがあったため。数人程度が米艦艇に乗船し、東シナ海は避け、日本海洋上から視察する。
 第176臨時国会は衆参とも閉幕した。

<世界>ウィキリークスがサイバー攻撃を受け、一時閲覧不能になった。日本時間12時~19時ころ。

<FTA>「世界最多の45カ国と 自由貿易協定 FTAを締結しているのはわが国だけだ」。12月3日に最終合意した米国とのFTAを受けて、李明博大統領は胸を張った。韓国は、東南アジア諸国連合ASEAN、インド、欧州連合EU、米国のすべてとFTAを締結した最初の国となる。世界貿易機関WTOの多国間貿易自由化交渉が行き詰まるなかで、2003年にFTAを通商政策の柱に据えた。既にASEANやインドなどとはFTAを発効させている。EUとのFTAは2011年7月に発効する予定だ。米国とのFTAも、批准は難航が予想されるものの、早ければ2011年半ばごろに発効する見込みである。
向こう5年内に米韓は、自動車など95%の工業製品と消費財の関税を引き下げることになる。超大国、米国とのFTA締結は、韓国に輸出の大幅な拡大と、再度の飛躍的成長をもたらすと期待されている。対して日本企業には大きな打撃となる。経済産業省の試算では、韓国製品の対米輸出の増加により、2020年までに日本企業の自動車、エレクトロニクス製品、機械の対米輸出は1兆5000億円、GDPは3兆7000億円減少する見込みとする。
 また米韓のFTAが発効すれば、韓国の「環太平洋戦略的経済連携協定」TPP参加への可能性も出てくる。現在はTPPに消極的な韓国も、多くの国と個別協定を結んでいる実態から障壁は少ない。加えてカナダ、メキシコ、タイなどもTPPへ関心を示している。そうなると、APEC加盟国の中でTPPに参加しないのは日本と中国だけという可能性もある。
 韓国が自由貿易の先頭に立ち、グローバル市場へ邁進するのは、輸出が成長のいちばんのエンジンであると政府はもちろん、国民も認識しているからだ。09年のGDPに占める輸出比率は43.4%とG20加盟国のなかで最も高い(2位はドイツの33.6%、日本は11.4%)。10年上半期には史上初めて「輸出7強国」に入った。2010年1月~6月の韓国の輸出額は2215億ドルとなり、輸出順位は世界7位で前年の9位から2つ順位を上げた。また2010年7月末の外貨準備高は2860億ドルとなり、過去最高を更新した。これは中国、日本、ロシア、台湾、インドに続く世界6位の水準である。
 また中国との貿易が輸出入の26%を占める韓国経済の現状がある。朝鮮半島で有事が起きれば中国依存はリスクになりかねない。韓国メディアには、FTAは経済面だけではなく、アメリカとの安全保障上の関係強化になると歓迎する論調もある。

<2011年1月6日>

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検証北朝鮮・延坪島ヨンピョンド事件 №9 <11月30日~12月1日>

2011-01-04 | Weblog
11月30日
<韓国>来年度国防予算について、延坪島の軍備増強などのため政府提出案の31兆2795億ウォン(約2兆2800億円)より2.8%増額し可決した。
 12月6日~12日、北朝鮮に近い黄海上などで韓国軍は海上射撃訓練を計画していることが明らかになった。延坪島西方の大青島デチョンド南西部など、黄海や日本海の29カ所に、韓国国立海洋調査院は航行警報を出した。当該海域には仁川に近い徳積島トクチョクドなど、北方限界線NLLに近い地域もある。しかし、朝鮮半島に最も近い延坪島と白翎島ペクリョンドの海上射撃区域は入っていない。
 しかし韓国軍当局者は「延坪島でも早期に射撃訓練を実施する予定だ」<聯合ニュース>

<国連>国連安保理は北朝鮮のウラン濃縮施設についての非公式会議が開かれた。米国などが非難声明の取りまとめを主張したが、中国の反対で先送りになった。砲撃事件についても議長声明の採択についても同様に難航した。「中国はいかなる声明にも反対している」と外交筋。

<英国>ガーディアン紙は、中国政府は長期的には韓国主導の朝鮮半島統一を支持していると報じた。ウィキリークスが公開した米外交文書に「米韓間で韓国主導の南北統一」を協議していたという情報があったことを踏まえ、中国政府関係者への取材で確認された。中国政府関係者は「長期的ゴールとして、北京は常に平和的な統一を支持する。北朝鮮との友情は維持したいが、振り回されたくはない」。中国にとっては、緩衝国として、なくてはならない存在であった北朝鮮のはずである。しかし現実は、韓国主導による南北統一を模索し、中国は暗に賛同し、さらには水面下で密かに協力していたのではないか。これからは、北朝鮮を守るという中国の国策は、国内からの反発を受ける可能性が強い。中国にとって、北朝鮮が存在しない方が、むしろ極東での軍事的イニシアティブを獲得しやすいとも言えそうだ。
私見だが、もうひとつの選択肢としては、中国が北京にかくまっている金正日の長男・信男をたて、平壌の金父子に政権を、強制的に長男に移譲させるという奇手も考えられる。中国傀儡政権の誕生である。これらの策を、もちろん米国も承知しているに違いない。今回の砲撃事件は、それら陰謀の情報を、今年2月に察知した北朝鮮・金正日と正恩の反撃であった可能性がある。哨戒艦沈没事件もその一環であろう。そのように考えれば、ウィキリークスが果たした、隠されていた真実露呈の成果は、余りあるほどに巨大なのではなかろうか。北朝鮮がさらに軍事的行動に出れば、中国にとって北朝鮮の緩衝国として使命は終了し、中国と米韓、三国によって金王朝は実質的に瓦解させられるであろう。南北統一、あるいは金信男擁立による南北協調に向かうのではないか。

<日本>防衛省関係者は「砲撃以来、30日現在に至るまで、防衛会議も作戦会議も、一度も開かれていない。はっきり言って、異常であり、たるんでいる。信じられない」
 外務省の斎木昭隆アジア大洋州局長が、北京を日帰りで訪問した。6カ国協議の首席代表による会議を12月上旬に開くという中国提案に否定的見解を伝えた。

<中国>北朝鮮の金総書記側近のひとり、崔泰福労働党書記・最高人民会議議長と金永日党国際部長(元6カ国協議首席代表)が、相次いで平壌から空路、北京入りした。特に崔は序列が10位と高く、中国と太いパイプを持つ。中国側の国賓の通行証を掲げた高級リムジンに乗り込み、中国側要人と会談。中国の呉邦国全国人民会議議長の招待で、12月4日まで5日間の滞在予定。胡錦濤国家主席らと会談が予定されている。砲撃事件後、北朝鮮要人の訪中ははじめて。金総書記のメッセージを伝えるのであろう。中国側は黄海での米韓軍事演習に反発を強める北朝鮮に同調するとともに、友好が目的の崔訪問中に北が挑発的行為に出ることは、中国のメンツを傷つけ、今後の中朝関係にも悪影響を及ぼすことになる。北の崔訪中は、北朝鮮を滞在期間中に暴発させない抑止力になるという見方がある。中国政府は戴秉国国務委員の訪朝の調整に入った。

 中朝関係筋によると、中国は2009年夏、北朝鮮政策の軸足を融和に改める内部決定を下した。2009年10月の温家宝首相の訪朝はその表れだという。北の核問題の進展より、中国は北朝鮮の安定を優先する。北朝鮮が崩壊し、膨大な数の難民が中国に流入し、また半島が親米地帯になることを阻止しようという考えである。このような事態に陥れば、混乱に乗じて中国人民、雲霞のごとき貧民を主体にした反乱が起き、共産党政権を一気に転覆させる可能性もある。非常事態が起きれば、核や通常武器管理の無政府状態が危ぶまれる。
 共産党の王家瑞中央対外連絡部長が、米国とカナダを訪問するために北京を出発した。訪米は民主、共和両党との政党間協議が目的だが、北朝鮮の砲撃後の中国高官の訪米ははじめてである。王家瑞は金総書記とも親密なことから、問題解決の進展が期待される。
 日本外務省の斎木昭隆アジア大洋州局長(6カ国協議日本首席代表)が急きょ訪中。北京の外務省で武朝鮮半島問題特別代表と協議。斎木は6カ国会合は適当でないとの見解を伝えた。「今このタイミングで開くことは必ずしも適当ではない」。斎木の訪北京は昼ごろで日帰りの行程であったが、12月7日にワシントンで開催の日米韓3カ国外相会議に備え、中国の真意確認のためと言われている。
 中国政府は戴秉国・国務委員(副首相級・外交政策統括)を、12月1日に北朝鮮に派遣する方向で最終調整に入った。戴は金総書記とのパイプが太く、訪朝中に会談する可能性がある。武大偉・朝鮮半島問題特別代表も同行予定。
 
<北朝鮮>朝鮮労働党機関紙「労働新聞」によると、軽水炉発電所の建設を進めており、「数千台規模の遠心分離機を備えたウラン濃縮分離機を備えたウラン濃縮工場が稼働している」。「核エネルギー開発事業は今後もさらに積極的に行われる」とも表明した。

<米国>米軍は軍事演習中の原子力空母ジョージ・ワシントンを、各国メディアに公開。戦闘指揮所の見学も許可した。飛行甲板では戦闘機が約2分おきに発艦していた。

○国家崩壊による難民を描いたアンドレ・モーロワは、「それは驚くべき光景であった。道路という道路は避難民の群で溢れている。…国境に源を発したこの潮のように押し寄せる避難民が、他の町まで来ると、たちまちそれは伝染して、更に大きな群となって潰走する。…絶望の深淵に投げ込まれて、すべての人々は混乱し、ゴールなき潰走を続けたのである。…町は何処も此処も避難民で溢れていた。駅の周囲には、トランクに腰を掛けたり、あるいは歩道に、あるいは車道に、避難民の群れは、鈍い生気の失せた大きな大きな人間の絨毯を作っていた。料理店の食糧室、パン屋の窯、八百屋の戸棚、すべてを食べつくした避難民である。それはさながら屍体の腐肉を綺麗に食べつくすという、あの死肉虫のようであった」。何とこの描写は1940年、ナチスドイツに敗れたフランス国内を描いたものである。軍用車両、戦車などは、自国民の大群に阻まれて前線に向かえない。<アンドレ・モーロワ著『フランス敗れたり』高橋彌一郎訳 新版 ウェッジ刊>

<フランス>リヨンの国際刑事警察機構インターポールは、ウィキリークスの創設者、ジュリアン・アサンジをスウェーデン当局の要請に基づき国際手配した。

<ウィキリークス>2009年9月の米公電。日米が共同開発しているミサイル防衛MDの海上配備型迎撃ミサイルSM3ブロック2Aについて、欧州への売却を可能とするため、米政府が日本政府に武器輸出三原則の見直しを求めていた。


12月1日
<韓国>米韓両軍による黄海南西部、群山沖での演習合同軍事演習を終了。「いかなる挑発も殲滅する強い意志を固めた」と韓国軍は強調した。
 金星煥外交通商相は欧州安保協力機構OSCEの会合出席のためカザフスタンに飛び、クリントン米国務長官と砲撃後、はじめての会談。中国提案の6カ国高官会合を巡り、「北朝鮮が挑発的行為に責任ある態度を見せ、非核化進展へ具体的な行動が必要」との見解で一致した。
 李大統領政権は対北朝鮮政策の根本的な見直しに着手した。南北対話を中断し、人道支援も完全に停止。南北協力事業である開城工業団地が全面閉鎖の方向。金大中・蘆武鉉両政権の対北朝鮮「包容政策」を完全な失敗と判断。
 韓国国防研究院の白承周・安保戦略研究センター長は「いまの北朝鮮に中国の支持は絶対に欠かせず、中国による6カ国高官会合の提案には、従うのではないか。核問題の解決には、6カ国協議の枠組みが必要だ」

<米国>スタインバーク米国務副長官が、中国共産党の王家瑞対外連絡部長と国務省で会談。王部長は政党間交流の目的で、米国とカナダを歴訪している。
 マレン統合参謀本部会議長は、年内にも再実施を検討している黄海での米韓合同軍事演習に、再び空母を派遣する意向を表明。中国に対し、北朝鮮に自制を促す具体的行動を強く求めた。「中国は北朝鮮の危険性を除去できる唯一の国だ」
 国防総省のラパン副報道官は「在韓米軍を増強する予定はない」と明言した。

<中国>中国国営「新華社通信」によると、楊外相は砲撃事件について「中国は責任ある大国として、韓国と北朝鮮のどちら側にも付かない」。また楊外相は、中国国際問題研究所のフォーラムで演説し「中国は、事件自体の是非曲直―物事の善悪や正しさ―に従い、自身の立場を決定する」とした。中国が北朝鮮に圧力を加えない姿勢を、鮮明に打ち出したものと解釈される。<musilog/nusilog>
 楊外相は再演習を検討している米韓に対して「当面の急務は緊張情勢のエスカレート防止であり、火に油を注ぐようなことを、再びすべきではない」と釘を刺した。
 先の米韓合同演習にあわせ、中国も軍事訓練を実施した。有事を想定しての備えだが、北朝鮮がこの期間中に挑発的な行為を取らないように、けん制する狙いも感じられる。

○小此木政夫・慶大教授は「金正日総書記は体調が悪化しているとされ、後継の体制が固まらない間に死去すれば、北朝鮮国内は混乱しかねない。北朝鮮は米国との交渉を急いでいる」

<北朝鮮>朝鮮人民軍で権勢を強める李英浩軍参謀総長・労働党政治局常任委員は「もう米国との対話は必要ない。金総書記は『力には力を』と決心し、報復と激しい怒りが続くだろう」

<カザフスタン>欧州安保協力機構OSCE首脳会議が、1日2日の日程で、カザフスタンの首都アスタナで開かれた。参加56カ国からは相次いで、北朝鮮の砲撃について非難が続出した。中国は参加メンバーでないため。出席国から異論は出なかった。協力パートナー国として韓国からは金星煥外交通商相、日本から出席した伴野豊外務副大臣も、強く北朝鮮を非難した。

<2011年1月4日 まだ続く>

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検証北朝鮮・延坪島ヨンピョンド事件 №8 <11月27日~29日>

2011-01-03 | Weblog
11月27日
<韓国>朝。砲撃で犠牲になった韓国軍兵士、ソジョンウ兵長22歳と文光旭2等兵20歳の葬儀がソウル近郊、京畿道城南市の国軍首都病院で行われた金滉植首相ら500人が参列。ユナクチュン海兵隊司令官は弔辞で「奇襲攻撃の対価がどれほど恐ろしいものかを思い知らせ、後悔させるため、100倍、1000倍で復讐をする」と語った。日本の武藤正敏駐韓大使らも参席した。
 韓国の聯合ニュースによると、韓国政府は北朝鮮を「主敵」とする概念を復活させることの検討をはじめた。しかしその後、「敵」との記載に落ち着く。
 李大統領は緊急安保点検会議を招集し、米韓「合同演習の期間に北朝鮮が突発行動を起こす可能性がある。連合戦力の協力を通じ、完璧に備えよ」と指示した。
 米韓合同参謀本部は軍事演習の緊張をあおるのを避けるため「防御的性格の演習であり、延坪島砲撃事件の発生以前から計画されていた」と強調した。
 韓国軍合同参謀本部は翌28日開始の米韓合同軍事演習について「北に対する抑止力強化などが目的だ」。演習中に北から攻撃を受けた場合の態勢についても「すべての可能性に備えて訓練する」と語った。
韓国国立海洋調査院は、韓国海軍からの演習通知を受け、付近の民間船舶に対し「航行警報」を出した。演習予定水域は、北緯34度30分~36度。東経124度~125度42分。韓国の北方限界線NLLから160~200キロ南方で、西は中国・山東半島から約170キロ付近まで。
 韓国外交通商省は27日の朝、本日午後に載秉国国務委員がソウルを訪れると中国側から知らされた。外交通商省幹部は「米韓軍事演習は戴氏の訪韓に、一切影響されない」と語った。
 中国の載秉国国務委員(副首相級)が午後、ソウルを訪れ、金星煥外交通商相と会談した。武大偉・朝鮮半島問題特別代表(6カ国協議議長役)も同行。当初は26日27日に楊潔箎外相が訪韓する予定だったが、砲撃戦後に中国側が突然に延期した。韓国では中国の対応に批判が出ていた。戴は、半島情勢についての意見を交換し、軍事演習などを巡り、抑制的な対応を強く求めた。

<北朝鮮>国営朝鮮中央通信は「敵の砲弾はわれわれの砲陣地から遠く離れた民家周辺にまで無差別に落ちた」。また遺憾の意をはじめて表明。「民間人死傷者が発生したのが事実なら、極めて遺憾だと言わざるを得ない」と、北朝鮮メディアとしてはじめて民間人の被害について触れた。しかしその責任は「軍事施設内に民間人を配置して『人間の盾』を作った敵の非人間的行為にある」と韓国側を非難した。砲撃で死亡した民間人2名は、確かに軍施設内で官舎の新築工事に当たっていた。
 米韓合同軍事演習が明日11月28日から12月1日まで黄海で実施されるが、北朝鮮の朝鮮中央通信は「米国が空母を黄海に進入させる場合、その後の悪い結末は誰も予測することができない」と警告した。

<日本>午後。前原外相は中国の楊外相と、砲撃事件をめぐり電話で協議した。楊は明日から実施の合同軍事演習について「中国のEEZ内での演習に反対する」。前原は、事態の拡大防止に向け、北朝鮮への中国の影響力行使を要請。砲撃事件後、日中外相の協議ははじめて。
 菅内閣は米韓合同軍事演習開始を明日に控え、全閣僚に対し都内での待機態勢を指示した。閣僚らは緊急事態が発生した場合、仙谷官房長官の指示から、1時間以内に担当省庁に駆けつける態勢を取る。やむを得ず都内から離れる場合は、代理の副大臣か政務官が都内に残ることとした。

<米国>ニューヨークタイムズは、中国に期待した北朝鮮への圧力が裏切られたと指摘。そのうえで、米韓の演習は北朝鮮の新たな攻撃を阻止する目的だけでなく、「北朝鮮を牽制しなければ周辺海域で米軍の存在感が増すことになるという中国に対する警告」との見方を示した。


11月28日
<韓国>朝6時過ぎ。米韓合同軍事演習はじまる。参加人員は米軍6400人、韓国軍900人、合計7300人。
米海軍横須賀基地配備の原子力空母ジョージ・ワシントンは、全長約333メートル、幅約77メートル、約9万7千トン。航空機70機余を通常は搭載し、乗員は航空要員を含め約5800人。
 米空軍からはFA18戦闘攻撃機など。米イージス艦カウペンス、イージス駆逐艦フィッツジェラルドなど5隻。
 韓国軍はF16、F15K戦闘機、対潜哨戒機P3C。イージス艦の世宗大王、駆逐艦KDX-Ⅱなど計6隻。
 韓国のテレビ局は北朝鮮の攻撃があった場合に備え、ソウル市内には緊急避難設備が約3900カ所あると紹介した。
 韓国メディアは一斉に「全軍が準戦時体制だ」と報じた。FA18が出撃すれば、演習海上から10分以内に平壌に到着する。

 10時ころ。中国の安保外交戦略を事実上動かすといわれている戴秉国・国務委員(副首相級)が、ソウルで李大統領と2時間会合。李大統領は6カ国協議再開について「論議する時期ではない」。また「中国は国際的地位にふさわしい役割を果たし、公正な責任ある姿勢で寄与してほしい」と述べた。会談は12時15分に終了。載は胡国家主席の事実上の特使として訪韓したが、「朝鮮半島の平和と安定を損なういかなる行為にも反対する」「状況が悪化しないよう韓国と一緒に努力する」。「6カ国協議首席代表による砲撃問題の討議」提案を発表するにとどまった。
 13時32分。韓国青瓦台・大統領府報道官が、中韓会談に関しての記者会見。6カ国協議再開について「非常に慎重に検討しなければならない」「南北対話をはじめ6カ国協議の枠内の2国間、多国間で話しあうべきだ」などと否定的な見解を示した。
 15時5分。韓国軍が南北軍事境界線付近の非武装地帯DMZの韓国側に野砲一発を誤って発射。
 16時40分。韓国軍が野砲の誤発射を北朝鮮に通報。
○ソウル滞在中の川瀬俊治(ジャーナリストネット)はわたし片瀬あてのメールで「日本では騒いでいるかもしれませんが、韓国民はいたって冷静です。戦争を北が起こせば、北はもう滅びるしかないからです。金正日から正恩への代替わりにあたって、金日成以来の『恒例の爆弾』だそうです。しかし困った政権ですね」

<北朝鮮>15時40分。北朝鮮中央通信が、合同演習を非難する朝鮮平和擁護全国民族委員会の声明を報道。「無謀な戦争演習だ」と非難した。

<中国>現地13時(日本14時)、中国外務省は重要情報を発表する記者会見を、16時30分から開くと急きょ通知した。同省が緊急記者会見を開くのは極めて異例である。
 記者会見直前の16時15分。武大偉・朝鮮半島問題特別代表は、中国外務省に丹羽宇一郎・駐中国大使を呼んだ。発表前に、日本に内容を説明するためである。武は韓国での李大統領と戴国務委員との会談を終えて、韓国から北京に戻ったばかりだった。丹羽は武に「何を話したのですか」と質問したが、武は「いずれきちんと発表すると思います」と、そっけなかった。
 16時40分(日本17時40分)。武大偉は外務省記者会見場で、北朝鮮問題をめぐる6カ国協議の首席代表による緊急会合の12月上旬に北京での開催を呼びかけた。韓国人記者は、今年3月の「韓国哨戒艦沈没に続く、延坪島への砲撃。韓国国民が提案を受け入れられるわけがない」。日本の外交筋は、中国が「何かしないといけないという苦境に追い込まれる中で、苦しまぎれの切り札では。突然6カ国の会合といわれても何を話すのか」。中国外交官は「大きな期待はしていないが、取りあえず6カ国が集まり、事態のエスカレートという最悪の事態を回避することに意味がある」。ロシアは中国の取り組みに、基本的に賛成している。なお首席代表会合は、2008年12月以降、開かれていない。
 中国は王家瑞・共産党対外連絡部長を近く北朝鮮に派遣する。ウラン濃縮施設の表面化や、韓国延坪島砲撃に関する中国政府の立場を伝え、6カ国会合参加を説得する役回りといわれている。
 夜。外交政策を統括する戴秉国国務委員は、米クリントン国務長官と電話で協議。戴は「6カ国協議を通じて問題解決すべきだ」「中米が建設的な役割を積極的に発揮していくべきだ」とも提唱。クリントンは、米中は共通利益を有しており、相互協力は極めて重要としたうえで、密接な話し合いを続けることも互いに確認した。
<香港>英字紙「サウスチャイナ・モーニング・ポスト」電子版は、「合同軍事演習は、北京に対する明確なメッセージ」と報じた。中国が「排他的経済水域EEZ内の軍事行動に反対する」としたことを挙げ、米韓が「今後も黄海への海軍のアクセスを確保する決意」の表れなどと指摘した。

<日本>韓国在住の日本人は約3万人。政府筋は、数万人の旅行者と合わせ、邦人退避の場合、基本的に民間航空機や船舶を利用するが、状況次第で自衛隊の活用も検討するとする。朝鮮半島危機が拡大すれば「過去最大の邦人救出劇」になると言っている。

<ウィキリークス>ウィキリークスによる米外交公電の流出がはじまる。


11月29日
<ウィキリークス>NYタイムズ紙に公開されたウィキリークスの文書・公電によると、ソウル駐在のアメリカ大使が今年2月、北朝鮮が内部崩壊し、南北が統一した際の対応について韓国と協議した。統一後の朝鮮半島がアメリカと同盟関係になった場合、中国が持つ懸念に対しては、経済的な側面で対応すればよいと韓国政府高官は考えている。ホワイトハウスは、外交政策に甚大な影響を及ぼす可能性があるなどと、警戒している。
 この情報と関連して。韓国の李大統領は北朝鮮が崩壊した際の有事計画を、中国の胡国家主席に尋ねた。李の質問に対して、胡は「聞こえないふりをしていた」
 ウィキリークス情報によると、数年前のことだが、アメリカの外交官が中国側に「北朝鮮は弾道ミサイルの部品を民間航空機に積み、中国経由でイランに輸出している」と通報していた。それでも中国側は「何も対応しなかった」
 別のウィキリークス情報。ロシアの安全保障会議のメンバーは、ワシントンで米国務省高官に、イランの中距離弾道ミサイル「シャハブ3」について、最新の分析を伝えている。ロシア連邦保安局FSBの高官は、イランと北朝鮮が軍事用の「計測装置、高精度増幅器、圧力計、複合材料、新しいミサイルのエンジンを作る技術」などを購入する隠れ蓑のしている企業を突き止めたと報告した。米ロ関係は、一般に思われている以上に、はるかにリセットしている。
 ウィキリークス情報。中国の何亜非外務次官(当時)は、北朝鮮は米政府の関心を引きたがる「駄々っ子」のようなもので、「好きとは言えないかもしれないが…隣人だ」と述べた。韓国哨戒艦沈没事件以前、2009年の発言か。
 シンガポールのリー・クワンユー顧問相は2009年5月、スタインバーグ米国務副長官との会談で、「中国は北朝鮮が崩壊するより、核兵器を保有したまま、存続している方がましと考えている」と述べた。緩衝国として北が存続することを中国は望んでいるとした。
 韓国の玄仁沢統一相は2009年7月、キャンベル米国務次官補(東アジア・太平洋担当)との会談で、金総書記が2015年を超えて生存できないとの見方を示した。
○「中国は長年にわたり、北朝鮮を強力に支援してきたが、その絶大な影響力を行使することには慎重な姿勢を見せてきた。しかし中国側にも北朝鮮を『駄々っ子』と呼ぶ人がいて、北朝鮮を世界平和への脅威と感じている人もいるらしい」リチャード・ハース米外交評議会会長<ニューズウィーク2010年12月15日付>

<北朝鮮>労働党機関紙「労働新聞」は米韓合同軍事演習について、「全面戦争勃発へと導くための意図的で計画的な策動だ」と警告。「わが方は戦争を望みはしないが、決して恐れない」と警告。「挑発を仕掛けてくるなら躊躇なく迎え撃つ」。中国が提案した6カ国の緊急会合の開催について、北朝鮮メディアはこれまで一切、報じていない。

<中国>米ボズワース北朝鮮政策特別代表が北京に到着。

<国連>国連安全保障理事会が、北朝鮮による韓国・延坪島砲撃に絡んで、初の非公式会合を開催。米英などが北朝鮮を非難。米韓は砲撃を非難する議長声明の採択などを探るが、拒否権を持つ中国は依然、北朝鮮への強い措置には慎重である。中国は6カ国の対話を盾に、安保理で強硬論が広がることに歯止めをかける戦術も視野に入れている。
 韓国は哨戒艦沈没事件で、中国の慎重姿勢から北朝鮮への非難を打ち出せなかった安保理協議への反省から、韓国は安保理への問題提起に慎重である。

<韓国>午前10時。李大統領は砲撃に関する国民向け特別談話を発表。「武力挑発には応分の対価を支払わせる。北朝鮮が軍事的な冒険主義や核の放棄を行うことに期待するのは難しい」。大統領の演説要旨は以下の通り。
 ①国民の生命と財産を守れなかった責任を痛感し、国民の失望の大きさを理解する。
 ②北朝鮮の今回の武力挑発は今までと次元が違う。
 ③北朝鮮が軍事的冒険主義と核を放棄することは期待できない。
 ④北朝鮮の挑発には必ず応分の代価を払ってもらう。
 ⑤国際社会は韓国を支持している。
 ⑥軍強化の国防改革を強力に推進する。
 ⑦(南北境界水域の)西島五島はいかなる挑発からも堅持する。

 韓国外交通商省の閔東石第2次官は国会答弁で、6カ国高官会合について「いま開く条件は全くない」。対話の前提条件について、北朝鮮の「明確な謝罪と再発防止の約束が先で、非核化の真実味を見せなければならない」

 済州島南方沖で中国漁船が棒で殴るなどの暴力をふるい、韓国海洋警察官6人が負傷した。漁船は逃走。同様の事件が発生するたびに、韓国側は中国政府に漁船の取り締まり対策を要請している。

 韓国中東部の慶尚北道・安東アンドンで今秋はじめて口蹄疫の豚が確認された。その後、12月15日には200キロほども離れたソウルの北、京畿道楊州で。22日には韓国北東部の江原道平昌。28日には同国中央部の忠清北道忠州などに拡散。徹底した防疫対策のなか、このように広範囲に広がるのは異常である。12月28日現在、発生場所は計60カ所、殺処分された牛豚は計47万頭以上に上る。私見だが、この伝染拡大には、人為的な原因を感じる。

<米国>ライス国連大使は記者団に「米国は北朝鮮による非道な行為を強く非難する」。国連での会合は、北朝鮮に核・弾道ミサイル開発を禁じた制裁決議の履行状況を討議するのが主目的であったが、ライスは安保理メンバー国と調整を続ける構えをみせた。
 ギブス米大統領報道官は記者会見で、中国が提案した6カ国協議首席代表による緊急会合について、北朝鮮が挑発的行動をやめ、非核化に真剣な態度を示すことが先決だと強調。現時点での開催は、北朝鮮による「PR活動」に過ぎず、「米国も他国も関心がない」。別の米政府高官は、北朝鮮が外交力を利用しようとしているとの認識を示した。

<日米韓>日米韓3カ国外相会談をワシントンで12月7日に開く方向で、最終調整に入った。

<日韓>12月中旬の李明博大統領来日を調整中と、菅首相はいう。私見だが、この非常事態に隣国の大統領を文化的目的で招くことは、当然困難であり非常識であろう。その後に、大統領の訪日が無期延期になったのは当たり前のこと。

<ロシア>外務省のボロダフキン外務次官は、駐ロ韓国大使と会談し「韓国に対する砲撃は非難される」と、初めて北朝鮮を名指しで批判した。ロシア外務省が声明で発表。

<2011年1月3日 まだ続けますが、少しバテ気味です>
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<北朝鮮と東アジアを考えるための本や評論> №1

2011-01-02 | Weblog
 近ごろ、北朝鮮をはじめとした東アジア問題に、ドブッと浸かってしまいました。時事や政治や外交など、まったくのシロウトのわたしです。そろそろ抜け出ようと思うのですが、なかなか体と頭が動きません。それなら、えぃッ!もう少し、気が済むまで浸ってみよう。そう決めました。連載「現在ing」記録史の合間に、読んだ本や評論などを紹介します。わたしには東アジアの難局を語るだけの知識も見識もありません。先達の見解から考えてみたいと思っています。
 
 今回は、凶悪な中国漁船について考えてみます。9月7日に起きた尖閣諸島での体当たり事件、映像をみたときだれもが驚いたはずです。あのビデオひとつで、わたしの中国観は一変してしまいました。ショックは何も日本だけではありません。世界中の良識ある膨大な数のひとたちが見たのです。そして「なぜ?」「中国を信用してはいけない」
 国際世論はそのように判断してしまったようです。中国は体当たり事件で、国家の信用という大切なものを一瞬にして失ってしまいました。海保の一職員は、世界に意識革命を起こしたといっても過言ではありません。活字のウィキリークスと同等、あるいは映像だけにそれ以上のショックを数億の人類に与えたはずです。
 いま継続している連載「検証北朝鮮・延坪島事件」でも間もなく記しますが、砲撃事件以降に2度、中国漁船は同様の事件を韓国に対して起こしています。先取りで掲載します。

 11月29日、黄海での米韓合同軍事演習が前日から始まった。北朝鮮は29日、「全面戦争勃発へと導くための意図的で計画的な策動だ」と、韓国に警告。北朝鮮は「わが方は戦争を望みはしないが、決して恐れない」「挑発を仕掛けてくるなら躊躇なく迎え撃つ」
 同日、韓国済州島南方沖海上で中国漁船員が棒で殴るなどの暴力をふるい、韓国海洋警察官6人が負傷した。そして漁船は逃走。同様の事件が発生するたびに、韓国側は中国政府に漁船の取り締まり対策を要請している。

 そして12月18日。韓国軍は延坪島で21日まで訓練を開始。内1日は射撃訓練を実施すると発表した。初日の18日、悪天候「視界不良」を理由に射撃は見送った。周辺の天候は終日良好で、波も穏やかだった。射撃は20日か21日に実施する見通しと言う。
 北朝鮮からの抗議について、韓国政府筋は「人殺しが『自分は被害者だ』と言うような妄言だ」と憤り、韓国軍当局者は「21日までに必ず訓練を行う」、「北に譲歩すれば、この水域での訓練が今後難しくなるばかりか、自国の『領海』とする北の主張を認めたとの誤解を国際社会に与えかねない」と強調した。
 そして同日13時ころ、韓国中西部の黄海、於青島オチョンドの北西約130キロ。韓国排他的経済水域EEZ内で、中国漁船約50隻が不法に操業していた。取り締まりに当たっていた海洋警察の警備艦3000t級が停戦命令を出した。そして海洋警察官4名が、小型ボートから漁船に乗り込もうとしたところ、漁民は鉄パイプなどで暴行。韓国側4人全員が重軽傷を受け、警備艦に引き返した。すると漁船1隻約60tは警備艦に2度体当たりし、転覆してしまった。海上に放り出された乗員10名の内、4人は中国漁船が救助した。5名は韓国艦が救助したが内1名は死亡。韓国側は4人を拘束。また警備船6隻とヘリコプター4機を投入して、もうひとりを探したが行方不明である。
 黄海の韓国EEZ内では、中国漁船が不法操業を繰り返し、取り締まりに当たる海洋警察官に漁民らが暴行する事例が目立ち、問題になっていた。しかし韓国外交通商省は漁船乗務員に死者と行方不明者が出たことに関し、在韓中国大使館に遺憾の意を伝えた。韓国政府は今回の事態が、中国との外交問題に発展するのを避けたい意向である。撮影されたビデオは公開されず、拘束した4人もすぐに釈放された。
 まるで尖閣諸島事件を思わせるような光景です。さらにこの暴挙では、中国漁民に2名の死者が出たのです。一体なぜ、このように緊迫した日を選んで、攻撃を仕掛けてくるのでしょうか。

 雑誌『正論』2011年2月号(産経新聞社)に用田和仁「国民よ、中国の脅威を直視せよ」が掲載されています。用田氏は昨年まで、陸上自衛隊・西部方面総監だった方です。以下、ダイジェストで引用します。
 軍事的に見るならば、海上における南シナ海や尖閣の動きの中で海上民兵といわれ、平時は漁民だがいざとなったら軍人として正規軍の渡海・上陸作戦を支援する「多数の漁船群」に着目しなければならない。これらと旧軍艦等の監視船、そして現役の軍艦が役割を分担して行動している。ちなみに海上民兵は、小型漁船の二百から二百五十隻で一個歩兵師団を運ぶ(中国軍事雑誌「艦船知識」2002年)といわれているので、それらが島嶼へ侵攻する場合の先導とし、まず港湾に殺到して来る。尖閣のまわりでは、すでに八月から二百七十隻の漁船が操業し、その内の約七十隻が日本領海にいた。見方を変えると尖閣諸島は、約一個師団の海上民兵に長く包囲されていたことになる。漁民の保護、すなわち国民の保護という大義名分で戦争に及ぶのは、古典的な常套手段である。このやり方でいくと、南西諸島まで戦火を拡大することは、いとも簡単なことである。中国は「人海戦術」を得意とする。

 中国海軍の近代化、ハイテク化は驚くほどのスピードで進行しています。いま建造している、はじめての空母2隻の完成も近い。高性能潜水艦の保有量の多さにも驚く。ハワイ以西の西太平洋を制覇しようとしているのが、いまの中国です。さらにはインド洋も、石油のライフラインとしている。米国と並ぶ海洋帝国の誕生は決して遠い未来の話しではないようです。
 外国の違法漁民を取り締まることは国際法上、対処に困難がつきまとうという。彼の国の狙いは、きっとそこにあるのでしょう。末端ではあるが、彼ら漁民たちは中国海軍に組み込まれた海兵であることを、わたしたちは知らねばならないようです。
 中国は米国に、こう言いました。「ハワイを境に西太平洋は中国に、東太平洋は米国の管轄に」。夢物語ではありません。わたしたちは太平楽なのではないでしょうか。
<2011年1月2日>
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検証北朝鮮・延坪島ヨンピョンド事件 №7 <2010年11月25日~26日>

2011-01-01 | Weblog
 元旦通信です。本年がすばらしい、平和な年になりますよう、祈念しつつの続編です。11月25日と26日の記録を綴ります。

11月25日
<北朝鮮>韓国聯合ニュースによると、北朝鮮の砲撃について「朝鮮西海が紛争水域となったのは、米国がわが領海に勝手に設けた北方限界線NLLのせいだ」。軍事的挑発をすれば、ためらわず2次3次の物理的報復打撃を加えると警告。
 朝鮮中央通信によると、朝鮮人民軍板門店代表部は、国連軍司令部の将官級会談開催の提案(24日に国連軍司令部が提案)を拒否する通知文で、延坪島砲撃の「事態は休戦協定の違反者が韓国であり、黄海紛争の火種をつけたのは米国だという事実を示している」。米軍が朝鮮半島の緊張緩和を望むならば、韓国がNLL固守のため海上侵犯や砲撃など、軍事的挑発を行えないようにしなければならないと強調した。また延坪島砲撃の当日、韓国軍が黄海で実施した射撃訓練は「事前に計画された軍事的挑発で、事実上の戦争行為だ。わが軍隊の自衛的措置に従い、懲罰を受けることになったものだ」と主張した。
 平壌放送は米韓合同軍事演習について「交戦狂の無謀な行為によって朝鮮半島情勢は戦争の瀬戸際へと突き進んでいる」と非難した。
 韓国のラジオ自由アジアは「北朝鮮は23日、全軍に非常警戒態勢2号を発令していた」と報じた。別の情報でも北朝鮮は23日に、非常警戒態勢をとるよう命じる「総参謀部電信指示文」を全軍に下達し、全部隊に陣地の死守と全軍人の帰隊を指示していた。
 「労働新聞」によると、金総書記が中国の無償援助で建設された平安南道のガラス工場を25日に視察し、中朝の友好を力説した。三男の金正恩も同行。

<韓国>李明博大統領は、今年3月の哨戒艦沈没事件の責任を取って提出されていた金泰栄国防相の辞表を受理した。哨戒艇沈没、そして今回の砲撃事件。一連の事態の責任を取った形だが、砲撃事件に対する対応のあまさを批判されての、実質的更迭である。
 韓国軍の軍装備が貧弱であると報道されたが、黄海沿岸で北朝鮮を直接攻撃できるのは、K9自走砲(射程40キロ)と155ミリ牽引砲(同30キロ)ぐらいで、延坪島と白翎島に計20門ほどが配備されている。
 一方、北朝鮮は130ミリ野砲(射程27キロ)や152ミリ多連装砲(同27キロ)、170ミリ曲射砲(同27キロ)、170キロ曲射砲(同54キロ)など千門余を黄海沿岸に配備している。その差はあまりにも大きい。
 李大統領は、最前線への兵力増強を指示。北の武力挑発への抑止力を強める方向での「交戦規則」(戦況ごとに軍事力使用の具体的な制約を定めている規則)の変更などを決定した。緊急関係閣僚会議では「再度の挑発に備え、緊張を緩めるな」と指示した。
 李大統領は関係閣僚を集めた緊急の「安保・経済点検会議」を開き、延坪島周辺の島嶼の兵器配備や再攻撃対策の強化を決めた。
 韓国軍合同参謀本部は、黄海基地に精密誘導武器などを導入するために560億ウォン(約41億円)の予算が必要だとした。2006年に決まった同島などを含む周辺地域の兵力縮小計画を撤回し、逆に増強する方針を決定した。
 韓国国会は北朝鮮が加えた砲弾攻撃を糾弾し、韓国政府に断固たる対応を促す決議を賛成多数で可決。北に謝罪と再発防止を強く求めた。なお出席議員271人のうち反対は進歩新党の趙承洙議員ひとり。棄権は9人。趙議員は「決議は軍事的対応だけを強調しており、戦争拡大防止のために声を出す必要がある」としたが、集中砲火を浴びた。
 金外交通商相はクリントン米国務長官と電話会談し、韓国西方の黄海で28日から予定されている米韓同盟の堅固さを示すものだとし、北朝鮮に対する明確なメッセージになるとの認識で一致した。
 外交通商省報道官は、砲撃への外交的対応措置として「国連だけを対象に考える必要はない」と述べ、安保理すなわち拒否権を発動する中国に対する警戒感から「国連安全保障理事会に問題提起するかどうかは慎重に検討していく」という考えを示した。
 韓国外交通商省によると、26日27日に予定されていた中国の楊潔箎外相の訪韓は、中国側の日程上の理由で延期になった。
 午後、延坪島で犠牲になった民間人作業員、ふたりの遺体が同国北西部の仁川市に移送された。同市内の病院に安置される。

○ソウルで開催された対北政策セミナーで「北の指導部は、飢えた国民を食べさせるようにしろと我々に要求し、その一方で武器で我々を脅迫する。いつまで我々はやられ続けなければならないのか」
○「中国嫌い」とも言われながら、今年2度も訪中した金総書記について趙明哲は「いまは中国けん制より、協力の方が得と考えている」。趙は元金日成総合大学教授。現在は韓国の対外経済研究院研究員である。

<中国>外務省の洪磊副報道官は、28日からの米韓合同軍事演習に米軍空母が派遣されることに対し懸念を表明。「関係各国が地域の平和と安定のために努めることを望む。関連の報道に注意しており、関心を払っている」と述べるにとどめた。かつて7月の日米合同軍事演習での空母派遣に対し「断固として反対」と強く反対したことと比較して、非難の表現は大幅に後退している。中国は黄海での外国軍の演習には以前から、断固反対の立場だが、明言すれば、演習に対する報復を警告する北朝鮮に支持を与え、事態をさらにエスカレートさせかねないという判断が働いたとみられる。
 中国の外交専門家は今回の中国の対応は「北朝鮮非難を避け続けた、韓国哨戒艦沈没の安保理と同様の結論になるであろう」と指摘した。緊迫化の回避には「中国がアクションを起こさないのが賢明である」とした。


<米国>オバマ大統領は「北朝鮮がウラン濃縮や韓国砲撃といった行動に出るなら、中国の権益を損ねる方法で対抗することになる。演習にはそうした意味合いも込められている」。政府高官は米韓演習の隠れた狙いを明かした。
 NYタイムズE版は、オバマ大統領が、中国の胡国家主席との電話会見の準備に入ったと報じた。
 クリントン国務長官も、中国の柳外相と電話会見する見通し。
 クリントン元大統領政権の国務副次官補をつとめた中国専門家のスーザン・シャークは「中国は部外者が軍事介入してくるかもしれないと恐れた時にはじめて、北朝鮮に本気で介入する」。黄海への空母派遣はその意味で、中国に行動を促す決定といえるとする。
 国防総省のラパン副報道官は、米海軍原子力空母ジョージ・ワシントンを投入して、黄海で28日から実施する米韓合同軍事演習について、中国政府に通告したことを明らかにした。

<日本>朝。前原外相が、クリントン米国務長官と約15分間の電話協議。12月上旬に米ワシントンで日米韓3カ国の外相会談を開くことで調整が始まった。
 菅首相は衆院予算委員会で、政府見解の公表が砲撃事件発生から約7時間後と遅かったことを問われて、一連の対応を「迅速」と自己評価した。彼は23日の行動を振り返って首相公邸にいた15時半に秘書官から一報を受け、「すぐにテレビをつけた。韓国の正式な発表は18時ころだったが、我が国はいろいろな情報網を持っており、そうした情報網から入ってきたことが私に伝わった」。その後の夜の動きも適切で迅速であったと語った。

○コリア・レポート編集長の辺真一は京都で「金正恩への後継体制を盤石にするには、米国との関係正常化による経済の立て直しが必要で、米国中心の経済制裁を脱しないと、北朝鮮は復興しない。3枚の切り札を切った上に衝突を起こすことで、北朝鮮が求める平和協定の必要性を示したのでないか」と語った。
○元外務次官(元6カ国協議日本首席代表)の薮中三十二は立命館大学で講演し、「北朝鮮は体制が崩壊すると難民などの問題が生じるので、無茶をしても中国は守ってくれると見切っている。日本は外交努力で、中国に北朝鮮に本気に向き合うようにさせなければならない」。講演会は、薮中が同大国際関係学部の特別招聘教授就任を記念して開かれた。


11月26日
<韓国>東亜日報は、韓国政府が北朝鮮の砲撃への対応策に、南北非武装地帯近くから大型拡声器で北朝鮮の体制を批判する宣伝放送などの本格的な心理戦の再開を含めない方針だとの政府関係者の話を伝えた。
 聯合ニュースによると、北朝鮮が韓国軍海兵隊砲兵部隊を精密照準し、正確な砲撃・着弾を加えたことを、韓国軍がはじめて認めた。
 同島砲撃に北朝鮮が多連装ロケットを使用したことで、韓国世論が激高している。同ロケットは、多数の弾が一度に広範囲な地域に着弾し、大きな被害を与える。また攻撃を受けた側に反撃の余裕を与えない効果がある。韓国政府も「大量殺傷用兵器による無差別攻撃」と非難。
 在韓米軍のウォルター・シャープ司令官が午前、延坪島を視察した。その直後、12時20分から15時ころにかけ、北朝鮮側から6回ほどに分けて砲声が聞こえた。島に向けた砲撃ではなく、北朝鮮内部での通常訓練とみられる。ケモリ基地方向から聞こえた。北朝鮮は、約20発を発射したと推定されている。
 韓国の大統領府は、新国防相に金寛栄・元軍参謀本部議長(2006年~08年)が内定したと発表。
 韓国進歩連帯などの市民団体は、「朝鮮半島の危機に、米国が介入することを望まない。演習は平和に逆行する」と主張した。
 韓国国会では来年度の国防予算を6%増やすことを審議中。北の砲撃に対して反撃が不十分だったとの批判を受け、予算増の声が高まっている。国防省は日本円で150億円ほどの予算を追加要求。
 ソウルの米韓連合軍司令部前で演習反対の集会を開いた市民団体は「事態を悪化させる演習は中止すべきだ」と主張した。
 北朝鮮が砲撃で、殺傷能力の強い多連装ロケット砲や、特殊な砲弾を使用したとして、韓国社会を驚かせた。韓国軍は自国の優位を宣伝するビラを気球で散布する「心理戦」を再開。
 李大統領は砲撃で死亡した二兵士の遺体が安置されているソウル市内の病院を訪れ「尊い犠牲を強い安保の礎にしたい」
 民間調査機関の世論調査では、政府が取るべき対北朝鮮政策に関して「強硬策」が 57.5%と、「包容政策」の 29.5%を引き離した。

<北朝鮮>「祖国平和統一委員会」ホームページは、延坪島への砲撃は「正当な自衛的措置」だとあらためて強調。砲撃の根源は「無分別な挑発策動」と主張。挑発者には「断固たる征伐あるのみ」と警告した。
 北の対韓国機関「祖国平和統一委員会」は報道官声明を発表。「われわれの領海に直接発砲した傀儡軍の砲台を正確に命中打破し、当然の懲罰を加えた」。対決には対決で、戦争には戦争で対抗するのが北朝鮮だとし、みずからの尊厳と自主権を侵害する挑発者は誰であれ、容赦なく無慈悲にこらしめると威嚇した。
 「祖国平和統一委員会」報道官声明で、国連軍司令部が制定した交戦規則を韓国政府が改定する方針をたてたことと、米原子力空母「ジョージ・ワシントン」が参加する韓米合同軍事演習の計画について「傀儡の輩の無分別な騒ぎで、北南関係は戦争前夜の険悪な状況になった」。北朝鮮の尊厳と主権を少しでも脅かせば、軍隊と人民が「より恐ろしい雷で敵の牙城を、根こそぎ吹き飛ばす準備を整えている」。「対決を強要するなら、わが方も避ける考えはない」

<日本>日本原燃(六ヶ所村)の川井吉彦社長は定例会見で、北朝鮮がウラン濃縮施設を米国の専門家に公開した際「六ヶ所村などの遠心分離機をモデルにした」と発言したことについて、「極めて迷惑な話だ」と不快感を示した。濃縮技術は核拡散に結びつく重要な機密であり、川井社長は「極めて迷惑千万。わたしどもから情報の漏洩は一切ありえないと確信している」
 午前。菅首相は砲撃事件を受け、関係閣僚会議と閣僚懇談会で、27日から米韓合同軍事演習が終了する12月1日までの間、全閣僚に原則都内に待機し、緊急事態発生時は官房長官指示から1時間以内に所管省庁に登庁、などを指示した。関係閣僚会議は23日以来、2回目の開催。
 菅首相は参院予算員会で「韓国の立場を強く支持する。中国にも北朝鮮の抑制を強く求めていく」。拉致問題解決に向けても「できることは何でもやる姿勢でのぞむ」としたが、具体策は示せなかった。
 23日に仙谷官房長官が言及した「独自の追加制裁」についても、検討は一切進んでいない。外務省幹部は「これまでの経済制裁で北朝鮮との貿易はほとんどなくなった」。外交カードはすでに失われており、追加制裁は困難な状態である。
 夜。衆参両院は本会議で、北朝鮮を強く非難する決議を、全会一致で採択した。砲撃について「無差別とも呼べる砲撃は言語道断の暴挙。一般住民を巻き込む武力による挑発は決して許されない」。北朝鮮は「あらゆる軍事的な挑発行為を放棄し、日本人拉致問題の早期全面解決を求める」
 前原外相は、近く中国の楊外相、ロシアのラブロフ外相と、それぞれ電話協議する方向で調整していることを明らかにした。「朝鮮半島非核化と平和が戦略的互恵関係のバックボーンになるとの認識は、日中間で一致している」と述べた。
 政府・民主党は朝鮮王朝時代の国家行事を記した「朝鮮王室儀軌」(宮内庁所蔵)など1205冊の図書を、韓国に引き渡す日韓図書協定の今国会での承認を見送る方針を固めた。官房長官らの問責決議可決で、自民党などが会期内処理に難色を示し、公明党も全会一致が条件と主張している。政府・民主党は、来年1月召集の通常国会での承認を目指す。菅首相が希望した超多忙な李大統領の12月訪日も断られた。


<中国>米韓合同軍事演習に、中国は昨日まで慎重な言い回しで懸念表明に留めていたが、米空母が黄海に入ることに反発し、これまでの慎重な姿勢とは打ってかわり、明確な実施反対表明に踏み込んだ。一方で北朝鮮に対しても、はっきりと自制を求めた。洪副報道局長は、中国の排他的経済水域EEZ内での軍事行動と条件を付けながらも、明確に合同軍事演習実施に反対を声明した。「中国の排他的経済水域内で、許可なく軍事行動を行うことに反対する」。合同演習に対して、中国の「反対の立場は一貫している」。演習海域が中国の主張するEEZに入らなければ、猛反発しない可能性がある。
 黄海のEEZについては、韓国は中国との中間線を主張している。しかし中国は異議を唱え、両国間に合意はない。
 楊潔箎外相は北朝鮮の池在竜駐中国大使に対して直接、「憂慮」を表明し自制を求めた。「砲撃戦の事態の発展を深く憂慮する。当面の急務は事態を制御し、類似事件の再発を防止することだ」。砲撃後、中国外相が北朝鮮当局者と会談したのははじめて。
 楊外相は、米国のクリントン国務長官と電話会談し、深い憂慮を伝えた。
 楊外相は、韓国の金星煥外交通商相と電話会談。深い憂慮を表明。「南北朝鮮の双方は、冷静と自制を保持し、できるだけ早く、南北双方が接触して関係を改善し、対話により問題を解決すべきだ」
 中国の環球時報は米韓演習を受けた地域情勢に関する有識者の見方を紹介した。
 ①北朝鮮が手出ししない。
 ②北朝鮮が砲撃し、小規模な砲撃戦が再発する。
 ③米韓が北朝鮮沿岸部の基地を徹底的にたたき、北朝鮮は38度線で軍事行動に出る。
 この3つのシナリオを取り上げたが、第1の可能性は極めて低いとし,第2の展開に警戒感を示した。上海東アジア研究所の張祖謙は、有事対応として、中国軍が北朝鮮に入り、20~30キロの場所に、北朝鮮難民を収容する区域を設定するよう提唱した。
 中国にとって、米韓演習が北朝鮮の挑発行為を誘発するだけでなく、中国の基地から発する電波情報を、米軍が傍受することなども、警戒の対象となる。

<米国>国防総省は今回の演習を「公の海、公海上で行うもので、北朝鮮への抑止が目的であり、中国に向けたものではない」
 マレン統合参謀本部議長は、北朝鮮の金正日総書記について「信用できる人物ではない」「好戦的で危険で、常に不安要因で、予測不可能なことだけが予測できることだ」と述べ、中国に対し北朝鮮の挑発行動抑止のため影響力を行使することを求めた。中国が金総書記を「制御しようとしているようだが、私には制御可能なのかどうか、分からない」

<ロシア>モスクワの極東研究所、アレクサンドル・ジェビン朝鮮調査センター長は「朝鮮半島の緊張のために、アジア太平洋地域のロシアの経済発展計画に支障が出ている。砲撃事件をめぐるロシアの立場は単純だ。地域の安定を求め、緊張の度を増すあらゆる動きに反対することだ」

<インドネシア>南アジア諸国連合ASEANのスリン事務局長は「韓国・延坪島の砲撃に関する声明」を発表。「不必要な人的被害は起こされるべきではなかった」と、北朝鮮の名前は出さず、間接的に砲撃を批判した。また「関係各国に、朝鮮半島の緊張と相互不信を助長する軍事行動を避けるよう求める」と強調。同日にバリ島で開いた日本とASEANの次官級協議「日本ASEANフォーラム」で日本は「北朝鮮の攻撃は国際法上、許されない」と主張した。

<フィリピン>アキノ大統領は南北の緊張がさらに高まった場合、韓国に滞在するフィリピン人5万人規模を日本に退避させることを、日本政府に打診していることを明らかにした。非難時に備えて、フィリピン政府が航空会社や船会社と交渉をはじめたと、大統領は語った。

<世界>ウィキリークスから機密文書・公電の流出がはじまる。
<2011年1月1日元旦。今年もまだ続きそうです>
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