転妻よしこ の 道楽日記
舞台パフォーマンス全般をこよなく愛する道楽者の記録です。
ブログ開始時は「転妻」でしたが現在は広島に定住しています。
 



舅は入院中だし、姑も本日より十日間の予定でショートステイに行っているので、
私は本当に久々に、きょうは昼間から、爆睡した。
こんなに安心して眠ったことなど、絶えて久しく、無かった。

午後になって目が覚めて、こんな自由も久しぶりで、
さて何をしようかと考え、
この十日で何か一曲仕上げようかなと思い立った。
で、古い楽譜の中でドビュッシーの「ベルガマスク組曲」が目についたので、
最初のページから譜読みをしてみた。
確かこれは二十年くらい前に一度挑戦したことがあったのだが、
そうだ、弾いてみて思い出した、
これは譜読みは簡単だが弾くのが難しかったのだ(^_^;)。

どんな曲でもそうだが、譜面にある音を拾って鍵盤を押さえることは、
テクニックがおいつけば可能だが、それでその曲が「弾ける」訳ではない。
その曲を、曲として表現するには、そこから先の作業こそ大切なのだ。
私の頭の中には理想としての「月の光」なり「パスピエ」なりがあるので、
そこからあまりにかけ離れた表現しか出来ない自分に、つい、萎えてしまう。
前回は、それで挫折したのだった。
今回は、さてどこまでやれるだろうか?

スタニスラフ・ブーニンが、86年夏に初来日したとき、
最初のNHKホールの演奏会で、この曲は確か後半の一曲目だった。
前半のショパンのワルツ全曲がとんでもない出来で、
ど~なっちゃうんだろうかと思った矢先、
目を見張るようなドビュッシーが出てきて、
あまりの鮮やかさに驚嘆した記憶がある。
あの演奏会は、チケットが買えず、
私は小平の下宿の、小さいテレビで見たのだった。
「当日券はないのか」と電話でしつこく尋ねたのに、
東京労音は「ない」の一点張りで、
行った人にあとで聞いたら結構出ていたそうで、
今もって本当に許せないが(^_^;)。
ブーニンの初来日に関しては、
私は追加公演となった人見記念講堂のリサイタルを
二階席のてっぺんで聴いているのだが、
あのときも、ドビュッシーのほうが、
演奏の出来映えとしては良かった記憶がある。

ドビュッシーは、演奏者の感性次第で、
恣意的に演奏できる良さがあって、相性がピタリと合えば、
大変に魅力的なものが表現できる、という気が私はする。
私の頭の中にある理想のベルガマスク組曲は、もしかしたら、
NHKホールでブーニンが弾いた、
あのときのものに似ているのかもしれない。

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