ふろむ播州山麓

旧住居の京都山麓から、新居の播州山麓に、ブログ名を変更しました。タイトルだけはたびたび変化しています……

ネットフリックス + ソフトバンク

2015-08-24 | Weblog
 ネットフリックスの日本でのサービスが9月2日からスタートします。ネットフリックスのサービスは通常、申し込みから決済までネット上で完結しますが、ソフトバンクの店舗も新たに窓口として加わる。
 日経新聞8月24日朝刊「ソフトバンク、米ネットフリックスと提携 契約窓口に」を転載します。契約料が月千円くらいなら申し込もうかな、と思い悩んだりしています。


 ソフトバンクは動画配信サービス世界最大手、米ネットフリックスと提携する。同社が9月2日に日本で始めるサービスについて、自社の携帯電話販売店で申し込みや視聴ができたり、利用料金を毎月の携帯料金とまとめて支払えるようにしたりする。国内の携帯端末市場が頭打ちとなる中、ネットフリックスの利用者を取り込むことで、動画視聴に伴う通信料収入の拡大をねらう。
 ネットフリックスはインターネットに接続できるテレビやスマートフォン(スマホ)などで、動画の見放題サービスを月額10ドル前後で提供している。既存の映画やドラマだけでなく自らつくる独自番組も人気だ。日本ではフジテレビジョンが人気番組を地上波より先にネットフリックス向けに提供するほか、吉本興業も独自番組を供給する方針だ。
 日本でのサービス開始に合わせ、ソフトバンクは全国の携帯販売店「ソフトバンクショップ」や家電量販店の売り場で、ネットフリックスのサービスの申し込みを受け付ける。店員がサービスの特徴を対面で説明し、一部の店舗では動画の視聴もできるようにする。
 ソフトバンクのユーザーはネットフリックスのサービス料金を月々の携帯料金と一緒に支払うこともできるため、クレジットカードを持たない若者もサービスを利用しやすくなる。ネットフリックスのサービスは通常、申し込みから決済までネット上で完結するが、ソフトバンクの店舗が新たに窓口として加わることで、早期の利用者獲得が見込める。
 両社は独自コンテンツの企画・制作での連携も検討する。詳細は今後詰めるが、ソフトバンク側が制作資金の一部を提供したり、同社が持つ動画視聴者の属性や嗜好などのビッグデータをもとに番組をつくったりする可能性がある。
 ソフトバンクがネットフリックスと組む背景には、携帯端末の販売自体が頭打ちな上、NTTドコモやKDDI(au)と端末、料金で違いが打ち出せなくなっている事情がある。異業種連携で動画配信などの魅力的なサービスをどうそろえるかに、競争の舞台が移りつつある。
 スマホのデータ通信量を多く消費する動画視聴が増えれば、通信会社は契約者1人当たりの単価アップが見込める。足元では、NTTドコモが定額制配信サービスで453万人の会員を獲得し、ソフトバンクとKDDIに大きな差をつけている状況だ。KDDIもテレビ朝日とスマホ向けの提携を決めるなど、動画サービスの充実を急いでいる。

追記 日経の本日夕刊が、続報を掲載しました。国内サービス料金は、月650円(税別)とネットフリックスが発表。アメリカの7.99ドル(約970円)を下回った。
<2015年8月24日>

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コード・カッター

2015-08-19 | Weblog
 インターネット配信サービスのネットフリックスの日本上陸について、この欄で前回に紹介しました。その後、日本経済新聞がアメリカのインターネット配信サービス台頭を伝えています。「ウォール街ラウンドアップ ネット配信台頭メディアに影」(2015年8月14日夕刊)。転載します。.


 13日の米ダウ工業株30種平均は3日ぶりに反発したが、上げ幅は約5ドルと小幅だった。中国景気への懸念や原油安が重荷となっているが、独自の要因で株価が大きく下げているセクターがある。メディア業界だ。
 業種別のS&P500種株価指数「メディア」は8月に入って約8%下がり、下落率は全体(約1%安)を大幅に上回る。理由は「コード・カッター」の台頭だ。コード・カッターとは、高額な料金を嫌ってCATVなど有料テレビの契約を打ち切る視聴者をいう。
 代わりにインターネット配信サービスの「ネットフリックス」や「Hulu(フールー)」などで動画を楽しむ。ネット配信は月額10ドル以下と、50ドル以上が多い有料テレビより安い。見たい時に見たい番組を選べる利便性も受けている。
 コード・カッターの増加に悩まされる有料テレビ業界では、同業や通信会社との合従連衡が進み、市場の縮小に備えた動きが活発だ。一方で有料テレビに番組を提供しているメディア大手は「コード・カッターの影響はあまりない」と強気の姿勢を貫いてきた。だが、4~6月期決算の結果は異なっていた。
 4日に決算発表した米ウォルト・ディズニーは、スポーツ専門チャンネル「ESPN」で視聴者数が減っていることを認めたうえで、有料テレビ事業の営業利益の年間成長率を1桁台後半から1桁台半ばに引き下げた。スポーツ専門局は「試合の生中継」というキラーコンテンツを持つ。録画でも楽しめるドラマとは異なり、コード・カッターの影響を受けにくいとされてきただけに、衝撃は大きかった。
 ディズニーは映画やテーマパークといった複数の事業を抱え、中でも有料テレビ事業は営業利益全体の半分弱を稼ぎ出す主力事業だ。収入源はCATVなどの運営会社から受け取る番組提供料とテレビ広告収入。どちらも視聴率と収入が連動するだけに、視聴者が減れば共倒れしかねない。アイガー最高経営責任者(CEO)は「ESPNの将来に自信を持っている」と語ったが、投資家の不安は消えていない。
 「現在のテレビ広告が最善の仕組みとはいえない」。21世紀フォックスのジェームズ・マードックCEOはこう発言して、視聴者の嗜好に合わせた広告を流すなどの新しい技術開発を模索していることを明かした。「テレビに広告さえ流せばいい」という時代は終わりを告げている。
 「過剰反応だ」。ディズニー決算をきっかけに続くメディア株売りを著名メディア業界アナリスト、ナザンソン氏はこう総括した。有料テレビ契約者は年間1%程度減っているにすぎず、テレビ業界の経営環境が急激に悪化する可能性は低いとみる。だが、新聞や音楽などの業界を揺るがしたデジタル化の波が押し寄せているのは間違いなく、収益モデルは転換期を迎えている。(ニューヨーク=清水石珠実)
<2015年8月19日>
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ネットフリックスがまもなく日本上陸

2015-08-11 | Weblog
 佐々木俊尚さんの会員制メルマガ「未来地図レポート」8月10日号を部分転載します。「全文でなければ転載可」が佐々木さんの方針。
 これまでアメリカの映像配信会社、ネットフリックスのことは何度か聞いたり読んだりしていました。しかしそのサービス内容について、正直なところまったく理解できずにおりました。ところがついに来9月に日本上陸です。佐々木さんの解説がずいぶんわかりよいので紹介します。



<9月に日本上陸! ネットフリックスの凄さを徹底解説する
~~ついにホンモノの「テレビとネットの融合」がやってくるか?>


 映像コンテンツの定額配信サービス、ネットフリックス(Netflix)が9月2日、ついに日本でもサービスを開始します。これは相当に大きなニュースです。

 もちろん、定額配信のテレビはすでに日本にはたくさんあります。NTTドコモのdTVやNHKオンデマンド、楽天SHOWTIME。海外勢で言えば、ハリウッドの人気ドラマが見られることで人気のフルー(Hulu)。これらとネットフリックスはどう違うのでしょうか?

 最初にその回答となるポイントを2点挙げておきましょう。

(1)単なる定額配信(ストリーミング)ではなく、ビッグデータ分析を用いたお勧め(レコメンデーション)が超優秀である。
(2)国外のコンテンツを日本に配信するだけでなく、日本国内のコンテンツを海外展開するという両面戦略である。

 では、ネットフリックスの歴史から簡単におさらいしておきましょう。同社の設立は古く、インターネット黎明期の1997年です。
もともとは、日本でツタヤ・ディスカスがやっているようなDVDの郵送レンタルサービスでした。これが成功して会員数を伸ばし、そして2007年から「Watch Instantly(すぐに観る)」というネット配信の機能を追加するようになります。

 ネットフリックスの動画コンテンツ配信は、フルーなど他の配信サービスよりもビジネス的な優位がありました。当時、フルーは地上波やケーブルテレビなどで放送された番組コンテンツを翌日にはネットで観られるということを売りにしていたのですが、これは地上波のテレビCMの効果を下げてしまうというデメリットがあります。このためフルーはテレビ局からの強い要請で、翌日の見逃し視聴をパソコンだけに限定し、テレビ受像機では観られないようにしてしまったんですね。

 いっぽうネットフリックスの動画コンテンツは、基本的にはすでにDVD化されているような古いものが中心で、見逃し視聴ではありませんでした。このためテレビ局からそうした要請がくることもなく、自由にテレビ受像機やパソコンなどさまざまなデバイスで観られるようにできたということなんですね。

 このマルチデバイス化は、非常に有効でした。アップルもiTunesでの動画オンデマンド配信をスタートさせていましたが、ハードウェアメーカーでもあるアップルはAppleTVやiPhoneなどでの視聴にこだわり、他社のデバイスで自由に配信するという方法は採らなかったんですね。結果的に、もっとも使い勝手が良いのは、どんなデバイスでも簡単に観られることのできるネットフリックスだということになり、これが普及の原動力になったということです。

 ネットフリックスの動画配信は好調に推移し、2009年には利用者の48%がネット経由でネットフリックスを利用するまでになり、その比率はまもなく逆転しました。

 そして2011年に次の大きな転機が訪れます。ついに番組制作に乗りだしたんですね。そしてなんと、最初に取り組んだコンテンツは監督が「ファイト・クラブ」や?「ソーシャル・ネットワーク」のデイヴィッド・フィンチャー、主演が?「ユージュアル・サスペクツ」や?「アメリカン・ビューティー」のアカデミー賞俳優、ケヴィン・スペイシーという超豪華ラインアップ。大統領選をテーマにした「ハウス・オブ・カード」という番組です。

 それまでネットフィリックスが配信していたのは、すでにDVD化が完了したような古いコンテンツばかりだったのですが、これによってついに同社は地上波やケーブルのテレビ局に追いつきました。超人気番組を自社制作して、最初に放送する権利を得るようになったわけですから。

 いや、追いついただけでなく、この「ハウス・オブ・カード」によってテレビ局を追い抜いたといってもいいかもしれません。この番組制作は、従来のテレビ番組とはまったく異なる方法で行われました。番組制作そのものにデータ分析の手法が持ち込まれたのです。

 地上波のように電波で番組を放送しているテレビでは、ユーザーの動向を調べる方法はいまのところ視聴率ぐらいしかありません。しかしネット配信であれば、双方向の通信が可能で、ユーザーの動きをさまざまに収集することができます。これらのデータをもとに、ネットフリックスはデイヴィッド・フィンチャーとケヴィン・スペイシーを起用し、さらに彼らがつくる政治サスペンスへのニーズが高いと判断したというのですね。さらに放送直前の番組宣伝でも10種類もの異なるバージョンを用意して、ユーザーの好みに合わせてパーソナライズして配信したのだそうです。

 そしてこの徹底的にデータ分析して制作した番組に、シーズン1の13話だけで100億円もの制作費を投下。これによって質も担保し、2013年にシーズン1が配信され、ネット配信の番組としては初めてエミー賞を受賞する快挙を成し遂げました。これはアメリカのテレビ業界における歴史的な転回点だったといえるでしょう。

 ネットフリックスは、こうしたデータ分析をもとに徹底的なレコメンデーションを行っています。最初に挙げたように、このレコメンドがネットフリックスの圧倒的な武器になっています。テレビ番組のネット配信というと、よく「サイマル(放送と同じ内容をただ流す)か、オンデマンド(コンテンツ単体を独立して配信)か」という二者択一で語られることが多いのですが、この二者択一自体が間違っています。

 視聴者は、だらだら観る地上波のテレビそのものはもはや求めていないし、かといって番組を検索してオンデマンドで観るというような面倒なこともしません。視聴者が求めているのは、何の積極的な操作をしなくても、観たら楽しめるようなレコメンドがきちんと提供されていることなんですね。実際、このレコメンドの強化によって、ネットフリックスのユーザーのいまや75%ものひとがレコメンド結果から視聴しているというデータもあるそうです。

 収集しているデータは、ユーザーが何のコンテンツを視聴したかということだけでなく、あるコンテンツを「5分で観るのをやめた」「一気に全部観た」という区分や、シリーズ物のドラマであれば、エピソードをどれだけ観たのか、ひと晩で一気に観たのか、毎晩少しずつ観たのか。またテレビ受像機で観たのか、スマホかパソコンかタブレットか、といったことをこと細かに収集しているようです。

 さらにこれに、コンテンツの属性(出演俳優や監督、ストーリー、ジャンル)をかけ合わせることで、ユーザーの嗜好を分析しています。

 重要なのは、たとえばあるユーザーがSFを多く観ているからといって、SFばかりをお勧めしないようにすること。パーソナライズというとジャンルで絞るような単純なイメージがあるのですが、もっと深いところでユーザーの嗜好を分析する必要があります。

 これについては、音楽ストリーミングサービスのスポティファイ(Spotify)やパンドラ(Pandora)といった先行事例のレコメンドが、同じようなことをしています。パンドラについては本メルマガで何年か前に紹介したことがあるのですが、同社は純粋なビッグデータ技術ではなく、プロミュージシャンの「耳」という肉体もつかって解析を行っています。これがミュージックゲノムという技術で、2000もの判断基準を使い、楽曲の構造を解析し、その曲の持っているDNAみたいなものをプロミュージシャンが耳で聴きながら確認していくことがおこなわれています。

 パンドラについては、以下の榎本幹朗さんの連載記事が非常にくわしく解説されています。

■アメリカでミュージシャンたちの生計を支えるPandoraの楽曲使用料
http://bit.ly/12ExLuZ

■Pandoraのライバルを研究すると日本のラジオ業界の未来が見えて来る
http://bit.ly/YkNbfx

 榎本さんによると、今はビッグデータの技術も向上し、パンドラでは以下のような解析が加えられているとか。

(1)音楽理論による解析
(2)ログ解析
(3)波形解析
(4)ウェブ解析
(5)オンエアリスト解析
(6)ソーシャル放送[非同期型]
(7)ソーシャル放送[同期型]

 この技術によって「同じようなジャンルの音楽ばかり聴くようになる」「同じ楽曲が何度も登場する」ということにはならず、まったく知らないジャンルの楽曲もレコメンドされてくるようになって
います。

 先の記事で榎本さんはこう書いています。「リスナーの趣味志向を忠実に反映すること。そして同時に、リスナーをいい意味で裏切ることだ」。つまりは、誰も予想もしなかったようなレコメンドで新しいコンテンツを提示してくれるかどうかというセレンディピティこそが大切ということなのです。

 ネットフリックスも同様で、ジャンルを横断し、ユーザーの側が思いも寄らないようなコンテンツをレコメンドし、それでも「観てみたらおもしろかった」と思わせる。そういうことをかなり実現してしまっているということなんですね。

◆「Netflix」の“待ち時間を実質的に0にする”ストリーミングの秘密とは?
http://bit.ly/1NgdMpg

 上記の記事で、ネットフリックスの中の人はこう語っています。

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現在わたしたちが実際に行なっているパーソナライゼーションは、レーティングデータを使いません。例えばユーザーがある番組を視聴し始めたら、これは重要なデータになるんです。ユーザーがその映画をおもしろいかもしれないと思った、ということがわかるからです。そこで10分間だけ視聴して他の番組に移ったとすれば、ユーザーがその映画を気に入らなかったこともわかります。もし一気にすべてを視聴し終えたとすれば、おそらくその映画が気に入った
のだろうと知ることができます。Netflixに登録しているユーザーは月に平均30~40時間のコンテンツを消費しています。だから、彼らの好みを示す80のデータポイントを取得できますよね。ユーザーが視聴し始めたものと、視聴し終えたものです。2つのエピソードを連続で見たかもしれません。これもデータになります。そして、ユーザーが10ヶ月Netflixを使用した場合、彼らの好みを表す大量のデータが集まります。わたしたちはユーザーによりよいコンテンツを返すためにこれらのデータを使うことができるのです。
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 すごいですね。こういう技術をもとにしたコンテンツ制作と配信によって、いまやネットフリックスは世界50ヵ国以上で、6500万人を超える会員を擁し。1日1億時間を超える映像コンテンツを配信しています。全米のネットのトラフィックの37%を占めたこともあるとか、同じく米国では全世帯の4分の1が利用しているとか、とにかくけた外れです。

 そして冒頭の二つのポイントの2番目に挙げたように、ネットフリックスは単に日本にコンテンツを配信するだけでなく、日本のコンテンツ産業からも優良なコンテンツを吸い上げ、世界に配信するという双方向のビジネスを展開しようとしています。

 その最初の取り組みとして、フジテレビの人気ドラマ「テラスハウス」の第2弾や、新しいドラマ「アンダーウェア(英題はAtelier)」もネットフリックスで先行配信されることになりました。

 これは日本のテレビ業界にどのような影響を与えるのでしょうか。もしネットフリックスが日本の視聴者にも受け入れられ、ブレイクするような事態が起きれば、ひょっとしたら日本のテレビ局はネットフリックスにコンテンツを提供するコンテンツプロバイダーへと傾斜していくこともあり得るかもしれません。そうならずとも、日本の下請け番組制作会社が局から離反し、ネットフリックスと直接取引するか、もしくは離反組のクリエイターたちが起業してネットフリックス向けの制作会社を立ち上げるような動きも出てくるかも。

 いずれにしても、この9月からのネットフリックスの動向には要注目です。
<2015年8月11日>
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