ブログ 「ごまめの歯軋り」

読書子のための、政治・経済・社会・文化・科学・生命の議論の場

読書ノート 広河隆一著 「福島 原発と人々」 岩波新書

2011年09月15日 | 書評
島第1原発事故はチェルノブイリ級、日本政府のいう事を信じてはいけない 第14回

3)チェルノブイリから学ぶこと、そしてこれから (1)

 福島第1原発事故が、1986年4月26日1時23分にソビエト連邦(現:ウクライナ)のチェルノブイリ原子力発電所4号炉で起きた原子力事故に規模が比定されるようになった。チェルノブイリ原発事故の規模は後に決められた国際原子力事象評価尺度 (INES) において最悪のレベル7(深刻な事故)に分類される事故である。福島第1原発事故も4月15日にレベル7の事故とされた。放出された放射線量は福島原発の場合、チェルノブイリ事故の1/7程度であったとされている。しかし御用学者がいうようにだから大丈夫なのではなく、どちらもすごい事故だったというべきである。京大原子炉実験室の小出裕章氏によると、チェルノブイリ事故はセシウム換算で広島型原爆800個分、福島第1原発事故で100個分以上という計算になるのだから、被害規模は似たりよったりと理解すべきである。4月15日に、原発御用学者の1人である長瀧重信長崎大学教授(元放射線健康影響研究所理事長)と佐々木康人アイソトープ協会常務理事(前放射線医学総合研究所理事長)の二人が「首相ホームページ」に、チェルノブイリ事故と比較して福島第1原発事故は心配するほどではないという見解を発表した。「チェルノブイリ事故に関するWHO、IAEAなどの国際機関のまとめによると、①死亡者は47名、放射線被爆と死亡の因果関係は無い、急性放射線障害者は134名で福島原発事故では急性放射線障害はない。②チェルノブイリ事故では24万人の被爆量は平均100ミリシーベルト、27万人は50ミリシーベルト以上、500万人は10-20ミリシーベルトで健康被害はなかった。福島原発事故では該当する被爆者は無い。③子供の甲状腺がんは無制限に牛乳を飲んだせいで、6000人が手術を受け17人が死亡した。福島原発事故では牛乳の暫定基準を300ベクレル/kgを守っているので問題ない。」という恐ろしいまでの事実歪曲と無責任な放言に満ちている。
(つづく)

環境書評 西岡秀三著 「低炭素社会のデザインーゼロ排出は可能か」 岩波新書

2011年09月15日 | 書評
日本低炭素社会 脱石油・脱原発のシナリオ 第2回

 地球温暖化炭酸ガス説が本当かどうかは別にしても、脱石油は喫緊の課題であり、原子力発電が3月11日の大震災による福島第1原発事故がおきて、その安全性神話の崩壊と核廃棄物処理の未解決により、菅首相は「原発に依存しないエネルギー政策を」と訴えた。地球温暖化防止という本書の内容は、脱石油・脱原発というエネルギー政策転換論であるので、本書も地球温暖化炭酸ガス説はICPPにまかせて、低炭素社会構築のシナリオつくりが主である。したがって地球温暖化論争は棚上げにして、脱石油論の文脈から本書を読み変えよう。

 本書の著者西岡秀三氏のプロフィールを書末より紹介する。1939年東京生まれ、東京大学工学部機械工学科卒業、博士課程終了。旭化成工業、国立環境研究所に勤務、その後東京工業大学教授、慶応義塾大学教授、国立環境研究所理事となる。1980年代よりICPPなどで気候変動とその対策の研究に従事、低炭素社会国際研究ネットワーク事務局長をつとめ、2004年から2009年まで環境省地球環境研究総合推進費による「2050日本低炭素社会シナリオ」WGのリーダーを勤めた。なお評価モデルは国立環境研究所、京都大学、みずほ情報総合研究所が開発した「気候変動政策のためのアジア太平洋気候変動統合総合評価モデルAIM」に基づいているそうだ。本書はその研究成果を市民に分かりやすくまとめたサマリーである。
(つづく)

読書ノート 竹内 啓著 「偶然とは何かーその積極的意味」 岩波新書

2011年09月15日 | 書評
生物進化や人間の歴史のおける偶然の積極的意味とは 第4回

1) 確率の意味 (2)

 コインの裏表を0,1であらわすと、コインを投げる回数をn回繰り返すとき、0または1が表れる回数をmとすると確率はp=m/nである。そしてnが無限大である時、部分数列νの中で1が表れる回数μとすると、μ/ν=pである。この数列をベルヌーイ系列(もしくはミーゼスのコレクティブ)という。この系列はランダムであるといえる。大数の法則が成り立つための前提がこのランダム性にある。注意深く行なわれたのもかかわらず発生する測定誤差、さいころなど多くの賭け事などである。ところが事故の様な稀な事象には「少数の法則」というポアソン分布となる。また時間の中でランダムの起きる事象は時間とともに急速に減少する指数分布となる。ランダムな確率過程をコンピュータの乱数発生を用いて追試するのが「モンテカルロ」法である。完全にランダムなものが、完全な均一性をもたらす事を明らかにしたのが統計力学であり、気体の運動方程式である熱力学において「エントロピーの法則」とされている。情報量とエントロピーの法則は類似性はあるが直接の関係は無い。数理統計学からいうと、賭け事における「主観確率」は心理学であり、胴元が大きな利益を得る仕組みで動いている限り獲得金額の期待値は明らかにマイナスであり、賭けに参加する人の期待効用は心理学もしくは幻想である。ゆめゆめ公設賭博には参加しないように。
(つづく)

筑波子 月次絶句集 「江桜酒宴」

2011年09月15日 | 漢詩・自由詩
精華皎皎映桜台     精華皎皎と 桜台を映じ
 
遠路吟友戴酒来     遠路より吟友 酒を戴て来る

美味佳肴菰米飯     美味かな佳肴 菰米の飯

今宵好挙菊花盃     今宵挙る好し 菊花の盃


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(韻:十灰 七言絶句平起式  平音は○、仄音は●、韻は◎)
(平仄規則は2・4不同、2・6対、1・3・5不論、4字目孤平不許、下三連不許、同字相侵)