若冲連載は終盤に入っているのですが、先日ふと「おかしい」と気づきました。かつて一昨年に萬福寺刊『黄檗文華』126号に「若冲逸話」として掲載していただいたときの文と、最近このブログに連載している文章とは、なぜか大幅に異なるのです。
活字版の方が、ブログ版よりかなり長く、見出しも多いのです。抜け落ちている見出しは「天恩山五百羅漢寺」「霊鷲山」「蝶夢と九鬼隆一」など。ハードディスクに残っている項目はあと、「石峰寺過去帳」と「もうひとりの蝶夢―雨森菊太郎」のみ。
なぜパソコン文が、このように短くなってしまったのでしょうか。原因のひとつは、活字になるとき、校正を三度までやったということ。それも手書きで、ゲラにどんどん書き足したのです。編集者の和尚から「好きなようにやってください。いくら文字数が増えても大丈夫ですから」。この言葉に甘えて、かなり書き加えて行ったのです。初稿、再校そして三稿。ゲラの余白が足りず、次頁に別紙を付けたほどでした。当然、すべて手書きです。
それとパソコンの識字能力の限界です。古い漢字が出てこないという大きな問題です。江戸期以前や中国のことなどを書くとき、キーボードに頼らずに、手で書くのが便利で気楽なのです。マイクロソフト「ワード」と漢字、大きな問題だと思います。パソコンはあまりにも字を識らな過ぎます。
諸橋『大漢和辞典』の収録字数は約5万字。最もたくさん収めているのは字書『集韻』で5万6千字ほど。しかしいずれも特殊な異体字を相当数含んでいます。諸橋大漢和をみていると、複雑な漢字の説明に「この字は○○書にのみ記載されている。□字の書き誤りであろう」などと出てきます。
白川静先生は「社会生活に必要なものとしては、まず7千か8千字ほどあれば十分で、今喧しく言われております情報機構(PC)に組み込む場合は、1万字くらいが限度のようですけれど、1万なら必要な字を網羅できると思います。ただ、非常に特殊な文字だけは、また何か考えなければなりませんけれども」
常用漢字はわずか1945字。パソコンは一体、いくつの字を覚えているのでしょうか。4千か5千? その程度ほどに感じます。
それにしても、白川先生の卓見は見事としか、いいようがありません。
さてこれからの若冲連載ですが、短文のままで終了させようと思っています。追加入力作業と、漢字問題のクリアのことを考えると、正直なところ気後れしてしまうのです。それと近ごろ、古代の球戯史をやり、また中途半端になっている千秋萬歳のこと、「ぎっちょう」から左義長に行くはずだったのが腰折れ状態。また「バンザイ」の詰めもおろそか。また萬歳(まんざい)から入った門付け・民俗芸能そして声聞師のことも放置しています。……。
若冲に終止符を打たないことには、次の一歩二歩が困難になってきたように思えます。若冲談義はあと二話か三話ほどで、ひとまず休業にしようと思っています。ただ還暦を前にした若冲が、錦市場存亡の危機を救ったという、新しく発見発表された驚愕すべき事実があります。この件だけは解明したく、宿題として暖めておこうと考えています。興味ある方は、近江信楽で開催中の若冲展図録「若冲ワンダーランド」解説をご覧ください。
<2009年11月24日> [189]
活字版の方が、ブログ版よりかなり長く、見出しも多いのです。抜け落ちている見出しは「天恩山五百羅漢寺」「霊鷲山」「蝶夢と九鬼隆一」など。ハードディスクに残っている項目はあと、「石峰寺過去帳」と「もうひとりの蝶夢―雨森菊太郎」のみ。
なぜパソコン文が、このように短くなってしまったのでしょうか。原因のひとつは、活字になるとき、校正を三度までやったということ。それも手書きで、ゲラにどんどん書き足したのです。編集者の和尚から「好きなようにやってください。いくら文字数が増えても大丈夫ですから」。この言葉に甘えて、かなり書き加えて行ったのです。初稿、再校そして三稿。ゲラの余白が足りず、次頁に別紙を付けたほどでした。当然、すべて手書きです。
それとパソコンの識字能力の限界です。古い漢字が出てこないという大きな問題です。江戸期以前や中国のことなどを書くとき、キーボードに頼らずに、手で書くのが便利で気楽なのです。マイクロソフト「ワード」と漢字、大きな問題だと思います。パソコンはあまりにも字を識らな過ぎます。
諸橋『大漢和辞典』の収録字数は約5万字。最もたくさん収めているのは字書『集韻』で5万6千字ほど。しかしいずれも特殊な異体字を相当数含んでいます。諸橋大漢和をみていると、複雑な漢字の説明に「この字は○○書にのみ記載されている。□字の書き誤りであろう」などと出てきます。
白川静先生は「社会生活に必要なものとしては、まず7千か8千字ほどあれば十分で、今喧しく言われております情報機構(PC)に組み込む場合は、1万字くらいが限度のようですけれど、1万なら必要な字を網羅できると思います。ただ、非常に特殊な文字だけは、また何か考えなければなりませんけれども」
常用漢字はわずか1945字。パソコンは一体、いくつの字を覚えているのでしょうか。4千か5千? その程度ほどに感じます。
それにしても、白川先生の卓見は見事としか、いいようがありません。
さてこれからの若冲連載ですが、短文のままで終了させようと思っています。追加入力作業と、漢字問題のクリアのことを考えると、正直なところ気後れしてしまうのです。それと近ごろ、古代の球戯史をやり、また中途半端になっている千秋萬歳のこと、「ぎっちょう」から左義長に行くはずだったのが腰折れ状態。また「バンザイ」の詰めもおろそか。また萬歳(まんざい)から入った門付け・民俗芸能そして声聞師のことも放置しています。……。
若冲に終止符を打たないことには、次の一歩二歩が困難になってきたように思えます。若冲談義はあと二話か三話ほどで、ひとまず休業にしようと思っています。ただ還暦を前にした若冲が、錦市場存亡の危機を救ったという、新しく発見発表された驚愕すべき事実があります。この件だけは解明したく、宿題として暖めておこうと考えています。興味ある方は、近江信楽で開催中の若冲展図録「若冲ワンダーランド」解説をご覧ください。
<2009年11月24日> [189]