転妻よしこ の 道楽日記
舞台パフォーマンス全般をこよなく愛する道楽者の記録です。
ブログ開始時は「転妻」でしたが現在は広島に定住しています。
 



来月はアンドラーシュ・シフのリサイタルに行く予定なのだが、
先日、招聘元のKAJIMOTOから、当日の演奏曲順変更と休憩無しのお知らせ、
というものが発表された(汗)。

■サー・アンドラーシュ・シフ 3/23演奏曲順変更、および休憩なしのお知らせ
『3/21(火)と3/23(木)に東京オペラシティ コンサートホールで行われます、アンドラーシュ・シフ ピアノリサイタル「The Last Sonatas」につきまして、既に3月21日(火)の公演は、演奏者本人の強い希望により休憩がない旨、チラシや情報誌等でご案内しておりましたが、3月23日(木)の公演もまた、本人の強い希望により演奏曲順を変更し、また、休憩をとらずに公演を行うこととなりました。』

モーツァルト、シューベルト、ハイドン、ベートーヴェンの、
それぞれの最晩年のピアノ・ソナタを演奏するというプログラムで、
どのように弾くかにもよるが、四曲続けるなら、
およそ全体で1時間40~50分くらいになるだろうか?

長大なソナタもあり、聴くには心構えが要りそうな話ではあるが、
休憩なしの演奏会は、私は決して嫌いではない。
私はだいたい、浸っている最中に中断が入るのはイヤで、
日本人演奏家に時々ある、曲の間のトークなども、
内容によるが元来は好きではない。
聴くとなったらひたすら音→響き→音楽、というのが私の望む世界だ。
途中で言語音を聞きたいとは、私は思わないし、
休憩も、厳密に言えば音楽の連続を絶つものだと思う。
ひとつひとつの打鍵と効果を考え抜いて弾くシフが、
休憩なしで四曲に没入するというのなら、
間違いなくこれは、極めて高密度な演奏会になるだろう。

聴き手としては、途中で出入りできないのだから、万事早めの行動を心掛け、
開演前に水分を取り過ぎないよう気をつける、ということかな、
と私は内心の汗をぬぐいつつ思っていた。
シフがそこまでの決意で弾くというなら、こちらも聴く側なりに、
万全の態勢を整えて当日の四曲にすべてを賭けなくては、と。
ところが昨日、友人某氏にこの話をしたら、
「そのあとアンコールが長いかもしれないということを忘れてはいけない」
と恐ろしい指摘をされ、自分がまだまだ甘かったことを悟った。
そうだった……、シフはアンコールでいきなり、
ベートーヴェンの30番のソナタを全楽章弾いたりするヒトだった(大汗)。

ポゴレリチの言ではないが、聴き手だって一応は能動的に聴いているので、
曲によって、どこまで・どういうふうに聴くつもりか、という前提がある。
本プロがソナタ四曲で、何かアンコールがつくのは想定の範囲としても、
それが例えば単一楽章だけで完結するのか、全楽章聴かされるのかでは、
こちらの聴き方だって出だしから違うのだよ(汗)。
困るんだよな、アンコールでゴルトベルクのアリアが始まったりすると、
これで終わるのか?第何変奏まで行くのか?もしや全部!?
とそっちのほうが気になって、せっかくの演奏に集中できないから。

シフはナイト(Sir)の称号を持つ、英国社会で尊重される存在であり、
極めて学究的な演奏家として、その業績は国際的に高く評価されている。
私自身、かねてより彼のCDを愛聴しており、
装飾音のひとつまでその都度、厳密に追求するような演奏を敬愛して来た。
某P氏のように「何するかわからん」存在だと思ったことはない、
…………いや、なかった。
しかし今回の「お知らせ」の件で私は、やはりシフもまた、
独自の世界に生きている芸術家なのだという思いを新たにした。
当日は、覚悟の上にも覚悟して、臨みたいと思う(大汗)。

Trackback ( 0 )



« まいにちフラ... 大阪松竹座 花... »